12 / 16
インテリア眼鏡との出会い
しおりを挟むロバート様にお姫様抱っこされてローズ宮に戻った私は、自室のソファに下ろされると、心臓がバクバク鳴り止まらなかった。
「ま、まさか…こんな展開もあるなんて…」
顔が熱くなるのを感じながら、私はただただぼう然とするばかりだった。ロバート様は私の反応を見て、くしゃっと笑った。
「聖女様、今日は少しだったが庭園散策できて嬉しかったぜ。また今度、騎士団の訓練も見に行こうな!」
そう言って、彼は爽やかな笑顔を残し、去っていった。その力強い言葉に、私はドキドキが止まらなかった。
昼食を終え、ようやく落ち着きを取り戻した頃、午後のティータイムが近づいてきた。
ティーサロンへと向かうと、そこに待っていたのは、これまでに出会ったどの男性とも違う雰囲気の人物だった。
その方は、知的な雰囲気を漂わせる銀縁の眼鏡をかけている。落ち着いた黒い髪はきちんと整えられ、その奥から覗く深い藍色の瞳は、どこか思慮深さを感じさせた。すらりとした体躯は細身だが、漂う気品は紛れもない貴族のものだ。
彼の名は、フィリップ子爵家の次男、アルフォンス様。普段は宰相室で文官として務めている。
「聖女様、初めにお目にかかります。アルフォンスと申します。本日は、聖女様とお茶をご一緒させていただけることを、大変光栄に思います」
アルフォンス様は、眼鏡を少しだけ押し上げながら、穏やかで丁寧な口調で挨拶をした。彼の言葉遣いからは、生真面目さと共に、彼の知性の高さが伺える。
私は
「こちらこそ、アルフォンス様とお話しできることを楽しみにしておりました」
と返した。
だいぶ板についてきたぞ、お淑やか。
お茶を飲みながら会話を始めると、私は昨日のロバート様との庭園散策で目にした騎士団の練習場の話題を切り出した。
「昨日、庭園から騎士の方々が訓練されているのが見えたのですが、この国の騎士団はとても活発なのですね。魔王討伐の旅でも、本当に心強かったです」
私がそう言うと、アルフォンス様は穏やかに頷いた。
「ええ、聖女様がおっしゃる通り、我が国の騎士団は精鋭揃いでございます。魔王の脅威が去ったとはいえ、国を守る上では彼らの存在は不可欠ですから」
そこから、話は自然と国の現状へと移っていった。魔王が討伐された後の国の復興状況や、国民の暮らしぶりなど、私が漠然と気になっていたことを、アルフォンス様は非常に分かりやすく説明してくれた。
彼の話を聞いているうちに、私は、この国の政治がどのように動いているのか、経済はどのように成り立っているのか、より具体的なことが知りたくなってきた。
「あの、アルフォンス様。例えば、騎士団の方々が活発に訓練されているのは、やはりそれだけ国を守ることに力を入れているということなのですよね?国政という面では、他にどのような点に力を入入れているのですか?」
私は、我ながらかなり突っ込んだ質問をしてしまったことに気づき、少し慌てた。しかし、アルフォンス様は驚くことなく、私の質問に真摯に耳を傾けてくれた。
「聖女様は、国の未来にもご関心をお持ちでいらっしゃるのですね。素晴らしいことです。もちろん、ご説明させていただきます」
そこから、アルフォンス様は、この国の政治体制や経済状況、あるいは他国との外交関係について、非常に分かりやすく説明してくれた。専門的な内容も、彼にかかるとまるで物語を聞いているかのようにすんなりと頭に入ってくる。
「聖女様は、魔王討伐という偉業を成し遂げられました。この国の現状を深くご理解いただくことは、聖女様の今後のご生活においても、また、この国の発展においても、非常に重要なことかと存じます」
彼の言葉には、単なる知識のひけらかしではなく、聖女である私への真摯な敬意と、この国をより良くしたいという熱意が込められているのが伝わってきた。
「アルフォンス様のお話、とても分かりやすいです…!もっと色々教えていただけますか?」
私の目が輝いたのを見て、アルフォンス様は嬉しそうに微笑んだ。
「もちろん、聖女様。もしよろしければ、定期的にこうしてお時間をいただき、勉強会を開かせていただくのはいかがでしょうか? 聖女様のご質問には、何なりとお答えいたしましょう」
「え!本当ですか!?ぜひお願いします!」
私は興奮気味に答えた。彼の丁寧な物腰と知的な会話は、これまでのイケメンたちとはまた違う、新たな魅力に溢れていた。それに、この国のことをもっと深く知れるチャンスだ。
こうして、私の異世界イケメンライフに、新たに「インテリ眼鏡との勉強会」という、これまた刺激的なイベントが加わることになったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
完【恋愛】婚約破棄をされた瞬間聖女として顕現した令嬢は竜の伴侶となりました。
梅花
恋愛
侯爵令嬢であるフェンリエッタはこの国の第2王子であるフェルディナンドの婚約者であった。
16歳の春、王立学院を卒業後に正式に結婚をして王室に入る事となっていたが、それをぶち壊したのは誰でもないフェルディナンド彼の人だった。
卒業前の舞踏会で、惨事は起こった。
破り捨てられた婚約証書。
破られたことで切れてしまった絆。
それと同時に手の甲に浮かび上がった痣は、聖痕と呼ばれるもの。
痣が浮き出る直前に告白をしてきたのは隣国からの留学生であるベルナルド。
フェンリエッタの行方は…
王道ざまぁ予定です
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる