モンスターセイバーズ

短髪

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38話~47話 セイバーズ全国大会編 〈上〉

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38話/久しぶりの新学期・・だが?

4月、桜舞い散る並木道の中で俺たちは来るべきクラス替えに胸を弾ませていた。
市原:「さぁて何組になるかな?」
竜牙:「聞いた話だと、また転校生が来るらしいぞ。」
市原:「光ヶ丘は本当に来る者拒まずだな、やっぱ金の力は偉大だわ。」
竜牙:「うおっ!・・すげェ人だかりだな。」
市原:「身長差を生かして覗き込むしかねぇな、こりゃ。」
夏海:「あっ・・!」
市原:「お~木嶋!」
竜牙:「!おっつ・・。」
夏海:「お、おはよう・・。」
竜牙:「あ、ああ。」
夏海:「お、同じクラスにまたなれるといいわね!」
竜牙:「そ、そうだな!」
市原:「ど、どした?なんかぎこちなくないか?」
竜牙:「え?!そ、そんなことないヨ?」
顔を背けると、桜がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
桜:「先輩~!」
竜牙:「お、おお!桜。」
桜:「新しいクラスの確認ってもうしちゃいました?」
竜牙:「今見ようとしていたところだよ。」
桜:「じゃあ一緒に行きましょうよ!」
竜牙たち一向は人だかりの前に進むが・・。」
市原:「!あれ、橘じゃん。早ぇな、どうだった?」
橘:「・・・グスッ。」
市原:「・・・えっ・・泣いてる?」
3-1 市原勇太郎
3-2 花音麗華
3-2 銀河スペード
3-5 木嶋夏海
3-5 剣崎竜牙
3-5 桜優香
3-3 橘一
優香:「やったぁっ!夏海や先輩と同じクラスだ!!」
夏海:「よろしく、優香!」
優香:「3年目にしてやっと同じクラスになれたよぉ~。」
竜牙:(!スペードの名前が入ってる・・転校生ってあいつの事だったのか。)
橘:「高校生活最後の学年なのに・・なのにぃっ!!なんで木嶋さんと違うクラスに行かぬばならんのだ・・っ!!」
竜牙:「け、血涙を流してやがる・・。」
市原:「あ~クラス離れちゃったな、竜牙。」
竜牙:「ま、1年、2年と同じクラスだったんだ、しゃーねぇよ。」
橘:「剣崎ィ~俺とォ~クラスチェンジィ~!」
竜牙:「んな権限はねぇよ、席替えじゃねぇんだぞ?」
桜:「まぁ夏海的にはほっとしたんじゃない?橘くんが離れて。」
夏海:「う、うん・・。」
桜:「あれ?なになに嫌だったの?!」
橘:「!」
夏海:「あ、いや・・あのストーカーが視界に入らなくなるのはこの上なく最高なんだけど。」
橘:「?!」
ガクッ・・。
市原:「お前には色々と前科があるからな、俺は何もフォローできねぇわ。」
桜:「けど・・どうしたん?」
夏海:(ちょぉぉっと!まさか3学年でも竜と同じクラスになるなんて、完全に誤算だったわ。しかも優香付属?!この子、ただでさえ勘が鋭いのにぃ・・。落ち着くのよ夏海、そう!ポーカーフェィィィス・・そう・・ポーカーフェィィス~。)
桜:「・・・。」
(この慌てよう、何かあったんやね夏海。顔に出とるばい、分かりやすかねぇ~。)
スペード:「よう剣崎。」
竜牙:「あ、スペード!お前光ヶ丘に来るんなら言ってくれよ、びっくりしただろ。」
スペード:「悪りぃ、悪りぃ・・。んで俺はどこのクラスなんだ?」
(ん?)
竜牙:「どうした?」
スペード:「おいおい・・あいつと同じクラスかよ。」
花音:「さてと、私の新しいクラスは・・ん?」
夏海:「麗華!」
桜:「麗華にしては遅くない?」
ガシッ。
花音は桜の頬を引っ張る。
花音:「してはとはなんだ?毎日毎日私が朝早く通学しているのはお前のせいだろ。この仕事放置魔が!
始業式の日は生徒会業務を行えないんだよ、先生方が書類整理をする関係でな。これが本来の登校時間だっつの!」
桜:「い、いだいよぉ・・な、なちゅみぃ・・。」
夏海:「はぁ~あなたが悪いんでしょ。」
花音:「まったく・・んで、私のクラスは・・え・・。」
スペード:「久しぶりだな、花音。」
花音:「なんであんたの名前があんのよ。西峰高校は真逆なんですけど?」
スペード:「んなこと分かってんだよ、俺の服を見ろ。今月から正式に光ヶ丘学院の生徒だっつ~の。」
花音:「どういうつもり?西峰高校からでも充分東大は狙えるでしょ。」
スペード:「色々とあんだよ。」
夏海:「ね、ねぇ?スペードと麗華って知り合いなの。」
花音:「!夏海の方こそこのアホォと知り合いだったのね。コイツとは幼い頃からの付き合いよ。」
スペード:「おい、誰がアホォだ。」
桜:「つまり!・・幼馴な・・じぃみィィ・・っ!」
花音は桜の頬を引っ張る。
花音:「絶対食いつくと思ったわ、目をキラキラさせんな。」
桜:「い、いだいよぉ・・な、なちゅみぃ・・。」
夏海:「・・なにやってんのよ。」
スペード:「まさか花音と同じクラスになるとはな、こりゃあ最悪の学園生活になりそうだ。」
花音:「おい!ちょっとそこに直れ、私と同じクラスになったらなんでそうなるんだ?え?」
桜:「ほ、本当に幼馴染みなの?敵意向き出しじゃん。」
夏海:「お、同じクラスにならなくてよかったわ。」
そして・・。
先生:「いきなりだけど、反省テストを始めるわよ。」
クラス一同:「「ohゥゥゥゥッ~・・・。」」
キーンコーンカーンコーン。
竜牙:「お、終わった・・・。」
桜:「やっぱこの学院レベル高いわ・・。」
夏海:「言うほど難しくなかったじゃない。」
竜牙:「お前の次元で話を進めるなよ~。」
夏海:「竜も優香も三年生になったんだから、そろそろ本腰入れて勉強していなかないと!進学にしろ、就職にしろ、このままじゃ進路が狭まっていくわよ?」
竜牙・桜:「「り、りょうかい・・。」」
優秀な生徒会長の言葉が2人に突き刺さった。
そして放課後の剣道部の練習を終えた竜牙と速水・・。
速水:「はぁ~。」
竜牙:「なんだよ速水、悩み事か?」
速水:「あのクラスで一年やっていけるのか不安で・・。」
クラス発表時。
椎名:「やった!同じクラスだね、智也くんっ!!」
速水:「し、椎名さん!へ、変な誤解を招いちゃいますって!!」
椎名:「誤解?」
速水:「いや、だ、だからその・・。ぼ、僕に抱き着いてジャンプするのは目立つし・・その・・。」
椎名:「もうっ!いつになったら春香って呼んでくれるの?」
速水:「誤解の上からさらに誤解を与えるような台詞ですよっ、それ!!だ、だから・・僕らはそういう関係じゃ・・。」
椎名:「智也くんは私の事、嫌い?」
速水:「そ、そういうわけじゃ・・。」
椎名:「じゃあ・・「と、とにかく!い、いっぱいいっぱいなんです!」」
周囲の視線が余計に速水と椎名に集まる。
椎名:「もう~けちぃ・・。」
男:「ちっ!リア充が・・。」
男:「死ねよ、僕ッ子が。」
速水:「な、なんで僕にこう冷たい視線や舌打ちが・・。」
(あの時、神谷さんに襲われていた部長の気持ちが今ならすごく分かります・・。)

竜牙:「お、お前・・モテるな・・。」
速水:「部長がそれ言います?」
竜牙:「あ、いや・・その・・ごめん。」
(だ、だよな・・夏海のことどうすれば・・。)
速水:「?」
竜牙:「あ、あ~そういや、まだお前に礼を言ってなかったな。」
速水:「僕、何かしました?」
竜牙:「ハヤブサランニングストームだよ。あの技がなかったらフォルテのスピードについていく事すらできなかった。お前が俺に修行をつけてくれたおかげだ、本当にありがとう。」
速水:「あはは、僕は何もしていません。練習して技を身につけたのは部長自身で・・。」
部員:「!剣崎部長っ。」
竜牙:「お前・・どうしたんだ?」
部員:「大変なんです!変な怪物が剣道部の前に現れて・・。」
速水:「部長、まさか!」
竜牙:「恐れていた事態が・・とにかく急ぐぞ!」
タッタッタ!
竜牙:「!モンスターっ・・。」
速水:「僕が部員たちを避難させます!」
速水は駆け出す!!
竜牙:「わかった!こいつの相手は俺が引き付ける!!」
モンスター:「ニャァア・・。」
竜牙:「このモンスター・・ネコ型か。」
(そ~いや今日は金曜日だっけか・・って今はそんなことどうでもいい!)
シュッ!
ネコ型のモンスターは肉球から生えてる爪で竜牙に攻撃を仕掛けてくる!
竜牙:「うおっ!こいつ、見かけどおり素早いな・・。」
モンスター:「ニャァア!」
竜牙:「けど、動きが単調だ。ハヤブサランニングストーム!」
シュッ!シュッ!!
竜牙はネコ型モンスターの攻撃を回避し、空中を二回蹴ってネコ型モンスターとの距離を上空から縮めていく。
竜牙:「この距離なら当てられる、ドラゴンソード!」
シュッ・・カキン!!
竜牙:「なっ?!」
ネコ型モンスターはドラゴンソードを2つの尻尾を使って挟み、動きを止めた!
竜牙:「白刃取りみてェな使い方しやがる、ドラゴンソードの強度で立ち切れないなんてな・・。」
モンスター:「ニャァア!」
バシィッ!
竜牙:「うおっ!野郎っ・・!!」
吹き飛ばされた竜牙はドラゴンソードを鞘に戻し、ドラグアーマーのバーストモードを起動させ、迂回する!
竜牙:「このまま速度を加速させる、ハヤブサランニングストームッ!」
シュゥウッッ!
モンスター:「?!」
瞬間、モンスターと竜牙の距離が一気に縮む!
竜牙:「Ⅹ技・ギャラクシーブレード!」
ズバババッ!
モンスター:「ニャアアアアアッ!!」
竜牙の一太刀がネコ型モンスターを一刀両断した!
竜牙:「ふぅ・・。」
速水:「部長!部員の避難、無事に終わりました。」
竜牙:「おう速水!こっちも終わった、」
速水:「何を言ってるんですか、こっちにもいるんです!」
竜牙:「?!なんだって・・。」
速水:「上を!」
速水が指を差すと、巨大なモンスターが動いているのが見える・・。
竜牙:「んだよ・・あれ・・。」
速水:「動きは相当鈍いみたいですが、大きさは光ヶ丘の校舎と変わらないかと。」
竜牙:「おいおい、あんなのが学院に乗り込んで来たらひとたまりもないぞ。」
ハンター:「剣崎くん!」
竜牙:「ハンター!やべェのが現れたぞ、どうすりゃいい?」
ハンター:「その為に彼を連れてきた。」
スペード:「俺が行く。」
竜牙:「スペード?どうする気だよ。」
スペード:「俺には一定時間、自身と対象をワープさせる力がある。」
竜牙:「?!」
スペード:「フィールドワープ!」
シュッ!!
竜牙:「うおっ!ここは・・。」
ハンター:「富士山の近くみたいだね。」
竜牙:「まじかよ、こんな大がかりなワープができるのか。」
スペード:「スペードってやつの力を俺は使ってるだけだがな。とにかく、ここなら人目も気にしなくていいし、周囲への危害もねぇ!」
竜牙:「あのモンスターまで移動させるなんて、なんだよこのド〇え〇んの秘密道具みてェな力は!」
スペード:「俺が対象とみなした奴はワープ可能だ。体力の消耗が激しいのが難点だが、お前がメインで戦えばいいだけの話だ。俺がサポートをする!」
竜牙:「分かった!やってやる!!」
スペード:「超必殺技・アメイジングトルネード!」
スペードが巨大なモンスターの気をそらす!
竜牙:「本命はこっちだ、Ⅹ技・ギャラクシーブレード!」
シュッ・・カキン!!
竜牙:「ギャラクシーブレードを・・通さない?!!」
ハンター:「ギャラクシーブレードの強度で切れない鉄壁の皮膚・・となると。」
スペード:「剣崎!外から攻めてもそいつの頑丈な皮膚はすべての攻撃を弾くはずだ、狙いは・・。」
スペードはユニバースソードを放つ!
ズバババッ!
ユニバースソードの真空波がモンスターの口を無理矢理引き裂いていく!
モンスター:「ガガッガガガッ?!!」
竜牙:「!そういうことか、奥義・レジェンドラゴン!!」
レジェンドラゴンがモンスターの口の中へと入り、爆発する!!
シュゥツ・・ドカァァアアアアン!!
竜牙:「っ!!」
スペード:「やべェ!フィールドワープ!!」
スッ!

スペード:「ふぅ・・。」
ハンター:「間一髪だったね。」
竜牙:「た、助かった・・。」
スペード:「おまえ・・レジェンドラゴンの威力をもう少し落とせないのか、フォルテみたいな奴が相手ならともかくモンスターを相手にやりすぎだ。威力が強ければいいってもんでもないだろ。」
ハンター:「まだ力の制御ができてないんだね。さっきの爆発は、レジェンドラゴンのフルパワーが巨大なモンスターの耐久度を上回り、膨張してしまった結果だ。」
竜牙:「すまねぇ。扱いきれてないのは分かっていたけど、あの巨大なモンスターに物理攻撃は効かない。中から攻撃するにはイナズマドラゴンよりもレジェンドラゴンで仕留めた方が確実だと判断したんだ。そのせいで二人を巻き込んぢまった、ごめん。」
スペード:「いや、メインで戦うようお願いしたのは俺だ。気にするな、」
トン。
スペードは竜牙の肩を軽く叩くと立ち上がる。
竜牙:「行くのか?」
スペード:「ああ、家に帰って反省テストの自己採点をしねェと。」
竜牙:「ま、真面目だな・・。」
ハンター:「そんな君にうってつけの話があるんだけど。」
竜牙:「なんだよ、うってつけの話って。」
ハンター:「この春、全国のセイバーズが集うセイバーズ全国大会が開催されることになったんだ。」
竜牙:「セイバーズの全国大会?」
ハンター:「そう!」
竜牙:「んだよそれ・・ってかモンスターセイバーズって全国各地にいるのか?」
ハンター:「これから迫りくる脅威に備えて君らが人獣と戦っている間、全国各地でモンスターセイバーズに選ばれた者が数十名いる。まだ数は少ないが、そのセイバーズたちを競わせ、参加者全員の戦闘力の向上を測ることが今大会の目的ってわけさ。まさに!レジェンドラゴンの力をコントロールするためにはうってつけの場だと思わないかい?」
竜牙:「そりゃあ願ってもない話だけど・・この時期は、部活も勉強も追い込みをかけていかないといけねェってのに。」
ハンター:「優勝賞金は1億5千万だそうだ。」
竜牙:「は?!」
ハンター:「だ・か・ら、優勝賞金は1億5千万だそうだ。」
竜牙:「ま、まじか・・。」
ハンター:「これでもまだ躊躇ためらうかい?少年!」
竜牙:「ま、まぁ・・悪くない話だよな。」
ハンター:(お、恐るべしお金の力・・世の中やっぱりお金だねぇ~。)
竜牙:「んで、その大会っていうのはどこであるんだ?」
ハンター:「エントリーした参加者には招待状と大会が行われる会場までのチケットが郵送される。詳しい詳細事項については、追って連絡をするよ。エントリーの方は僕が済ませてくるから安心して!」
竜牙:「なぁ、フォルテが原因なのか?モンスターが再び動き出した事と、全国各地でモンスターセイバーズになった人間たちの戦闘力の向上ってのが唐突過ぎる・・偶然とは思えない。」
ハンター:「いずれ話すべき時が来る。すまないね・・今の段階では不明確な部分が多い、まだ僕の口からは何も話せない。」
竜牙:「確証のない情報をむやみやたらと広めれば混乱を招くってか?ま、いいんだけどさ・・。」
ハンター:「話が早くて助かるよ、それじゃ僕はこれで。」
速水:「部長!探しましたよ。」
竜牙:「!悪りぃ、探してたのか。」
速水:「あの巨大なモンスターが消えたと思ったら、部長たちの姿もなくなっててぞっとしたんです。怪我は・・ないみたいですね。」
竜牙:「心配かけたな、とりあえずあのモンスターは倒したよ。一通りモンスターは一掃したははずだ。けど、今回の騒動で部員たちはパニックになっているはずだ。どうにか誤魔化さねぇと・・。」
速水:「そうですね、それにしても今になってモンスターがまた現れるなんて・・。」
竜牙:「・・・迫りくる脅威・・か。」
椎名:「あ、いた!速水くん!!」
速水:「げ・・椎名さん。」
竜牙:「お前のコレが呼んでいるぞ、速水?」
速水:「そういう関係じゃないんですって!」
生徒会室。
夏海:「わざわざ生徒会室まで来て何かと思えば・・。」
ハンター:「ぜひ参加してほしいんだけど。」
夏海:「だから、ここ生徒会室ですよ?新学年が始まった以上、新しい生徒会の結成に向けて今は忙しい時期なんです。優香はともかく、麗華はモンスターの存在すら知らないのにここでこんな話は困るわ。」
ハンター:「あ・・はは・・。」
夏海:「悪いけど、私は今回・・「剣崎くんはエントリーするみたいだよ。」」
夏海:「?!」
ハンター:「おや?様子が変わったね。」
夏海:「竜が?」
ハンター:「本当だよ、彼はセイバーズの全国大会に参加する。」
夏海:「っとに、数時間前に勉強しないとまずいわよって言ったばかりなのにあいつは~。」
ハンター:「責めないであげてくれ、なんせ優勝賞金は1億5千万だからね~。」
夏海:「?!」
ハンター:「あれ、なんだいその反応?社長令嬢の君から見ても相当な金額なのかい?」
夏海:「あ、当たり前でしょ!大金を出してまでセイバーズを集めて、運営は何が目的なわけ?」
ハンター:「参加者全員の戦闘力の向上を測ることが今大会の目的らしい。それに僕は何も大金の為に参加してほしいわけじゃないよ、これからの脅威に備えてこの機会に力をつけてほしいんだ。」
夏海:「ちょっと、まって!ああ、もう!!話についていけない、面会できる時間が足りなさすぎる・・。とにかく竜を放ってはおけない、私もその大会に参加させてもらうわ。今日のところは帰ってもらえる?」
ハンター:「本当に忙しいんだね、詳細事項はまた追って話をするよ。」
ガチャッ。
ハンターは生徒会室を跡にした。
夏海:「ハンター1人でそんな大がかりな大会を開けるはずがない。うすうす気になってはいたけど、これではっきりした。ハンターのバックには常に状況を把握し、冷静に次なる手を打っている何者かが潜んでいるはず。モンスターセイバーズ、私たちはそいつの駒でしかないのかもしれないわね・・。」

