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1章 始まり
騒動
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「オーニール!貴様自分が何をしたか分かっているのか!」
顎髭を綺麗に伸ばした老人が、少々掠れた声で、しかしはっきりと怒声をあげる。
「ベリウス卿、奴らは何も言えませんよ、例え公爵家であろうと、17歳の女性を無理矢理に娼館へ、それも闇娼館へ売り飛ばそうとしたなんて、敵対派閥にとってはまたとない餌ですからね」
対するは栗色の長髪に青い瞳の男だ、こちらは若いが、老人の怒声に対しても躊躇わず物を言えるだけの強さはその瞳からも感じられる。
しかし、そこに凛とした声が響く。
「2人ともその辺にしなさい、どちらにせよ今更返しに行けるわけではありません」
40代程だろうか、一見華奢に見える男性が丁寧な口調でそう言うと、先ほどまで白熱していた議論は即座に終わりを告げた。
しかし、老人はまだ物足りないのだろうか、呟く。
「しかしなぁ、ミルバ様の娘が、、あんな仕打ちを受けていただなんて」
先程とは打って変わった優しい、それでいて哀しみを感じさせる口調だ。
「だからこそ我々が」
それに反論しようとした栗色の髪の青年だったが、先の議論を繰り返したく無いのだろうか、老人は言葉を遮る。
「わかっておる、わかっておるとも、国を想うのは恐ろしく難しい、愛する者を守るよりもずっとな、なにせ、国のためとあらば、その愛する者さえ切り捨てる覚悟がいるのだから」
悲壮感に満ちた老人の言葉に、栗色の髪の青年は何も返せなかった。
場所は打って変わって砂漠の地。
赤毛の男が歩いている。
しかし、その足取りは恐ろしく危うい。
最早いつ倒れてもおかしくはないだろう、その男がふと呟く。
「水が欲しいなぁ」
と
そんなものは無いことは分かっていたが、そう言わずにはいられなかった。
彼の名はニルフェルト・ニルムンディア
古代ニルムンディア神聖皇国の皇家の末裔である、その血はもはや途絶えようとしていた。
しかし、
「水が欲しいのね、あげるわよいくらでも、
そのかわり私の頼みを聞いて欲しいの」
ここは砂漠のど真ん中、そんな所にいるはずも無い、妙齢の女性の声がしたのだ、それは彼からしてみればまるで女神の声であった。
「あぁ、神の声が聞こえるなんて、俺ももうお終いだなぁ」
ふと空を見上げようとする、と。
そこにあったのは毎日みてきた憎々しいほどの青空ではなく、伝説と名高いフェンリルの姿であった。
「あ、あぁ、、、」
声も出ない、しかし必死に彼の脳は先ほどの言葉を思い出す。
「た、助けてくれるのでしょうか」
フェンリルに縋ろうとするが、そんな力は残っていない、前傾姿勢のまま地面に突っ伏す、それでいてなお男は顔を上げる。
そして彼にとっての"神"を見上げる。
「ええ、頼みを聞いてくれるのならね、やっと息子に番が出来そうなの、手伝ってくれる?ニルヴ族の者」
彼は祈りを捧げた、自らを救った神に、これまで先祖が祈りを捧げた偽物の神ではない。
神聖皇国の伝えてきた神など偽物のだ。
そう、この方こそ、神
その日世界に5人しかいないフェンリルの1人、アラケイルは神となった、まずはたった1人の男にとってだが。
顎髭を綺麗に伸ばした老人が、少々掠れた声で、しかしはっきりと怒声をあげる。
「ベリウス卿、奴らは何も言えませんよ、例え公爵家であろうと、17歳の女性を無理矢理に娼館へ、それも闇娼館へ売り飛ばそうとしたなんて、敵対派閥にとってはまたとない餌ですからね」
対するは栗色の長髪に青い瞳の男だ、こちらは若いが、老人の怒声に対しても躊躇わず物を言えるだけの強さはその瞳からも感じられる。
しかし、そこに凛とした声が響く。
「2人ともその辺にしなさい、どちらにせよ今更返しに行けるわけではありません」
40代程だろうか、一見華奢に見える男性が丁寧な口調でそう言うと、先ほどまで白熱していた議論は即座に終わりを告げた。
しかし、老人はまだ物足りないのだろうか、呟く。
「しかしなぁ、ミルバ様の娘が、、あんな仕打ちを受けていただなんて」
先程とは打って変わった優しい、それでいて哀しみを感じさせる口調だ。
「だからこそ我々が」
それに反論しようとした栗色の髪の青年だったが、先の議論を繰り返したく無いのだろうか、老人は言葉を遮る。
「わかっておる、わかっておるとも、国を想うのは恐ろしく難しい、愛する者を守るよりもずっとな、なにせ、国のためとあらば、その愛する者さえ切り捨てる覚悟がいるのだから」
悲壮感に満ちた老人の言葉に、栗色の髪の青年は何も返せなかった。
場所は打って変わって砂漠の地。
赤毛の男が歩いている。
しかし、その足取りは恐ろしく危うい。
最早いつ倒れてもおかしくはないだろう、その男がふと呟く。
「水が欲しいなぁ」
と
そんなものは無いことは分かっていたが、そう言わずにはいられなかった。
彼の名はニルフェルト・ニルムンディア
古代ニルムンディア神聖皇国の皇家の末裔である、その血はもはや途絶えようとしていた。
しかし、
「水が欲しいのね、あげるわよいくらでも、
そのかわり私の頼みを聞いて欲しいの」
ここは砂漠のど真ん中、そんな所にいるはずも無い、妙齢の女性の声がしたのだ、それは彼からしてみればまるで女神の声であった。
「あぁ、神の声が聞こえるなんて、俺ももうお終いだなぁ」
ふと空を見上げようとする、と。
そこにあったのは毎日みてきた憎々しいほどの青空ではなく、伝説と名高いフェンリルの姿であった。
「あ、あぁ、、、」
声も出ない、しかし必死に彼の脳は先ほどの言葉を思い出す。
「た、助けてくれるのでしょうか」
フェンリルに縋ろうとするが、そんな力は残っていない、前傾姿勢のまま地面に突っ伏す、それでいてなお男は顔を上げる。
そして彼にとっての"神"を見上げる。
「ええ、頼みを聞いてくれるのならね、やっと息子に番が出来そうなの、手伝ってくれる?ニルヴ族の者」
彼は祈りを捧げた、自らを救った神に、これまで先祖が祈りを捧げた偽物の神ではない。
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そう、この方こそ、神
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