私の身も心も全て捧げます!

恐霊仙妖

文字の大きさ
5 / 11
1章 始まり

騒動

しおりを挟む
「オーニール!貴様自分が何をしたか分かっているのか!」

顎髭を綺麗に伸ばした老人が、少々掠れた声で、しかしはっきりと怒声をあげる。

「ベリウス卿、奴らは何も言えませんよ、例え公爵家であろうと、17歳の女性を無理矢理に娼館へ、それも闇娼館へ売り飛ばそうとしたなんて、敵対派閥にとってはまたとない餌ですからね」

対するは栗色の長髪に青い瞳の男だ、こちらは若いが、老人の怒声に対しても躊躇わず物を言えるだけの強さはその瞳からも感じられる。

しかし、そこに凛とした声が響く。

「2人ともその辺にしなさい、どちらにせよ今更返しに行けるわけではありません」

40代程だろうか、一見華奢に見える男性が丁寧な口調でそう言うと、先ほどまで白熱していた議論は即座に終わりを告げた。

しかし、老人はまだ物足りないのだろうか、呟く。

「しかしなぁ、ミルバ様の娘が、、あんな仕打ちを受けていただなんて」

先程とは打って変わった優しい、それでいて哀しみを感じさせる口調だ。

「だからこそ我々が」

それに反論しようとした栗色の髪の青年だったが、先の議論を繰り返したく無いのだろうか、老人は言葉を遮る。

「わかっておる、わかっておるとも、国を想うのは恐ろしく難しい、愛する者を守るよりもずっとな、なにせ、国のためとあらば、その愛する者さえ切り捨てる覚悟がいるのだから」

悲壮感に満ちた老人の言葉に、栗色の髪の青年は何も返せなかった。










場所は打って変わって砂漠の地。

赤毛の男が歩いている。

しかし、その足取りは恐ろしく危うい。
最早いつ倒れてもおかしくはないだろう、その男がふと呟く。

「水が欲しいなぁ」



そんなものは無いことは分かっていたが、そう言わずにはいられなかった。

彼の名はニルフェルト・ニルムンディア

古代ニルムンディア神聖皇国の皇家の末裔である、その血はもはや途絶えようとしていた。


しかし、


「水が欲しいのね、あげるわよいくらでも、
そのかわり私の頼みを聞いて欲しいの」


ここは砂漠のど真ん中、そんな所にいるはずも無い、妙齢の女性の声がしたのだ、それは彼からしてみればまるで女神の声であった。

「あぁ、神の声が聞こえるなんて、俺ももうお終いだなぁ」

ふと空を見上げようとする、と。


そこにあったのは毎日みてきた憎々しいほどの青空ではなく、伝説と名高いフェンリルの姿であった。

「あ、あぁ、、、」

声も出ない、しかし必死に彼の脳は先ほどの言葉を思い出す。

「た、助けてくれるのでしょうか」

フェンリルに縋ろうとするが、そんな力は残っていない、前傾姿勢のまま地面に突っ伏す、それでいてなお男は顔を上げる。

そして彼にとっての"神"を見上げる。

「ええ、頼みを聞いてくれるのならね、やっと息子に番が出来そうなの、手伝ってくれる?ニルヴ族の者」

彼は祈りを捧げた、自らを救った神に、これまで先祖が祈りを捧げた偽物の神ではない。

神聖皇国の伝えてきた神など偽物のだ。

そう、この方こそ、神


その日世界に5人しかいないフェンリルの1人、アラケイルは神となった、まずはたった1人の男にとってだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

追放された王女は、冷徹公爵に甘く囲われる

vllam40591
恋愛
第三王女エリシアは、魔力も才覚もない「出来損ない」として、 婚約破棄と同時に国外追放を言い渡された。 王家に不要とされ、すべてを失った彼女を保護したのは、 王家と距離を置く冷徹無比の公爵――ルシアン・ヴァルグレイヴ。 「返すつもりだった。最初は」 そう告げられながら、公爵邸で始まったのは 優しいが自由のない、“保護”という名の生活だった。 外出は許可制。 面会も制限され、 夜ごと注がれるのは、触れない視線と逃げ場のない距離。 一方、エリシアを追放した王家は、 彼女の価値に気づき始め、奪い返そうと動き出す。 ――出来損ないだったはずの王女を、 誰よりも手放せなくなったのは、冷徹公爵だった。 これは、捨てられた王女が 檻ごと選ばれ、甘く囲われていく物語。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~

葉月奈津・男
恋愛
「あなたとの婚約、破棄させていただきます!」 王立学院の舞踏会。 全校生徒が見守る中、商家の三男カロスタークは、貴族令嬢セザールから一方的に婚約破棄を突きつけられる。 努力も誠意も、すべて「退屈だった」の一言で切り捨てられ、彼女は王子様気取りの子爵家の三男と新たな婚約を宣言する。 だが、カロスタークは折れなかった。 「商人の子せがれにだって、意地はあるんだ!」 怒りと屈辱を胸に、彼は商人としての才覚を武器に、静かなる反撃を開始する。 舞踏会の翌日、元婚約者の実家に突如として訪れる債権者たち。 差し押さえ、債権買収、そして“後ろ盾”の意味を思い知らせる逆襲劇が幕を開ける! これは、貴族社会の常識を覆す、ひとりの青年の成り上がりの物語。 誇りを踏みにじられた男が、金と知恵で世界を変える――!

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

恋い焦がれて

さとう涼
恋愛
小学校時代の担任教諭・佐野に七年ぶりに再会し、話の流れで佐野の恋人へのエンゲージリングを選ぶために一緒にジュエリーショップに行くことになってしまった二十歳の女子大学生・輝。 最初はそんなつもりはなかったのに、次第に佐野を意識してしまうようになり、自分でも困惑してしまう。 必死に自分の想いを打ち消そうとする輝。 だけど佐野も恋人との関係に悩んでいるようで、複雑な想いを抱え続けることになる。 そんな輝を見守る(ちょっかいをかける?)バイト先の店長。 さらに佐野の恋人は意外な人物で、輝は大混乱。 ※ドロドロではなく純愛系を目指していますが、ビターテイストなお話です ※理想的で格好いいヒーローではありません(…すみません) ※調べながら執筆をしているのですが、無知なところも多々あるので、間違っているところがありましたら教えてください。ツイッターでも受け付けています。 https://twitter.com/SATORYO_HOME

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...