39話/モンスターセイバーズ全国大会予選スタート

時は過ぎ、セイバーズ全国大会・・その予選が今行われようとしていた!
司会:「お集まりの皆さん、これよりモンスターセイバーズ全国大会を開催いたします。初日で行われるのは予選です。この予選を見事勝ち上がった12名のみが本選へとコマを進めることができます。」
竜牙:「12名か・・厳しい戦いになりそうだな。」
ハンター:「そうだね、大会参加者は全員で21名だ。この時点で9名が脱落するという結論に至るからね。」
竜牙:「そ~いや夏海やスペードがまだ来てないな。」
速水:「遅くなりました!」
ハンター:「お、来たね。速水くん!」
竜牙:「え?!なんで速水がここに・・。」
ハンター:「速水くんもセイバーズになったんだよ。」
速水:「実は昨日・・。」
昨日の放課後。
椎名:「ねぇ智也君!」
速水:「し、椎名さん。ホント、あんまりくっつかれるのは・・。」
グスッ・・。
速水:「?!」
椎名:「どうして・・そんなこと言うの?」
速水:「な、泣かないでくださ・・え?」
椎名の後ろで影がうごめく・・。
椎名:「どうしたの?」
速水:「椎名さん!」
速水は椎名を押し出す!
モンスター:「グルルアア!」
ズバァッ!
速水:「あ”あっ!!」
椎名:「は、速水くんっ?!!」
速水:「なんでっ・・モンスターが・・。落ち着け、僕!椎名さん。とりあえず、部長に連絡をす・・!」
速水が顔を上げるとモンスターが椎名を取り押さえていた。
椎名:「ヒィッ・・!」
速水:「ま、まずい・・。部長を呼んでいる場合じゃないぞこれ・・!」
(僕が・・セイバーズだったら!ちくしょう・・どうすれば・・。)
?:「これを使え。」
速水:「!えっ・・。」
速水は見知らぬ男から剣を渡される。
速水:「これ・・!」
?:「モタモタしている場合じゃないだろ、早くいけ!」
速水:「あ、はいっ!」
速水は剣を持ち直し、モンスターに突っ込んでいく・・その時!
ピカァン・・。
速水:「うわっ?!なんだ!!」
椎名:「眩しっ・・!」
モンスター:「グゥゥッ!」
速水が手にしていた剣が光り輝く!
?:「それはハイゼルセイバー、人のイメージを力に変える剣だ。」
速水:「イメージを力に・・。」
(だったら・・部長の動きをイメージすれば・・!)
モンスター:「グルルアア!」
速水:「ハヤブサランニング!」
スッ!!
速水は低姿勢のまま、高速移動でモンスターの背後に回り込む!!
モンスター:「?!」
速水に気を取られていたモンスターは椎名から手を放す!
速水:「!チャンスだ、ハイゼルセイバーッ!!」
ブスッ!!
光り輝く刀身がモンスターを貫通した!!
モンスター:「グァ・・ッ・・。」
ドサッ!
速水:「椎名さん!椎名さん!」
?:「気を失ってるだけだ、心配はない。」
ハンター:「大丈夫かい、速水く・・ってジー?!」
ジー:「ハンターか、久しいな。」
速水:「え、知り合いなんですか?」
ハンター:「彼の名はジー・ニコラス。かつての戦友だ。」
速水:「ハンターの戦友・・あ、これありがとうございます!」
ジー:「大した奴だなお前、モンスター相手に怯むことなく俺の剣を奮いやがった。」
速水:「あ、いや・・。モンスターとは以前から面識があって・・。」
ハンター:「驚いた、じゃあこのモンスターは速水くんが?」
ジー:「ああ。俺の剣で躊躇なく、突き刺しやがった。コイツは化けるぞ。」
ハンター:「モンスターの気配を辿ってきたけど、それは凄いな。」
速水:「僕にも何が何だか・・とにかく椎名さんを助け出すのにいっぱいいっぱいで・・。」
ジー:「決めた、その剣はお前に託そう。」
速水:「え?!」
ハンター:「お、おい・・。」
ジー:「俺の力を受け継ぐに値する人間をちょうど探しに日本に来ていたところだ。来るべき全国大会に備えてな。」
ハンター:「!」
速水:「いやその・・受け取れないですよ・・。」
ジー:「ここのところ、ここ福岡ではモンスターが頻繁に出現している。戦う術を持っていれば、何かと役立つはずだ。つまるところ、言いたいことは一つだ。モンスターセイバーズになってみないか?」
速水:「!」
ジー:「今日本では全国各地でモンスターの出現が確認されている。今いるセイバーズの力だけでは討伐に追いついていないのが現状だ。聞いた限りだと君はすでにモンスターと面識があるんだろう?ならば、モンスターを野放しにすることがいかに危険か、その身をもって知っているはずだ。力を貸してほしい!」
速水:「僕がセイバーズに・・!」
ハンター:「待ってくれ、福岡にはもう3人のセイバーズがすでにいる。これ以上この県でセイバーズを増やす必要は・・。」
ジー:「他県でのセイバーズの育成には他のメンバーが動いている。実際、他県よりかモンスターの出現数が圧倒的に多い福岡にセイバーズが偏っても何も問題はないはずだ。大事なのは成るべき器をそなえているかどうかだ。俺はこの男にその素質を感じたんだ。」
ハンター:「!」
速水:「・・!」
ジー:「お前と同じだよハンター。骨盤に備え付けていたドラゴンソードがないじゃないか、もう後継者を見つけたんだろ?」
ハンター:「それは・・。」
ジー:「少年、名は?」
速水:「は、速水智也です。」
ジー:「速水、俺の力をお前に託したい。」
速水:「ジーさん・・。」
速水はハイゼルセイバーを鞘に戻し握りしめる。
速水:「やります、やらせてください!」
ハンター:「い、いいのかい?速水くん・・。」
速水:「僕、部長が強敵と戦う為に一生懸命修行していたのをずっと間近で見てきました。そんな部長を見てきて、僕に何かできることはないか?ってずっと考えていたんです。だから!部長に足りない機動力を補う為にハヤブサランニングの特訓メニューを考えたんです。モンスターに襲われていた部員たちを迅速に避難させるのだって、考えるよりも先に行動を起こしました。すべては、僕らの為に戦っている部長の力になる為、僕は僕なりにできることを一生懸命やってきました。そんな僕にジーさんは戦う力を与えると言って下さっているんです、断る理由なんてないですよ。僕は部長の足りないところを補う為にセイバーズになります!」
ジー:「右腕になるってか?熱いねぇ~。」
ハンター:「これは頼もしい仲間がまた増えた!よろしく、速水くん!!」
ジー:「俺はあのお嬢さんを保健室まで連れて行こう。まだここからなら高校が近いだろ?」
速水:「あ、僕案内します!」
ハンター:「速水くん、セイバーズになったばかりで申し上げにくいんだけど。」
速水:「?」
ハンター:「近いうちにセイバーズの全国大会が開かれるんだ。出てみないかい?」
速水:「ぜ、全国大会?!冗談ですよね、だって僕はまだ成り立てのド素人で・・。」
ハンター:「だからこそだよ!この全国大会にはまだ経験の浅いセイバーズたちが数多く参加する。対人戦を通して、一気に経験を積めるいい機会だと思わないかい?」

竜牙:「そりゃあ経験は積めるだろうけど、セイバーズになるってことは常に危険が伴うんだぞ?」
速水:「だからこそ強くなるんです。じっとしていたって事態は好転しませんよ、人に危害を加えるモンスターが増え始めてくるならば自衛の術は身につけておくべきだと僕は判断しました。」
竜牙:「・・ったよ、けど無茶はするなよ。」
速水:「!・・はいっ!!」
夏海:「話は聞かせてもらったわ。」
スペード:「よろしくな、速水。」
竜牙:「夏海、スペード!」
夏海:「生徒会業務の疲労で寝坊してしまったみたい、遅れてごめんね。」
スペード:「俺は電車の中で寝過ごしちまって・・すまん。」
竜牙:「緊張感なさすぎだろ・・。」
速水:「まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いします先輩方!」
司会:「まずは参加者の方々の名前を電光掲示板に表示致しますので、ご自分の名前がエントリーされているか、お名前の登録ミスがないか等、今一度ご確認の方をお願い致します。」
電光掲示板表示内。
足速師覇王あしばやしはおう 瓜生翔太うりゅうしょうた 炎斬正一えんざんしょういち
鏡光かがみひかる 木嶋夏海きじまなつみ 銀河ぎんがスペード
剣崎竜牙けんざきりゅうが 涼野円月すずのえんげつ 秋矢滉騎しゅうやひろき
白鳥百合花しらとりゆりか 関目陸せきめりく 錦真二にしきしんじ
速水智也はやみともや 白虎拳王びゃっこけんおう 彪呀光一ひゅうがこういち
本田雷攻ほんだらいこう 松田琴音まつだことね 宮本鷹斗みやもとたかと
ミラ=シスカ 睦月戒むつきかい 渡浩一わたりひろかず

速水:「全国という面で見ればそれほど数は多くないですが・・。」
スペード:「こうしてみると気が引き締まるな。」
竜牙:「覇王も参加してんのかよ、当たりたくねぇ~。」
ハンター:「・・・!」
(おいおいまじか・・なぜ彼の名前が入ってるんだ・・。)
竜牙:「ハンター?おい、ハンター!どうした?」
ハンター:「・・・いや・・。」
司会:「問題点、ご不明な点などがございましたら後ほどお伺いいたします。10分休憩の際に私の元までお尋ねください。続いて、予選についての説明を行います。」
ハンター:「みんな、僕はこの辺りで席を外させてもらうよ。僕は大会参加者じゃないからね、これ以上ここで説明を受けるわけにはいかない。」
竜牙:「ああ、ありがとな。」
ハンター:「うん、みんな・・頑張れ!」
夏海:「ありがとう。」
スペード:「おう!」
速水:「はい!」
ハンター:(一体どういうことなんだ。危険性や実力差という面で考えれば僕らキングダムセイバーズよりも彼の方がよっぽど危ない。なぜこの大会に参加している・・?)
司会:「予選で行う振り分けシステム、その名もラビリンスウォール。これから皆様には巨大な迷路に潜っていただき、ポイントを競い合ってもらいます。」
速水:「ポイントの争奪戦?ゴールを目指すわけじゃないんですね。」
司会:「後ろの電光掲示板にルールをざっとまとめましたので、皆様には一通り目を通してもらいます。あ~山本君、次のページに切り替えて・・そうそう。」
ピッ!

・ポイントは運営側、プレイヤーが共に計算しやすいよう5ポイント単位で換算していきます。
・プレイヤーはそれぞれランダムに振り分けられたスタート地点から迷路の中に入ってもらいます。
・プレイヤーにはポイントが表示されるリストバンドをつけてもらいます。
・行き止まりはありますが、ゴールはございません。
・各プレイヤーは10Pずつ持ってゲームスタートを迎えます。
・プレイヤー1人撃破につき、+10P加算されます。
・プレイヤーによって戦闘力や知識、経験などの差があります。大会運営側はプレイヤーの動きなどから
優秀なプレイヤーにボーナスポイントというのを設けます。このボーナスポイントは自身が撃破された際に撃破した相手がもらえるボーナスポイントです。また、このボーナスポイントは随時更新されます。
・迷路内の壁を破壊すると破壊したプレイヤーは -5P差し引かれます。
・その場に居合わせたもの、又はチームを組んでいるものと協力してプレイヤーを倒した場合、そのポイントは山分けとなります。ポイントが綺麗に振り分けられない場合、その場で活躍した人に多くポイントが振り分けられます。
・相手、味方の技を利用すると撃破に関わらず+5P追加されます。
・トラップに引っかかるとー5P減点されます。
・迷路内の仕掛けを利用すると+15P追加されます。
・予選中のチームの裏切り行為はー10Pですが、やってはいけないわけではありません。
・迷路内には一般人役の運営スタッフが紛れています。もし、彼らに攻撃又は攻撃が当たったりするとー20Pの大幅減点になります。
・リストバンドには救助リングというものが備わっております。1プレイヤーに3つ備わっており、このリングをつけた者は、その人を救助したと見なされ、救助された運営スタッフの評価次第で獲得できるポイントが変わってきます。
・ノーダメージで相手プレイヤーを撃破した場合、獲得後のポイント×2倍が追加されます。
・落ちている宝箱には、この迷路内でのみ使用できるアイテムやメモ紙にポイントが記載された紙が入っていたりします。その紙を拾ったプレイヤーにはそのポイントが自動的に加算されます。
・Pが0になっても失格にはなりません、またそこからマイナスにもなりませんので最後まで頑張ってください。
・リタイアOKです。宣言したプレイヤーは脱落者の中に自動的に加えられ、所持ポイントをすべて失います。リタイアしたプレイヤーのリストバンドはRETIREが表示され、赤くなります。
・一度撃破した相手を続けて狙い撃ちすることはできません。また、撃破された人は5分間リストバンドが赤くなり、その間はどれだけ攻撃されてもポイントは失いません。
・2人以上まとめて落とした方は+25Pです。3人以上落としてもこの数値は変わりません。
・制限時間は60分です。21名のうち9名が脱落した時点で予選終了、また制限時間内に脱落者が規定の数値を満たさなかった場合は、ポイントが低いものから順に切り捨てられます。

スペード:「キメ細かくルールが決められているな。」
夏海:「よく考えられているわ。」
速水:「?」
夏海:「セイバーズとして必要なものから順に高いポイントが振り分けられているのよ。人を助ける事、人を避難させる事、一般人や建物になるべく危害を加えない事、自分の身を守る事、連携、状況分析、対応力、冷静さ・・すべてセイバーズに必要なことを問われているんじゃないかしら?」
スペード:「おまけに強ければ強い奴ほどボーナスポイントを狙われて方々ほうほうから狙われやすい、強い敵と遭遇した場合、複数名の人間から狙われた場合の動きも審査する気だな。」
速水:「ぼ、僕・・素人なのに大丈夫なんでしょうか・・。」
竜牙:「へっ・・燃えてきたぜ。」
司会:「では、これより10分間の休憩を挟みます。」
炎斬:「よう。」
竜牙:「?なんだ、お前。」
炎斬:「あんたが剣崎鳥牙の弟か?」
竜牙:「また兄貴の名前かよ。そうだけど・・何か用か?」
炎斬:「足下を救われないように気を付けるんだな。俺は炎斬正一、あんたと同じく剣を武器に戦うセイバーズだ。まぁ予選で会うことがあれば、お手柔らかに頼むよ。」
速水:「行っちゃいましたね・・。」
竜牙:「なんなんだ、あいつ・・。」
司会:「時間になりましたので皆様、各々お好きな扉の前にお立ちください。それでは予選、スタートです!」
竜牙:「これがラビリンスウォール・・。」
炎斬:「開始早々ご対面か。」
竜牙:「!お前っ・・。」
炎斬:「まぁ待てよ剣崎、予選は始まったばかりだ・・ここはひとつ、共闘しないか?」
竜牙:「共闘?」
炎斬:「ああ。なんせ俺は新米セイバーズ、戦闘の経験値で言えばお前の方が上だ。お前としても1人で進むよりか2人で進んだ方が動きやすいだろ。」
竜牙:(1人で常に周囲を警戒しながら進むよりかは確かに効率がいい・・けど・・。)

・予選中のチームの裏切り行為はー10Pですが、やってはいけないわけではありません。

竜牙:(夏海か速水かスペードか・・気心が知れている3人ならともかくこいつはまだ信頼できねぇ。)
鏡:「おや?」
スタタタッ!
炎斬:「うおっ?!」
炎斬はギリギリで鏡の攻撃を交わす!
鏡:「奇襲は失敗か・・。」
炎斬:「あぶねぇ、あぶねぇ・・。」
竜牙:「くそっ、開始早々嫌な流れだな・・。」
鏡:「三つ巴か・・まぁこれはこれで。」
鏡は指を指鉄砲の形に変えて、炎斬の方向に向ける。
鏡:「ミラーショット!」
バン!
鏡は光り輝く光線を指先から放つ!
炎斬:「フレイムソード!」
バァァアン!
鏡:「にィィッ・・。」
炎斬が炎の剣で光線を両断しようとするタイミングでミラーショットは不規則に軌道を変えた!
炎斬:「なにっ?!」
鏡:「俺のミラーショットは一定時間内なら俺の意志で軌道を変えられる。」
竜牙:「指先の動きで軌道を・・!」
炎斬:「こいつは厄介だ。」
竜牙:「ハヤブサランニングストーム!」
炎斬:「!」
鏡:「俺との間合いを詰めにきたか、剣崎。」
竜牙:(炎斬に気を取られている今なら!)
鏡:「サバイバルカッティング!!」
ズバババッ!!
竜牙:「あがぁぁっ!!」
(なっ・・?!こいつ・・腕がカッターの芯みてぇに変形した・・。)
鏡:「近距離攻撃への対策だって怠っていない、その読みは浅はかだったな剣崎。」
竜牙:「どうなってやがる・・人間じゃねぇのか?!」
鏡:「警戒すべき剣崎は致命傷を負い、炎斬はミラーショットに翻弄され攻めきれずにいる。これは幸先のいいスタートだなぁおい。」
ビリリリリッ!!
鏡:「うがぁぁぁああっ?!」
竜牙:「そういう隙をみせるところを見る限りだと、お前もまだ新米セイバーズのようだな。」
鏡:「まさか・・剣からこんな攻撃ができる・・なんて・・。」
竜牙:「剣を使う相手だから近距離攻撃さえ気をつけていればいいは思い込みってやつだぜ?それに・・。」
赤外線のセンサーから飛び出てきた光が鏡を包囲する!
鏡:「なっ・・なんだ・・?!」
竜牙:「俺はお前と炎斬のやりとりを見ていたように見せかけて、この辺りに何が仕組まれているかっていうのをくまなく調べていたんだよ。そしたらお前の周囲にあったのさ、意識しねェと認知すらしづらい赤外線のセンサーがよ!」
鏡:「!」
竜牙:「赤外線のセンサーは左右対称の位置に取り付けられていた。つまり、電気信号を送りさえすれば発動するトラップだと俺は思ったわけさ。だからこそ、あんたがその位置から移動しねぇように、俺の方から攻撃を仕掛けて上手いことセンサーにあんたが収まるよう誘導してたってわけだ。」
鏡:「ちぃぃっ!ハメられたってか・・。」
竜牙:「そのセンサーがお前のミラーショットを通すかは分からんが、袋の鼠であることには違いねぇよ。さっきお前が放ったミラーショットはもう消えっちまったみたいだしな。」
鏡:「貴様、まさか・・さっきの攻撃を・・!」
竜牙:「幸先のいいスタートはこっちだな、イナズマドラゴンッ!!」
ズバッ!ビリリリリッ!!
鏡:「うがぁぁぁああっ!!」
♦ 剣崎竜牙 
所持ポイント 10P+迷路内の仕掛け利用 15P+撃破ポイント 10P=現在のポイント 35P
竜牙:「!ポイントが増えた。」
♦ 鏡光
所持ポイント 10P-トラップに引っかかる 5P=現在のポイント 5P
鏡:「くそがぁ・・・っ。」
炎斬:「やるじゃねぇか、さすがは剣崎竜牙。」
竜牙:「言っておくけど、俺はお前と組むつもりはない。」
炎斬:「つれねぇやつだな・・。」
竜牙:「・・なんで剣を鞘に戻したんだ?」
炎斬:「敵意のない意思表示ってやつさ。」
竜牙:「おいおい、ついてくる気か?」
炎斬:「俺がどう行動しようと俺の自由のはずだ。」
(こいつは他のプレイヤーから警戒されている。つまり、複数名で狙われるか、避けられるか。100パーとは言えねェが、こいつと行動を共にすれば、一網打尽も狙えるし、こいつをおとりに戦線を離脱することだってできる。他の奴らがこいつを避けるなら、それはそれで行動を起こしやすい。一緒に行動を起こすメリットの方がデカいのに、このチャンスを逃すかって話だ。)
竜牙:「ったく、なんなんだよ本当に。」

40話/予選の仕組みから見えてくる真の狙い

スペード:「おっ、宝箱だ。」
ガチャッ。
スペード:「おっ!20Pって書いてある、ラッキー!」
♦ 銀河スペード 
所持ポイント 10P+宝箱 20P=現在のポイント 30P
ミラ:「あ・・。」
スペード:「!」
(シスター姿の女性?いや、リストバンドを付けてるってことはこいつもセイバーズか!)
ミラ:「・・・。」
スペード:「遭遇しちまったか、なら・・。」
ミラ:「・・・・やめておいた方がいいですよ。」
スッ。
スペード:「!消えた・・。」
シュゥッ!!
バシッ!
スペード:「ぐはっ!」
ものすごい速度でとんできた矢がスペードの右腕をカスる!
スペード:(この矢・・まさかクロスボウか?!)

