モンスターセイバーズ

短髪

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120話~129話 麒麟&デストロイヤ 最後の決戦編〈上〉

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120話/竜牙と鳥牙の過去 最後の別れ編

11年前。

竜牙:「兄貴、かっこいいよなぁ。」

誠一:「どうしたんじゃ、急に?」
竜牙:「兄貴は凄いんだよ!どんなに悪いチンピラ?だってすぐ逃げ出しちゃうんだ!!」

剣崎竜牙 -当時七歳。

誠一:「竜牙、確かにお前の兄は強い。だが・・。」
竜牙:「わかってるよ・・。」
誠一:「・・・。」
竜牙:「不良ヤンキー?なんでしょ。」
誠一:「そうじゃ、だから決して兄のようになってはならぬぞ。」
竜牙:「どうして?」
誠一:「あやつは人として正しい道を進んでおらん。」
竜牙:「でも俺、憧れるよ?じいちゃんの言うように、兄貴は間違った道を進んでいるのかもしれない。でもさ、自分でそーなりたいって決めたんだろ?」
誠一:「竜牙、お前の兄がやっていることは野生の猿となんら変わらない。言うならばただの喧嘩なんじゃ。あやつは剣崎家で会得した武術を自分の私情で振り回しておる。力がある者はむやみやたらと力を振り回してはいかん。」
竜牙:「俺にはそんなふうに見えないけど・・ねね!兄貴は剣道をやってたんだろ?」
誠一:「?そうじゃ・・剣崎家に代々伝わる奥義は次の世代に引き継いでいかなければならない。その奥義を身につける為にあやつには剣道をさせていた。」
竜牙:「じゃあ俺も剣道をする!」
竜牙が両手を広げるとポケットにくるめて入れてあるノートに誠一が気づく。
誠一:「!り、竜牙・・そのノートをどこで・・。」
竜牙:「あ、コレ?さっき見つけたんだ~これがその奥義なんだろ?この奥義を扱うために剣道の動きを身につけなきゃいけないって言うなら・・俺、やるよ!前に兄貴がじいちゃんの部屋の奥で技の特訓をしている様子を見てたんだ・・兄貴は常に同じ動きを延々と繰り返してた。つまりあの技は・・一撃必殺ってやつだろ?」
誠一:「あーコラ!慎重に扱いなさい!!」
竜牙がノートを振ると一枚の写真が落っこちた。
竜牙:「?」
誠一:「・・・見られてしまったか。」
竜牙:「?!じいちゃん、この写真・・。」
誠一:「そうじゃよ。そこに写っているのは鳥牙の親と生まれてまだ間もない鳥牙じゃ。」
竜牙は驚きの表情を隠せない。
竜牙:「そんなのおかしいよ!・・だってこの写真に写っている人、俺の父さんと母さんじゃないよ?!」
誠一:「今はまだ分からないかもしれんが、大人の世界には色々と複雑な事情があるんじゃよ。いずれお前も知ることになるはずじゃ。」
竜牙:「なんだよ・・それ・・。」
誠一:「これを。」
誠一は一通の手紙を竜牙に託す。
竜牙:「?」
誠一:「お前が持ってなさい。」
竜牙:「もしかしてコレ開けちゃ駄目なやつ?」
誠一:「開けちゃ駄目なやつじゃ。」

それから月日は経ち・・。

「決まりました!全国剣道部選手権大会中学の部 優勝は剣崎竜牙くんだ!」
竜牙:「や、やった・・。」
表彰式終了後、俺は会場のエントランスホールに足を運んでいた。
夏海:「おめでとう、竜。」
竜牙:「!来てたのか、夏海。」
夏海:「まだ入部して半年でしょ?一体いつから剣道をやってたのよ。」
竜牙:「じいちゃんに色々と教わってたからさ。」
夏海:「な~にそれ?気になるなぁ~。」
竜牙:「夏海は今から帰りか?」
夏海:「うん、竜が出るってママから聞いたから見に来てたんだ。」
竜牙:「おばちゃんはどこからその情報を入手したんだ?」
夏海:「う~ん、わかんない。」
竜牙:「恐いな、ご近所コミュニティ・・あ、もう帰るんだろ?仕度したら各自で解散って部長から言われてるんだ。」
夏海:「ホント?じゃあ一緒に帰ろっか!」

剣崎竜牙 -当時十三歳。

夏海:「それにしても一体どんな練習を積み重ねてきたらあのレベルまで上達できるのよ。」
竜牙:「う~ん、何っつうか・・頭で考えるよりも体で覚えるって感じかな。」
(もうあれから6年か、剣道の腕は上達してるけどあの技はまだ会得できてない。体の使い方にも癖があるけど・・何かが足りないんだよな・・う~ん。)
夏海:「あ!もう家の前みたい・・それじゃまた明日ね、竜。」
竜牙:「オウ、じゃあな。」
剣崎家。
竜牙:「ただいま~。」
鳥牙:「・・竜牙・・お前は・・前を向いて生きろよ。」
スッ・・。
兄貴は俺が玄関を開けて家に入ると同時に横を過ぎ去った。
竜牙:「え、ちょっ・・どうしたんだ兄貴?」
楓:「竜牙・・。」
竜牙:「母さん・・一体・・。」
楓:「あ・・あの子にすべての真実を知られちゃった・・。」
竜牙:「真実?・・!」
竜牙は階段を駆け上がり、ドアを開ける。するとそこには自分の部屋に隠していたはずの手紙が広げた状態で机の上に置いてあった。
竜牙:「んだよ・・これ・・。前にじぃちゃんが言っていた兄貴の秘密・・。」
楓:「竜牙?どうしたの・・。」
竜牙:「母さん、俺兄貴を探してくる!」
(兄貴は受験を控えているんだぞ。もしこの秘密が今ばれたなら・・兄貴は・・。)
ガシィッ!
竜牙:「!ちょっ・・。」
楓:「今は・・そっとしてあげて・・。」
竜牙:「か、母さん・・。」
楓:「鳥牙は今・・きっと!・・・死ぬほど辛いだろうから。」
竜牙:「だからって・・放っておけないだろ・・。」
俺がじいちゃんから預かった手紙、そこに書かれていたのは驚くべき内容だった。”見せてはいけない”咄嗟にそう思った俺は、今まで兄貴に見つからないよう厳重に保管していたんだけどな・・何があったのかは分からないけど、あれが俺の机の上に広げてあったということは間違いなく兄貴が見てしまった・・ということだろう。・・手紙は鉛筆で黒く塗りつぶされていた・・俺がいない間に何があったって言うんだ・・。

それから月日は経過し・・3月、桜が舞い落ちる中兄貴が俺たち家族の前に姿を現した。が、見た目もさることながらまるで別人のように変貌した兄貴の姿がそこにはあった。母さんや父さんのことを敵視している鋭い目つきはあの時に比べて憎悪に満ちていた。そんな兄貴が手にしているのは不良ヤンキー校で有名な白金学院の合格通知と住民票移動の申請用紙だった。そう・・兄貴は俺たちと家族の縁を切るために戻ってきたんだ。

「俺は・・俺の歩みたい道を行く・・こんな偽りの家族、もううんざりだ!!」

母さんは泣いていた。父さんは何も言わずに兄貴から渡された書類すべてにサインをし、言われるがままに兄貴を勘当した。俺はその様子をただただ眺めていることしかできなかった。

竜牙:「面!」
鳥牙:「竜牙、何してんだ?」
竜牙:「あ・・兄貴・・。」
鳥牙:「座れよ、ちょっと話そうか。」
竜牙:「なぁ兄貴、本当に行っちまうのかよ。」
鳥牙:「ここは俺の帰るべき場所じゃない。それに・・俺はもう自分の道を見つけた。」
竜牙:「不良ヤンキーの世界がそうだって言うのか?」
鳥牙:「俺はあの世界に足を踏み込みすぎた。このままここにいれば父さんにも母さんにも迷惑をかけてしまう。どうしようもない親だが、俺のいざこざに巻き込みたくないからな。」
竜牙:「・・・。」
鳥牙:「さてと、そういうわけだから・・「兄貴!」」
竜牙:「行っちまう前にさ、オールクロスジェネレートの出来栄えを見てほしんだ。」
鳥牙:「オールクロスジェネレートだと・・?!」
竜牙:「俺、ずっと前からこの技を身につけるために修行してんだけど・・何かがまだ足りなくて。」
鳥牙:「知らなかった・・見るだけなら構わないが、俺はあの技を扱えなかった。俺に見てもらうよりかじいちゃんに見てもらった方が早いと思うぞ?」
竜牙:「それじゃ駄目なんだ。今の俺と同じようにゼロからこの技を身につけようと努力していた兄貴に見てほしいんだ!お願いだよ・・。」
鳥牙:「・・分かった、見せてみろよ。」
竜牙:「!」
鳥牙:「言っておくけど大したアドバイスはできないからな?」
竜牙:「えへへ・・それじゃあ、やるよ?」
鳥牙:「・・・。」
竜牙:「・・・やぁぁぁっ!」
シュッ!シュッ!スパッ!!
鳥牙:「・・!」
竜牙:「どう?」
鳥牙:「そうだな・・しいて言うならオールクロスジェネレートは竹刀を振るうんじゃない、腰を振るんだ。」
竜牙:「腰・・?!」
鳥牙:「バッティングをイメージしてみろ。竹刀はしっかり構えていれば腰の動きに合わせて勝手についてくる。・・が、この技はお前も知っていると思うが一撃必殺だ。一撃で仕留めなければ技として成り立たない。なぜこの奥義が撃うちの家系に代々伝えられているのか・・知っているか?」
竜牙:「いや・・分かんねぇ。」
鳥牙:「一般人がオールクロスジェネレートを使ったところで相手の急所に攻撃を当てることができなければ対戦相手に反撃の隙を与えてしまう。だから・・。」
鳥牙は剣舞眼を開き、人差し指で自らの瞳を指す。
鳥牙:「この目が重要になってくるんだ。」
竜牙:「その目って・・確か・・。」
鳥牙:「この目を使えば一瞬で相手の弱点を見抜ける、つまりこの奥義は剣崎家の血筋で開眼する剣舞眼と併用することで初めて一撃必殺の奥義として完成するんだ。」
竜牙:「じ・・じゃあ・・今の俺がどれだけ練習しても出来っこないってこと?」
鳥牙:「意味がないと思ってるのか?むしろ柔軟な動きができる幼い頃から練習することに意味がある。というのも剣舞眼を開眼したところでこの奥義の力加減はかなり繊細だ。頭で考えて動こうとしたところで厳しいだろう。だからこそ動きを体に叩き込まなければ奥義を会得すること自体が難しいんだ。お前の努力は無駄にはならない、断言してもいい。」
竜牙:「・・・そっか。」
鳥牙は竜牙の頭の上に手を置く。
鳥牙:「絶対に完成させろ、それがお前の決めた道なんだろ?」
竜牙:「兄貴・・マジで行っちまうのかよ!」
鳥牙:「きっとまたどこかで会えるさ。」
鳥牙は竜牙に背を向ける。
竜牙:「い・・・行くなよ兄貴!まだオレ・・教えてもらいたいことが沢山あるんだ!!」
鳥牙:「・・お前はお前の道を行け。あんな両親に縛られる必要なんてない、元気でな。」
この日を境に兄貴は俺の前からも姿を消した。
この日以降、俺と兄貴が数年ぶりに再開を果たしたのは・・そうあの時だ。

ジョーカー:「ぐっ・・一端引くか。」
シュゥッ。
鳥牙:「逃げたか。」
竜牙:「おい・・兄貴。」
鳥牙:「なんだ、喋れるのか?」
竜牙:「どういうことだ、これは!ちゃんと説明しろよ、なんで兄貴がセイバーズやってんだ。四年間、俺たち家族の前から姿を消して何やってだんだ!」
鳥牙:「質疑応答の前にお前は俺に感謝すべきだ、あのままだったら死んでいたぞ。」
竜牙:「おい、待て!」
(また・・引き止められなかった。)


121話/青龍の間

スカルエンペラー:「なかなか粘りますねぇ・・。」
竜牙:「くそっ、こいつに攻撃が当たらなねぇ・・。」
青龍:(動きに無駄が多い、お前・・まだ迷っているのか?)
竜牙:「正直、この速度に乗ったままあの技を扱える自信がねぇ・・。剣舞眼だって長時間開眼していれば、目にかかってくる疲労は大きい。後何分この状態を維持していられるか分かんねぇんだ。」
青龍:(お前がその目を開眼し続けているのは奴のトラップゾーンバインドを見抜く為だろう?)
竜牙:「そうだ。肉眼じゃあの赤外線を見つけられない、下手に触れてしまえば体を焼かれてしまうからな。」
青龍:(とんだ偏見だな。)
竜牙:「なに?」
青龍:(さっきから休むことなくお前をつけ狙っている奴のジ・ベルデ。そこにこの状況を打破するヒントがある。)
竜牙:「!」
(そうか、あいつの鎌は赤外線を避けながら回転して俺を襲っているんだ。溶解液をかけてあるあの鎌は赤外線に触れてしまえば一瞬で溶けてしまう。だから・・。)
シュルルルッ!!
竜牙の後方からジ・ベルデが高速回転して突っ込んでくる!!
竜牙:「奥義・レジェンドラゴン!!」
バシィッ!
竜牙はドラゴンソードを思いっきり地面に叩きつけた!
「グォォォォォ!!」
割れた地面から巨大な竜を用いた青き衝撃波が目にも止まらない速さでジ・ベルデを押し返した!!
スカルエンペラー:「!・・しまっ・・!!」
ドッカァァアン!!
竜牙:「うわぁっ?!」
スカルエンペラー:「ぐっ・・!」
青龍:(今だ!)
竜牙:「っ・・音速青龍ライトスピード!!」
シュゥゥン!!
竜牙は空中を蹴り上げてスカルエンペラーの頭上に近づいた!!
スカルエンペラー:「!」
竜牙:「斜め45度、脇を閉めて右足を前に出し腰を振るっ!」
スッ・・!
竜牙:「そうすれば・・自ずと竹刀が動きについてくる!」
ズバッ!
・・・パリン!!
一刀両断されたスカルエンペラーの頭蓋骨が地面に落下し、奴の身体がすべて塵となって消えていった・・。
竜牙:「・・・やったのか・・?」
青龍:(ほう・・これがお前の究極奥義か・・。)
竜牙:「11年かけて・・やっと・・会得できた・・っ!これが俺の・・!!」
青龍:(気持ちは分かるが今は胸にしまっておけ。飛ぶぞ!)
スッ!!
竜牙:「うわっ!」
青龍:「ワープは成功のようだな。」
竜牙:「青龍っ・・いつの間に剣から出てきて・・。」
青龍:「ここは俺の領域、青龍の間だ。そして・・。」
青龍の視線の先には・・。
竜牙:「な・・覇王?!」
覇王が倒れていた・・だが気を失っているようだ。
青龍:「奴がお前につけていたマーキングを利用して俺の領域にワープさせたんだ。」
竜牙:「だ、大丈夫なのかよ・・。だってあいつの中にはデストロイヤが!」
青龍:「ここは神聖な領域、俺たち四聖獣が拒む者は中に入ることができない。奴はもう足速師覇王の中にはいないはずだ。」
竜牙:「じ、じゃあ・・あいつは今どこに・・?!」
青龍:「恐らく・・封印が解かれようとしているデストロイヤの肉体に戻ったはずだ。」
竜牙:「!」
青龍:「この機を逃す手はない。これよりお前たちモンスターセイバーズをデストロイヤエリアまでワープさせる。」
竜牙:「デストロイヤエリア?」
青龍:「モンスターワールドはいくつかのフィールドが区分分けされている。俺たちはその区分分けの事を”エリア”と呼んでいるんだ。話を戻そう、デストロイヤの潜んでいるデストロイヤエリアは他のエリアとは異なり、エリアを砦のようなものが覆っている。本来ならばモンスターワールドを歩いて忍び込みたいところだが、まず無理だ。だからお前たちをここからデストロイヤエリアに転送する。」
竜牙:「そんなこと・・できるのか?」
青龍:「ボスなら可能だ。なんせモンスターは元々ボスの力の一部だからな、デストロイヤもまたボスの力の一部ということになる。」
竜牙:「それがワープとどう繋がるっていうんだ?」
青龍:「つまりモンスターワールドそのものがボスの力が分散して生まれた世界だということだ。モンスターたちは皆、ボスの力が形を変えた姿。そのモンスターたちがつくりあげた世界の一部をボスが作り変えることだって可能というわけだ。よってこれより、デストロイヤエリアの一部とボスのいる麒麟の間の一部を作り変えて空間を繋げる。」
竜牙:「・・今まで麒麟って存在がぼや~っとしたものでしかなかったけどよーやくはっきりしてきたぜ。マジモンの神様なんだな、麒麟って・・今までもそうだけどやることがぶっ飛んでる・・。」
青龍:「そりゃあデストロイヤを復活させるわけにはいかないからな。」
竜牙:「だからって・・空間を繋げるとか・・情報の処理が落ち着かないぜ、ほんっとに。」
青龍:「話がまた脱線してしまったな、剣崎竜牙。恐らくデストロイヤエリア内はゾンビモンスターがそこら中に潜んでいるだろう。一体一体を相手にしていたらきりがない、時間は限られている。腹はくくっておけよ?」
竜牙:「バ〇オハザードみたいな展開になってきたな。きりがないって言うのは・・ほらあれだろ?ゾンビモンスターが不死だから・・。」
青龍:「ああ、奴らは不死身だ。デストロイヤの力を討伐、もしくは封印でもしない限り永遠とこの世を彷徨い続ける屍・・デストロイヤの力が憑依したモンスターたちのな。」
竜牙:「けど、5年前に一度戦ったんならデストロイヤがどこに潜んでいるのかだいたい分かるんじゃないのか?」
青龍:「エリアの最深部、そこにやつの体を封じ込めている。」
竜牙:「マジか・・なんとなくそんな気はしてたけどやっぱ強引にでも突き進むしかないってことだな。」
青龍:「強引・・か。」
竜牙:「なんだよ。」
青龍:「己の強さにゆるぎない自信を持っているからこそ出る台詞だ。確かにお前の仲間たちはパラレルワールドの中に入る前と比べて飛躍的な成長を遂げている。特に剣崎竜牙、お前は他の皆と比べてもズバ抜けた成長を見せている。・・・そこを否定するつもりはない。だがそれを考慮した上であえて言わせてもらう。お前たちの真の強さはそれとはまた別のところにあるんじゃないか?」
竜牙:「?」
青龍:「オーガブレイクナイトとの戦闘がいい例だ。あいつは俺の目から見てもあの時のお前たちじゃおよそ敵うはずのない敵だった。だがお前たちは諦めなかった。かつてない強敵を前に全員が今の自分に出来ることを精一杯やりきろうとしていた。お前たちの生き残ろうとあらがう力が無意識の内にオーガブレイクナイトを精神的に追い込んでいたんだ。だから奴は戦いの最中、突如として豹変した・・きっと目には見えない強大な力を察知したんだ。まさに生物の本能とも言えるだろう・・奴もまた必死にお前たちに負けじとあらがおうとしていたんだ。自分を飲み込もうとする強大な力から・・気づいていたか?そう、お前たちの真の強さ・・それは仲間と取る連携にある。」
竜牙:「・・!」
青龍:「いざやろうと思ってもあそこまで精度の高い連携は取れない。”あいつならやってくれる”心から仲間を信頼する強い気持ちがあったからこそ成せる技と言ってもいい。あれこそがお前たちが持つ真の強さだ。そして、そんな彼らの中心にいるのは・・間違いなくお前だ、剣崎竜牙。」
竜牙:「・・オレが・・?」
青龍:「お前がセイバーズたちの心の支えになっているんだ。だからこそ、お前が皆をまとめなければ。」
竜牙:「俺が・・みんなを・・。」
青龍:「今からお前だけをボスのいる麒麟の間に飛ばす。」
竜牙:「!・・・ちょっと待てよ、他のみんなはどうする気なんだ?」
青龍:「彼らには、一足早くデストロイヤエリアに行ってもらう。」
竜牙:「ざけんなっ・・俺も・・!」
青龍:「勘違いするな。こういう処置を取ったのには理由がる。」
竜牙:「は?」
青龍:「デストロイヤ復活までの残された時間がまだあるのか、俺たちにも予測がついていないのが今の現状だ。その上で奴の意識が封印された自身の体に戻ったのだ・・下手したらもう復活を果たしている可能性だってある。」
竜牙:「っ・・。」
青龍:「まぁそのリスクを背負った上であえて俺はあいつと足速師覇王を分離させたんだがな。」
竜牙:「どういうことだ?」
青龍:「足速師覇王の戦闘力がお前たちの中でも群を抜いていることは知っている。お前の剣の中でやつの戦いも見てきたからな。そのことを考慮した上でこれから迎える最終決戦に奴の力が必要不可欠だと判断したのだ。あえて言わせてもらうが・・どちらにせよデストロイヤの復活は免れなかっただろう。」
竜牙:「なんでそう言い切れるんだよ。」
青龍:「封印が弱まっている頃合いを見計らって奴がお前たちと接触したと俺は踏んでいるからだ。」
竜牙:「!」
青龍:「そう考えれば奴がとってきた行動にも合点が行くと思わないか?確証はないが、奴はお前たちど同行することでデストロイヤエリアに辿りつけると考えていた可能性がある。だからお前たちの足を止めようとするものを拒む動きをしていたんじゃないか?」
竜牙:「!・・そういうことだったのか・・確かにモンスターワールドに行くためには次元の狭間を突き抜けなければならない。意識体の奴がデストロイヤエリアまで足を踏み入れる為にはこの方法しかなかった・・。」
青龍はうなづく。
竜牙:「まてよ?つまり、俺たちは知らず知らずのうちにあいつの封印を阻止するどころかあいつが復活する片棒を担がされていたんじゃ・・。」
青龍:「確証はないがな。」
竜牙:「くそっ!!・・なんだよそれ・・。」
青龍:「話を戻すぞ。だからこそお前の仲間たちには先にデストロイヤエリアに向かってもらうのだ。彼らにはデストロイヤを足止めしてもらう。」
竜牙:「だったら俺も行かせてくれよ!」
青龍:「いやお前には麒麟の間に行ってもらう。」
竜牙:「なんでだよ!」
青龍:「デストロイヤ討伐の成功率を上げるためだ、詳しい話はボスから直接聞くといい。」
竜牙:「デストロイヤを討伐するため?ほんっとに何考えてんだ、麒麟は!」
青龍:「俺から一つ言わせてもらうならボスは意味のない行動は起こさない。今までもそしてこれからもな。」
竜牙:「っ・・・。」
青龍:「さて・・お前の仲間たちをデストロイヤエリアに送り届ける準備に入る。朱雀、玄武、白虎・・俺の声が届いているか?」

白虎の間。
白虎:「炎斬正一、本田雷攻、小池共士郎・・話をした通りだ。これからお前たちをデストロイヤエリアにワープさせる。」

玄武の間。
玄武:「速水智也、神谷朱里、瞳舞・・回復は済んだか?」
速水:「はい、問題はなさそうです。」
神谷:「いよいよね・・。」

朱雀の間。
朱雀:「木嶋夏海、銀河スペード、白鳥百合花・・誰一人欠けることなく無事に帰ってくることを祈っています。」
夏海:「竜・・待ってるからね・・。」

青龍の間。
覇王:「痛っ・・ここはどこだ・・。」
竜牙:「覇王!お前、大丈夫なのか?」
覇王:「あ、ああ・・そうだ、思い出した・・俺は奴に操られて・・。」
竜牙:「記憶が残っているのか?!」
覇王:「ああ・・お前が俺の中にいるデストロイヤを暴いたところまでなら覚えているよ・・ただ、そこから先が思い出せない。」
青龍:「足速師覇王、剣崎竜牙を少しの間預かる。その間、現場の指揮をお前が取れ。」
覇王:「お前は確か・・四聖獣の・・。」
スッ!
覇王の姿が消えた。
竜牙:「お、おい!!」
青龍:「あいつは馬鹿じゃない、詳しく説明せずとも向こうに行けば状況を瞬時に把握し対応してくれるはずだ。」
竜牙:「その焦り方・・マジで時間がねぇんだな。」
青龍:「ああ。さてと、剣崎竜牙・・ボスの元に向かうぞ。」

122話/最終決戦に向けて!

