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庭園散策とハプニング
しおりを挟む翌る日、私はロバート様と庭園を散策することになった。
彼の情熱的な赤茶の髪が朝日に輝き、琥珀色の瞳は周囲の緑を映してキラキラと揺れている。鍛え上げられた身体にぴったりの軽装で、まるで絵から抜け出してきた騎士のようだ。
「聖女様、このあたりのバラは、この国の特産でな。特にこの季節は、朝露に濡れて一層美しいんだぜ」
ロバート様は、そう言って優しく白いバラのつぼみを指差した。その指先が、大きくごつごつしているのに、なぜかとても繊細に見える。
私はその言葉に頷きながら、ふとローズ宮の門の向こう側に目をやった。
「あら?あそこ、なんだか賑やかですね」
柵の向こうからは、金属がぶつかり合う音や、男性たちの威勢の良い声が聞こえてくる。
「ああ、あれは騎士たちの練習場だ。毎日、騎士達が腕を磨いている。聖女様も、もし興味があるなら案内してやろうか?」
「騎士の練習場!?」
私の目は輝いた。
魔王討伐の旅で、騎士たちの雄姿を間近で見てきた私にとって、彼らの鍛錬の場というのは、非常に興味をそそられる場所だった。
そして、私は見たい、騎士たちの筋肉の楽園を…!!
「はい、ぜひ!」
と、興奮して一歩踏み出したその時だった。
石畳のわずかな凹凸に、私の足が引っかかった。
「きゃっ!」
バランスを崩し、体が前のめりに傾ぐ。とっさに手を出そうとしたが、間に合わない。
その瞬間、強い腕が私の腰を抱きしめた。
「危ない!」
ロバート様の声が耳元で響き、彼の腕の中にすっぽりと収まっていた。彼の硬い胸板に背中が触れ、温かい体温が伝わってくる。
「大丈夫かよ、聖女様!?」
ロバート様は、心配そうな琥珀色の瞳で私を見つめ返した。至近距離で見上げる彼の顔は、やはり息をのむほど美しい。
「は、はい…大丈夫です」
心臓がドクドクと音を立てる。恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。
しかし、ロバート様は私を抱きかかえたまま、さらに優しく言った。
「転んだら大変だ。聖女様が怪我でもしたら一大事だからな」
そう言うと、彼は私をふわりと抱き上げ、そのままお姫様抱っこの体勢になった。
「ぬえっ!?」
私は思わず声を上げた。突然のことに、どう反応していいか分からない。彼の腕の中にすっぽりと収まった私は、まるで子供のように小さく感じられた。
彼の逞しい腕がしっかりと私を支え、そして、その安定感に少し興奮してしまった…。
我ながら自分が情けない。
けど、おいしいなぁ…。
ロバート様は、何の躊躇もなく、私を抱きかかえたままローズ宮へと向かって歩き出した。彼の表情は真剣で、私の身を案じる優しさに満ちていた。
「聖女様、部屋まで送ってくからな。無理はしないでくれ」
庭園を散策するだけのはずが、まさかこんな展開になるとは。
彼の体温と、心地よい香りが私の鼻腔をくすぐり、まさに夢見心地であった。
こうして、私はロバート様にお姫様抱っこされたまま、自室へと戻ることになった。
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