クロスボウ=矢を飛ばす武器の一種。銃のように構えて放つことができる強力な弓。
※ピクシブ百科事典より

ミラ:「私の力と距離をとって相手を狙い撃ちできるクロスボウは相性抜群です。身を引くならば今のうちですよ?」
スペード:「くそっ、声の聞こえ方から察するにそう遠くには行ってねぇはず・・。」
(そもそもどうやってあの一瞬に姿を暗ましやがった・・!)
ミラ:(私はセイバーズになってまだ半月のド素人、特攻をかける技がなかった私が、予選開始早々にこんなアイテムを拾えるなんて・・あぁ・・。私は神に恵まれていた、神に祈りを捧げぬば・・。)
シュゥッ!!
バシッ!
スペード:「ぐあっ!!・・くっ・・!」
(迷路内の狭い範囲でフィールドワープは使えねぇ、壁に激突しちまえば減点ものだ。けど、このままじゃ・・。)
ミラ:「これでトドメです、アーメン・・。」
スペード:「させるか!超必殺技・アメイジングトルネード!!」
ボォォォウウ!
ミラ:「!」
ミラは瞬時に交わす。
スペード:「!そこか。」
ミラ:「しまった!技が解けて・・。」
スペード:「チャンスだ!Ⅹ技・ユニバース「スパイキングネット!」」
シュルルル・・ガシッ!!
ミラ:「ぐあっ?!」
ミラは白い糸でぐるぐる巻きにされ、その場に転がった。
スペード:「!」
睦月:「悪いけど、彼女は僕がもらっちゃうよ。」
スペード:「てめぇ、横取りか・・。」
睦月:「これも一つの戦術でしょ。予選で受けたダメージは予選終了まで治癒できない、なら受けるダメージは最小限にしないと、この戦場を駆け巡る猛者たち相手に60分間、耐え抜けないよ?」
ミラ:「くっ・・神に抗う痴れ者か・・。」
睦月:「悪く思わないでね、お嬢さん。スパイキングフィニッシュ!」
ズバッ!!
♦ 睦月戒 
所持ポイント 10P+敵・味方の技を利用 5P+撃破ポイント 10P=現在のポイント 25P
ミラ:「っ・・頭が・・。」
睦月:「同じ相手を狙い撃ちすることはできないけど、君の体に毒を注入させてもらった。早くリタイアしないと生命にかかわるよ?」
ミラ:「!・・外道がっ・・。」
(私は・・教会のみんなの為に・・あのボロボロの教会をもう一度立て直すためにこの大会に参加したのに・・。こんな醜態を・・っ!)
スペード:「強制的にリタイアをさせるつもりかよ・・。」
睦月:「こうでもしないと一向に予選が終わらないでしょ。言っておくけど、次は君だよ?」
スペード:「コイツ・・!」
睦月:「あ!ミラちゃんだっけ・・一つ提案がある。あの銀河スペードを撃破するのに手を貸してくれたら解毒薬を差し上げてもいいけど・・どうする?」
ミラ:「え・・?!」
睦月:「君の力は正直、使える。訂正しよう・・まぁこの予選中、僕に力を貸す条件を飲めるならだけどね・・。」
ミラ:「さっきと条件が違う・・じゃない・・。」
睦月:「気が変わった。」
スペード:「解毒薬で賄賂かよっ・・本当にコイツセイバーズなのか!!」
ミラ:(くっ・・このまま引き下がれない。ここで男2人を敵に回すわけにもいかない・・今は・・。)
睦月:「僕は気が短いんだ、は・や・く♪」
ミラ:「これも一つの運命さだめか、どちらにせよ戦力不足は私も同じ・・いいわ。その条件を飲みます!」
睦月:「取引成立~。」
スペード:「・・・ハ八ッ・・やべぇ、姿を瞬時に消す女と攻撃を受ければ毒を注入される男を相手に・・この負傷した状態でどこまでやれるってんだ・・?!」
睦月はミラに絡みつけていた糸を外し、解毒薬のスプレーを傷口にかける。
睦月:「さァ・・形成逆転だ。銀河スペード、どうする?」
スペード:「くそっ、そんなの・・一択だろ・・。」
スッ・・・タッタッタ!!
ミラ:「!逃げた・・。」
睦月:「まぁそうなるよね、ミラちゃん、まだクロスボウの矢は残ってるかい?」
ミラ:「ええ・・。」
バシィッ!
シュゥッ!!
カキン!
ミラ:「!」
睦月:「!」
覇王:「ほう、あのスペードがここまで追い込まれるなんてな。」
スペード:「覇王?!」
覇王:「お前たちの相手は俺がしよう。」
睦月:「これは・・甘くないな・・。」
ミラ:「何なの・・あの人・・クロスボウの矢をピンポイントで弾くなんて・・!」
睦月:「足速師覇王・・あの剣崎鳥牙と同時期にセイバーズとなった実力のある猛者だ。」
ミラ:「け、剣崎鳥牙って誰なんですか?」
睦月:「!リストバンドに表示が・・。」
ミラ:「足速師覇王・・ボーナスポイント+30点?!」
睦月:「なるほど、コイツは強そうだ・・。」
スペード:「なんだかよく分かんねぇけど、この隙に逃げる!助かったぜ、覇王。」
覇王:「カイザーデルタブレイカー!」
睦月:「レンゲルバリア!」
カキン!!
覇王:「むっ・・やるじゃないか。」
(奴が背中から生やした6本の足のようなもの・・あれで自分を覆いガードをしたのか。そういえばあの女の子が消えた・・どこからくる?)
シュゥッ!!
覇王:「この矢・・ロイヤルディフェンス!」
カキン!
ミラ:「!盾を作り出した・・?!」
(嘘・・私の攻撃が届かない・・。)
覇王:「普通はな。俺がさっき矢を受け止めた時点で俺の動体視力を警戒し、矢を放つタイミングを見計らうはずだ。確かに速度も威力も申し分ないいい武器だ。だが・・道具の力に頼りすぎると、予期せぬ事態に陥った時に柔軟な対応ができなくなる。これからセイバーズとして戦っていくならば覚えておけ!」
ビクッ!
ミラ:「このひと・・つよい・・っ!」
覇王:「女の子の方はまだ戦いなれしていないルーキーか。お前はどうかな?」
(俺が全国大会にエントリーしたのは、当然腕を磨く為だが、それだけじゃない。お前たちルーキーセイバーズたちの壁となって立ち塞がる為でもある。少々手荒いが、お前らには強くなってもらわなきゃ困るんでな。)
睦月:「経験値が違う・・。」
覇王:「コイツはさっき拾ったアイテムだ。」
覇王は球体のようなものを投げつけるとそれが光り出す!
睦月:「うおっ?!閃光弾っ・・!」
覇王:「奥義・ロイヤルセイバー!」
睦月:「まって!ギブギブッ・・。あんた強ぇわ、降参だよ。」
覇王:「なに?」
睦月:「なぁなぁ、一緒に行動をしないか?俺の力は相手を拘束するのに長けている、悪くはない話だと思うんだけど?」
覇王:「フッ・・。」
覇王の口元が緩んだ瞬間、ものすごい速度で矢が飛んできた!
シュゥッ!!
ズバッ!!
覇王:「・・っ・・!」
飛んできた矢は覇王の背中に突き刺さった。
睦月:「油断したねぇ~。」
覇王:「くっ・・。」
睦月:「ミラちゃんには俺の毒針を放ってもらったんだ。これであなたの自由はどんどん利かなくなる。」
覇王:「・・・・。」
睦月:「へへへっ・・ボーナスポイントォ・・いただきま~す!」
睦月が足を踏み出そうとすると、跳びあがる!!
睦月:「うおっ?!」
覇王:「フッ・・。」
覇王は睦月が踏みつけた地面を踏み、大きく飛び上がる!
睦月:「なんだ・・どうなって・!」
覇王:「気づかなかったか?そこの地面だけ土の色が濃いだろ?コイツの正体は、さっき閃光弾を投げつけるときに確認済みだ、トランポリンだ。」
睦月:「と、トランポリン?!」
覇王は睦月の両腕を押さえつけ、そのまま地面に叩きつけた!
バシィッ!
睦月:「うぐっ!」
覇王:「お前の負けだ。」
睦月:「まさか・・あれが迷路内に仕掛けられたトラップだってのか?!」
(くそっ、迂闊だった・・完全に蚊帳の外だった・・!)
覇王:「常に周囲は警戒しておくべきだ。お前は誘い込まれていたんだよ、ここにな。」
睦月:「うぐっ・・けど!あんたは俺の毒で・・。」
覇王:「俺は常に厚みのプロテクターを体につけている、この程度の長さじゃ俺の背中まで貫通できん。」
睦月:「んだよ・・それ・・!」
覇王:「誘い込まれたお前はトランポリンを踏みつけ、上空に浮いたまま態勢を保てなくなったわけだ。俺の狙い通りに・・いや・・。」
シュゥッ!!
バシッ!
睦月:「ぐあっ!」
(んで・・この矢が・・!)
覇王:「あの子の狙い通りにな。」
♦ 睦月戒 
所持ポイント 25P-トラップに引っかかる 5P=現在のポイント 20P
♦ ミラ=シスカ 
所持ポイント 10P+敵・味方の技を利用 5P-チーム内裏切り 10P+撃破ポイント 10P=現在のポイント 15P
♦ 足速師覇王
所持ポイント 10P+迷路内の仕掛け利用 15P=現在のポイント 25P
ミラ:「言われた通りに覇王って人を狙い撃ちすれば、あなたに隙が生じる。私はずっとそれを狙ってた。上手くいけば両方撃破できるチャンスだったから・・まぁこの人が動けたのには驚いたけど。」
覇王:「この程度で仕留められるほどやわじゃない。」
睦月:「お、女ァ~・・。」
覇王:「この子がお前を撃破したから俺はお前を狙えない、命拾いしたな。」
睦月:「うぐっ!こっからだ!!」
(あれ・・力が・・!)
ドサッ!
ミラ:「覇王に討ったのは私の矢。あなたからもらった毒針は、端っからあなたを狙い撃ちするのに使うつもりだった。動かれると面倒だったし・・。」
覇王:「なるほど。よーするにお前に刺さっているのは、お前自身の毒針というわけだな。」
睦月:「お、おんなぁぁぁあ!!」
覇王:「!もういない・・逃げ足の早い子だ。」
(なるほど、経験値の差を機転と発想でカバーか。悪くはない・・!)
タッタッタッ!
ミラは迷路内を全速力で駆け抜ける!
ミラ:「とにかく今は逃げないと!私が裏切り行為に徹することも覇王は想定済みみたいだった。あの男は底が知れない、危険だわ。そもそも狙撃を主として戦う私にとって、私の存在を認知した相手と戦うのは命取り・・確実に他の参加者を狙った方が効率がいい!)

関目:「ぐあっ?!」
錦:「うがぁぁっ!!」
瓜生:「ヒャッヒャッヒャァ、貴様らの叫び声は最高のオードブルだ!」
速水:「なんだ・・あいつ・・。」
瓜生:「ハァ~、予選最高かよ。」
♦ 瓜生翔太
所持ポイント 10P+撃破ポイント 10P+撃破ポイント 10P+二人以上の撃破 25P=現在のポイント 55P
瓜生:「さてと、進むか・・ん?」
速水:「!」
(やばい・・目が合った?!)
瓜生:「君ィ、名前はなんて言うの?」
速水:「ぼ・・僕は・・。」
瓜生:「名前・・。」
速水:「ヒィッ!は、速水智也・・っ!!」
瓜生:「ビクビクしてて初々しいねぇ~実に弱そうだ。僕は瓜生翔太。」
速水:「あ、はは・・じゃあ僕はこれで「待ちなよ。」」
速水:「な・・なんでしょうか・・。」
瓜生:「どうして僕と戦わない?」
速水のリストバンドにポイントが表示される。
速水:「!ボーナスポイント+20?!」
瓜生:「見ての通りだよ、狙うメリットの方が高いのになぜ敵に背を向ける?」
速水:「え・・そ、それは・・。」
(あんたがキメていそうな顔して暴れているやべェ奴だからだよ!!)
瓜生:「ククク・・。まぁいいや。ここでバトらなくても充分にポイントは稼いだし、何より君をここでご賞味しちゃうのはなぁ・・じゅる・・。うん、実にもったいない。ぜひ勝ち上がってきてほしいものだ。」
ゾクッ・・。
速水:「ご、ご賞味って・・。」
瓜生:「本選で君を殺すのが楽しみで仕方がないよ。僕はね、人が絶望し泣き叫びながら堕ちていく姿を拝むのがだぁぁいすぅぅぅぅきなんだ。」
速水:「・・・んだよ・・この人・・。」
瓜生:「汚れを知らない、純真でピカピカの心をここで真っ黒に染めたくない。新品は万全を期して最高の舞台で堪能しないと・・ぐっふっふっ・・。あぁ・・興奮しすぎて毛細血管が張り裂けそうだ。」
ガクガクガク・・。
速水:「やべェ・・やべェよ・・。」
(怖えぇ・・も、モンスターセイバーズなんだよな。セイバーズうんぬんの前に人としてやべぇ奴だろこいつ・・。)
瓜生:「言っておくけど、僕は狙った獲物は逃がさないよ。相手が血まみれになるまでぐちゃぐちゃにするからねぇ~。首を洗って待っててね、は・や・み・くぅん?」
ガクガクガクッ・・!
速水:(や、やばい・・やばいよぉ・・!)
瓜生:「本当に反応が初心ウブだなぁ・・。うっかり手を出してしまいそうだ。」
速水:「わ・・わわるいけど・・そうきゃんたんに・・し・・しねぇぇない・・!」
ニヤリ・・。
瓜生:「ほう、言うじゃねぇか!なんならここで本番・・をやってもいいんだぜ?」
速水:「ひぃぃぃぃっ!!」」
瓜生:「冗談だよ、本選ではもっとゾクゾクさせてくれよぉ・・速水智也くぅん?」
スッ・・。
速水:「き・・消えた・・。」
ガタッ!
速水:「やばいだろ、この大会。ってかあんなのをセイバーズにしちゃ駄目だろ!」
夏海:「あら、速水くん。」
速水:「木嶋さん!」
夏海:「ど、どうしたの?そんなに震えて・・。」
速水:「ヤバい奴がいたんですよ、とんでもない変人が!!」
夏海:「お、落ち着いて!」
速水:「あ、あれ・・木嶋さんポイントが増えてますね。」
夏海:「ええ、さっきご老人を2人、子供を1人助けたからね。」
♦ 木嶋夏海
所持ポイント 10P+救助ポイント 25P+救助ポイント 25P+救助ポイント 20P=現在のポイント 80P
速水:「って80ポイント?!」
夏海:「さっき、覇王と交戦している男女がいたんだけど・・そこにいたご老人が2人が子供必死に守っていたのよ。まぁそういう設定の上で運営のスタッフが演技しているんだろうけど。」
速水:「・・救助ポイント・・!」
夏海:「うん。正直私は救助とかしたことがないから完璧にはこなせてなかったかもしれない。でも見過ごすわけにはいかなかったから、危険を承知の上で3人を助けることにしたの。さっさとリングをつければいい話なんだろうけど、戦闘が行われているあの場で救助リングをつけるのは危険だと判断した私は、まだ動ける子供役の人に手伝ってもらいながらご老人を2人を死角となる場所まで連れて行って、救助リングで確実に救助したの。」
速水:「・・!」
(凄い・・、みんなが予選でポイントを稼ぐためにどう戦い抜くかを考えている時にこの人は・・ここまで冷静に要救助者の救助を・・!)
夏海:「救助ポイントは救助された人の評価でポイントが変わる。でも私は開始10分足らずで70ポイントの獲得に成功したわ。」
速水:「これって・・もしかして・・。」
夏海:「予選、迷路内の仕掛け利用、ボーナスポイント、チーム・・これらのキーワードから戦わなきゃいけないって思い込んでしまいそうになるけど、だぶんその考えだと主催者の思うつぼよ。気づいたかしら?この予選、自分がマイナスポイントとなる行動・・を起こさない限りポイントが減ることはないのよ。」
速水:「・・あ!」

・予選中のチームの裏切り行為はー10Pですが、やってはいけないわけではありません。
・トラップに引っかかるとー5P減点されます。
・迷路内の壁を破壊すると破壊したプレイヤーは -5P差し引かれます。
・Pが0になっても失格にはなりません、またそこからマイナスにもなりませんので最後まで頑張ってください。

夏海:「撃破されたとしても自分のポイントが減ることはない。そこから考察してたどりつく答えは、主催者及び運営がこの予選での勝敗結果をさほど気にしてないってこと。恐らく見ているのは上位のポイント数が高いプレイヤーと自分のポイントの差をどのうようにして埋めようとしているか。予選をポイントシステム形式にしているのは新米セイバーズにも本選に上がれるチャンスを与える為だと思う。速水くんみたいに戦闘経験の浅い子は、ベテランセイバーズを相手にして勝ち上がるのは厳しい。自分の力量を見極めて、どうすれば勝ち上がれるかを考えて行動に移せる者を選抜する・・それが予選の狙いだと私は思う。」
速水:「はは・・さすがは光ヶ丘3学年のトップ・・着目する箇所が他の人とは違いますね。」
彪呀:「フッ、なるほどな。」
夏海:「!」
速水:「人?!」
彪呀:「大した洞察力だ。あいつに負けず劣らずって感じだな。」
夏海:「足音すら立てなかったわね・・何者なの?」

41話/すべては予選を勝ち上がるために!