デストロイヤエリア・死の門。
ザーザー。
小池:「うわっ、雨?」
夏海:「ここが・・デストロイヤエリア。」
小池:「木嶋?」
夏海:「小池くん!」
本田:「全員集合か・・。」
スペード:「!ってか・・お前!!」
白鳥:「なんで・・。」
覇王:「スペード・・白鳥・・。」
その声に反応した小池や炎斬、本田が構える!
本田:「白虎の推測通りだと・・あいつは今!」
覇王:「落ち着け!誤解だ!!」
スペード:「何が誤解だってんだ!」
白鳥:「そうですよ!私たち、覇王に操られたんですよ!!」
小池:「!」
炎斬:「ヤロォ・・。」
本田:「丁度いい、ここで始末してやる。」
夏海:「み、みんな待って!」
覇王:「くっ!」
白鳥:「なんで邪魔するんですか!」
スペード:「理解に苦しむ、お前だって被害者だろうが!」
夏海:「ここに飛ばされてきたってことは四聖獣に飛ばされてきたわけでしょ?だったら神の領域にも足を踏み入れているんじゃない?」
スペード:「!」
夏海:「もし・・覇王の中にデストロイヤがまだ潜んでいるのなら神の領域に足を踏み入れることを四聖獣が許可するとは思えないわ。」
白鳥:「っ・・。」
本田:「言われてみれば・・。」
神谷:「さすが夏海っち、冷静な判断ね。」
夏海:「朱里!」
神谷:「私も夏海の意見に賛同するわ。四聖獣が憑依されたままの覇王をここに送りつけるとは思えないもの。」
覇王:「みんな聞いてくれ、お前たちには本当に申し訳ないことをした。この場を借りてお詫びをさせてほしい。すまなかった・・。」
スペード:「ま、マジで正気に戻ってるのかよ・・。」
速水:「オーガブレイクナイトとの戦い以来ですね、こうしてみんなで集まるのも。」
スペード:「速水・・。」
歩いてくる神谷と速水・・その背後から歩いてくるもう一人の人影に小池は気づき、戸惑いをみせる。
小池:「な・・なんで・・。」
瞳:「!」
タッ・・タッタッタッ!!
瞳は小池に駆け寄り、勢いよく抱き着いた!
瞳:「共士郎っ!!」
小池:「っ・・なんで?!!」
速水:「スカルエンペラーの記憶蘇生という術で生き返ったんですよ、瞳さんは。」
小池:「は?!どういうことだよ・・訳が分かんねぇ・・ってかくるしっ・・!!」
白鳥:「あのーひとまえでイチャつかないでもらえますかー?」
速水:「ちょっ、白鳥さん!いいじゃないですか、感動の再会ぐらい。」
白鳥:「もーいいーですかー?」
夏海は額に右手を当てて困り果てた顔をしている。
夏海:「ほんっとにこの子は。」
小池:「ブラッディ、とにかく一旦離れてくれ。」
瞳:「私はもうブラッディじゃないわ。瞳舞・・それが私の名前よ。」
小池:「あ・・悪かった、瞳。」
瞳:「・・・。」
小池:「ここに来たってことはお前も力を貸してくれるってことでいいんだよな?」
瞳:「・・・。」
小池:「お、おい・・?」
夏海:「な、名前で呼んでみたらどう?」
小池:「は?」
神谷:「ほーら!男ならこの程度で恥ずかしがるんじゃないわよ。」
小池:「う、うっせぇな・・ま・・舞?」
瞳:「うん?」
小池:「っ・・。」
神谷:「照れてるの?」
小池:「っせぇ!」
本田:「おい、いつまでそんなことをやってる気だ?」
炎斬:「周りを見てみろよ・・。」
彼らの周囲を覆うかの如く、大量のゾンビモンスターが忍び寄ってくる。
速水:「想像以上の数ですね・・これは・・。」
スペード:「確かこいつ等・・不死身だったよな?」
白鳥:「さらっと背筋が凍りつくようなことを言わないで下さいよ!」
覇王:「スペード、狭い範囲エリア内でのフィールドワープは可能か?」
スペード:「?何をする気なんだ。」
覇王:「デストロイヤに憑依されている時に奴が呟いていた。どうやらこのデストロイヤエリアは4つのエリアに分かれて構成されているらしい。」
スペード:「!」
覇王:「その中でも玉座があるエリア、そこに奴の体が封じ込まれているようだ。」
白鳥:「玉座って・・・なんだかお城みたいですね、ここ。」
スペード:「まさか俺たちを分断させようとしているのか?」
速水:「そんな!ゾンビモンスターがあちこちにいるのにここで戦力を分断するなんて自殺行為ですよ!!」
覇王:「それは違うな、ここに俺たち全員が集まってしまうとゾンビモンスターが一箇所に集中してしまう。となると俺たちは必然的とここで足止めをくらってしまうわけだ。俺たちの目的はゾンビモンスターの討伐じゃない、デストロイヤの討伐だ。なら各々のエリアに俺たちが分断した方が効率がいい。ゾンビモンスターたちの意識を散らつき、数が減れば俺たちもいくらか先に進みやすくなる。」
速水:「それは・・そうかもしれませんが・・。」
覇王:「玉座となるエリアがどこから通じているか分からない以上、これが一番の策だと俺は考えている。みんなはどう思う?」
小池:「なるほど、確かに合理的だ。」
本田:「けど速水の意見も無視できないぞ。」
白鳥:「うん・・ゾンビモンスターの数が減るとはいえ私たちの戦力だってその分削られるんだから。」
速水:「!そうだ・・フィールドワープでその玉座があるエリアにみんなを直接飛ばすことはできないんですか?」
スペード:「無茶言うなよ、そんなピンポイントに座標を合わせられるわけがないだろ。そもそも各々のエリアにお前らを均等に送りつけられるかどうかするら危うい。俺はデストロイヤエリアの構造を知らないんだからな。」
速水:「あ・・そっか・・。」
覇王:「それでも構わない。」
スペード:「?!」
覇王:「一箇所に固まって戦闘を行うよりはバラけた方がいい。どちらにしてもあれだけの数だ、どこに飛ばされようと強行突破は至難の業だ。」
スペード:「ならこのまま全員で進んだ方が・・。」
覇王:「派手に暴れることに意味がある。最初に言っておくぞ、デストロイヤはすでに復活している可能性が高い。」
全員:「「?!」」
覇王:「憑依されていた俺には奴の考えていたことが嫌でも伝わっていた。順を追って説明しよう、どうやら奴は封印が弱まる頃合いを見計らって俺たちセイバーズに接触してきたらしい。そしてその行動には理由がある、一つはモンスターワールドに自らを連れて行ってもらう為、もう一つは・・自らの意識を封印の弱まった肉体に飛ばす為。」
白鳥:「い、意味が分からない・・なんでそんなことを?!」
覇王:「奴の体に掛かっている封印を内側と外側、両方から力を加えることで封印を完全に解く為だ。」
スペード:「そんなことができるのか?!」
覇王:「かつて麒麟は、封印が弱まって溢れ出ようとしていたデストロイヤの力を魔王力で外側から押し戻そうとしていた。デストロイヤもまた同じことを考えていたということだろう。」
小池:「覇王の肉体と自らの意識を引き離されることも織り込み済みだったって言うのか。」
覇王:「ああ、俺たちはものの見事に奴の手の平の上で転がされていたというわけだ。」
速水:「そんな・・。」
覇王:「だからこそ、派手に暴れる必要性があるんだ。そうすれば奴を誘き出せる。」
小池:「誘き出す?」
ゾンビモンスター:「グゥゥゥゥ!!」
速水:「!覇王さん、背後にゾンビモンスターが!!」
クルッ!
覇王は体を半回転させ、構える!
覇王:「奥義・ロイヤルセイバー!」
ズババッ!!
ゾンビモンスター:「アグ・・ゥゥ・・。」
覇王:「邪魔だ。」
ゾンビモンスター:「グアァァァ!!」
覇王:「チッ!」
ゾンビモンスターの反撃を覇王は爆転で回避する!
覇王:「見て分かっただろ?心臓を一突きしたにも関わらずコイツらはピンピンしている、ゾンビモンスターたちを一掃するにはデストロイヤを直接討伐するしか手はない。なら早めに手を打った方がいい。俺たち全員でデストロイヤを探すよりか奴を誘き出し、一気に畳み掛ける!」
スペード:「!なるほど・・分かった、みんな手を繋いでくれ。全員をデストロイヤエリア内にフィールドワープさせる。」
白鳥:「待って下さい!その前に・・。覇王、離れて。一旦、そのモンスターを引き離した方がいいわ。」
覇王:「!」
白鳥:「奥義・レインスカイカリバー!!」
ドバババッ!
白鳥は水分を含んだ水色のスカイカリバーを上空から投げつけてゾンビモンスターを地面に突き刺した!!
ゾンビモンスターA:「アグゥウゥゥ!!」
白鳥:「この大剣は空気中の水分を含んだスカイカリバー、ちょっとやそっとじゃ抜け出せないわよ。」
夏海:「本当に変幻自在ね、その大剣。」
白鳥:「えへへ、剣崎先輩のおじいさんから教わった秘技ですからねって・・あれ?そういえば剣崎先輩はどこに?」
夏海:「ああ・・竜はね・・。」

麒麟の間。
竜牙:「みんな、大丈夫かな・・。」
青龍:「仲間の心配か。」
竜牙:「悪りぃかよ。」
青龍:「彼らもまた成長をしている、簡単にやられたりはしないはずだ。俺はドラゴンソードを通じて断片的ではあるが、お前の仲間たちのことも見ていたからな。例えば・・速水智也。」
竜牙:「速水?」
青龍:「あいつは最初、お前に憧れていた。そんなあいつが今では自分がそうなりたいと思うようになった。剣崎竜牙おまえはいつの間にかあいつの目標になっている。」
竜牙:「二度死にかけたけどな、あいつ。あれで結構無茶するから・・。」
青龍:「まだあるぞ、小池共士郎。あいつはお前と出会うまで自分の弱さを憎み、時として自分自身を追い詰めていた時も見受けられた。だが、お前と拳を交えてからは他人との壁を作らなくなったように見える。むしろ今では積極的に色々な人間と関わろうとしている。分かるか?”個”に執着し、強さに飢えていた彼をお前が変えたんだ。」
竜牙:「俺は何もしてねぇよ、自分を変えていこうと努力しているのはあいつだ。」
青龍:「だが、そのきっかけをつくったのは間違いなくお前だ。お前の仲間は笑えるほどお前に心酔している。お前を心の底から信頼しているのがよく分かる。」
竜牙:「なんだよ、急に。」
青龍:「だからこそお前だけをここに連れてきたんだ。」
竜牙と青龍が開けた空間に出ると、謎の生物が待ち構えていた。
青龍:「?!・・ボス!・・まさか、あなたが自ら姿を見せるなんて。」
竜牙:「ってことは・・あんたが・・・麒麟?!」

123話/麒麟の間

麒麟:「お初目にかかるな、剣崎竜牙。改めて私がセイバーズ、モンスター、四聖獣・・それらすべての生みの親、麒麟だ。」
竜牙:「っ・・眩しいっ・・この輝き・・これが伝説の神様なのか?!」
青龍:「らしくないですね、何かあったんですか?」
麒麟:「デストロイヤの封印が解かれた。」
竜牙:「なっ・・・やっぱり目覚めっちまったのか。」
青龍:「一刻の猶予もないですね・・。」
ハンター:「いや、想像していた以上に事態は深刻だよ。」
竜牙:「ハンター?!」
ハンター:「やぁ、剣崎くん。神風くんたちとは会えたかい?」
竜牙:「あ、ああ・・お前のおかげで助かったよ。」
ハンター:「それは何よりだ。」
竜牙:「なぁ、事態は深刻ってどういうことだよ。」
ハンター:「人間界で大量のモンスターが暴れている。」
竜牙:「は?!なんで・・!」
ハンター:「どうやら僕たちがパラレルワールドやモンスターワールドを行き来きしたことで時空間の歪みが大量に生じてしまったらしい。それも福岡だけに限らず、日本中がパニックになっている。そして、その歪みから通じて暴れているモンスター、コイツの能力が事態をより悪化させているんだ。」
竜牙:「普通のモンスターじゃないのか?!」
ハンター:「君が最初に討伐したあのモンスターだよ。」
竜牙:「!それって顔〇しみたいな・・あの?」
ハンター:「僕もさっき麒麟から教えてもらった情報なんだけど、どうやらあのモンスターは自身の仮面を人間に貼りつけることで増殖できるらしい。もっと簡単に言うなら対象の人間をモンスターに変えることができてしまうんだ。」
竜牙:「なっ・・!け、けど、あいつの戦闘力はそんなに高くないぞ。動きも単調だし歩く速度も人並み以下・・・。」
竜牙は目を見開き、驚愕の表情を見せる。
竜牙:「まてよ・・ま、まさか・・!」
ハンター:「うん。君が討伐した顔〇しみたいなモンスターも元々は人だったのかもしれない・・。補足で説明すると、このモンスターは孤独に飢えている傾向があるそうなんだ。だから・・己の寂しさを埋める為に自ら進んで仲間を作ろうとしているのかもしれない・・。」
竜牙:「んだよそれ、まるでゾンビモンスターじゃないか・・。」
麒麟:「だがゾンビモンスターと違って安易に討伐はできる。」
竜牙:「討伐はできるかもしれない、でも結局それって当人たちも気づいてない内に人間同士で殺し合っているってことじゃないのか?」
ハンター:「・・・。」
麒麟:「それは・・。」
竜牙:「なんで黙りこむんだよ!」
ハンター:「君の言う通りだからさ、実際に戦った君なら分かると思うが見た目だけで元人間かどうかなんて判別がつくはずもない。みんな己の身を守ることで精一杯だろうし、そんな事考えもしないだろうさ。多分・・いやほぼ間違いなくセイバーズたちは知らず知らずのうちに沢山の人を殺しているはずだ。キングダムセイバーズのみんなも含めてね。」
竜牙:「なんでそんなに冷静でいられるんだよ!早く止めないと!!」
ハンター:「どうやって!僕たちは今、モンスターワールドにいるんだよ?その情報を伝える術がないだろ?冷静になれ!!」
竜牙:「っ・・・これじゃあ本当に世界の終りじゃないか。」
麒麟:「デストロイヤを討伐するしかない、討伐してすべての歪みを消滅させなければこの負の連鎖を止める術はない。」
竜牙:「だったら尚更だ!俺をデストロイヤエリアにワープしてくれよ!」
青龍:「落ち着け、言っただろう。お前にはここで成すべき事があるんだ。」
竜牙:「成すべき事?」
ハンター:「君にはこれから戦況を分析し、仲間たちに指示を出して戦況を変える術を身につけてもらう。」
麒麟:「その力のことを私はバトルメイク力と呼んでいる。」
竜牙:「バトルメイク力?」
ハンター:「分かり易く言うならチームの司令塔に必要不可欠な力と言ったところかな。」
麒麟:「天空階段でのオーガブレイクナイトとの戦いを見させてもらった。あの戦いの最中、君にその力の片鱗を私は見た。ぜひとも君に身につけてほしいんだ、その力を。身につけることができればこれから始まる最終決戦で大きな真価を発揮するはずだ。」
竜牙:「そんな時間があるのかよ!」
ハンター:「なら言わせてもらうけど、このままじゃ死人が出るよ。」
竜牙:「!」
ハンター:「デストロイヤはオーガブレイクナイトよりも遥かに強い。今までのような戦い方をしていたら確実に君たちの内の誰かが殺される。」
”殺される”・・今まで、安易に死を想像イメージさせてしまう言葉を発することがなかったハンターがその台詞を吐いたことで、言葉は重く竜牙に突き刺さった。そして、自分がこれからどういう存在と戦うことになるのかを改めて痛感した竜牙の顔は一気に青ざめていく・・。
青龍:「オーガブレイクナイトとの戦いの際は俺たちがお前たちのアフターケアをできたからな。神の領域のおかげで致命傷にならずスムーズな回復ができただけに過ぎない。はっきり言って本来なら死んでいてもおかしくない戦いだったんだ。特に特攻した剣崎竜牙、小池共士郎、本田雷攻、速水智也、そして大量に出血をしていた銀河スペード・・この5人はな。」
竜牙:「・・悪りぃ、言葉に耳を傾けるべきだった。具体的にはどうすればいい?」
麒麟:「お前をこれから私の力の中に閉じ込める。」
竜牙:「力の中に・・?」
麒麟:「的確な指示を出す為には仲間の力を知る必要がある。」
青龍:「幻術を使われるんですね。」
竜牙:「幻術?」
青龍:「ボスが吐き出す炎の中に入った人間は強力な幻術の中に閉じ込められてしまう。気を引き締めろよ、剣崎竜牙。」
ゴクッ・・。
竜牙は思わず息を飲む。
麒麟:「この力を身につけられたと私が判断した時、私の力もお前に託すとしよう。」
竜牙:「!」
麒麟:「ただこの幻術は持って5分といったところだ、その間に身につけられなければこの幻術も意味をなさない。」
竜牙:「-必ず、身につける。向こうで待っている仲間たちの為にも!」
青龍:「俺はまたドラゴンソードの中に身を潜めるとする。見せてもらうぞ、お前の覚悟。」
麒麟は炎を吐く!
ボォォォウウ!!
竜牙の姿は消えてしまった。
ハンター:「どうして剣崎くんに嘘をついたんだ、麒麟。」
麒麟:「?」
ハンター:「君の幻術に時間制限などない。あえて一つ上げるなら君の炎の中に入ったら最後、君が幻術を解くまで出られなくなることぐらいだ。」
麒麟:「だからこそあえてそのことを伏せた。彼は窮地に追い込まれることで潜在能力を開花させる男だ、5分以内という時間制限を設けたのもそれが理由だ。無論、5分が経過すれば強制的に幻術を解かせてもらう、私はそこまでお人好しではない。ただ・・私はもまた彼にデストロイヤ討伐の可能性を少なからず感じている。」
ハンター:「当初、一般人を巻き込むことを拒んでいた君の口からそんな言葉がでるなんてね。」
麒麟:「このままじゃ世界は崩壊していく、信じるしかなかろうあの男を。三島和人、お前にも動いてもらうぞ。彼が戻って来るまでにセイバーズたちがやられてしまっては元もこうもないからな。」

124話/激突!最強竜牙VS仲間たち

本田:「スパークリングサンダー!」
ビリリリッ!!
竜牙:「剣舞眼!」
シュッ!
本田のスパークリングサンダーを竜牙は回避する!
竜牙:「っ・・幻なはずなのに・・本物と戦ってるみたいだ。」
小池:「X技・レボリューションサーガ!!」
竜牙:「超必殺技・ドラグアーマー・バーストモード!!」
ボォォォウウッ!!
竜牙は片手を広げて、ドラグアーマーの炎を一点に手中させる。
竜牙:「くらえっ!」
ボォォォゥ!!
小池:「何っ!」
(俺の力を飲み込んだ?!!)
竜牙:「今の俺は・・誰にも負けない!」
小池:「だったら・・。」
小池はアルティメットフォームに姿を変える。
白鳥:「究極必殺技・サイクロンバズーカ!!」
ドカァァァン!!
不意を突いた白鳥の空気砲が竜牙を弾き飛ばした!!
白鳥:「さすがの先輩もこれなら・・。」
小池:「!」
本田:「姿が消えた?!」
シュッ!!
白鳥:「あれ?風を感じる・・風なんて吹いてないのに・・。」
速水:「!」
(まさか・・!)
竜牙:「今の俺は肉眼じゃ捕えられないぞ。」
ズババッ!!
白鳥:「え・・?!」
白鳥の背中を竜牙はギャラクシーブレードで一刀両断する!
速水:「白鳥さん!」
白鳥:「あっ・・ぐっ・・いたっ・・!!」
速水:「やっぱり・・目に見えない速度で移動しているんだ・・!!」
スペード:「う、嘘だろ・・まさか、白鳥のサイクロンバズーカが発動する前のわずか数秒間の間に高速回避したって言うのか?!」
速水:「ハヤブサランニング!!」
カキン!!
ハイゼルセイバーとギャラクシーブレードが重なり合う!!
竜牙:「!・・俺の動きに合わせてハヤブサランニングを・・。」
速水:「部長、僕たちは幻ですがこのままあっさりと負ける気なんてありませんから。」
カチカチ・・。
竜牙:「!コイツ・・!!」
(地面を伝って氷河転結・絶対零度を!!)
速水:「部長の動きは止めました!覇王さん、銀河先輩!!」
覇王:「出かした!究極必殺技・シャイニングサンバースト!!」
覇王が2本のロイヤルセイバーでクロス字型に空気を引き裂くとものすごい速度で竜牙に空気圧が襲い掛かる!!
スペード:「究極必殺技・ハイパープラネットノヴァ!!」
シュッ・・。
ドカァァァアアン!!!
速水:「よし・・これなら!」
小池:「油断するなよ、追撃だ!!」
夏海:「この機は逃さない、究極奥義・第七の弾・無限弾!!」
ビシュゥゥン!!
夏海の放った弾丸が四方八方に分散し、竜牙に追撃をかける!!
夏海:「全弾命中・・だけど・・。」
(竜は馬鹿だけど機転が効く・・この状況下でも何をしてくるか読めない・・ん?)
小池:「このままトドメを刺してやる。」
夏海:「ま、待って!!」
・・・・・バシバシ・・・。
夏海:「・・・・何か聞こえる・・。」
竜牙:「うおぉぉぉぉっ!!」
ズバ!ズバ!ズバ!ズバ!ズバ!ズバッ!!
土煙が晴れて見えた光景は信じられないものだった。
夏海:「嘘・・私の無限弾を捌いて・・!!」
竜牙は目にも止まらない速さでギャラクシーブレードを振り下ろしてく!
小池:「ブラストクロスパラディンを使って無限弾をすべて弾いてる・・なんつぅ動体視力と運動神経してんだ・・あいつ!」
スペード:「しかも動きに無駄がねェ・・ってことは俺と覇王の攻撃も・・。」
覇王:「いや、俺たちの攻撃はあの目にも止まらない速度で回避したんだろう・・が、夏海の攻撃に関してはスペードの攻撃で足場が崩れている為、回避できなかったのかもしれん。」
夏海:「だから攻撃を相殺する手に出たっていうの?確かに無限弾の光は障害物に当たると様々な方向に反射するわ・・けど竜はその仕組みを知らないはず・・!」
スペード:「・・・剣舞眼かっ・・。」
夏海:「!」
竜牙:「ふぅ・・さてと、1人ずつ終わらせる!」
速水:「ば・・化け物ですね・・。」
炎斬:「けど、あいつの足場は崩れてる。さっきみたいな高速移動はできないはずだ。」
竜牙:「音速青龍ライトスピード。」
スッ!!
速水:「また消えた!」
炎斬:「特攻だ!」
ビシュゥン!!
炎斬はチェンジザバーナーで空中を突き抜ける!!
竜牙:「!」
炎斬:「いくぞ竜牙!!」
竜牙:「来い、正一!!」
炎斬:「ファイアガントレット!!」
バシィィッ!!
竜牙:「超必殺技・ドラグアーマー・ルインモード!!」
カキン!!
炎斬:「?!」
竜牙:「竜装の炎を内部で加熱することで鎧の強度を極限まで上げたドラグアーマー。俺の奥の手ってやつだ。」
炎斬:「硬てぇ・・っ!!」
竜牙:「超必殺技・ドラグアーマー・バーストモード!」
バシィィッ!!
炎を纏った拳が炎斬を空中から地面に向けて叩きつける!!
炎斬:「がはっ!!」
竜牙:「持続性はないけどルインモードは発動時、すべての物理攻撃を無効化する。特攻してくるのは構わないけど、技は考えて使った方がいいぜ?」
竜牙はルインモードを解く。
小池:「この短期間で・・どこまで成長すれば気が済むんだ・・っ!」
夏海:「このままじゃラチが明かないわね。」
神谷:「あのー目で訴えないでくれる?」
夏海:「ごめんごめん!女王守護者セイバーズクイーンのお力をお借りしたいなぁと思って。」
神谷:「って言っても今の竜くん相手じゃ私だって立ち回れないわよ。肉眼で捉えることができなければ、どんなに強力な技を使ったって牽制程度にしかならないわ。」
夏海:「このまま終わるわけにはいかないでしょ、確かに私たちは麒麟が生み出した幻。竜に倒してもらう為に生まれた存在だわ。でも、このままあいつが無双して終わったら・・この戦いは意味を成さない。」
神谷:「そうね・・でも意味のないことはないんじゃない?」
夏海:「?」
神谷:「一人ずつ終わらせるって言ってたでしょ?それはつまり私たち1人1人と向き合うってことなんじゃない?」
夏海:「!」
神谷:「強力な力に身を任せて戦っているわけじゃない、戦いながらちゃんと考えてるわよ竜くんは。」
夏海:「竜・・。」
竜牙:「力を貸してくれ、ドラゴンソード。あまり時間は残されてなさそうだ。」

125話/デストロイヤの秘密

デストロイヤエリア・玉座。
ハンター:「うわっ・・ここは・・。」
(まさか・・いきなりご対面とはね・・。)
ハンターの前でそびえたつ巨大な両足の生えた竜が待ち構えていた。
デストロイヤ:「久しいな、三島和人。」
ハンター:「麒麟もやってくれるね、こんなピンポイントな位置に送りつけるなんて。」
ハンターは周囲を見渡す。
ハンター:(どうやらこのエリアにはまだ誰も来ていないようだ・・不幸中の幸いといったところか。)
デストロイヤ:「俺が復活していることには疑問を持たないんだな。」
ハンター:「調べはついてるからね、君が覇王に憑依して暗躍していたことも麒麟から聞いたよ。」
デストロイヤ:「ククク・・おかげで久方ぶりの肉体の中に戻ることができた。お前たちセイバーズには礼を言う。」
ハンター:「復活して早々悪いけど、君が生きていると世界の崩壊が加速してしまう。ここでケリをつけさせてもらうよ。」
デストロイヤ:「お前一人で俺を相手にするのか?随分と舐められたものだな。まぁそもそもな話、俺の鱗を加工し、剣の刀身に変えたあげくその剣を剣崎竜牙に渡している時点で元から挑発されているようなものだがな。人間風情に俺の力を受け渡した罪は重いぞ。」
ハンター:「・・気づいていたのか。」
デストロイヤ:「あいつには話してないんだろ?それにしても残酷なやつだ、目には目を、デストロイヤにはデストロイヤの力を・・ってか?夢にも思うまい、自分の使っているドラゴンソードがあろうことか・・討伐しようと目論んでいた宿敵の力そのものだなんて。」
ハンター:「戦いに勝利して得た力をどう使おうと僕の勝手だ。」
デストロイヤ:「違うな、俺は負けていない。あの日、俺の力に屈したのはお前たちハイソルジャーの方だ。」
巨大なドラゴンは雄叫びを上げる!!
ハンター:「くっ・・目の前に立っているだけでこの殺気・・嫌でも5年前のあの日を思い出す。」
デストロイヤ:「さてと、どうやら俺の城に鼠が数匹迷い込んでいるようだ。丁度いい、三島和人・・お前に選ばせてやろう。ここまで俺を連れてきてもらった礼も兼ねてな。」
ハンター:「何?」
デストロイヤ:「鼠たちの命とお前自身の命、どちらか一方は見逃してやろう。」
ハンター:「!」
デストロイヤ:「ただし、選ばなかった方に残された道は”死”だ。」
ハンター:「そんなの選ぶ必要はない、君はここで僕に討伐されるんだからね。」
デストロイヤ:「冷汗をかいてるじゃないか、ククク・・。」
ハンター:「・・っ・・。」
デストロイヤ:「言っておくが選択しないのならば皆まとめて皆殺しになるが、それでもいいんだな?」
ハンター:「放っから両方殺すつもりなんだろ?お前はそういうやつだ。生物を殺すことを快楽とし、対象の相手を精神的に追い込んで追い込んで・・完全に心を支配した上で引導を渡す最低で卑劣なモンスターだよ。そもそもお前に彼らの未来これからを奪う権限はない!」
デストロイヤ:「ならお前たちにも俺の命を奪う権限はない、下等生物が・・。」
ハンター:「最初に危害を加えたのはお前だ、だから僕たちはお前を危険因子と見なし戦ったんだ!」
デストロイヤ:「食物連鎖だ・・腹が減っていたんだ、しょうがないだろ?」
ハンター:「人の命を・・なんだと思っているんだっ!!」
デストロイヤ:「ハッ・・手が震えているぞ。体は随分と正直じゃないか。」
ハンター:「くっ・・。」
(まずい・・デストロイヤは人の恐怖心や絶望した感情をエネルギーとして増幅させ力に変える。このままだと・・くそっ!分かっていても・・・体が身震いしてしまう、防衛本能が無意識の内に働いているのか?)
デストロイヤ:「まずは準備運動といこうじゃないか。」
ハンターの前に数百匹のゾンビモンスターが一瞬で姿を現した!
ハンター:「な・・っ!!」
デストロイヤ:「さぁ、こいつらを退いて俺の元に来るがいい。」
ハンター:「真ガイアソード!!」
ズババッ!!
ゾンビモンスター:「ギシャァァァアア!!」
ハンター:「くっ・・次から次へと!!」
ゾンビモンスター:「ギシャァァァアア!!」
ハンター:「キリがない・・こうなったら・・。」
ハンターはガイアソードを体に取り込む!
デストロイヤ:「何?!」
ハンター:「ガイアフォースリフレクト!!」
ピカァァァアン!!
デストロイヤ:「うっ・・眩しっ・・!」
(そうか、ガイアソードの力を取り込むことで体が太陽の光を纏って・・!)
ハンター:「このままこの光ですべてのゾンビモンスターを焼き払う!うぉぉぉぉっ!!」

デストロイヤエリア・死の門。
覇王:「奥義・ロイヤルセイバー!」
神谷:「X技・ホーリーブースト!」
速水:「斬ハイゼルセイバー!」
ズバッ!
ドカァン!!
ズババッ!!
覇王:「ハァハァ・・。」
神谷:「疲れるわ、ほんと・・。」
速水:「これで何体目ですかね・・。」
神谷:「ってかデストロイヤの影が全然見当たらないんだけど!」
覇王:「これだけ派手な技で暴れているのにアクシデント一つないなんてな・・・もしかしたらすでに誰かと交戦中なのかもしれん。」
速水:「嘘でしょ・・これじゃあ分断した意味がないじゃないですか!」
覇王:「やむを得んだろ、ともかくこいつらをなぎ倒しながら少しずつ道を切り開いていくしかない!」
神谷:「作戦が裏目に出ちゃうなんてね、みんな無事だといいけど。」
覇王:「あいつらはそう簡単にやられる玉じゃないさ、そんなことよりまずは自分の身を守ることを徹底した方がいい。油断していたら隙をつかれるぞ!」
速水:「あーもう!こんなところで体力を消耗している場合じゃない、一撃で決める。超必殺技・ハイパーブリザード!!」
シュゥッ・・・・・・フォォォォォオォォォウウウ!!
速水の冷気が周辺のゾンビモンスターを一瞬にして氷漬けにした!
神谷:「すごい・・!」
速水:「ハァハァ・・長くは持ちません、今のうちにここを突っ切りましょう。」
覇王:「恩に着るぞ、速水!」

デストロイヤエリア・殺離さくりロード。
本田:「ここってエリアの内部なんじゃないか?」
炎斬:「うわ・・ゾンビモンスターで道が塞がっている・・。」
小池:「強行突破しかないみたいだな。」
小池はアルティメットフォームに姿を変える。
小池:「死ぬなよ、本田、炎斬!」
本田:「死ぬつもりなんざねぇよ、お前こそ無茶すんなよ。」
炎斬:「姉ちゃん、俺に力を貸してくれ。」
瞳:「私のことも忘れないでよね。」
小池:「舞?!」
瞳:「広範囲攻撃で私が突破口をつくるわ、あまり長くは持たないけどあなたたちならそのわずかな間を使ってこの道を突き進んでいけるはず。私はあなたたちの後方支援に回る。」
本田:「そいつは助かる!」
炎斬:「んじゃ、始めようぜ!」
小池:「無茶はするなよ。」
瞳:「バカね、ここは出し惜しみなしで駆け抜けるところで・・しょっ!!」
瞳の発動したビックバンドラゲリオンが周辺のゾンビモンスターたちを消し飛ばしていく!!
バァアン・・ドカァァァアアアン!!
炎斬:「す・・スゲェ・・。」
瞳:「ほら!ぼさっとしないで!!」
小池:「ああ・・。」
スゥ~。
3人は一呼吸置き・・大群の中を目掛けて駆け出す!
小池:「うぉぉぉっ!!」
本田:「うぉぉぉっ!!」
炎斬:「うぉぉぉっ!!」

デストロイヤエリア・玉座前決闘広場。
夏海:「な・・何なのここ・・。」
スペード:「コロシアムのようだが・・これは。」
白鳥:「とんでもないところに飛ばされたみたいですね・・。」
3人が見下ろすと、コロシアムを埋め尽くすゾンビモンスターの大群が待ち構えていた!
夏海:「そのようね、流石にこれだけの数が集まると気持ち悪いわ。」
白鳥:「まるでゴ〇ブ・・。」
夏海:「それ以上は言わなくていいから!」
スペード:「けど・・あれを見てみろ。」
白鳥:「あ!一箇所だけ螺旋状の階段に続いている入口がありますよ!!」
夏海:「ってことはあの先に玉座が・・。」
スペード:「ああ、あるかもしれねぇな。」
白鳥:「究極必殺技・サイクロンバズーカ!!」
ドカァァァン!!
夏海:「ちょっ!!」
ゴゴゴゴゴ・・!
スペード:「足場が・・お前何考えてんだ!」
白鳥:「何って・・ゾンビモンスターを粗方吹っ飛ばしたんですよ。あんなのを一体一体相手してたらキリがないもの。」
夏海:「やり方ってもんがあるでしょ!」
白鳥:「私、さっさとこんな陰湿臭いとこ抜け出したいんですよ。先輩たちだってそうでしょ、さくっとデストロイヤ殺ってさっさとズラかりましょうよ。」
スペード:「おま・・簡単に言ってくれるな。」
白鳥:「あれ?まさか花音先輩に思いを伝えないままこんなところで息を引き取るおつもりですか~?」
スペード:「ちょっ・・おま、なんでそれを・・!」
白鳥:「見てたら分かりますよー。」
スペード:「くっ・・。」
夏海:「全く・・縁起でもないこと言わないでよ。」
白鳥:「・・冗談なんかじゃありませんよ、本気でここを突破したいのなら本気で生にしがみつかないとたぶん生き残れません。」
白鳥が指を差すと・・バラバラに吹き飛ばしたはずのゾンビモンスターたちがそこらじゅうが溢れ出てきた!
夏海:「嘘でしょ・・あの空気砲を受けたはずなのにピンピンしている。」
スペード:「いや!あれは白鳥が吹き飛ばしたゾンビモンスターじゃない!」
白鳥:「デストロイヤは恐らく壁や地面を伝って力を流しゾンビモンスターを休むことなく造り出しているんです。だから・・。」
白鳥は夏海とスペードの方を振り返る。
白鳥:「今のうちに伝えておきますね、私が死ななくても木嶋先輩は死んでください。」
夏海:「は?」
白鳥:「いや~死んでからだと私の強い想いを伝えられないじゃないですか、だからこの場を借りて。」
夏海:「は?」
スペード:「え、何その・・私の事は嫌いでもAKBの事は嫌いにならないで下さい的な・・。」
夏海:「お・あ・い・に・く・さ・ま。私、こんなところで命を落とすつもりなんでないから!」
白鳥:「あら~それは残念。」
夏海:「心配しなくてもあなたの溢れんばかりの嫉妬心や憎悪は痛いほど伝わってるわよ。」
白鳥:「おお!継続は力なりとはよく言ったものです、諦めずに思いを伝える努力を怠らなければ報われるんですね!」
夏海:「ハァ~思いを伝える努力をはき違えているけどね。」
白鳥:「先輩!」
夏海:「今度は何よ!」
白鳥:「私、先輩と剣崎先輩の仲にチャチャ入れる事が生きがいになってるんです。だからこんなところで死にたくありません。」
夏海:「それ生きがいにするの、やめてくれる?!」
スペード:「お前ら、こんなときまで何やってんだホント・・。」
白鳥:「だから・・半分力を貸せ・・です。」
白鳥は小声で呟く。
夏海:「全く・・しょうがない子ね。」
スペード:「やべぇな・・このままだと入口が塞がってしまう。」
白鳥:「問題ありませんよ。」
夏海:「私たちがサポートに回るわ、先陣切って道を切り開いてくれる?」
スペード:「大丈夫か、すでに四方を囲まれてるぞ。」
ドッカァアン!!
白鳥のサイクロンバズーカがゾンビモンスターを吹き飛ばしていく!!
スペード:「おっつ・・。」
白鳥:「私、こんなところで死ぬつもりないんで。」
夏海:「どんだけ私と竜の仲を引き裂きたいのよ・・。」
白鳥:「そっちは任せましたよ、せ~んぱい?」
夏海:「はいはい。」

