聖女は素直にイケメンハーレムを所望しました!

Ao

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図書館での攻防

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王城の書庫は、想像していたよりもはるかに広大で、天井まで届く本棚にびっしりと本が並ぶ光景は圧巻だった。

「聖女様は、どのような本にご興味が?」

セドリック様がそう尋ね、書架の間を優雅に案内してくれる。その横顔はやはり美しく、彼との二人きりの時間も悪くないな、なんて浮かれていると、不意に視線の先に人影を捉えた。

「あら?」

書架の奥、高い位置にある本に手を伸ばしている人物がいた。その銀色の髪と、すらりとした背格好は──。

「ユリウス様…?」

私が声をかけると、その人物はゆっくりと振り向いた。やはり、リヴァイア公爵家の次男、ユリウス様だった。彼は私たちの姿を認めると、淡い紫の瞳をわずかに見開いた後、穏やかな笑みを浮かべた。

「これは聖女様、お待ちしておりましたよ。そしてセドリック様、まさかこのような場所でお会いするとは」

「ユリウス様こそ、どうしてここに?」

セドリック様が、柔らかいがやや剣のある声で尋ねる。

ユリウス様はふわりと笑って答えた。

「私は文官として、このローズ宮の書庫も管理しておりますので。聖女様が書庫にいらっしゃるという情報を聞きつけ、ご挨拶に参りました」

「わ、ユリウス様がこの書庫の管理を?」

私が目を輝かせると、

「はい、ですからもしお探しの本があれば私がご案内させていただきますよ。よろしいですか、セドリック様。」

ユリウス様とセドリック様は一瞬剣呑な雰囲気になったものの、

「そうですね、今朝は聖女様を独占させていただきましたからね。ここは譲りましょう。
それでは、またお声がけをお待ちしております。聖女様。」

優雅な仕草であいこの手に口付けをし、咄嗟のことで茫然とするあいこに微笑み、静かに書庫を後にした。

今更ながらに真っ赤になるあいこから注意を引くべく、ユリウス様は優雅に一礼する。

「では、僭越ながら務めさせていただきます。聖女様はどのような本をお探しですか?」

「あ、はい!この国の歴史について知りたいんです。何か面白い本とかありますか?」

私の言葉に、ユリウス様は少し考えた後、するすると書架の間を縫って進んでいく。

「この国の歴史ですと、やはり建国にまつわる記述からご覧になるのがよろしいかと存じます。確か…こちらに」

彼が指差したのは、私の背丈よりもはるかに高い位置にある、古めかしい装丁の本だった。

「あ、ありがとうございます…でも、高いですね」

私が背伸びをして手を伸ばそうとすると、ユリウス様は私の背後に回り込み、すっと手を伸ばした。彼の鍛えられた腕が私の頭上を通り過ぎ、その身体が背中にぴったりと寄り添う。

ひぇ…!?

予想もしなかった状況に、私の呼吸は止まった。耳元で、彼の甘く囁くような声が響く。

「聖女様、私がお取りしますよ。お背丈が足りないようでしたら、いつでもわたくしをお頼りください。どんな高い場所にある本でも、聖女様のためならば、喜んでお取りいたしましょう」

彼の吐息が首筋にかかり、ゾクリと背筋に電流が走る。彼の淡い紫の瞳が、至近距離で私を見つめ返していた。まるで、吸い込まれるようなその瞳に、私はただただ見惚れるしかなかった。

「…ユ、ユリウス様、ありがとうございます」

なんとか絞り出した声で礼を言うと、ユリウス様は満足そうに微笑み、私の隣から離れた。手渡された本は、その瞬間のドキドキで、まるで熱を持っているかのように感じられた。

部屋に帰宅後、
「え、文化系草食男子かと思ったらそんなことする!?ユリウス様ってつかみどころな~い!ミステリアス~!!…これは、沼だな」
とあいこがジタバタ身悶えていたことはいうまでもない。


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