夏海:「名乗りさないよ。」
彪呀:「彪呀光一だ、お前と剣崎竜牙を見定める為にこの大会に参加したが・・なるほど、あいつが話していた通りの実力者だ。」
速水:「部長と木嶋さんを・・見定める?」
夏海:「・・!」
速水:「どうしたんですか、木嶋さん?」
夏海:「自分のリストバンドに目を向けて見なさい。」
速水:「!ボーナスポイント・・+50?!」
彪呀:「今大会のボーナスポイント、その最高値だ。」
夏海:「っ・・本っ当に何者なの?」
彪呀:「なんだ、三島和人から聞いてないのか?俺は王守護者セイバーズキングと呼ばれているモンスターセイバーズだ。」
夏海:「みしま・・誰?」
彪呀:「おいおいまじか・・。まぁまだ話すべき時じゃないと踏んで話してないのかもな。」
夏海:「ちょっと!私の質問に答えなさいよ。」
彪呀:「時期に分かる、木嶋夏海・・そして剣崎竜牙。女王クイーンや覇王が肩入れするだけはあるな、剣崎竜牙の運動神経、戦闘のセンス・・そしてお前の洞察力と分析。大したものだ。」
速水:「覇王の事も知っている。・・この人、本当に何者なんですか・・?」
夏海:「モンスターセイバーズについてよく知る人物・・と認識した方がいいかしら?」
彪呀:「ああ、そうとってもらって構わない。だが、現時点で俺がお前らに伝えられる情報はない。三島和人が黙秘しているのには理由があるんだろう、俺が迂闊に情報を漏らすわけにはいかないからな。」
夏海:「竜のことも知っている様子だったわね。」
彪呀:「ああ、剣崎鳥牙の弟だろ。あいつから死ぬほど聞かされている、剣崎竜牙の情報はな。」
夏海:「あいつ・・?」
彪呀:「安心しろよ、俺は本選に進む気はない。目的は果たしたし、このままリタイアさせてもらう。」
速水:「え、何を言って・・。」
彪呀:「大会のパワーバランスが乱れるんだよ。実力がかけ離れている者が本選に出場したところで白けるだろ。それにこの大会の目的、その1つである参加者全員の戦闘力を向上させることも叶わなくなっちまう。何より、真剣勝負を行う好敵手ライバルってのは互いの力を認め合った者同士でしか生まれねぇんだよ。実力がかけ離れた者同士で競い合ってもお互いの力を引き出しあう事はできない。」
速水:「た、確かに・・。」
夏海:「あら、私たちじゃ力不足?」
速水:「ちょっ、木嶋さん!何煽ってるんですか!!「」
彪呀:「ハッ!気の強ぇ女だな、そこまで言うんだったらすこ~しみせてやるよ。」
白虎:「おらぁぁっ!」
シュッ!
背後から近づいてきた白虎の拳を体を半身に鮮やかに交わす!
彪呀:「俺の力を。」
彪呀の目つきが変わる。
白虎:「X技・ザンバーストエックス!!」
白虎は両手をクロス字型に構え、猛スピードで突っ込んできた!
速水:「あの人・・速っ!!」
夏海:「ちょっ!大丈夫なの・・?!」
彪呀:「クロックアウト!」
彪呀は両手を合わせる。
・・・・ピタッ!
白虎:「なんだ・・体が動かね・・。」
彪呀:「いや、ちゃんと動いてるよ。俺がこの技を発動している間は、俺の半径1メートル以内のモノや生物の動きすべてが止まっているかと錯覚してしまうほど時間軸がスローになる。俗に言う相対理論的なものだ。」
白虎:「・・何を言っている・・そんなことが・・できるわけ・・。」
彪呀:「ボーナスポイントの数値はそいつの実力を示している。この敗北で学んだことを生かすも殺すもお前次第だ、諦めずに這い上がってこい・・時代を担うセイバーズ!クロスアルファディオス!!」
ピッ!
彪呀が片手を広げると、ドラゴンソードが生まれた!
速水:「あれはドラゴンソード?!」
夏海:「どういうこと?!」
彪呀:「はぁぁぁっ!」
ズバッ!ズバッ!ズバッ!・・・。
彪呀は熟練された剣裁きで白虎を切り刻んでいく!
白虎:「が・・はっ・・!」
ドサッ!
彪呀:「俺は記憶してあるモノや物体、ありとあらゆるモノを生み出すことができる。生み出したモノは一定時間で消えるが、イメージさえできればなんでも創造できる。さっき、剣崎竜牙の戦闘を見ていたからな、最もイメージしやすいドラゴンソードをここで使わせてもらった。」
夏海:「モノを生み出す・・本当に人間なの?!」
彪呀:「満足したか?木嶋夏海。」
速水:「規格外すぎる・・。」
夏海:(相手に何もさせずに戦闘を終わらせた?!実力的には鳥牙さんや覇王をも上回っているってことじゃない!こんなセイバーズが・・いるなんて!)
♦ 彪呀光一 
撃破ポイント 10P+ボーナスポイント 40P=獲得ポイント 50P×ノーダメージボーナス2倍=100P+所持ポイント 10P=現在のポイント 110P
速水:「えっ・・!ちょっ・・あの人ボーナスポイント+40の人だったんですか!!」
夏海:「いきりなり110P・・!」
彪呀:「言ったろ、大会のパワーバランスが乱れるって。」
速水:「も、もの凄いものを見ちゃいましたね。」
夏海:「さ、さっさとリタイアしなさいよ!」
彪呀:「ははっ、なんだよそれ。ってか指差すなっ!とりあえず、頑張れよ次世代のセイバーズ。」
彪呀は右手を上げる。
彪呀:「俺、リタイアします。」
彪呀のリストバンドの表示が赤くなる。
ビー!
司会:「え~このタイミングでリタイアを宣言したプレイヤーが1人現れましたので、参加者は残り20名となります。これにより後8名が脱落した時点、もしくはタイムアップした瞬間に予選が終了となります。みなさん、頑張ってください。直、リタイアを宣言されたプレイヤーは片手を挙げたまま、付近の入り口に向かって進み、扉を上げて迷路を脱出してください。」
速水:「ボーナスポイントが振られているセイバーズから2ケタを超えるポイントをいとも簡単に奪い取って見せた。もしあの人が敵意むき出しで襲い掛かってきたら・・。」
夏海:「それはないわ。恐らく実力がかけ離れているセイバーズは本来大会には参加できないはず。そうじゃないとハンターが参加していない理由が見つからない。それにあの力、無駄のない動き・・彪呀はボーナスポイントで測れる程度の実力者じゃない、にも関わらず参加していたって事は前もってリタイアすることを大会の主催者に説明していた可能性があるわ。」
速水:「そこまでして部長や木嶋さんの実力を・・。」
夏海:「私たちの事を知っている様子だった・・。」
(ハンターとの繋がりがあるのか・・もしくは・・考えにくいけど私たちの事を知っている誰かと知り合いなのかかもしれない。)
速水:「木嶋さん!残り40分ぐらいですし、ここは共闘しませんか?僕じゃあまり力にはなれないかもしれませんが。」
夏海:「ううん、そんなことないわ!私は救助リングを使い切ってしまったし、何より2人で行動をした方が効率がいいもの。」
速水:「救助ポイントって協力して救助した場合、ポイントって振り分けられるんでしょうか?」
夏海:「それは救助する際に運営スタッフに尋ねた方がいいわね。くずくずしていると、さっき撃破されたセイバーズが息を吹き返すかもしれない、先を急ぎましょ!」

秋矢:「水のリボルバーァァッ!!」
バン!バン!
本田:「スパークリングサンダー!」
ビリリリッ
秋矢の水の弾丸を本田は雷を覆った手で弾いていく!
本田:「相性が悪かったな、お前の攻撃は届かない。」
(このまま奴が疲労し、攻撃の手が緩むまで凌ぎ切る!)
秋矢:「なるほど、コイツァ攻撃を当てんのは難しそうだ。」
本田:「って言ったそばからなんで連射を続けてんだ、バカなのか?」
秋矢:「言うねぇ・・舐めプ野郎がっ、おらぁぁぁっ!!」
バン!バン!バァン!
ビりィィッ!ビりィィッ!
本田:「ちっ・・キリがね・・っ・・!」
ビリッ・・・。
本田:「痛っ・・!」
秋矢:「ハッ!確かに水は電気をよく通す。小学生でも分かるこった、んなコトはよ。けどよォ・・その常識はなにも俺の攻撃に限って言えることじゃねぇ、お前の体にも言えることなんだよ!」
本田:「なにっ・・?!」
秋矢:「濡れた皮膚ってのはなぁ、乾いている状態に比べて電気抵抗が数の十分一も低下すんだよ。実際、夏場に電気工事の現場で感電事故のニュースが流れんのはぁ、従業員がたくさん汗をかくことが一因とされてんだとよ・・つまり、俺が言いてぇことはな!人である以上、お前の身体が電気に耐えられる時間には限度があるってことだっ!!」
バン!バン!バァン!
ビりィィッ!ビりィィッ!
本田:「ちぃぃっ!なるほどな、お前の攻撃を相殺しようとすればするほど、俺の両手が水で濡れて電気が流れやすくなるってことか・・盲点だったよ・・!」
本田は両手に流していた電気を消して、駆け出す!
ビリリィッ・・・リリッ・・。
秋矢:「敵前逃亡か?どこまで舐めりゃあ気が済むんだよォッ!!」
バン!バン!バァン!
本田:「くそっ!相性の良さで完全に油断していた、俺のミスだっ・・!!」
(この狭い迷路内で、奴の広範囲攻撃から逃げ切るのは至難の業だな。仕方がない、ここはわざと攻撃を受けて態勢を立て直す!)
本田は立ち止まる。
秋矢:「観念したか、舐めプ野郎ォ・・超必殺技・ウォーターマシンガンッ!!」
ドカドカドカドカドカドカドカ・・
ドッカァアアアン!!
本田:「ごほっ・・ごほっ・・!」
秋矢:「ハッ!次ィ~行くかァ・・。」
♦ 秋矢滉騎
撃破ポイント 10P×ノーダメージボーナス2倍=20P+所持ポイント 30P=現在のポイント 50P
本田:「自分の・・ミスは・・自分で取り返さねェとな・・!」
本田は構える・・。
本田:「ギャラクシーボルテックス!!」
本田の全身が電気を帯びて光り輝くと背中から無数の電撃が地べたを走り、秋矢を直撃する!!
ビリリリリりィィッ!!
秋矢:「あがぁぁあああぁぁっ?!!」
ドサッ!
本田:「ハァ・・ハァ・・撃破した・・プレイヤーは・・同じ相手を・・続けて攻撃できねぇが・・撃破された・・・プレイヤーは・・歯ァ食いしばって攻撃しようと・・思えば・・できん・・だよ。」

・一度撃破した相手を続けて狙い撃ちすることはできません。また、撃破された人は5分間リストバンドが赤くなり、その間はどれだけ攻撃されてもポイントは失いません。

♦ 本田雷攻
所持ポイント 35P+撃破ポイント 10P=現在のポイント 45P

白鳥:「あれれ~?倒れてるセイバーズを2名発見~♪私、今日はついてるなぁ。さっき錦って人と関目って人も同じ感じで倒れてたんだよね。」
本田:「・・っ・・!」
(ここで新手かよ・・っ・・くそっ!さっきの反動で体が動かねぇ!!)
白鳥:「ごめんね、恨みはないけど私も勝ち残りたいの。恨むなら自分の運のなさを恨んでね?」
本田:「うぐっ・・ちくしょう!」
白鳥:「エアーカッター!!」
白鳥が両手を上げて作り出しだ空気の刃が本田と秋矢を直撃する!!
ズバッ!
本田:「あぐぅっ!!」
ズバッ:
秋矢:「うがぁぁっ!!」
ドサッ、ドサッ!!
白鳥:「予選で落とされるかもって結構心配してたんだけどなぁ、このままいけば残れるかも!」
♦ 白鳥百合花
撃破ポイント 10P+撃破ポイント 10P×ノーダメージボーナス2倍=40P+所持ポイント 50P=現在のポイント 90P
白鳥:「ん~でもそろそろ会いたいなぁ・・先輩に。」

42話/大会の先を見据える者と戦いの先を見据える者

竜牙:「だいぶ進んだけど、ゴールとかないんだよな。」
炎斬:「随分と順調に進んだもんだな、ここに来るまで誰とも出くわさないとは。」
竜牙:「一つの箇所で固まってるのかもな、そこでポイントを奪い合ってる可能性はある。」
(炎斬の奴はここに来るまで10Pのままだ、時間が経過していくに連れてコイツは焦りだすだろう。そうなればコイツの牙は間違いなく俺向く、いつ狙われてもおかしくねぇ・・気を張らねぇとな。)
涼野:「おや・・?」
竜牙:「バッタリ・・だな?」
竜牙の目の前に現れたのは、鉄仮面を付けた袴姿の男だ。
涼野:「お二方も剣の使い手と見ました。手合せ・・参る!」
カキン!
涼野:「!」
竜牙:「っ・・速ぇっ・・!」
(あと数秒、俺が剣を抜くスピードが遅れていたらやられていた。)
涼野:「私の不意打ちを見抜いた?」
炎斬:「なんだ・・お前・・その目?」
竜牙:「え?」
竜牙の目は白眼から黒眼の中心目掛けて淡い茶色のグラデーションがかかっていた。
竜牙:「お、俺の目がなんだって?」
涼野:「敵から注意を背けるなど、剣士としてはあるまじき行為ですよ?」
ズババッ!
竜牙:「うぐっ!」
炎斬:「フレイムソード!」
ボォォォウウ!
涼野:「そちらの剣士の方が来るか。」
涼野は腕を振り上げ、刀を構える。
涼野:「円月斬!」
涼野は回転しながら、流れるように炎斬のフレイムソードを裁き、剣を首元に突き立てる!
炎斬:「なんだこいつ・・!」
竜牙:「伏せろ炎斬!ギャラクシーブレード!!」
シュッ!
竜牙:「交わされた?!」
涼野:「抜刀で引き裂く攻撃ですか・・もう数秒遅れていたらまずかったですね。」
竜牙:(さっきの炎斬に向けた突き、絶妙のタイミングで繰り出していた。無理に力を加えれば狙いが逸れるかもしれねぇってのに・・あそこまで正確に・・!俺の攻撃を交わした身のこなしといい・・コイツ剣道の経験者か!!)
炎斬:「助かった!あの態勢は正直きつかったぜ。」
竜牙:「おい、隙を見て戦闘を離脱するぞ。」
炎斬:「は?!何言って・・。」
竜牙:「あいつがセイバーズの経験者かは知らねぇけど、剣道の経験者なのは動きで分かった。それもかなりのレベルだ。この残り時間が限られている中、ポイントの取りずらい相手と正面切る必要はねぇよ。」
炎斬:「そーいうことか。一応確認しておくぞ、俺らは鏡との一戦を終えてから20分ほどこの迷路を歩いたわけだが、誰とも出くわさなかったんだ。俺からしたら・・むしろコイツが現れたのはチャンスだと思うが?」
竜牙:「好きにしろよ、俺は先を急ぐ。」
タッタッタ!
竜牙はその場を後にした。
炎斬:「あいつを買い被り過ぎたか?ここで保守的な考えを取るなんてな。」
涼野:「私と戦うか?炎の剣士よ。」
炎斬:「ああ、俺はまだポイントを獲得できてなくてね。ここでひと稼ぎさせてもらう。」
涼野:「だから私を?随分と見くびられたものです。」
カキン!
炎斬と涼野の剣がぶつかりあう!
炎斬:「俺の動きを読んでいた?!」
涼野:「両足をそろえた状態だと剣は振るいづらい。右足が下がって半身になってましたよ、自然とね。」
炎斬:「!」
シュルルル・・。
涼野はぶつかりあってる2本の剣をメジャーののようなものから出したワイヤーを使い、高速で巻いていく!
涼野:「これで・・。」
メジャーのスイッチを涼野は押し、引き戻す力をつかってワイヤーでぐるぐる巻きにした剣を縛り上げた!!
バシィィツ・・!
炎斬:「うおっ・・!なんだコレっ!!」
涼野:「この予選で手に入れたメジャーとワイヤーを使って作り上げた私だけの武器だ。これでお前の剣は戦えない。」
炎斬:「発想がぶっ飛んでんな・・こんなもん、俺の剣には効かねぇ!」
ボォォウウ・・。
炎斬は炎を剣から噴き出すが・・。
涼野:「フフッ。」
炎斬:「なんで炎を纏った俺の剣で断ち切れねぇんだ?!」
涼野:「熱に強いステレンス製のワイヤーだ。私もあまり詳しくはないが、軟らかくて加工がしやすく腐食に強いのが特徴だったはずだ。まぁ・・自信を持って言える事は一つ、予選大会で手に入るアイテムがただのワイヤーなわけがないだろう?」
炎斬:「っ・・!」
(明らかに戦闘慣れしてやがる。剣崎は剣道の経験者の動きをしていたって言うし・不気味な野郎だっ!)
涼野:「すでに勝敗は決している。」
炎斬:「だったら・・。」
炎斬が拳を握りしめると剣から力が拳に流れ出す!
涼野:「!」
炎斬:「ファイアガントレット!!」
バシィッ!
涼野:「痛っ・・!計算外だっ!!」
バッシュゥゥゥン・・。
涼野:「そういう風に力を流し込むこともできるんだな。」
殴られた反動で涼野は飛ばされ、両者の手から離れ・・。
カラン・・カラン、カラン!
2本の剣が地面に転がり落ちる。
炎斬:「これでお前も剣を失ったな。」
涼野:「フッ・・。」
炎斬:「何がおかしい?」
涼野:「なら攻撃を仕掛けてくるといい。この好機を見す見す逃す気か?」
炎斬:「言われなくとも!」
(コイツ、話し方が変わってから雰囲気が変わった。さっきのワイヤーといい、まだ何か手があるのか?)
涼野:「ほら・・早く。」
炎斬:「野郎ォ・・ファイアガントレット!」
ドカァァアン!
涼野:「・・・。」
炎斬の拳が捕えたのは涼野ではなかった。
スタッフ:「がはっ・・!」
炎斬:「?!」
涼野:「やっちゃったなァ~。」
炎斬:「なん・・で・・。」
(この人は運営のスタッフ・・!)
♦ 炎斬正一
所持ポイント 10P- 一般人に危害を加える 20P=現在のポイント 0P
涼野:「私の聴力は人並み以上。数分前、何者かがこちらに近づいてきている足音に気づいた私は、戦闘を行いつつも、あなたが私の挑発に乗り攻撃を仕掛けてくるタイミングと、こちらに向かってくる者が上手いことハチ会うように常にこの機会を狙っていたんですよ。それにしても向かってきていた者が一般人役のスタッフだったとは・・ついてなかったですねぇ。」
炎斬:「っ・・!ハメられた・・。」
(遠く離れた音だけで・・その情報だけでこちらにあのスタッフがやってくるまでの時間を計ったって言うのか?!それだけじゃない、これだけ聴力がいいんだ。俺や剣崎と遭遇したのも偶然じゃないんだろうな、恐らく俺と剣崎がこちらに向かってきていることに気づいた上でわざと遭遇したんだ。俺たち2人からまとめてポイントを奪うために!)
涼野は携帯を開き、時間を確認して再びポケットに戻す。
涼野:「残り時間30分、すでに多くのポイントを獲得している者もいるはず。この状況であなたはすべてのポイントを失ってしまったわけですが、今のお気持ちは?」
炎斬:「後悔先に立たずか・・剣崎の助言を聞かなかった俺自身の判断ミス。自業自得じゃねぇか・・。」
涼野:「戦意喪失ですか?ちなみに私が先程使っていた剣はダミーです。真の剣士は最後まで奥の手をとっておくもの・・。」
バサッ・・。
涼野は片腕をあげ着物で隠れていたもう一本の鞘から剣を抜き取る・・。
炎斬:「背中に鞘を隠して・・!!」
涼野:「さァ、決着をつけましょうか。まだセイバーズというものにはなったばかりですが、なかなかやりがいがありそうだ。この平和なご時世にこういう非日常的アブノーマルな戦いが行えるんですから。」
炎斬:「常に一手先を考えて態勢を立て直してる、こんな奴がセイバーズの初心者だと?!・・冗談きついぜ・・なんなんだよ本当に・・コイツ・・。」
涼野:「存分に悔いた上で、残りの予選を必死に足掻くといいですよ。」
ガシッ・・タッタッタッ!!
炎斬:「くる・・ここまでか・・。」
竜牙:「ドラゴンソード!」
カキンッ!
涼野:「おまっ・・!!」
炎斬:「けん・・ざき?!」
竜牙:「ポイントが0になっても失格にならない理由を考えろ!相手の策にはまったからって戦意喪失して、地べたに膝立ててんじゃねぇぞ!!」
涼野:「くっ、予想外っ・・なぜお前が・・。」
竜牙:「一応、コイツとはチームなんでな。ま、引き返してみたらこの有り様だったってわけだ。」
炎斬:「俺は・・お前の助言を無視したんだぞ?!」
竜牙:「ああ、自業自得だな。別にお前を助けたわけじゃねぇよ・・ポイントが欲しかっただけだ。」
涼野:「剣崎、お前の腕では私には勝てない。」
竜牙:「へっ!あんたの言う通り、剣道のスキルじゃまだあんたには勝てないだろう、けど・・。」
ビリリリッ!!
涼野:「うぐっ?!」
(なんだ、こいつの剣から電流が?!!)
竜牙:「イナズマドラゴンからの~超必殺技・ドラグアーマーバーストモード!!」
ボォォォウウ!!
竜牙:「おりゃぁぁっ!!」
バシィッ!!
竜牙の竜装を纏った炎の拳が涼野の顔面を殴り飛ばす!
涼野:「ぐあっ!!」
竜牙:「セイバーズとしての経験値は俺の方が上だ。」
涼野:「うぐっ・・!なるほど、強い・・っ。」
(体に痺れが・・あの一連の流れを初見で交わすのは至難の業だな。剣を持っている者に対して、剣を振りかざしながら急接近してくれば、相手は反射的に剣を盾に攻撃を止める。その瞬間に剣から電流なんて流させれれば、自身の剣から電流が流れ込んでくる。無駄のない動き、よく考えているな。)
竜牙:「動きはいくらか封じれたはず、炎斬!お前の中に戦う意志がまだ残っているなら這い上がれ!」
炎斬:「くそっ・・なんなんだよ!言われてなくてもやってやる、うぉぉぉぉ!!」
涼野:「ちっ!だが剣がない以上、炎斬は炎の拳でしか攻撃はできないはず。ギリギリで反応し、交わすことができれば私の体にさほど負担はかからない・・!」
炎斬は拳を握り、痺れて片膝を立てている涼野との間合いを詰める!
涼野:「来い!!」
炎斬:「・・奥の手はとっておくもんなんだろ?」
涼野との距離が縮まった瞬間に、炎斬は手の平を平げる!
涼野:「なにっ?!」
炎斬:「超必殺技・マグナハンドッ!!」
涼野:「っ・・なんだ・・これはっ!!」
バシィッ!
炎斬の手の平は巨大化し、炎で包まれた手の平が涼野を叩き潰す!!
ドッカァアン!
竜牙:「んだよ・・ありゃ・・。」
炎斬:「ハァ・・ハァ・・。」
♦ 剣崎竜牙 
所持ポイント 35P+撃破ポイント(チーム2分割) 5P=現在のポイント 40P
♦ 炎斬正一
所持ポイント 0P+撃破ポイント(チーム2分割) 5P=現在のポイント 5P
竜牙:「や、やったな、炎斬!」
炎斬:「やったな!じゃねぇよ・・バカなのかお前は!チームとかそーいうの、宣言さえしなければお前はまるまる10Pもらえたじゃないか。この状況なら、奴を撃破してそのまま俺を倒すのがベストな判断だろ。なんでこんな・・。」
竜牙:「ほら、お前の剣だ。ワイヤーは外してる・・。」
炎斬は剣をキャッチする。
炎斬:「質問に答えろよ!」
竜牙:「俺はさ、モンスターに襲われる人たちを助ける為にセイバーズになったんだ。ほんとの事を言うとお前を助けないとって引き返してきたんだよ。頭の中には涼野は危険だ、下手すると炎斬が致命傷を覆うかもしれない!そんな事ばかり考えてて、気がついたら行動を起こしていた。」
炎斬:「考えるより先に行動を起こしてたってか?意味分かんねぇよ、数分後には敵に回るかもしれない相手を助けて何のメリットがあるってんだ!」
竜牙:「この大会に優勝することが目的なら、炎斬の考えが正しい。なりふり構わずポイントを取るために動くべきだ。でも俺は違う、俺はセイバーズとして、今よりもっと強くなる為にこの大会に参加してんだ!」
炎斬:「・・!」
(俺は大会で優勝する事しか頭になかった。けど、こいつはここを通過点としてしか見てねぇ!さらに先を見据えて行動している、だから・・迷わないのか。)
竜牙:「逆に聞くけどよ、お前は何のために戦ってるんだ?」
炎斬:「・・俺は姉ちゃんがセイバーズだったんだ。けど、ある戦いをきっかけに右足を痛めた。この剣は姉ちゃんの物。だからセイバーズ全国大会が開催されるお知らせと優勝賞金の話は元々、姉ちゃんに来た誘い。だけど俺は姉ちゃんととあるセイバーズが話している内容を盗み聞きして、俺が勝手にエントリーした。ぶっちゃげ賞金に目が眩んだんだ。そしてこの有り様だよ。そんなんだから・・こんなとこで心が折れっちまうんだよな。」
竜牙:「どんな理由であれ、それも一つの目的であることには違いねぇよ。けど、その程度の覚悟ならリタイアすることを俺は推奨する。お姉さんの二の舞になるぞ。」
炎斬:「・・少し考えさせてくれ。あ、それと!ここでお前がしたチーム宣言を撤回させてほしい。勝手なことばかり言って本当にすまん!俺自身、残り時間をどう動くべきか清算したい。」
竜牙:「・・ほんと~に勝手だな、わーったよ。」
竜牙は微笑むとその場を後にした。

司会:「残り時間は20分。各々の戦いに決着がつくころですね。」
司会者はリストバンドシステム管理室のパソコンを開き、参加者のデータを確認する。

足速師覇王あしばやしはおう 50P ボーナスポイント対象者
瓜生翔太うりゅうしょうた 70P ボーナスポイント対象者
炎斬正一えんざんしょういち 5P
鏡光かがみひかる 20P
木嶋夏海きじまなつみ 100P
銀河ぎんがスペード 40P
剣崎竜牙けんざきりゅうが 40P
涼野円月すずのえんげつ 30P
秋矢滉騎しゅうやひろき 50P
白鳥百合花しらとりゆりか 90P
関目陸せきめりく 15P
錦真二にしきしんじ 20P
速水智也はやみともや 30P
白虎拳王びゃっこけんおう 測定中 ボーナスポイント対象者
彪呀光一ひゅうがこういち リタイア ボーナスポイント対象者
本田雷攻ほんだらいこう 65P
松田琴音まつだことね 測定中
宮本鷹斗みやもとたかと 測定中
ミラ=シスカ  25P
睦月戒むつきかい 60P
渡浩一わたりひろかず 35P

司会:「大きくポイントが分かれましたねぇ、現時点で予選通過が濃厚なのは・・足速師くん、瓜生くん、木嶋さん、白鳥さん、本田くん、睦月くんか。木嶋さんなんて救助だけでここまでポイントを稼いでいる。なんという少女だ、この6名とのポイントの差を埋めるのは容易じゃないし、よっぽどのことがない限りこの6人の通過は確実でしょう。残り6名の枠に誰が入り込むのか、実に見ものだ。」
彪呀:「まだどうなるかわからないな、この予選。」
ハンター:「それにしても君の名前が電光掲示板に表示された時はびっくりしたよ。運営にはきちんと話を通していたんだね。」
彪呀:「ああ。せっかくの機会だし、俺も興味があったんだよ。クイーンが言っていた2人の力がどれほどのものなのか。」
ハンター:「あの子、まだ話してないみたいだね。」
彪呀:「お前も人の事を言えないだろ。いつまでも隠し通せねぇぞ?」
ハンター:「そうだね、話すべき時がきたら話すよ、今はまだ・・。」

43話/予選終了!激闘の果てに・・

宮本:「な、なんなんだコイツ・・。」
松田:「ショックボイスッ!」
白虎:「アドバンスブラスト!」
ボォォォォウウウッ!!
宮本:「なんで・・口から光線が・・。」
松田:「本当に・・人間なの?」
白虎:「これが俺の力だ。どうした、俺を倒してポイントを取るんじゃなかったのか?」
(彪呀ァ・・あのヤロゥのせいで出遅れたが俺はここで終わるわけにはいかない。)
宮本:「松田の声量攻撃が効いてないなんて・・。」
(松田の攻撃は声をあげて唸るだけで相手の聴覚から神経をマヒさせ、状態異常にすることができる。にも拘わらず、さっきからこいつは松田の攻撃が聞こえてないのか、まるで効いていない。)
白虎:「X技・ザンバーストエックスッ!!」
白虎は両手をクロス字型に構え、猛スピードで突っ込んできた!
松田:「今度は超スピード・・っ!」
宮本:「コンドルダイブ!!」
シュッ・・ドッカァァアン!!
白虎:「俺と力比べをしようとしたのは愚策だったな。パワーもスピードも俺は人の比ではないぞ。」
松田:「宮本ぉ・・、あ、ああ・・。」
白虎:「俺は勝つ、勝たなくちゃいけない・・。」
テク・・テク・・。
白虎は一歩、また一歩と歩み寄る。
松田:「アイスボイスッ!」
テク・・テク・・。
白虎は怯むことなく松田との距離を縮めていく。
松田:「え、X技・ファイアボイスッ!」
テク・・テク・・。
松田:「超必殺技・ポイズンボイスッ!」
テク・・テク・・。
ガサッ。
白虎は松田の目の前に立った。
白虎:「一つ言っておこう。俺は弟の入院先からいつ連絡が来ても対応できるように無線通信用の耳栓を耳につけている。コイツァたまたまだが・・運が悪かったな、どんなに足掻こうとお前の声は届かない。」
松田:「っ・・。」
白虎:「俺の勝ちだ。」
バシィッ!
♦ 白虎拳王
撃破ポイント 10P+撃破ポイント 10P×ノーダメージボーナス2倍=40P+所持ポイント 50P=現在のポイント 90P
白虎:「これだけあれば大丈夫だろ、少々暴れすぎたな。」

速水:「予選が始まってから随分と時間が経ちましたね。まさか、本当に救助だけでここまで来れるなんて思わなかったです。」
夏海:「まぁでも残り時間が20分を切ったわ。ここからが正念場よ、私の予想通りならば・・!」
夏海が目線を向けると、分かれ道から2人のセイバーズが顔を出す!
渡:「ここで終わるわけにはいかねぇ!」
(俺の研究をさらに深めるためにも1億5千万は譲れないっ!)
関目:「瓜生や白虎のやつは居ねぇ見てぇだな・・よし、ここにいるセイバーズ3人!まとめてぶっ倒してやる!」
速水:「左右の通路からセイバーズが!」
夏海:「ポイントの少ない連中は焦ってる。だから!手当り次第にポイントを取りに来るはず、きっとまだ増えるわよ!」
速水:「まさか、この場面を想定した上でずっと戦闘を避けてきたんですか?!」
夏海:「ここまでシナリオ通りにいくとは思わなかったけどね。他の連中は負傷してたり、体力を消耗してたりするはず。速水くん、深追いはだめだけどこの状況なら速水くんだって立ち回れる!!取れるだけ取って、隙をついて逃げるわよ!」
速水:「戦闘経験の浅い僕の為にここまで・・分かりました、頑張ります!!」
(万全の状態でかつ冷静さを欠いだ2名のセイバーズ。この状況ならジーさんから教えてもらったあの技・・・が生きる!)
渡:「アーマースピアーッ!」
関目:「ライガーラッシュッ!」
速水:「ハヤブサランニング!」
シュッ!
渡:「早っ・・!」
速水:「氷河転結絶対零度ッ!」
速水がハイゼルセイバーを振り下ろし渡に当たると・・。
カチカチカチカチ・・。
渡:「な、なんだ・・体が氷ついて・・っ!!」
速水:「ハヤブサランニング!」
シュッ!
関目:「くっ!!」
(くそっ、回避が間に合わねぇっ!!)
速水:「氷河転結絶対零度!」
カチカチカチカチ・・。
関目:「ひぃぃっ?!」
夏海:「す、すごい・・!」
速水:「これで2人はしばらく動けないはずです。木嶋さん!」
夏海:「私はいいわ。もう十分ポイントは取ってるし、それにコレは速水くんの手柄でしょ?」
速水:「え、でも・・。」
夏海:「いいから、早く済ませちゃいなさい。先を急ぐわよ!」
速水:「何から何まで申し訳ないです、では・・!」
速水のハイゼルセイバーが2人を切り裂く!!
渡:「うぐっ!!」
関目:「いでっ!!」
♦ 速水智也
撃破ポイント 10P+撃破ポイント 10P×ノーダメージボーナス2倍=40P+所持ポイント 30P=現在のポイント 70P
速水:「あれ、チームで動いているのに分割されてない。」
夏海:「それは、私が全く手を出してないからじゃない?それよりも凄いじゃない、速水くん!」
速水:「上手いこと攻撃を当てられました!それより、急ぎましょう!」
夏海:「そうね、速水くんは70P 、私は100P・・あとはもう逃げ切れば恐らく予選通過は確実じゃないかしら?」
速水:「予選通過・・僕が・・!」
夏海:「まだ感傷に浸るのは早いわよ。行きましょ!」
ドサッ!
速水:「え、誰かが倒れて・・!」
夏海:「あれって・・スペード?!」
スペード:「くそっ・・このままじゃ・・。」
速水:「銀河先輩!」
夏海:「どうしたの?!」
スペード:「木嶋・・速水?!」
速水:「ボロボロじゃないですか!」
スペード:「伏せろ!」
シュゥッ!!
バシッ!
速水:「な、なんか飛んできましたよ?!」
夏海:「あの矢・・本で見たことがあるわ。たしかクロスボウの・・?!」
速水:「く、クロス・・?」
夏海:「クロスボウよ。銃のようにかまえて矢を放てる強力な弓だったかしら?」
スペード:「ああ。そのクロスボウの使い手に予選開始後からずっと狙われている。色々あって、一度離れはしたんだが、また出会っちまってよ。ポイントを取りにいこうにも行けずにここまで来ちまった。」
夏海:「的確にスペードの腕を狙っていたわ、それほど距離は離れていないはず。」
スペード:「けどあいつはどういうわけか姿を一瞬で消せる。だからあいつの居場所を特定しにくい。」
夏海:「!」
速水:「それは・・厄介ですね。」
スペード:「見ての通り俺は、手傷を負った状態で無理にここまで戦ってきたからかまともに立ち回れそうにない。2人を巻き込む形になってすまなねぇが、できれば手を貸してほしい。」
速水:「けど、どうすれば・・。」
スペード:「あのボウガンはこの迷路内で手に入れたアイテムだと言っていた。つまりあいつが放てる矢の数には限界があるはず。ここに来るまで結構な数の矢を撃っていた、もうそろそろ底がつきるはずだ。それに付け入る隙ならまだあるぜ、なんせあの女は成り立てのセイバーズだ。」
夏海:「お、女の子なの?!」
スペード:「ああ、前に一度正体を見た。」
速水:「なら、攻めきれればまだ勝機があるかもしれませんね。」
夏海:「なら、速水くん。私に考えがあるわ、相手に隙が生じた瞬間に攻め込んで迎撃できる?」
速水:「分かりました。」
夏海:「えいっ!」
夏海はマーカーを投げつけ、銃を構える!
夏海:「X技・第四の弾・爆裂弾ッ!!」
ビュゥン・・ドカァァァァアアアアアアアアアアン!!
ドカァン!ドカァン!
爆裂弾で放った爆発に投げたマーカーは連鎖反応を起こし、四方八方に散らばったマーカーによる小規模の爆発が巻き起こっていく!
速水:「ちょっ、木嶋さん!迷路内の壁が崩れていきますよ!!」
夏海:「私の所持しているポイント数なら多少引かれても問題はないわ。それにこれなら敵がどこにいようと関係ない。あの子、新米セイバーズなんでしょ?きっとこのまま待機していれば、クロスボウの子はこの炎から抜け出そうと姿を現すはず。」
ミラ:「げほっ、げほっ!」
夏海:「いま・・「ハヤブサランニング!」」
シュゥツ!!
速水は一瞬でミラの目の前に立つ!
ミラ:「やばっ・・くっ!」
ミラはクロスボウを構えるが・・。
速水:「氷河転結絶対零度!」
カチカチカチカチ・・。
ミラ:「クロスボウがっ!!」
速水:「ハイゼルセイバー!」
ズババッ!
ミラ:「くっ・・。」
(この氷漬けの状態じゃ、いくら撃破後の無敵状態でも動けない。完全に詰んだわね。)
♦ 木嶋夏海
所持ポイント 100P-迷路内の壁を撃破 5P+撃破ポイント(チーム2分割) 5P=現在のポイント 100P
♦ 速水智也
所持ポイント 70P+撃破ポイント(チーム2分割) 5P=現在のポイント 75P
ミラ:「ついていたわね、銀河。手負いのあなたを追い込むつもりが逆に追い込まれたわ。」
スペード:「結局、お前の力の正体は何だったんだ?」
ミラ:「私が唯一使える技、自然同化。その名の如く、姿や気配を消すことができる。組み合わせれば強力な技だけど、まだ使える技がこれしかないの。それに分かっていたわ、予選を勝ち上がったとしてもここで手に入れたクロスボウが使えない本選では、まず私は初戦で敗退するわ。丁度いい機会だし、ここらで身を引いておいたおうが潔いかもしれないわね。」
スペード:「・・・。」
(能力や技ってのは使い手によっては化けるということか。不運なやつだな、ミラ=シスカ。)
夏海:「大丈夫?スペード。」
スペード:「っ・・ああ。けど、この予選中はもう戦えないかもしれねぇ。」
(くそっ、40Pか・・ギリギリのラインだな。)
ゴゴゴゴゴッ・・!
速水:「壁が崩壊していくっ・・!」
ミラ:「あなた・・やりすぎよ。」
夏海:「あ・・あはは。」
覇王:「カイザーデルタブレイカ―!」
ドカァァアン!!
夏海:「崩れた壁の瓦礫が一瞬で吹き飛んだ?!」
覇王:「ほう、夏海に速水。それにスペードか。」
速水:「覇王さん!」
ガシャッ。
速水:「え?」
覇王はロイヤルセイバーの矛先を速水に向ける。
覇王:「予選終了まであと10分足らずだ。丁度いい、お前たちを最後の標的としよう。」
夏海:「・・・。」
速水:「・・・。」
スペード:「どういうつもりだ?」
覇王:「まさかお前たち、仲良しごっこをしているわけではないだろ。この予選に参加している以上、俺たちは敵同士でしかない。」
夏海:「っ・・ここで覇王が立ちはだかるなんて。」
ミラ:「覇王・・序盤で睦月を苦しめた白マントの男!」
覇王:「無理に戦う必要はない。夏海も速水も充分ポイントを獲得しているみたいだしな。たが、スペードはどうだ?逃げ切る力は残ってなさそうだが?」
スペード:「・・っ!」
夏海:「卑怯よ!」
速水:「僕らが仲間を見捨てられないことを逆手に!」
覇王:「お前ら甘いぞ!!これから先、こういう状況に陥る場合だってあるんだ。今は俺が相手だからこそ、そういった口を叩けるがこれがもしモンスターだったらどうする?」
夏海:「それは・・っ!」
速水:「くっ・・。」
覇王:「選択しろ、敵に背を向けて逃げるか、およそ敵うはずのない相手を前に仲間の救う為に立ち向かうか・・さぁ、選べ。」
(お前たちはこれから先の脅威に立ち向かうセイバーズたちの要だ。お前たちを強くさせる為ならば俺は何度でも腰を上げてやる。なんせお前らはあのキングダムセイバーズたちの意志を受け継いだセイバーズたちだ。)
夏海:「そんなの・・一択じゃない!」
速水:「銀河先輩を置いていけませんよ!」
覇王:「フッ、そう来ると思ったよ!」
タッタッタッ!
速水:「ハイゼルセイバー!」
覇王:「奥義・ロイヤルセイバー!」
バシィィッ!
速水:「うぐっ!!」
夏海:「速水くん!」
覇王:「正面から突っ込んでくるなんてな。」
速水:「へへっ・・この・・距離なら!」
(氷河転結絶対零度!)
カチカチカチカチ・・。
覇王:「ほう、やりやがる!」
(動きを封じられたか。)
夏海:「行くわよ、トリニティストーム!!」
ボォォォウウ!シュルルウッ!!
スペード;「あれは!警備ロボん時の水蒸気爆発!!」
速水はハヤブサランニングでその場を離れる!
覇王:「これは・・火炎弾と水弾、竜巻弾を合わせているのか!」
(すごいじゃないか、少しでも力の加減を間違えれば自分に跳ね返る危険性もあるのにあいつ・・!)
ドッカァアアアアアン!!
ミラ:「なんて威力なの・・!」
夏海:「壁なんてもう崩壊しているから気にする必要はないわ、このエリアなら私の力を100%出し切れる!」
覇王:「くっ・・!」
速水:「!あれは・・そうか、あの盾でガードを・・。」
覇王:「ギリギリだったよ・・。」
(だがこれで氷は溶けた!)
夏海:「嘘っ・・!」
覇王:「次はこちらの番だ!Ⅹ技・エクストリームハリケーン!!」
ボォォォウウ!
速水:「ま、まずい!」
夏海:「防御する技なんて持ち合わせてないわよ!」
スペード:「超必殺技・アメイジングトルネード!!」
スペードの竜巻と覇王の小さな台風が激しくぶつかり合う!!
夏海:「きゃぁっ!」
速水:「前が見えないっ!」
ミラ:「すごい風力っ!!」
スペード:「くそっ、やっぱ威力が落ちてんな。このままじゃ競り負ける!!」
覇王:「どうしたスペード?こんなものだったかお前の力は。それともあれか、序盤で受けていたダメージが足枷になっているのか?」
スペード:「お前!気づいてて攻撃を!!」
覇王:「敵の痛いところは突くべきだ。今ここは戦場なんだからな!!」
スペード:「くそっ!!・・すまねぇ、みんな!!」
速水:「と、飛ばされる!!」
竜牙:「奥義・レジェンドラゴン!!」

ドッカァアアアアアン!!

スペード:「!お前っ・・。」
スペード視線の先にはあの男の背中が映る!
速水:「ぶ、部長ぉぉぉっ!!」
竜牙:「怪我はないかみんな!」
夏海:「遅いのよ、ばかっ!」
ミラ:「なに・・なにが起こったの?!」
覇王:「来たかァ、竜牙!!」
竜牙:「長引かせると持っていかれる、ハヤブサランニングストーム!!」
バシィッ!
竜牙は地面を蹴り上げる!
ミラ:「速水って人の速度を上回っている?!なんなのあの人!!」
覇王:「奥義・ロイヤルセイバー!」
バシィッ!
覇王:「やったか?」
シュゥウ!
覇王:「!」
土煙の中、竜牙は顔を出す!
覇王:(あの距離でロイヤルセイバーを交わしたっていうのか?!なんて動体視力をしてやがる。)
竜牙:「X技・ギャラクシーブレード!」
ズバババッ!
覇王:「うぐっ?!!」
ガシィッ!
攻撃を受けながらも振り下ろしたギャラクシーブレードの刀身を覇王は掴む!
竜牙:「!」
覇王はそのまま竜牙の腹を前蹴りで蹴り飛ばす!
バシィィツ!
ドカァン!
竜牙:「げほっ!げほっ!」
覇王:「これでお前は戦う術を無くしたはずだ。」
夏海:「ギャラクシーブレードが!」
速水:「奪われましたね・・こうなったら僕が!」
竜牙:「お、おい!止まれ、速水っ!!」
覇王:「お前はもう少し状況を見て物事を判断することを覚えるべきだな。」
覇王のエクストリームハリケーンが速水をふっ飛ばす!!
シュルルウッ!!ドカァアン!
竜牙:「速水っ!」
覇王:「形成逆転だな、これで終わりだ!!」
覇王は再びエクストリームハリケーンを発動する!!
シュルルウッ!!
竜牙:「くそっ!」
炎斬:「超必殺技・マグナハンド!!」
ドカァン!
炎斬の巨大な炎の手がエクストリームハリケーンから竜牙たちの身を守る!
竜牙:「え、炎斬!」
夏海:「だ、誰・・?!」
炎斬:「悪りぃ、救助ポイント稼いでいたら遅くなっちまった。」
竜牙:「どうして・・お前・・。」
炎斬:「まぁ、”セイバーズ”になったってことだよ!」
炎斬の炎の拳が小さな台風を握りしめて・・潰す!!
覇王:「!・・新手か?!」
炎斬:「ふぅ~。俺はお前に教わったんだ、モンスターセイバーズっていうのは己の中にある何かを成し遂げる為に本気になってるやつのことなんだって!そんなやつらが集っている大会だって事を自覚したときに俺は自分自身がちっぽけに思えてきてよ、情けねぇよ本当に!」
竜牙:「・・炎斬。」
炎斬:「きっと姉ちゃんも俺や家族を守る為にこの剣を振ってきたんだ、その証がこの剣なんだ!なのに俺は・・コイツを勝手に持ち出したあげく、無様に負けっちまった。だから・・!」
覇王:「・・。」
炎斬:「俺は立つ!男子高校生の炎斬正一としてじゃない、炎斬希未のぞみの弟として戦うって決めたんだ!!」
ボォォゥゥウウウウ!!
炎斬のフレイムソードが燃え上がる!
竜牙:「へっ・・!」
覇王:「ほう、希未さんの弟だったか・・お前は!」
炎斬:「俺は姉ちゃんが守ってきたものを守り抜くために戦う、これが俺の答えだ竜牙・・!」
竜牙:「いい目つきになったじゃねぇか、正一・・!」
覇王:「こいつは楽しくなってきた、見せてみろお前の力!」
炎斬:「やってやる!フレイム・・「そこまで~!」」
速水:「司会者のアナウンス!」
夏海:「ってことは・・。」
司会:「只今の時間をもちまして予選を終了とさせてもらいます。ポイントを集計しますので、少々お待ちください。」
覇王:「フッ、本選で会える事を期待している。」
覇王はその場を後にした。
炎斬:「くそっ、間が悪りぃな。」
竜牙:「そういやお前、あの時5ポイントしかなかったよな。大丈夫なのか?」
炎斬:「救助に夢中でリストバンドには目を向けてなかった。・・正直、何とも言えない。」
司会:「それではポイントの高い順番に予選通過者を発表致します。電光掲示板の方にご注目下さい。山本君、そのファイル開いて!そうそう・・。」
ピッ。
 1人目 木嶋夏海   95P
 2人目 白鳥百合花  90P
 3人目 白虎拳王   90P
 4人目 瓜生翔太   80P
 5人目 速水智也   75P
 6人目 炎斬正一   70P
 7人目 本田雷攻   65P
 8人目 足速師覇王  65P
 9人目 睦月戒    60P
10人目 秋矢滉騎   50P
11人目 剣崎竜牙   40P
12人目 銀河スペード 40P
スペード:「やった・・のか。」
炎斬:「俺・・通ったのか・・。」
速水:「ぼ、僕!予選通過しています!!」
竜牙:「速水!お前、大丈夫なのかよ。」
速水:「無理に体を動かすと痛みが走りますが、大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
竜牙:「この後、病院に行こう。ちゃんと診てもらった方がいい。」
夏海:「ちょっと竜、ギリギリじゃない!」
竜牙:「!びっくりした。これはさ、ま、まぁ色々あって・・ね?」
炎斬:「俺が本選に・・。」
竜牙:「ん?」
竜牙は炎斬に歩み寄る。
竜牙:「何固まってんだよ正一、本選で当たった時はよろしく頼むぜ!」
炎斬:「っ~!」
炎斬は溢れ出てくる涙を拭き上げる。
炎斬:「グスッ・・・・あぁ!」
ミラ:「ま、こうなるわよね・・。」
(大人しく教会に帰ろ、お風呂にも入りたいし。)
速水:「瓜生のやつ・・通っている・・!」
(あんなやつを優勝なんてさせては駄目だ。本選で当たった時は僕が止めてみせる!)
スペード:「こっからだ、ぜってぇ勝つ!」
夏海:「ここから厳しい戦いになるわね。それに・・。」
(あの白虎って人、確か彪呀にやられて出遅れていたはず。にも関わらずあれだけのポイントを・・!)
竜牙:「やることは変わらねぇよ、いつも通り戦って勝つ!それだけだ。」
夏海:「・・・うん!」
司会:「本選は1週間後にここで行います。それまで各自、戦いに向けての準備を進めて置いて下さい。」

44話/小池の過去と心の闇

竜牙たちが予選を行っているその頃・・。
北海道・亀田半島付近。
小池:「おらぁぁっ!」
バシィィッ!
男:「がばっ・・!」
小池:「ベルゴンザはどこにいる?」
男:「くそっ・・本当に高校生のガキなのか?!」
ベルゴンザ:「下がっていろ。」
男:「!」
小池:「・・留守じゃなかったようだな。」
ベルゴンザ:「客人はもてなさないといけないだろ?ウォーミングアップができたんだ、むしろ感謝してほしいものだ。」
小池:「冗談はよせ、あんたのしたっぱどもは話にならない。」
ベルゴンザ:「そいつは悪かったな、クズどもを代表して詫びいれよう・・俺がこいつらのかしら、ベルゴンザだ。俺に何のようだ?」
小池:「お前の力を俺によこせ。」
ベルゴンザ:「こいつぁとんだご挨拶だな、ガキが・・マフィアのドンに命令とはいい度胸だ。」
小池:「・・・。」

竜牙:「小池、最強だけを求めた強さが真の強さなのか?お前は強くなって、弱かったあの時の自分に討ち勝とうとしているだけなんじゃないのか?今のお前に必要なのは表面的な強さじゃなくて、心の強さなんじゃないのか?」

小池は拳を強く握りしめる。
ベルゴンザ:「ほう、ガキのわりにはいい面構えじゃねぇか。そうだな、俺と戦ってもらおうか。勝てばてめぇのお望み通り、俺の力をくれてやる。ただし、負けた場合・・俺の下に仕えるクズどものサンドバックになってもらう。」
小池:「お前がサンドバックにならないことを祈ってるよ。」
ベルゴンザ:「あ”?」
小池:「・・心の強さか。」

小池:「なんで・・なんでっ!!」
親父とおふくろは俺が5歳のとき・・俺を幼稚園まで迎えにいこうとしている最中にバイクに乗った若い男と衝突。親父とおふくろを乗せた車は信号が切り替わると同時に発信していたみたいだ。事故の原因はこの男っ!・・コイツが信号を無視して無理矢理右折してきた際、スリップを起こし運転席にいる親父と衝突・・フロントガラスが割れ、破片がおふくろの頭に突き刺さり・・数日後、搬送先の病院で両親の死亡が確認された。まだ幼稚園児だった俺にとって受け入れがたい事実、そして両親との早すぎる別れとなってしまった。・・俺はその後、親父の姉にあたる人に引き取ってもらい日常を過ごしていた。
けど・・。
同級生男子組:「はっないっちもんめ!」
同級生女子組:「あっの子がほっしっいっ!」
同級生男子組:「あっのっ子じゃ分っからん!」
同級生女子組:「相談しっましょ!」
同級生男子組:「そ~うしっましょ!」
同級生男A:「くそっ、あいつらぜってぇ~コウを奪いにくるぜ。」
小池:「・・・。」
同級生B:「なぁなぁ・・じゃあ・・。」
ごにょごにょ・・。
同級生男A:「!いいな、それっ!!」
小池:「?」
同級生女子組:「コウくんがほっしっいっ!」
同級生男子組:「小池をあげるっ!」
小池:「え・・?!」
同級生男A:「ほらっ、いけよ!」
バシッ!
小池:「痛っ・・!」
小池は同級生に押されて女子組の方に転ぶが・・。
同級生女子組:「・・・。」
女子たちは全力で嫌そうな顔を向ける。
同級生女子組:「小池くんはいっらないっ!」
バシッ!
小池:「痛っ・・!」
同級生男子組:「あ~らっよっ!」
バシッ!
小池:「っ・・!」
同級生女子組:「あ~らっよっ!」
バシッ!
小池:「っ・・!」
同級生男子組・同級生女子組:「あっかんべぇ~っ!」
同級生男子組・同級生女子組:「あんたなんかしっし!い~らないっ!」
グスッ・・。
小池:「ぐすっ・・。」
鋼:「・・・こいけくん・・。」
 俺は両親がいなくなってから、周囲の人が俺を哀れみの目で見るようになっているのを感じ、誰を信じていいかわからなくなっていた。そのせいで小学生の間は地味で目立たない子だった。クラスのみんなからきもがられて・・隣の子からは決まって席をくっつけてもらえず、ドッジボールでは集中的に狙われるなど・・散々な扱いを受けてきた。そのまま中学に上がった俺は、自分より弱い者を痛めつけて自らの自虐心を煽り、優越感に浸るごみクズ共から”いじめ”を受けるようになった。

 登校してくると俺のカバンを無理矢理開けて筆箱を奪い、いじめっ子たちは教室を飛び出す。俺は追いかけるが、3人ぐらいで行動を起こしているこいつ等は、筆箱をパスしあい俺が付け入る隙を与えなかった。授業が始まり、やっとの思いで筆箱を返してもらったと思ったらシャーペンや消しゴムをすべて抜き取られていた。これじゃ勉強もままならない、俺は奴から強引にシャーペンを奪い取った。けど、俺のシャーペンのパーツが古いパーツと取り換えられていた。恐らくいじめっ子の中に同じシャーペンを持っている者がいたんだろう。これは俺のシャーペンについていたパーツじゃない!って言っても「ハァ?ちゃんと返しただろうが。人のシャーペンのパーツをこじつけて奪おうとすんなよ。」と言われ、返してもらえなかった。
 そうこうしている内にいじめはエスカレート。奴らは、俺の靴を下駄箱から奪い取り離れた校舎にあるごみ箱に捨てたりしていた。それだけじゃない!体育の時間の前に、着替えを隠されたこともあった。体育の授業が始まるギリギリまで隠し通し、俺に着替えを渡して「早着替えレッツチャレンジ!」と言いながら、俺が苦しむ姿を楽しんでやがった・・。
 俺は毎日毎日、募っていく怒りを抑えきれなくなり、奴らに対抗するために知り合いのつての元、ボクシングを習い始めた。信じられるのは自分だけ、自分の身を守れるのは自分だけ・・。けど、そういった習い事で得た力は大人から抑制がかかるもの。それをやつらは逆手にとったんだ。

同級生男A:「おいおい、ボクシングを習ってるやつが俺らみたいな一般人に力を奮っていいのかなぁ?いや、いいぜ?こいよ、ただし!せんせーがいつも言ってんだろ?先に手を出した方が負けだと思うけどなぁ?」
(暴力沙汰はコイコイだぜ、手ぇ出した瞬間にソッコーで先生にチクってやる。)
小池:「こいつらぁっ・・!」
鋼:「いい加減にしろ!」
クラスのみんなが見て見ぬフリをしている中、いじめっ子たちに勇気を出して反抗してくれたのは、小学生の頃からの付き合いがあるコウだった。
同級生男A:「あ”?」
鋼:「小池はお前たちのストレスをぶつけるサンドバックじゃないんだぞ?!クラスの連中を見てみろ!最初はあざ笑っていた連中も、お前たちの行動が行き過ぎていて引いているのが分からないのか!!」
同級生男A:「力がある者が弱い立場の者を制する。これに関しては大人も子供も関係ない、社会というものをいち早く経験できて良かったじゃないか、社会勉強だよ。それにな?コイツの心の弱さが俺たちの遊び心に火をつけるんだよ、なぁ・・お前が弱いからこーなんだよ、小池。」
小池:「・・・っ!」
鋼:「やめろ!小池っ!!」
小池:「おらぁぁっ!」
俺は暴力沙汰を起こし、停学処分となった。けど・・この”いじめ”はこれで解決じゃない。
停学後、教室に戻った俺の目に飛び込んできたのは目を疑う事実だった。
小池:「コウ・・?」
コウの机の上には一輪の花が添えてあった。
クラスの女子:「小池・・くん・・。」
クラスの男子:「小池、お前が停学処分で連れて行かれた後・・・。」

同級生男A:「ハァ~、大事なし・ん・ゆ・うが連れて行かれっちまったじゃねぇか。ど~してくれんだよ!」
鋼:「・・・っ!」
ガシッ!
鋼はいじめっ子の胸ぐらを力いっぱい掴んだ・・。
鋼:「言いたい事を言い合えるのが親友ってやつだ!お前があいつにその言葉を使うな!!」
同級生男A:「かっこいいねぇ~。」
ガシッ!
ドタドタ・・ッ!
バリン!
いじめっ子はコウの手を抑えたまま窓ガラスに突っ込む!
クラスの男子:「お、おいっ!」
クラスの女子:「わ、私!先生呼んでくる!!」
鋼:「いじめる方は面白半分で人を苦しめる!でもいじめられる方はいつだって本気マジで立ち向かってんだよ!」
同級生男A:「っ・・!じゃあ・・俺の本気を見せてやるよ・・!!」
鋼:「ぐあっ!首が・・っ!!」
鋼はいじめっ子の手を振り張ろうとする!
同級生男A:「ヤロ・・っ!うおっ?!」

クラスの男子:「そのまま二人は窓ガラスを突き破って転落した。お前をいじめてたあいつは・・今意識不明のまま入院している。けど、コウは・・。」
小池:「んだよ・・それ・・。」
クラスの男子:「いじめっ子とつるんでいた2人は警察でずっと取り調べを受けていてしばらく休学している。ごめん!ごめんっ!!・・お、おれ・・おれた・・ちは・・なにも・・なに・・も・・くっ!」
クラスの女子:「とめ・・れなかった・・っ!!・・ううっ・・。」
小池:「また?・・またかよっ!・・大切な人が・・逝って・・しまった・・。」

その後、俺は福岡から北海道へと引っ越すことになる。ここから俺は、おばさんが海外留学をしている時に知り合ったレイクにお世話になる。
レイク:「話は色々と聞かせてもらったよ。大変だったね・・。」
小池:「俺は強くなりたい・・。自分の身を守り、大切な人をも守れる・・そんな男に・・なりたい。」
レイク:「・・・!そうだ、共士郎・・これを。」
小池:「これは・・?手袋のような・・グローブ?」
レイク:「ナックルグローブだよ、手にはめることで特別な力を使いこなせるようになる。共士郎、モンスターセイバーズになってみないか?」
小池:「モンスターセイバーズ?」
レイク:「異世界から迷い込んできた怪物から人々を守る人のことだよ。」
小池:「モンスター?にわかには信じがたい夢物語のような話だが、そのセイバーズってやつになれば俺は強くなれるのか?」
レイク:「それは君次第だ。」
なんでもいい!強くなれるなら!・・今の俺にはそれしか頭になかった。俺は3か月間みっちり修行をつけて、ナックルグローブの基本的な扱いを学んだ。そんな中、モンスターが出現し始めたという情報をレイクから聞き、俺は光ヶ丘に転入した。そして・・あいつらとオーロラマウンテンで出会った。
セイバーズとして力になれた・・俺は一つの希望を見出した気がした。けど・・俺は再び現実に突き戻された。

小池:「お前が剣崎を・・。」
小池は猛スピードでジョーカーに突っ込んでいく!!
小池:「バーニングモードッ!」
ボォォォウウ!
ジョーカー:「へっ!」
ガシィッ!
小池:「!」
ジョーカー:「お前の炎もらうぜ。」
シュゥゥ・・。
小池:「吸い込まれて・・!だったらっ!!」
ガシィィツ!
小池はの拳が青色に光る。
小池:「くらえ!超必殺技・ソウルブレイクッ!!」
バッシィィンン!
ジョーカー:「なかなかいい拳だ、が・・まだまだパワーが足りん。」
ジョーカーの凸ピンが半身になった小池の腹に直撃する!!
バァン!!!
ぶつかった強い衝撃で小池は勢いよく壁に向かって吹き飛ばされていく!
シュゥゥゥゥゥゥウ!!
ドカァアアアアアアアアアアアアアアアアン!!
小池:「ぐっ・・がっ・・!」
バタン!
俺はこの時、ごみクズの言葉を思い出していた・・。
同級生男A:「力がある者が弱い立場の者を制する。これに関しては大人も子供も関係ない。」
― なぁ・・お前が弱いからこーなんだよ、小池 -

俺にとってかけがえのない存在、大切な人はみんないなくなる。親も・・コウも・・そしてこいつらも俺と関わってしまったばかりに・・。ボロボロになって倒れている剣崎を見てそんな事を考えていた。だって俺は弱い・・力が足りないから同じことを繰り返す・・そうだ・・力だ・・力がいる。すべてをねじ伏せる圧倒的な力が・・!あいつらとのつながりを断ち切る、あいつらを守る為に。あいつらに頼ってしまいそうになる自分の弱さを断ち切るために!