126話/竜牙と鳥牙の過去 悲しい事実編

日本・福岡。
鳥牙:「まさに世界恐慌だな。人々はモンスターから逃げる回るばかり・・デストロイヤが復活したのかあるいは次元の狭間が大量に出現してしまったのか・・。」
モンスター:「キシャアアア!!」
鳥牙:「ウイングスパイラル!!」
ズババッ!!
鳥牙:「・・数が多いだけで戦闘力や知能は低いのか、なら日本の自衛隊でも多少は立ち回れそうだな。」
桜:「さすがは竜牙のお兄さんってところですね。」
鳥牙は慌てて振り返る!
鳥牙:「誰だ?」
桜:「初めまして。光ヶ丘学院生徒会長、桜優香です。」
鳥牙:「光ヶ丘の・・ってかお前、こんなところをウロウロしていたら危ないぞ!」
桜:「慣れてますから、こういうのには。」
鳥牙:「いやそういう問題じゃないだろ。」
桜:「探していたんです、あなたのことを。」
鳥牙:「俺を・・?」

夏海:「竜、鳥牙さん・・そのお兄さんはあれからまだ・・?」
竜牙:「全っ然姿を現さねェ。あのバカ兄貴、帰ってきた瞬間にぶん殴ってやる!」
速水:「部長、どぅどぅ・・。」
竜牙:「まさか兄貴がセイバーズだったなんてな、全く知らなかった。」
桜:「せ~んぱい!新年そうそう気を荒立ててもいいことないですよ~。楽しみましょう、ね?」

桜:「私、ずっと気になっていたんですよ。竜牙はあなたのことになるとすごく切なそうな顔をして考え込むんです。あなたと竜牙の間には何かがある。そう踏んだ私は探りを入れていました。」
鳥牙:「これは俺たちの問題だ、あんたが首を突っ込んでいい問題じゃない。」
桜:「私、興味あることにはのめり込んじゃうタチなんです。それこそ人のプライベートな内容まで気になったら探りをいれちゃうぐらい自制心が効かなくなるんですよ。」
鳥牙:「開き直るな、いいか?人には触れてはいけない部分がある。俺はそこに土足で踏み入るのはお門違いなんじゃないかと言っているんだ。」
桜:「す、すみません!まさかあんな事情があったなんて思いもしなかったので。」
鳥牙:「お前・・一体どこまで調べ上げたんだ、俺たちの事を。」
桜:「2年前・・。」

桜:「あれ、ノートが落ちてる・・。」
廊下に落ちていたノートを桜は拾う。
桜:「すごいこのノート・・内容的に剣道をしている人の物かな。沢山書き込まれてる・・。」
竜牙:「あっ!そっ、それ!」
パシッ。
竜牙が慌てて桜からノートを奪う。
竜牙:「な、中身・・見ちゃったか?」
桜:「ご、ごめんなさい。」
竜牙:「み、見られたぁ。いや落とした俺が悪いよな・・ありがとう、拾ってくれて。」
桜:「それ・・あなたが書いたの?」
竜牙:「あ・・あはは・・。書いたというか、ずっと剣道をやってたらいつの間にかこういうノートが出来てたんだ。きっかけは上手い人の動きとか全部書き記しるしていこうと思ったのが・・って、初対面の人に俺何言ってんだ。悪りぃな、余計な時間を取らせてしまった。」

桜:「竜牙はそう言ってたけど、あのノートにはある技を扱う為の注意点がいくつも書き記されていた。」
鳥牙:「!オールクロスジェネレートの・・。」
桜:「あ、そうです!そのオールクロスなんとかっていう技のことです!それから私は夏海のおばちゃんに竜牙のおじいさん、誠一さんのことを教えてもらい、長崎に足を運びました。」
鳥牙:「なるほどな・・じいちゃんから話を聞いたわけか。」
桜:「例の技について尋ねたらおじいさんは隠すことなくすべてを教えてくれました。」

誠一:「ほう・・あの竜牙が怪物と戦っておるのか。」
桜:「はい、先輩はきっとこれからもっと強大な敵と戦っていかなければならなくなると思うんです。だから・・。」
誠一:「わしから手助けできることは何もない。先にも話したと思うがあの技は竜牙自身が自分で考えて身につけなければならない技じゃ。それにしてもまだあの技を諦めてなかったとは・・余程、あの究極奥義に強いこだわりがあるんじゃな。」
桜:「・・彼のお兄さんが関係しているんですか?」
誠一:「・・・。」

鳥牙:「まさかあいつ・・今でもあの技を追いかけて・・。」
桜:「あの技を身につける事であなたに追いつこうとしていたのかもしれませんね。」
鳥牙:「それは・・どうかな・・。」
桜:「鳥牙さんもセイバーズなんですよね?」
鳥牙:「!じいちゃんはセイバーズのことは知らないはず・・。」
桜:「竜牙が言ってました。」
鳥牙:「・・そうか。」
桜:「鳥牙さんは何でセイバーズになったんですか?」
鳥牙:「・・・。」
桜:「あ・・私ったらまた・・!」
鳥牙:「・・しいて言うなら仲間を助ける為・・かな。」
桜:「?!」
鳥牙:「あんたももう知っているんだろうが・・俺は・・。」
桜:「あ、えと・・剣崎家の養子なんですよね。」
鳥牙:「ああ。当時はその事がきっかけで暴れていたんだ・・俺。」


剣崎鳥牙 -当時十五歳。

前島:「やったな鳥牙、この成績を維持できればあの光ヶ丘学院に推薦で行けるかもしれん。」
鳥牙:「え?!あの光ヶ丘ですか!」
前島:「ああ、まぁ生活態度は改めなければならないが・・。」
鳥牙:「うぉぉぉっ、前島ぁぁぁぁああ!!」
前島:「前島先生と呼ばんか!」
当時の俺はチャラついてて素行不良の傾向のある生徒として有名だったんだ。それでも高校だけはどうにか進学できるよう勉強だけはクラスの連中に負けないように取り組んでいたんだ。
大島:「お前、光ヶ丘を狙えるって言われたのか?」
鳥牙:「ああ、光ヶ丘って言えば名門中の名門高だ。俺がそんなところを狙えるなんてホント奇跡みたいな話だぜ。」
大島:「んなことねぇよ、おめぇが影で努力してたのを俺は知っている。おめぇは自分が思っているよりも凄い奴だよ。」
鳥牙:「そ、そうか・・。」
大島:「・・喧嘩はやらねぇようにしねぇとなんねぇな。」
鳥牙:「・・そうだな。」
大島:「それ親御さんには伝えたのか?」
鳥牙:「これから伝えに行く。」
大島:「へっ、そうか。そいつぁきっと喜ぶぜ。」
鳥牙:「飢餓、お前は?」
大島:「俺は白金学院に進学するつもりだ。」
鳥牙:「白金?お前、ヤンキーを続けるつもりなのか?」
大島:「ああ。俺にはぁ真面目とか性に合わねぇよ、俺は不良やつらの中で一番てっぺんを取る。やるからには全力だ、お前に負けていられないからな。」
鳥牙:「そっか・・頑張れよ、飢餓。」
大島:「お前もな、鳥牙。」
剣崎家。
鳥牙:「ただい・・。」
(なんだ・・竜牙の奴部屋のドア開けっぱなしじゃないか。)
鳥牙は竜牙の部屋に入り、窓を閉めようとする・・。」
スルッ!
鳥牙:「うわぁっ!!」
鳥牙は竜牙の机の上に敷いてあったデスクマットで手を滑らせてしまい机に額を打ちつけてしまう・・。
ドカッ!
鳥牙:「痛っ!・・いてぇ・・ん?」
どうやら鳥牙は竜牙の机の引き出しが二重底になっていることに気づいたようだ。
鳥牙:「・・・。」
”何か”を隠してある・・咄嗟にそう考えた鳥牙はマイナスドライバーで二重底を開けることにした。
そして・・。
鳥牙:「これ・・封筒?なんでこんなもんをしまい込んでんだ・・あいつ。」
鳥牙は封筒の中身を取り出し、内容に目を通していく・・。
鳥牙:「・・・!!」
(んだよ・・これ・・!)
楓:「ねぇ、まだあの子のことを信じてないの?」
鳥牙:「!・・母さん?」
母親の声を聴いた鳥牙はそっとリビングに忍び寄る。
圭介:「中三の大事な時期になっても尚、チャラついた連中とつるんでいるような奴だぞ?呆れて物が言えない、あいつには受験生の自覚がまるでない!」
楓:「やっぱり鳥牙を養子として引き取ったのがまずかったのかしら・・竜牙は剣道で成功をしているっていうのに・・。」
鳥牙:(養子・・!ってことはこの手紙に書かれている内容は本当なのか?!)
圭介:「血が繋がっていないとなかなかうまくいかないものだ。」
楓:「あなた!」
圭介:「・・・すまん、今のは俺が悪かった。」
鳥牙:「ちょっと待てよ!」
圭介:「?!」
楓:「ち、違うのよ鳥牙・・今のは・・。」
鳥牙:「答えろよ・・。」
楓:「ち、鳥牙・・!」
鳥牙:「養子ってなんだよ?!ちゃんと説明しろよ!」
楓:「落ち着いて・・ね?」

鳥牙:「答えろよ!!」

圭介:「・・。」
楓:「分かったわ・・。」
圭介:「お、おい楓・・。」
楓:「鳥牙、あなたは私たちと血が繋がってないの。」
鳥牙:「・・・っ・・。」
楓:「あなたの本名は山内鳥牙。あなたは幼い頃、オーロラ島で起こった震災のせいで両親を失った孤児なのよ。」
鳥牙:「な・・。」
楓:「あの日のことは今でも忘れない。あなたの父親は逃げ遅れたあなたを守る為に瓦礫の下敷きとなって息を引き取ったわ。私たちは避難勧告に従って避難しているところで偶然、その現場に立ち会ったの。その時にね、まだかろうじて意識のあったあなたの母親にあなたを託されたのよ。私たちの子を一緒に連れてってくださいって。この子の名前は山内鳥牙・・私たちのかけがえのない大切な息子です。この子の人生はこれからなんです!こんなことでこの子の未来を奪いたくない!!どうか、この子のことをお願いできないでしょうか?・・って。」
鳥牙:「・・なんだよ・・それ・・。」
楓:「・・。」
鳥牙:「なんでそんな大事なこと・・今まで黙っていたんだよ!」
楓:「それは・・。」
圭介:「まだ言うべき時ではないと判断した。それに言ったところでお前はこの現実と向き合えたか?」
鳥牙:「そういう問題じゃないだろ!俺が気づくまでこのことをずっと隠し通すつもりだったのかよ。」
圭介:「・・・すまない。だが・・まだ中学生の身であるお前にこの事を告げるにはあまりにも酷すぎて・・ずっと言えないでいた。」
鳥牙:「なんでだよ!腹くくって話せよ!隠し通すことで俺が幸せでいられるとでも思ったのか?先延ばしにしたって俺があんたらの養子ならいつかは受け入れなければならない事実じゃないか・・。」
圭介:「っ・・。」
鳥牙:「まさか父さんと母さんが生みの親じゃないなんてな・・そんなこと考えたこともなかったよ。今だに信じられない・・。」
楓:「鳥牙・・。」
鳥牙:「あんたらは俺の事を思って隠してたんだろうけど、それは違う!本当の両親の死は俺が受け入れなければならない真実だ。あんたたちにはその事実を伝える義務があるし、血の繋がりがある俺にはその事実を知る権利がある。それによ、今割り切って言えなかったら俺が大人になればなるほど言いづらくなる。考えたら分かるだろ、そんなこと・・もしそうなってたら、俺はずっと本当の両親のことを知らないまま生き続けていたかもしれない。あんたたちがしようとしていたことはそういうことなんだぞ、分かってるのか?」
圭介:「-それでいいじゃないか。」
鳥牙:「なっ・・!」
圭介:「確かにお前はうちの者とは血が繋がっていないのかもしれない。だが俺たちは同じ時間を共に過ごしてきた家族だ。そんな辛い過去を振り返るより今を生きた方が楽しくないか?」
鳥牙:「ふ・・・・ふざけるな!!」

127話/竜牙と鳥牙の過去 暴走する鳥牙編

鳥牙:「それはあんたらの勝手な都合だろうが!息子の俺が両親の死を知らずにあろうことか本当の両親すら知らないまま生きていたら天国にいる俺の本当の親が報われねぇんだよ。そっちの方がよっぽど酷な話だぜ。腹痛めて生んでくれた母さん、命を賭して俺を守ってくれた父さん・・どっちも俺がこれからの人生を歩む上で忘れてはいけない大事な人だ。人は亡くなっても大切な人の中で生き続けることができる、そんな二人を俺の中でまで死なせたくねぇんだよ!!」
楓:「・・・!」
楓は両膝を床につけ、倒れ込む・・。
楓:「ごめんなさい・・ごめんなさい・・っ!!」
圭介:「お、おい・・楓!」
鳥牙:「あんたらの行動は全部自己満足でしかない。何が俺の幸せのためだ・・真実を知った俺が何をするか恐かっただけだろ・・不良だからか?昔っから違和感はあったよ、竜牙にだけはやたらと優しかったもんんな、あんたらは。すべてに合点がいく・・そりゃあ我が子の方が可愛いわけだ。」
楓:「ごめんなさい、鳥牙っ・・!」
圭介:「・・。」
鳥牙:「今更謝ったって俺の腹の虫が収まんねぇんだよ!」
楓:「ちょっ・・どこに行く気?!」
鳥牙:「こんな家にいたら俺の性根が腐っちまう・・。」
圭介:「ま、待ちなさい鳥牙!」
鳥牙:「うっせぇ!今更父親面すんじゃねぇ!!」
圭介:「っ・・!」
鳥牙は通学カバンを放り投げて自分の部屋に戻り、必要最低限の物をまとめていく・・。
楓:「!」
圭介:「どうした楓?」
楓:「コレ・・。」
楓は通学カバンから一枚の紙を取り出した。
圭介:「!」
楓:「進路調査書・・公立に東東京高等学校・・私立に光ヶ丘学院。」
圭介は驚愕の表情を見せる。
圭介:「どっちも偏差値の高い有名な高校じゃないか・・。」
楓:「私たちが間違ってたのね・・チャランポランしててもあの子はあの子なりにちゃんと進路の事を考えていたのよ・・私たちは鳥牙の外面ばかりを見てあの子の内面を見ようとしてなかった・・。」
圭介:「俺たちは・・何も見えてなかったのか・・・。」
楓:「私、鳥牙を止めてくる!」
圭介:「お、おい!」
鳥牙は玄関まで駆け出す!
楓:「待って!」
鳥牙:「なんで追いかけてくんだよっ・・!!」
ガチャッ・・。
竜牙:「ただいま~。」
鳥牙:「!」
楓:「!」
鳥牙:「・・竜牙・・お前は・・前を向いて生きろよ。」
スッ・・。
竜牙は玄関を開けて家に入ると同時に鳥牙とすれ違う。
竜牙:「え、ちょっ・・どうしたんだ兄貴?」
楓:「竜牙・・。」
竜牙:「母さん・・一体・・。」
楓:「あ・・あの子にすべての真実を知られちゃった・・。」
河川敷。
鳥牙:「なんだよ・・一体何なんだよ!!俺が・・養子?本当の両親はすでに亡くなっている?俺は剣崎家の人間じゃない?意味が・・意味が分からねぇんだよ!!」
鳥牙は一枚の写真をポケットから取り出す。
鳥牙:(あの手紙と同封されていた一枚の写真・・。手紙の内容によればこの写真に写っているのは俺の本当の両親・・ってことになる。そして一緒に写っているのはまだ幼かった頃の俺だ・・。どういった経緯で竜牙がこの手紙と写真を所持していたかは分からねぇが、手紙の内容に偽りがなければ震災後遺体で発見された母さんの所持品である手帳に挟まっていたんだよな。だとしたらコイツは俺にとって最初で最後の家族写真だ。・・大切にしないと・・。)
橋爪:「あれぇ?お前、朝日東中の剣崎?」
鳥牙:「あ?だったら何だよ、てめぇみたいなのに構っている余裕なんざねぇんだよ。」
(橋爪か、今まで受験を控えてたから喧嘩は控えていたが・・もうどうでもいいや。こいつで腹の虫を抑えてやる。)
橋爪:「なんだと?」
鳥牙:「黙って道を開けろ、そしたら見逃してやる。」
橋爪:「舐めやがって・・俺を誰だと思って・・!」
鳥牙:「赤羽中三年の橋爪。すでにこの近辺のヤンキーを舎弟につけているすご腕のつっぱり・・だろ?」
橋爪:「んだよ、よく知ってんじゃねぇか。丁度い、お前をやっちまえば100人目に到達するわけだ。俺の足元に膝まつくヤンキーはよォ!!」
鳥牙:「御託はいいからやるならさっさと来いよ、返り討ちにしてやる。」
橋爪:「どこまでも上から目線なヤロウだ・・お望み取りボコボコにしてやるぜ。」
鳥牙:「お前の連勝記録を99で止めてやるよ。」
橋爪:「どこまでも気に触るヤロウだ・・おらぁっ!!」
パシッ!
橋爪の拳を鳥牙は片手で握り締め、止める!
橋爪:「な・・俺の拳をいとも簡単に・・。」
鳥牙:「この程度か?」
橋爪:「くっ・・おらぁぁっ!!」
ドカドカドカドカッ!!
橋爪が拳を繰り出すよりも素早く拳を繰り出していく鳥牙・・橋爪は血反吐を吐く!
橋爪:「ぐはっ・・!」
鳥牙:「ハッ!どうした?もっと楽しませろ・・よっ!!」
バシィツ!!バシッ!!
鳥牙の容赦のない蹴りが橋爪のふくらはぎを痛めつける!
橋爪:「ぐあぁあぁああっ!!」
静まり返った河川敷で橋爪の悲鳴が響き渡る・・そして。
鳥牙:「は~これで終いだ。」
橋爪:「ぐふっ・・もう・・勘弁してくだしゃい・・。」
鳥牙:「ハッ・・最後まで締まんねぇヤロウだな。すぐ楽にしてやんよ・・。」
バシィン!!
鳥牙の不意を突いたかかと落としが橋爪の背骨を粉々に砕いた!
橋爪:「ぐああああああああああっ?!!!」
翌日・・。
前島:「馬鹿野郎!なんで・・なんで今になって喧嘩なんてしたんだ!」
鳥牙:「・・。」
前島:「答えろ!」
鳥牙:「悪りぃ・・前島。」
前島:「これでお前に上がっていた推薦の件はすべて水の泡になった。お前は昨日まで確かにあった輝かしい将来への道を自ら断ったんだぞ?親御さんにどう説明する「あいつらを親扱いすんじゃねぇ!!」」
前島:「な・・。」
鳥牙:「あいつらは俺の親なんかじゃねぇ!前島ァ、てめぇも実は知ってたんじゃねぇのか?俺が剣崎家の養子だってことを。」
前島:「まさか・・お前・・それが原因で・・。」
鳥牙:「俺の質問に答えろ、前島。」
前島:「・・家庭訪問の際にお前の家を訪ねた時、母親からすべてを聞かされていたよ。私は知っていた。」
ガシッ!
鳥牙は前島先生の胸ぐらを掴む!
鳥牙:「てめぇ・・なんで知ってて黙っていたんだよ。」
前島:「言えなかったんだ!」
鳥牙:「あ?」
 
128話/竜牙と鳥牙の過去 最高の友達編

前島:「お前の母親が何度も何度も頭を下げたんだ。この事は黙っててほしいって!」
鳥牙:「あのヤロォ・・。」
鳥牙は前島先生を掴んでいた手を離し、職員室を飛び出そうとした。
前島:「待ちなさい、剣崎!」
鳥牙:「大概ぶっとばさねぇと気が済まねぇんだよ、あのヤロォ・・どこまでも!」
前島:「お前の母親は分かっていたんだ、この真実を知った時にお前がこうなることを。だから受験を控えているこの時期にお前を取り乱さないようずっと黙っていたんじゃないのか?」
鳥牙:「違うな、あいつらは俺に本当の親のことを話さないまま新しい家族としての記憶だけを植え付けて山内鳥牙の存在を無かったことにしようとしていた。辛い過去を振り返るより今を生きた方が楽しくないか?って俺に問いかけていたから間違いねぇよ。」
前島:「それは無かったことにしようとしていたわけじゃない、中学生のお前が受け止めるにはこの話は重すぎると判断したんだろうな。私が剣崎さんの立場でも苦しんだだろうさ、いずれ伝えなければならないこと。それは分かっている・・だけど、伝えればお前がどれだけショックを受けるか計り知れない。苦しむお前の顔を見るぐらいなら・・ってそう思ったんじゃないのか?」
鳥牙:「もううんざりなんだよ、そういうのは!本当の両親のことも・・両親が亡くなったことすらも知らないまま平然と生き続ける方が俺には辛いよ。」
前島:「・・剣崎。」
鳥牙:「なぁ前島、新しい家族ってのは俺が本当の両親の死を受け入れた上でなれるものなんじゃないか?俺はそう思う・・違うのか?」
前島:「っ・・。」
鳥牙:「じゃあな、前島。俺、学校辞めるよ・・ここを退学して白金に進学するわ。」
前島:「し、白金?!あんな学校ところに行ったら人間が腐るぞ?」
鳥牙:「もう十分腐ってるよ!」
鳥牙は職員室を後にした。
前島:「お前は腐ってなんかないよ剣崎。見た目はヤンキーでも中身はそこらの優等生よりずっと大人だ。
ハァ~でもご両親の気持ちも理解できるんだよなぁ・・。お互いにすれ違っているというか・・けどあいつは今傷ついている・・何よりも優先させなきゃいけないことはあいつの気持ちだ・・全く、親の心子知らずとは言うがこれじゃあ子の心親知らずだよ・・。」

鳥牙:「前島には悪いことしちまった・・。」
大島:「いた!鳥牙!!」
鳥牙:「飢餓?」
大島:「お前、何してんだよ・・せっかくこれまで頑張って来たのに喧嘩なんかして・・。」
鳥牙:「飢餓、俺・・養子なんだってさ。」
大島:「え?」
鳥牙:「本当の両親は何年も前の震災で既に亡くなっているんだと・・。」
大島:「・・一体、何があったんだ?」

鳥牙:「少し後悔しているよ。今でもあそこで喧嘩なんて起こさなければ俺の人生は大きく変わっていたかもしれないって・・。」
桜:「本当に少しなんですか?」
鳥牙:「白金はヤンキー校だからな。知り合いも沢山いたし、居心地は悪くなかったんだ。」
桜:「その・・ご両親には白金に進学することを伝えたんですか?」
鳥牙:「伝えたよ、俺の背中を押してくれたダチがいたんだ。」
桜:「親友ってやつですか?」
鳥牙:「ああ、違いねぇ。」