小池:「剣崎、俺の心はとっくに折れてんだよ・・両親が死んだあの日から。もはや失うものは何もない、力を得る為なら何だってしてやる。」
ベルゴンザ:「こいよ!」
小池:「超必殺技・ソウルブレイク!」
バシィン!
ベルゴンザ:「いい拳だ。だが、その次は?」
ベルゴンザは一瞬で小池の背後に回った!
小池:「っ・・?!」
ベルゴンザ:「爪が甘い、相手の動きを予測できなければ常に遅れをとる。」
小池:「くっ、間に合わな・・!」
ベルゴンザ:「黒炎弾!」
ボォォウウ!
ベルゴンザの左手から解き放たれた黒い炎が小池を襲う!
小池:「ぐああああっ!」
(あぢぃっ・・!)
ベルゴンザ:「自分の愚かさを恨むといい。」
バシィィン!
ダメ押しの拳が小池を地面に叩きつける!
小池:「う・・ぐっ・・まだだ・・。」
ベルゴンザ:「まだ立つか、暗黒衝撃波っ!!」
シュルルルッ!
紫色の突風が小池を弾き飛ばすが・・?
小池:「うおっ!・・っ・・!」
ベルゴンザ:「!地べたにしがみついて耐え凌いでいる・・?!」
小池:「(駄目だ・・地面にへばりついてもこのままじゃ風に飛ばされ、壁に激突する!)
ベルゴンザ:「どうだ?闇の力を盛大に浴びた気分は?そのまま吹き飛べっ!」
ボォォオゥウッ!
小池:「うおっ!!」
ドスッ!
小池は壁に激突する・・そして・・。
バァアン!!
風に押され、壁にめり込んでしまう!
小池:「うぐっ・・。」
ベルゴンザ:「おいおい、俺の力を奪うんじゃなかったか?」
小池:「これが・・究極の闇の力。聞いていた以上だな・・出し惜しみしている場合じゃないか。」
ベルゴンザ:「ほう・・まだ立つか。」
小池:(確か、空中に飛び上がり前回りをする要領で体を回転させる。そのまま回転速度をあげて周囲の空気を巻き込む・・だったか?)
バシッ!
シュルルルルッ!
ベルゴンザ:「なんだ・・あの動き・・。」
小池:「奥義・レジェンドライブッ!!」
ベルゴンザ:「ガキが青く光り出し、高速回転していく?!」
シュルルルルッ!
ドカァァアン!!
ベルゴンザ:「がはっ・・!」
小池:「ハァ・・ハァ・・。」
ベルゴンザ:「コイツァ、なかなか効いたぜ。だが、今のが限度いっぱいの力ってところか?」
小池:「!なんでっ・・まだ・・。」
ベルゴンザ:「楽しませてくれた礼だ、俺のとっておきでトドメを刺してやる。」
ベルゴンザが左手を広げると、周囲の物が引き寄せられ集められていく・・!
小池:「んだ・・よ、アレ・・。」
ベルゴンザ:「人工的につくりあげた隕石みてぇなやつだ。くらえ、邪神・キングアンゴルモアッ!!」
小池:「やべェッ!X技・レボリューションサーガ!!」
ボォォウウウ!
小池は落下してくるキングアンゴルモアをレボリューションサーガの光線で消し飛ばそうと試みるが・・。
小池:「っ!効いてないっ?!!」
(俺の光線を受けても傷一つついてないなんて・・。)
ベルゴンザ:「終わりだ!」
ゴゴゴッ!
キングアンゴルモアが小池にぶつかりベルゴンザのアジトとしたっぱたちが吹き飛ぶ!!
ボォォウウウッ!
ベルゴンザ:「避けられないと踏んでの光線を使った相殺か。いい判断だったが威力が足りなかったな。」
(人間とは思えない力の数々・・コイツセイバーズか。)
小池:「っ・・まだっ・・。」
ベルゴンザ:「なんて様だよ、ボロボロじゃねぇか。」
小池:「ここで・・終わるわけには・・いかねぇ・・!」
(Ⅹ技・レボリューションサーガ!)
ベルゴンザ:「おとなしく寝ていればいいものを・・ん?」
バァァァアアン!!
亀裂のはいった地面からレボリューションサーガが勢いよく噴射され、ベルゴンザにぶち当たる!
ベルゴンザ:「ぐああああっ!!」
(地面から光線?!)
小池:「俺が床に空いていた穴に向けて撃ったレボリューションサーガは床下で跳ね返り、お前にぶつかったんだ。ここまで上手くいくとは思わなかったが・・。」
ベルゴンザ:「うぐっ!」
(強い力を受けた衝撃で俺の力が・・!)
ベルゴンザから溢れ出た黒い煙のようなものが吸い寄せられるように小池に向かっていく!
小池:「な、なんだ・・?!」
ベルゴンザ:「闇の力がガキを選んだ・・だと?!」

小池:「うわぁぁぁぁあああああ!!」

男A:「お、おいどうなってんだ!」
男B:「ボスから溢れ出た力があのガキの中にどんどん入り込んでいきやがる!」
ベルゴンザ:「ちぃぃっ!力をすべて吸い取られる前にコイツを殺す!」
小池:「ククク・・・これは凄い!」
(力が溢れてくる!)
ベルゴンザ:「闇の力は俺の命だ!絶対に渡さ・・。」
小池:「X技・レボリューションサーガ改!」
ベルゴンザ:「う・・・うわぁぁぁぁああ!!」
シュゥゥン・・!
紫の光がベルゴンザを貫いた!
ベルゴンザ:「・・・っ・・・がはっ!」
小池:「力はすべて吸収した、お前にもう用はない。」
ベルゴンザ:「この・・やろぅ・・。」
ドサッ!
小池:「これで・・俺は!」
?:「小池共士郎だな?」
小池:「誰だ?」
バシィッ!
小池は背後から得体の知れない重いもので殴りつけられ、気を失う。
?:「ベルゴンザの下に就くものたち、こいつの身柄は私たちが預かる。」
男:「な、なんだ・・お前ら!」

45話/技の進化と究極必殺技

光ヶ丘学院・生徒会室

夏海:「はぁ~。」
(ず~っと待っているけど、返事がくる気が全くしない。)
桜:「な~に?ため息?」
夏海:「うん。」
桜:「最近そういうの多いよ、夏海。」
夏海:「ごめんね、なんか。」
夏海はデスクに置いてるコーヒを飲もうとする。
桜:「もしかして・・さ?」
夏海:「?」
ゴクゴク・・。
桜:「先輩に告った?」
夏海:「ぶほっ!!」
桜:「ちょっ!大丈夫?!」
夏海:「ゲホッ、ゲホッ!」
桜:「その反応・・あたりなん?」
夏海:「な、な、何言ってんのよ!あ、あはは・・。」
桜:「・・・今日、もう帰ろっかな。」
桜はうつむき、夏海に背を向けてゆっくりと生徒会室を後にした。
夏海:「ま、待って!ねぇ優香?」
バタン!
夏海は右手で顔を覆い隠す。
夏海:「ごめん優香。・・自分の気持ちを抑えられなかったの、私。」

桜:(夏海は凄いな。私は何をしよったんやろ・・いつの間にか追い抜かれとった。)
竜牙:「あれ?桜。」
桜:「あ・・。」
(先輩・・。)
竜牙:「お前・・泣いてるのか?」
桜:「え?・・そんな・・。」
ポロ・・。
桜:「嘘・・私、泣いてる。」
竜牙:「な、何があったんだ?」
桜:「・・あっ。」
・・・ギュッ。

気がつくと私は先輩に抱きついていた。

竜牙:「お、おい・・。」
桜:「私・・先輩のことが好きです。」
竜牙は目を見開いた。
竜牙:「・・・・!」
桜:「ずっと前から好きだったんです。男友達としてではなく、好意を抱いている異性として私の中にいつも先輩がいました。先輩が私の背中を押してくれたあの日からずっと・・。」
竜牙:「さ・・くら?」
桜:「夏海が告白したから焦って告白するのもどうかとは思いました。でも、夏海の行動力に押し負けていた事が私は悔しいんです。私は・・私は!夏海の先輩に対する気持ちに負けたくない、だって!」

竜牙:「なぁ桜、俺は人生って戦いだと思ってる。どんなに上手くいかなくても明日は必ずやってくる。生まれてきた以上、毎日生きていく為に戦っていかないといけない。戦うことをやめっちまったら人として生きているとは言えないんじゃないかな。」

竜牙:「七転び八起きだ。お前がどんな人生を歩んできたのかは知らねェけど、悔しいって思えるならこの失敗は無駄じゃないさ。俺は・・そう思ってる。」

桜:「夏海は素敵な女性です。だからこそ、私は親友に負けたくないんです。先輩を困らせることになっちゃうのは重々承知の上で、もう一度!言わせてください・・。」
竜牙:「・・・。」
桜:「あなたのことが大好きです。」
竜牙は咄嗟にあの日の夏海の告白を思い出していた。
竜牙:(俺は・・2人の何を見てきたんだ?夏海の気持ちにも、桜の気持ちにも何一つ気づいてあげられてなかった。)
桜:「あの・・えっと・・。」
竜牙:「桜、ありがとう。お前の気持ちに俺も真っ直ぐに答えたい、だからきちんと考える時間をくれないか?ちゃんと考えて、お前たちの想いに返事を返したい。」
桜:「・・・。」
(すぐに振られると思ってた・・。先輩の優しさは時に残酷だ、でもこれも先輩の魅力、だから。)
「待ってますね!」
桜は笑顔で答え、廊下を駆けだして行った。
桜:「あ~あ、やっちゃった。夏海とは今まで一度だって喧嘩したことなかったのになぁ。」
(けど、今回ばかりは譲れんとよ。この”勝負”だけは負けんられんけん!)
スペード:「おう、剣崎。」
竜牙:「スペード?お前動いて大丈夫なのか?」
スペード:「ああ、本選までの約1週間。ここで他のやつらに遅れを取るわけにはいかない。」
竜牙:「俺たちは学生だ、無茶しすぎて学業に影響しだしたら元もこうもないぞ。」
スペード:「お前に言われなくても肝に銘じているよ。それより、ハンターが俺たちを呼んでいる。放課後、ちょっと付き合え。」
竜牙:「ハンターが?」
放課後の草原広場
竜牙:「ここは・・半年前までお前たちのアジトがあった・・・。」
スペード:「懐かしいだろ?地下に潜るぞ、行き先は俺とお前が初めて戦ったあの場所だ。」
テクテク・・。
2人が奥に進んでいくと、見覚えのある男性が腰を掛けていた。
ハンター:「待っていたよ。」
スペード:「言われた通り、剣崎を連れてきたぞ。」
ハンター:「ありがとう。わざわざ君たちに足を運んでもらったのは他でもない、君たちにさらなる力をつけてもらう為だ。」
竜牙:「さらなる力・・!」
ハンター:「身につけてもらいたいのは2つ。1つ目は究極必殺技だ。」
竜牙:「究極必殺技・・!」
ハンター:「うん。その為の修行をこれから行っていくつもりだが、本選までの1週間で会得するのはまず無理だ。それを承知の上で大会と同時進行で技を会得するための修行を行ってもらいたい。なぜなら今の君たちの力はすべて”敵に知られている”からだ。本選で勝ち上がった実力者たちを相手にしていく中、君たちが勝ち上がれば勝ち上がるほど、その先で必ずその真価を発揮するはずだ。」
スペード:「なるほど、一理あるな。」
竜牙:「ここまで来た以上、やってやる!」
ハンター:「2つ目は技のコンビネーションだ。さっき言った通り、君たちの攻撃は”敵に知られている”ゆえにすでに使える技をいかに組み合わせて己の糧にできるかが、きっと本選攻略の鍵になる。」
スペード:「コンビネーションか、剣崎がよくやっているやつだな。」
竜牙:「けど、普段は無意識にやってるからな。まともにそういった修行はやってきてないから、こういう機会は本当にありがたい。」
ハンター:「このコンビネーションの修行を行うには対人戦の疑似演習がもっとも効果的だ。だからこそ、君たち2人にここまで来てもらったんだ。ここなら人目を気にせず修行に専念できるしね。」
竜牙:「夏海や速水は呼ばなくていいのか?」
ハンター:「速水くんは、まだそのレベルまで達していない。大丈夫だよ、宙ぶらりん状態にはしない。木嶋さんに関しては、一応声をかけたんだけどね。生徒会業務の関係で顔を出せないそうだ。まぁでも彼女は頭がキレる、本選を前にあの子が何もしないとは考えられない。個人で効率的な自主練をこなしているんじゃないかな。さほど心配はしてないよ。」
ハンター:「それと剣崎くん。」
竜牙:「ん?」
ハンター:「君のギャラクシーブレード、あれはまだ未完成なんだ。」
竜牙:「なっ・・!」
ハンター:「ギャラクシーブレードには地球を照らす太陽と月の力が微かだが眠っている。」
竜牙:「太陽と月・・?」
ハンター:「いずれ分かるよ。さぁ、2人とも構えて!疑似演習を始めよう。」
スペード:「手加減はしない、あの時のようにはいかないぞ剣崎。」
竜牙:「俺だって、あの時とは違う。」
スペード:「X技・ユニバースソード!」
竜牙:「X技・ギャラクシーブレード!」
ズバババッ!
スペード:「ユニバースソードで押し出した衝撃波を力押しで一刀両断した?!」
(こいつ・・回避じゃなく迎え撃ちやがった。舐めやがって!)
竜牙:「まだまだ、いくぜ!」
(ハヤブサランニングストーム!)
シュゥツ!
スペード:「やっぱこっそり特訓していて正解だったわ。」
シュッ!
竜牙:「はやっ・・?!」
スペード:「奥義・ライトニングエッジ!」
バシィィツ!
スペードの腕が光だすと、だんだんと堅くなり、突っ込んできた竜牙を押し出す!
竜牙:「この重み・・グラビティブレードの・・!」
スペード:「グラビティブレードの力を俺の腕に流し込んだ新しい技だ。」
竜牙:「ちぃっ!」
(これだけ重力のかかった攻撃を押し返すのは厳しい・・くそっ!)
ズザザザ・・ッ!
竜牙:「おまけに下手な近づき方をすれば、ライトニングエッジで地面に叩き落とされるってことか。」
スペード:「ヘビィドラゴン!」
竜牙:「うぉっ!」
ドカァァアン!
スペード:「よそ見している暇はねぇぞ?」
竜牙:「容赦ないぜ、ったく!」
(近づけばライトニングエッジのカウンター攻撃、距離をとればヘビィドラゴンの追撃が俺を襲う・・なら!)
スペード:「!」
竜牙:「超必殺技・ドラグアーマーバーストモード!」
ボォォォォウウ!!
スペード:「防御を固めてきたか。」
竜牙:「ハヤブサランニングストーム!」
シュッ!
スペード:「返り討ちにしてやる、奥義・ライトニングエッジ!」
竜牙:「ドラゴンソード!」
カキィィィイン!
スペードのコーティングされた腕とドラゴンソードが激しくぶつかり、火花を散らす!
バシィッ!
スペード:「っ・・弾かれた?!」
(どうなってんだ・・。)
竜牙:「おかしい・・。」
スペード:「は?急にどうした。」
竜牙:「ドラゴンソードにここまでの力はなかったはず。」
ハンター:「もしかして、技が進化している・・?」
竜牙:「進化?どういうことだよハンター。」
ハンター:「君とドラゴンソードの力が共鳴して、技の威力が跳ね上がっているように僕は感じた。」
スペード:「共鳴?!」
竜牙:「そんなことが・・。」
ハンター:「まさしく真の力を発揮したドラゴンソード。真ドラゴンソードというべきかな?」
竜牙:「俺の・・新しい力!」
スペード:「初日からパワーアップしてんなよ。ったく才能マンが・・俺もやってやる!」
竜牙:「ああ、初戦で敗退なんて笑えないからな。ここでもっと力つけて強くなってやる!」
ハンター:「うんうん、これは本選が楽しみだ。」

46話/銀河スペードVS睦月戒

司会:「え~予選を勝ち上がった12名の皆様、お待たせ致しました。本選はトーナメント形式で行いますが、初戦の組み合わせはランダムに決定いたします。それじゃあ山本くん、スロットのスイッチを押して。」
ポチ・・ガラガラ・・・。
速水:「名前が表示される部分だけスロットみたいに回転してる。」
スペード:「山本さんの手で初戦の相手が決まるってことか。」
ポチッ・・ポチッ!
司会:「第一試合・・銀河スペードさん対睦月戒さんです!」
スペード:「あの賄賂ヤローが相手か。」
竜牙:「気をつけろよ、スペード。」
スペード:「自分の心配でもしていろ。」
竜牙:「おまぇ~人が心配してやってんのに・・。」
スッ。
スペードは拳を上に上げる。
スペード:「いってくる。」
夏海:「大丈夫みたいよ。」
竜牙:「んだよ、かっこつけやがって。」
2人はスタジアムに上がる。
睦月:「誰かと思えば、予選で取り逃がした銀河くんじゃないか。その節はどうも。」
スペード:「お前は目的の為なら手段を択ばない、実に合理的だ。昔の自分オレを見ているようだ。」
睦月:「今は違うと?」
スペード:「ああ。あの時と見据えているものが違う、どっちが正しいかなんて俺には判断しかねるが、結局は強い方が勝つ。それだけだ・・。」
司会:「それでは始めましょう、第一試合スタートッ!」
スペード:「グラビティブレード!」
スペードは試合開始の宣言と同時に睦月に向かって駆け出す!
睦月:「せっかちかよ、レンゲルバリア!」
カキン!
スペード:「背中から何か生えて・・!」
睦月:「スパイキングフィニッシュ!」
スペード:「うおっ!っと・・と・・。」
睦月:「この距離で交わすか、けど・・。」
(超必殺技・ポイズンスパイダー!)
ズバズバズバズバッ!!
睦月の背中から生えた6本の蜘蛛の足のようなものが、高速打撃をスペードに与えていく!
スペード:「がはっ!ごほっ!ぐほっ・・・!!」
スペードはよろけ、態勢を崩す。
睦月:「全弾をもろに受けても倒れこまないか。」
スペード:「まだだ!」
睦月:「くる・・!」
スペード:「超必殺技・アメイジングトルネード!」
ボォォォォウウ!
睦月:「レンゲルバリア!」
スペード:「アメイジングトルネードも通さないのかよ、あの防御技っ・・!」
睦月:「すべて手は出し尽くしたか?言っておくが、僕はまだ本気を出していない。」
スペード:「っ・・強い!」
睦月:「スパイキングネット!」
スペード:「なんだ?!」
睦月の手から飛び出てきた白い糸がスペードに絡みつく!
スペード:「くそっ、取れねぇ!」
睦月:「その状態でまともに戦えるかな?」
スペード:「くそっ・・!」
睦月:「次は僕の番だ。スパイキングフィニッシュ!」
スペード:「やべぇ、あの技は刺した相手の血液に毒を流し込む・・っ!」
睦月:「この勝負もらった!」
スペード:「なんてな・・奥義・ライトニングエッジ!」
スペードの腕が光だすと、だんだんと堅くなり、突っ込んできた睦月を押し出す!
睦月:「うぐっ?!カウンター攻撃・・だと!」
スペード:「動けないならじ~っと構えていればいいだけだ。これで糸はほどけ、お前は態勢を崩した!」
タッタッタ!
スペードは全速力で突っ込んでくる!
睦月:「くそっ・・切り替えが早いっ!!」
(レンゲルバリアが間に合わ・・!)
スペード:「グラビティブレード!」
ズバババッ!
睦月:「ぐはっ!」
スペード:「っし、まずは一発!」
睦月:「なんだ・・あの・・剣・・。」
(一発が重たい・・そう何度も受け止めきれないぞ、あんな攻撃。)
スペード:「ヘビィドラゴン!」
睦月:「レンゲルバリア!」
睦月はスペードのヘビィドラゴンをレンゲルバリアで防ぐ!
スペード:「マジで固てぇな・・あんだけ固いとそこそこに重力もかかっているんじゃ・・・ん?」
(重力・・・・?)
睦月:「無駄だ、君の攻撃は僕に届かない。」
スペード:「どうかな?超必殺技・アメイジングトルネード!」
ボォォォォウウ!
睦月:「脳足りんは学ばないな、レンゲルバリア!」
スペード:「そう来るよな!」
睦月がレンゲルバリアを発動した瞬間、アメイジングトルネードの中から何かが高速回転して突っ込んできた!
ブスッ!
睦月:「!・・・ぐっ・・なんだ・・レンゲルバリアが重いっ。」
スペード:「そりゃあそうだ。お前の6本の足に刺さっているやつは、重力のかかっている俺のグラビティブレードなんだからな。」
睦月:「!」
(あの重たい剣を投げただと?!こいつ、どんな腕力をしているんだ・・。)
スペードはこの間に睦月に駆け寄っていく!
睦月:(くそっ!レンゲルバリアを解除すれば剣が僕の腹を突き刺す・・けどこのままだと!)
スペード:「そのまま耐えてろよ。Ⅹ技・ユニバースソード!」
シュゥツ・・ズバババッ!
スペードは自身が発動したアメイジングトルネードを切り裂いていく・・するとできた無数の真空波が睦月を直撃する!!
睦月:「ぐあああああっ!!」
スペード:「な~るほど、コンビネーションね。」
(剣崎との修行が上手い具合に身を結んだな、こりゃあ。)
睦月:「ぐはっ・・くそっ、コイツ。」
(少々見誤っていた、いや本選までのわずかな期間がコイツを急成長させたというべきか?)
スペード:「予選の時と比べて随分といい表情になったじゃねぇか。」
睦月:「お互い様だ・・。」
スペード:「っ・・。」
(くそっ、前半戦のダメージがでかい。もう長くは戦えないな・・。)
睦月:「なぜだ?」
スペード:「?」
睦月:「君は最初、あの時と見据えているものが違うと言った。セイバーズである以上、モンスターに屈してはならない。相手が強ければ尚更、勝つための手段なんて選んでいられないはずだ。けど、君はそういう考え方を改めた。それは・・なぜだ?」
スペード:「たとえそれが悪い方向に進んでいく道であったとしても、強くなる為に俺は・・かつて過ちを犯した。人を本気で殺そうとしたこともある!でも、そんな俺にある人物が言葉をかけてくれた。」