129話/鳥牙の心の象徴・絆の証

大島:「そっか、それで家を飛び出してきたんだな。」
鳥牙:「あいつらと同じ空間に居たくなかった。」
大島:「まぁ、そんなこと聞かされた後じゃ平常心じゃいられないわな。ってかお前、今はどうやって生活してんだ?」
鳥牙:「ネカフェに通い詰めてるよ。バイトをしてるとはいえいずれ今の収入だけじゃ追いつかなくなるだろうから学校も退学することにした。明日、退学届を前島に提出しに行く予定だ。」
大島:「・・よし!」
鳥牙:「?」
大島:「俺の家に来い、鳥牙!」
鳥牙:「は?なんで・・。」
大島:「ネカフェに通い詰めるっつったって限界があるだろうよ、うちに泊めてやる。」
鳥牙:「いやでも迷惑だし・・。」
大島:「お前が学校から居なくなる方が嫌なんだよ。第一、お前がいなくなったら俺は誰に愚痴を言えばいいんだよ。」
鳥牙:「飢餓・・。」
大島:「それに弱音を吐いているお前を見たかねぇ。」
鳥牙:「ありがとな・・。」
大島:「!」
鳥牙:「なんだよ・・。」
大島:「止めとけ、お前にその言葉は似あわねぇよ。」
鳥牙:「う、うっせぇ!」
大島:「へっ・・。」
大島家。
大島:「ただいま~。」
喜美:「あら飢餓、帰ってきたの?」
鳥牙:「お久しぶりです、おばさん。」
喜美:「鳥牙くん?!」
大島飢餓は両親に鳥牙のことを話した。
直人:「なるほど、それはまた辛かったね鳥牙くん。」
鳥牙:「すみません、急にお邪魔してこんな話を持ち出したりして・・。」
直人:「いや、気にすることはない。そういう事情なら君のご両親にはまだ連絡をかけない方がいいな。」
鳥牙:「え・・。」
直人:「?」
鳥牙:「あ、いや・・普通なら俺の両親に俺がここにいることを伝えてもおかしくないのにと思って。」
直人:「今帰ったところでお互いに感情的になってる時点でまともな話し合いはできないだろう。大丈夫、後の事は私たちに任せなさい。向こうに空き部屋があるから好きに使っていいよ。」
鳥牙:「あ・・ありがとうございます!」
大島:「良かったじゃねぇか、鳥牙。」
鳥牙:「飢餓、本当にありがとう!」
大島:「だから・・おめぇにそんな台詞は似合わねェよ。」
鳥牙:「でも・・本当に感謝してっからさ。」
大島:「ま、これからは家族みたいなもんだ。改めてよろしくな鳥牙。」
鳥牙:「ああ、こちらこそ!」
こうして俺は大島家にかくまってもらうことになった。飢餓の両親は本当に優しくて俺の事も分け隔てなく対等に接してくれた。
大島:「親父、おふくろ!」
喜美:「あら、おかえりなさい飢餓。鳥牙くん。」
直人:「どうだった?」
大島:「2人揃って合格だぜ!」
喜美:「本当?!おめでとう!!」
直人:「いやぁ~ほっとした・・ようやく肩の荷が取れたよ。」
鳥牙:「あ、あの・・。」
喜美:「今夜はお寿司でも取るわね!」
鳥牙:「お、俺たちが受かったのって白金学院ですよ?それなのに・・。」
直人:「別にヤンキー校でもいいじゃないか。2人が揃って高校受験を乗り越えたんだ、僕らはただ君たちの成功を祝うだけさ。」
鳥牙:「いやでも・・。」
大島:「悪りぃな鳥牙。うちの親、あんな感じだから気にしなくていいんだよそんなの。」
俺はこの時ふと思った。これが本当の家族なんだなって・・飢餓の選んだ道を飢餓の両親は受け入れてる。だから飢餓も気兼ねなくご両親に向かって素直に色んな事をぶつけられてるんだ。
喜美:「ねぇ鳥牙くん。もうここに来て三ヶ月ぐらい経つんだし、そろそろ私たちと普通に接していいのよ?」
鳥牙:「え?」
直人:「そうだぞ、君さえよければ私たちは君の親代わりにもなれるんだし。」
鳥牙:「・・。」
ポロッ・・。
大島:「え、鳥牙?」
鳥牙:「お前の父さんと母さん・・優しすぎるよ・・ううっ。」
大島:「あの剣崎鳥牙が人前で平然と涙を見せるなんてな。」
鳥牙:「この家に来てから感謝ばっかしてる・・すげぇよ、お前の家族。」
大島:「そいつはどうも。」
直人:「鳥牙くん、あれからご両親と連絡は取ったのかい?」
鳥牙:「いえ・・そもそも俺はあの2人を親と思ってません。実際、そうですし・・。」
直人:「高校に受かった連絡ぐらいはしてもいいんじゃないか?顔を見せるだけでも向こうのご両親はほっとすると思うよ、元気な顔を見せにいったらどうだい?」
大島:「だな。けじめぐらいつけて来いよ。」
鳥牙:「・・分かった。」
剣崎家。
ピンポーン。
楓:「?」
竜牙:「母さん、俺が出るよ。」
ガチャッ。
竜牙:「あ、兄貴・・?!」
桜が舞い落ちる中鳥牙は剣崎家に姿を現した。が、彼は以前として2人を敵視している。鋭い目つきはあの時に比べて憎悪に満ちていた。

「俺は・・俺の歩みたい道を行く・・こんな偽りの家族、もううんざりだ!!」

母さんは泣いていた。父さんは何も言わずに兄貴から渡された書類すべてにサインをし、言われるがままに兄貴を勘当した。俺はその様子をただただ眺めていることしかできなかった。

竜牙:「面!」
鳥牙:「竜牙、何してんだ?」
竜牙:「あ・・兄貴・・。」
鳥牙:「座れよ、ちょっと話そうか。」
竜牙:「なぁ兄貴、本当に行っちまうのかよ。」
鳥牙:「ここは俺の帰るべき場所じゃない。それに・・俺はもう自分の道を見つけた。」
竜牙:「不良ヤンキーの世界がそうだって言うのか?」
鳥牙:「俺はあの世界に足を踏み込みすぎた。このままここにいれば父さんにも母さんにも迷惑をかけてしまう。どうしようもない親だが、俺のいざこざに巻き込みたくないからな。」
竜牙:「・・・。」
鳥牙:「さてと、そういうわけだから・・「兄貴!」」
竜牙:「行っちまう前にさ、オールクロスジェネレートの出来栄えを見てほしんだ。」
鳥牙:「オールクロスジェネレートだと・・?!」
竜牙:「俺、ずっと前からこの技を身につけるために修行してんだけど・・何かがまだ足りなくて。」
鳥牙:「知らなかった・・見るだけなら構わないが、俺はあの技を扱えなかった。俺に見てもらうよりかじいちゃんに見てもらった方が早いと思うぞ?」
竜牙:「それじゃ駄目なんだ。今の俺と同じようにゼロからこの技を身につけようと努力していた兄貴に見てほしいんだ!お願いだよ・・。」
鳥牙:「・・分かった、見せてみろよ。」
竜牙:「!」
鳥牙:「言っておくけど大したアドバイスはできないからな?」
竜牙:「えへへ・・それじゃあ、やるよ?」
鳥牙:「・・・。」
竜牙:「・・・やぁぁぁっ!」
シュッ!シュッ!スパッ!!
鳥牙:「・・!」
竜牙:「どう?」
鳥牙:「そうだな・・しいて言うならオールクロスジェネレートは竹刀を振るうんじゃない、腰を振るんだ。」
竜牙:「腰・・?!」
鳥牙:「バッティングをイメージしてみろ。竹刀はしっかり構えていれば腰の動きに合わせて勝手についてくる。・・が、この技はお前も知っていると思うが一撃必殺だ。一撃で仕留めなければ技として成り立たない。なぜこの奥義が撃うちの家系に代々伝えられているのか・・知っているか?」
竜牙:「いや・・分かんねぇ。」
鳥牙:「一般人がオールクロスジェネレートを使ったところで相手の急所に攻撃を当てることができなければ対戦相手に反撃の隙を与えてしまう。だから・・。」
鳥牙は剣舞眼を開き、人差し指で自らの瞳を指す。
鳥牙:「この目が重要になってくるんだ。」
竜牙:「その目って・・確か・・。」
鳥牙:「この目を使えば一瞬で相手の弱点を見抜ける、つまりこの奥義は剣崎家の血筋で開眼する剣舞眼と併用することで初めて一撃必殺の奥義として完成するんだ。」
竜牙:「じ・・じゃあ・・今の俺がどれだけ練習しても出来っこないってこと?」
鳥牙:「意味がないと思ってるのか?むしろ柔軟な動きができる幼い頃から練習することに意味がある。というのも剣舞眼を開眼したところでこの奥義の力加減はかなり繊細だ。頭で考えて動こうとしたところで厳しいだろう。だからこそ動きを体に叩き込まなければ奥義を会得すること自体が難しいんだ。お前の努力は無駄にはならない、断言してもいい。」
竜牙:「・・・そっか。」
鳥牙は竜牙の頭の上に手を置く。
鳥牙:「絶対に完成させろ、それがお前の決めた道なんだろ?」
竜牙:「兄貴・・マジで行っちまうのかよ!」
鳥牙:「きっとまたどこかで会えるさ。」
鳥牙は竜牙に背を向ける。
竜牙:「い・・・行くなよ兄貴!まだオレ・・教えてもらいたいことが沢山あるんだ!!」
鳥牙:「・・お前はお前の道を行け。あんな両親に縛られる必要なんてない、元気でな。」
プルルル・・。
鳥牙「!・・飢餓の親父さんからの着信・・。」
タッタッタッ!!
大島家の前。
鳥牙:「飢餓!」
モンスター:「ギシャァァ!!」
鳥牙:「ば、化け物・・!」
大島:「!鳥牙・・なんで戻ってきたんだ・・っ。」
モンスターの攻撃を必死に交わす大島飢餓の姿がそこにはあった。
鳥牙:「くそっ・・俺も加勢する!」
大島:「馬鹿言うな!親父たちはもう避難している、お前も早くここから逃げろ!俺が引き付けている内に・・早く!!」
ズバッ!
モンスターの爪が大島飢餓の左腕を引き裂く!
大島:「ぐああっ!!」
鳥牙:「飢餓ァ!!」
大島:「なんでこっちに来るんだよ、死にてぇのか!」
鳥牙:「うっせぇ!お前だけを置いて逃げる訳にはいかないだろ。何なんだあの化け物は・・!」
大島:「分かんねぇ・・そこ茂みの中から出てきやがったんだ。」
鳥牙:「上等だ、相手が誰であろうと俺のダチを傷つけるような奴を生かしちゃおけねェ!」
大島:「よせ!相手は人間じゃない、いくらお前が喧嘩に強くても今回ばかりは状況が違う!」
鳥牙:「んなもん・・やってみなきゃ分かんねぇだろ!」
ピカァァアアン!
大島:「ち、鳥牙・・お前、ポケットの中が光ってんぞ?!」
鳥牙はポケットの中から心の証を取り出す。
鳥牙:「な、なんだコレ・・。」
アース:「それは心の証だ。」
鳥牙:「?!」
大島:「なんだ・・あんた。」
アース:「俺はアース。モンスターの気配を辿って来てみたらまさか心の証を手にした人間がいるなんてね。」
鳥牙:「こいつの事知ってるのか?」
アース:「ああ、どうやらそれは絆の証だ。」
鳥牙:「絆の証?」
アース:「心の証は所有者の心を表す。」
鳥牙:「俺の心を・・?」
アース:「その様子だと君はセイバーズじゃないのか?ま、いずれにしてももし証が自らの意志で目覚めて誕生したって言うなら稀にみる希少な人間だ。戦ってみれば君が選ばれた人間なのかどうかはっきりする。」
アースは自らの剣を鳥牙に渡す。
鳥牙:「!」
アース:「君が本当に選ばれた人間なら戦う力が宿っているはず。」
大島:「おいおい・・あんた何言ってんだ。鳥牙、こんな訳の変わらないやつの言葉に耳を傾ける必要はねぇぞ!」
鳥牙:「・・。」
鳥牙は剣を受け取り、構える!
大島:「お、おい・・!」
鳥牙:「この喧嘩は俺が買ったんだ、最後までやらせてもらう!」
鳥牙は・・駆け出す!!
鳥牙:「くらえっ!!」
ズババッ!!
鳥牙:「ぐあっ!!」
大島:「鳥牙ッ!!」
アース:「このモンスター、彼の動きに合わせてカウンターを仕掛けて・・!」
鳥牙:「チッ!なれねぇことはするもんじゃねぇな・・。」
鳥牙は剣を捨てる。
アース:「な・・お、おい!」
鳥牙:「俺にはコイツ・・・がある。」
鳥牙は拳を握りしめ、再び駆け出す!!
モンスター:「!」
鳥牙:「オラァァッ!!」
モンスター:「キシャァァッ!」
大島:「駄目だ!化け物の方が攻撃が早い!!」
鳥牙:「舐めんなぁぁ!!」
スッ!
大島:「かがんだ?!」
アース:「上手い!」
(これでモンスターの懐を突ける!)
バシィィッ!!
鳥牙の拳がモンスターの懐を貫いた!!
モンスター:「!」
鳥牙:「ハァハァ・・俺の勝ちだ・・。」

~to be continued
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