ハンター:「もう一度人として人生をやり直してほしいんだ、君に。このままだと君はその責任感からずっと自分を責め続けるはずだ。ならいっそ、矛先をを自分にではなくモンスターに向けてほしいんだよ。君の人生の進むべき方向を変えてしまったモンスターと言う存在に。」

スペード:「一度、道を踏み間違えたからって足を止めるな、方向転換してもう一度踏み出せばいいじゃないかってよ。そいつは俺の道を否定せず、悔いている暇があるなら前を向けと背中を押してくれたんだ。」
睦月:「・・・!」
スペード:「人である以上、人生には無数の選択肢が待ち受けていてそれを自分の意志で選択していかなければいけない。自分の選択したものが正しいかどうかなんて分かるわけがねぇし、時には間違えることだってあるだろうよ。けど、方向を変えてそこから前に進むことはできる。」
睦月:「・・・。」
スペード:「長くなっちまったが、俺は前者の考え方が間違っていると判断したから考え方を改めた・・それだけだ。」
睦月:「フン、綺麗事だな。どっちが正しいかなんて俺には判断しかねると言っていたが、ようは人によって答えが違うからだと言いたいんだろ?何の参考にもならねぇや、よーは強い方が勝つ。君が言っていたようにな!」
睦月は構える。
睦月:「僕の選んだ道が間違ってないことを証明する!それだけだ・・奥義・キングタランチュラ。」
ドッカァァアアアン!
睦月は巨大なクモを召喚した!
スペード:「スタジアムを覆い尽くすほどの大きさだと・・?!」
睦月:「X技・スパイダーネット!」
スペード:「!今度はなんだよ・・っ。」
(地面からさっきの白い糸が・・!)
地面から飛び出てきた白い糸がドーム状に編みこまれていく・・。
スペード:「檻の中に戸閉こられた・・くそっ、このままじゃまずい・・!」
スペードはライトニングエッジで糸を引き裂こうとするが・・。
スペード:「んだコレ・・全然キレねェ・・。」
睦月:「おとなしく喰われてろ。お前はこれで終わりだ。」
スペード:「ざっけんな・・・こんなとこで終われるかよ!」
睦月:「!追い込まれているはずなのに・・まだ折れない・・。」
(なんなんだ・・なんなんだよ君は・・!)
スペード:「俺に力を貸してくれ、グラビティブレード!」
睦月:「もう何もさせん!いけ、キングタランチュラ!!」
シュゥツ・・・
ズバババッ!!
スペード:「おっらぁぁぁぁっ!!」
ズババッ!
睦月:「な”・・・。」
(僕のキングタランチュラを檻の糸ごと引き裂いた?!マジで・・マジでなんなんだコイツ!!)
スペード:「俺は!・・新しい人生みらいを歩む為に、常に自分の100%を超えていくって決めたんだ!だからっ!ここでつまづくわけにはいかねぇんだぁぁぁぁっ!!!」
睦月:「くそっ・・超必殺技・ポイズンスパイダー!!」
高速で毒針を突き刺してくる睦月の攻撃をすべてギリギリでなぎ払いながらスペードは突っ込んでいく!
睦月:「ちっくしょぉぉぉっ!!」
(なんで当たんねぇんだよ!なんで・・なんで・・!!)
スペード:「超グラビティブレードぉぉぉぉおおっ!!」
シュゥツ・・・

                ズバババッ!!
睦月:「あ・・が・・っ・・!」

ライ:「セイバーズ全国大会に出る?お前が?」
睦月:「僕の力を試すにはうってつけでしょ。そに置いてあった案内を見たんだ。」
ライ:「・・・。」
睦月:「なんでだんまり?」
ライ:「いや、丁度いい。その目に焼き付けてくるといいさ、全国いるセイバーズたちの覚悟を・・そして、お前が知っている世界がどれだけ狭くてちっぽけなのかをその体で痛感してくるといい。セイバーズとしてお前に欠けているもの、それが何なのかを。」
睦月:「小難しい言葉並べちゃって・・ようは勝てばいいんだよ、勝てば。」
ライ:「勝利に固執するのは悪いことじゃない。だが、負けを知らない者の成長はそこで止まる。覚えておくといい。」

睦月:(なるほど、通りで勝てないわけだ。僕は勝つために戦っていたが、コイツは過去の自分を超える為に戦っていた。それはきっと一度大きな敗北したから・・・・・・・・・・自分の過ちに気づいたんだ。)
ドサッ!
睦月は地面に倒れこむ。
睦月:「ちくしょう・・体が動かないっ・・くっそぉぉっっ・・!」
スペード:「ハァ・・・ハァ・・くっ!」
スペードは拳を上に上げる。
司会:「き、決まったァァァ!第一試合勝者、銀河スペード!!」
竜牙:「スペードのやつ、やりやがった!」
速水:「一時はどうなるかと思いましたよ。」
司会:「続いて2試合目の組み合わせを決めたいと思います。それじゃあ山本くん、スロットのスイッチを。」
ポチ・・ガラガラ・・・。
夏海:「この無駄に緊張感を煽る決め方・・嫌いだわ。」
速水:「組み合わせは、前もって決めておいてほしいですよね。」
ポチッ・・ポチッ!
司会:「第二試合・・瓜生翔太さん対速水智也さんです!」
ゾクッ!!
速水:「!」
速水の背すじが凍りつく・・。
速水:「なんだ・・この殺気・・。」
速水が恐る恐る振り向くと、満面の笑みで見つめている瓜生が立ちすくんでいた。
瓜生:「ヒッヒッヒ・・忘れられない試合にしよう、ね?デザート・・。」
瓜生はよだれを拭き、その場を後にする。
速水:「ひぃぃぃっ!」
竜牙:「速水、落ち着け。お前の持てる力を全てぶつけてこい!」
速水:「は、はい・・っ!」

47話/速水絶体絶命!

スタジアムに2人は上がり、試合開始の合図を待つ。
速水:「まさかいきなりコイツと当たるなんて・・。」
瓜生:「はァァっ~早く始めてくれよ、ずぅぅぅっと、この時をまってたんだ。」
速水:「くそっ・・マジモンの変態かよコイツ。」
司会:「それでは始めましょう、第二試合スタートッ!」
開始の宣言とほぼ同時に猛スピードで瓜生は突っ込んでくる!
瓜生:「ヒヤッハァ!予選以来だね、僕のデザートォ!!」
速水:「その呼び方やめろぉぉぉぉっ!」
瓜生:「デスライトニングスピア!」
瓜生は小型のサバイバルナイフのようなもので速水を突き刺しに来る!
速水:「ひぃぃっ!」
ドカァン!
瓜生:「ほぅ、交わすかァ?コロコロとカァァィィねぇ~。」
速水:(予選で倒れていた2人の傷口から、瓜生が刃物のようなもので攻撃してくることは予測済みだ。瓜生の手の動きにさえ注意していれば、避けられない速度じゃない!)
瓜生:「けどなァデザート、安心するにァまだ・・。」
速水:「なんだ・・なんで・・さっきのナイフがこっちに来てんだ?!」
シュッ!シュッ!
速水:「くそっ、交わしても交わしても追ってくる・・どうして?!」
瓜生:「ヒッヒッヒ・・さぁて、ゆっくりと逝かせてやるよ。」
速水:「!このナイフ・・さっきから僕の左腕ばかりを狙って・・。」
(まさか・・!)
速水は自分の左腕に目を向ける。
速水:「やっぱり!腕に何か張り付いている・・まさか磁石?!」
瓜生:「ほう、思ってたより気づくのが早かったなァ。ただの磁石じゃない、強力な電磁石だ。誰だって、刃物が目の前から迫ってくれば避ける。デスライトニングスピアはこの人間心理を利用し、相手が避けようとしている隙に小型の電磁石を相手につけることで、回避不能な動く短剣にすり替わる魔のナイフだよ。」
速水:「うぐぐっ・・・・くそっ、これ取れないっ!」
シュゥツ!
速水:「うおっ!」
(駄目だ、左腕に意識が行き過ぎるとナイフへの反応が遅れる!」
瓜生:「踊れ踊れぇぇぇ!疲れ果て抵抗する力を失ったお前を・・じゅる・・アァ~。」
速水:「ひぃぃぃっ!マジで何なんだよ、あいつ!!僕に何をする気だ?!」
(このままじゃあいつの思うツボだ。僕はお前のものじゃない!!」
突っ込んでくるナイフを相手に速水はハイゼルセイバーで迎え撃つ!
カキン!
速水:「今だ!氷河転結絶対零度!!」
カチカチカチカチ・・。
瓜生:「ほぉう、やるなァ~デザートォ・・。」
速水:「これでお前のナイフは封じた、ハヤブサランニング!!」
シュッ!
速水:「ハイゼルセイバー!」
瓜生:「せかすなよデザート、お楽しみはこれからだ。超必殺技・幻覚空間!」
速水:「うおっ・・?!」
スカッ・・。
速水:「消えた?・・それになんだ・・スタジアムが白い霧に包まれていく。」
瓜生:「ここで生き地獄を味あわせてやる。調教の時間だ・・。」
速水:「ん?あれは・・部長?」
竜牙:「智也、死んでくれ。」
速水:「は?」
竜牙:「イナズマドラゴン!」
ドッカァアン!
速水:「な・・何するんですか部長!」
瓜生:「ニヤリ。」
(クックック、そいつァお前の記憶から作り上げた幻覚だァ。さぁどう切り抜けるデザート?)
竜牙:「ハヤブサランニングストーム!」
速水:「ハヤブサランニング!」
シュゥッ・・!
速水:「ハイゼルセイバー!」
竜牙:「ドラゴンソード!」
カキン!カキン!
速水:「部長!答えてくださいっ、どうしてこんなことを!!」
竜牙:「捨て台詞は済んだか?イナズマドラゴン!」
速水:「氷河転結絶対零度!!」
カチカチカチカチ・・。
竜牙:「イナズマドラゴンを?!」
速水:「はぁぁぁっ!」
速水は竜牙に駆け寄っていく!
竜牙:「・・・。」
速水:「ハイゼルセイ「俺を切るのか?」」
速水:「っ・・!」
ピタッ。
速水の手が止まる。
竜牙:「いい子だ。」
速水:「いい子?」
(おかしい、部長がそんな言葉を使うか?)
竜牙:「そうだ、先輩の顔を少しは立ててくれ智也。」
速水:「くっ!」
シュゥツ・・スタッ。
速水は竜牙との距離を取る。
速水:(おかしい、おかしいぞこの部長。部長は僕のことを名前で呼んだりしないはず、そもそも部長が急に現れたのはなぜだ?)
竜牙:「超必殺技・ドラグアーマーバーストモード!」
ボォォォッ!
速水:「はっ・・・!」
竜牙:「ハヤブサランニングストーム!」
シュゥツ!
竜牙は炎を身に纏い、速水の元に駆け寄る!
速水:「くっ、反応が間に合わ・・!」
ドカァァアン!
速水:「ごほっ・・!まさかこれも瓜生の技なのか?!」
瓜生:「おいおい・・もっと喘ぎ声を聞かせろよぉぉぉっ!!」
竜牙:「Ⅹ技・ギャラクシーブレード!」
速水:「うおっ!!」
ドカァアン!
竜牙:「もっと泣き叫べ・・ハヤブサランニングストーム!!」
速水:「僕の目は騙せても僕と部長の関係までは偽れないぞ、瓜生。」
竜牙:「Ⅹ技・ギャラクシーブレード!」
竜牙のギャラクシーブレードを速水は上体を倒し、ギリギリ交わす!
竜牙:「なっ?!」
速水:「絶対零度の力を抑えつつ最小限に、広範囲の空気を一気に冷やす・・。今だ!超必殺技・ハイパーブリザード!!」
シュゥッ・・・・・・フォォォォォオォォォウウウ!!
急激に冷えた空気が竜牙にぶつかる!!
竜牙:「ぐあぁぁぁっ!!」
瓜生:「なっ!僕の幻覚空間が崩れていく・・そんな馬鹿なっ?!」
速水:「瓜生!随分と卑劣な手を使ってくれたな!!」
瓜生:「っ・・!いい気になるなよォ~デザートォォォッ!!」
速水:「調整は上手くいった、。見せてやる、僕の修行の成果を!超必殺技・ハイパーブリザード!!」
シュゥッ・・・・・・フォォォォォオォォォウウウ!!
瓜生:「なっ、空気中の水分が凍ってヒョウみたいに変化した?!!」
速水:「いけぇぇぇっ!!」
シュツ!ズバズバズバズバズバッ!
無数のヒョウが瓜生の体を貫いていく!!
瓜生:「ぐあああああああっ!!」
速水:「やったか?!」
瓜生:「ぐふっ・・・ハァ~気持ちィィ。」
ゾクッ!
速水:「なんで・・なんで立ってんだよ!」
瓜生は血まみれの状態でも満面の笑みを見せる。
瓜生:「いいねぇ~これぐらい抵抗があったほうが燃える。」
速水:「くそっ!僕の出し切れる精一杯の力で攻撃したんだよっ!なんでニコニコしてんだよ!!」
瓜生:「デザートが持てる力のすべてをぶつけてきたんだ。本気のプレイには本気のプレイで返さないと相手に対して失礼だろ?さァ、僕の攻撃以外じゃ満足できない体にしてやる。」
瓜生が片手を上げると、巨大な血液の塊が膨張して一つの球体となっていく・・。
速水:「自分の血液を・・・!」
瓜生:「大丈夫、僕の体を巡る血液は一定値以上減ることはない。僕は無限に血液をつくりだすことができる特別な力を持っているからねぇ。」
速水:「ば、化け物が・・。」
瓜生:「化け物・・。」

綾乃:「翔太!あなたもセイバーズなりなさい。」
瓜生:「ヒッヒッヒ、僕はそ~いうのに興味ない。」
綾乃:「あら?あなたに選択肢を与えたつもりはないんだけど?」
瓜生:「!僕を囲っているこいつらはなんだい、姉貴。」
綾乃:「私の複製人間作成クローンモルモットで作り上げたクローンたちよ。カワイイカワイイ私の手駒たち。」
瓜生:「一般人にセイバーズの力を向ける気かよ、姉貴。」
綾乃:「なにが一般人よ。私もあなたも化け物でしょ、だって普通の人間にはこんなことできないもの。あなたの体だってだいぶ人外よ?」
瓜生:「確かに僕の血液がなくなることはない。だが不死身ではない。心臓貫けば死ぬし、首絞められれば窒息死だってする。本当の化け物はあんただろ・・?」
綾乃:「あら、私だけ化け物扱い?」
瓜生:「複製人間作成クローンモルモット。あんたの記憶の中にある生物をその場でクローンとして生み出すことができる能力。1度に3体まで生み出すことができ、過去に戦った敵や記憶内に残っている生物、直想像で作り上げた生物もクローンとして実体化可能。これだけでも充分チート能力だがそれだけじゃない、作り上げたクローンは技や特殊能力等もすべて本物さながらに再現できる。こんな力を持っておきながら、よく言う。」
綾乃:「私のこと、よく知ってるじゃない♪ なら・・この状況で刃向うなんて馬鹿な真似、しないわよねぇ?」
瓜生:「悪魔め・・僕をセイバーズにして何を企んでいる?」
綾乃:「セイバーズ全国大会。これに出てほしいのよ、なんていったって優勝賞金一億五千万。」
瓜生:「そんなもの、あんたが出ればいいだけだろう。」
綾乃:「強すぎるセイバーズは参加できないらしいのよ。私以外にもキングダムセイバーズやキングとクイーン、それと数名のセイバーズには参加規制がかかっている。でもね、私はどうしてもこの賞金がほしいの・・私の新しい力を実現するためにはそれ相応の費用がかかってくる、その為にこの賞金がほしい
!」
瓜生:「素人の僕が優勝なんてできるわけがないだろ。」
綾乃:「私があんたを調教してあげるわ。大丈夫、お前には力がある。それにこの下には無数のクローンたちがいる、いくら殺しても構わないわ。何ってったって私のおもちゃだもの。」
ゾクッ!
瓜生:「!人でなしかよ・・コイツ。」
綾乃:「さァ、瓜生翔太改造計画・・始めちゃいましょ。」
トン・・。
綾乃は瓜生をクローンたちの群れに突き落とす!
瓜生:「な・・っ?!」
綾乃:「とりあえずは約1000体、どんな手を使ってもいいわ。やるかやられるかよ?ちなみにクローンたちには数か月ぐらい食事を与えてないから。」
瓜生:「っだと・・・!」
綾乃:「せいぜい死なないように♪ 」
瓜生:「うわぁぁぁっ!!」
僕は生き抜くためにひたすらクローンたちを殺した。その中で僕の中の何かが弾けたんだろう・・僕は人を殺める快感に溺れるように浸っていった。そして・・。
綾乃:「いい表情になったじゃない、翔太。」
(まさか本当に1000体、倒しちゃうなんてねぇ。私ったら、とんでもない化け物を生み出しちゃったみたい。)
瓜生:「全国大会・・あぁ・・早く殺りてぇ~。」
綾乃:「だめよ~半殺し程度で抑えとかないと。翔太、お前には大会で優勝してもらわないと困るんだから。」
瓜生:「ヒッヒッヒ・・。」

瓜生:「ヒヒッ・・人は皆化けの皮を被ってるもんさ。Ⅹ技・レッドアイズノヴァ!!」
瓜生は巨大な血液の塊を速水に投げつけた!
速水:「ああああああああああああああああああああああああっ!!!」
瓜生:「ごちそうさま・・じゅる。堪能させてもらったよデザート。」
司会:「だ、第二試合勝者・・瓜生翔太・・・。」
瓜生:「新品はイキイキしてて、さいっコーだったなァ、クククッ・・・!」
速水:「ぶ・・・ちょう・・・・・。」
バタン!
竜牙:「は、速水ぃぃっ!!」
竜牙が控室から飛び出そうとしている中、夏海は両手で口を覆い隠す。
夏海:「う・・嘘・・こんなの・・。」
炎斬:「全身ボロボロだ、やべぇぞアレ!」
覇王:「待て竜牙!今俺たちが行っても冷静な応急処置が施せん、とにかく待機だ!竜牙、お前は救急車を呼べ!睦月の時とは違う、ここの医務室ではあの状態の速水を対応しきれんぞ!!そしてお前たち・・何をしている!!!」
ビクッ!
司会:「は、はい・・?!」
覇王:「すぐに応急救護班を要請しろ、命にかかわるぞ!早く!!」
司会:「は、はいぃぃぃっ!!」
竜牙:「くそっ、くそっ!死ぬなよ・・速水!!」

木嶋家。
ピンポーン。
未央:「は~い・・ってあなた!・・ど、どうしたの?!」
雅治:「夏海はいるか?」
未央:「あの子なら出掛けているわ。」
雅治:「そうか・・。未央、落ち着いて聞いてほしい。」
未央:「ど、どうしたの・・急に改まって。」
雅治:「すまない、近いうちに海外転勤をしようと思っている。」
未央:「えっ・・?!」
雅治:「今回の転勤は長期間の滞在となる。その為、お前と夏海にも一緒に来てほしい、行き先はニューヨークだ。」
未央:「ちょっ、ちょっと待って!ちゃんと説明をして!」
雅治:「・・そうだな。」

~to be continued
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