コチョウノユメに無愛想のっぽの怒りん坊

藤瀬すすぐ

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【5.みそっかすの幼馴染】

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「すっごい嫌な夢見ちゃった。なんか変な化け物が出てきて、神楽君よりもまだ背の高い子が日本刀で化け物ぶった切って、金髪の兄さんが弓をバシューって」
「そりゃ、おまえ、クリハンやりすぎだろ。そんで熱出したんじゃねーの?」

 集は回転椅子に手をつき、またクルクル回った。
 集の言った「クリハン」とはポータブルゲームのソフト「クリーチャーハンターズ」のことで、クリーチャーを倒しながら、出されたミッションをクリアするという人気アクションRPGだった。    
 ゲームの中には色々な武器が装備アイテムとして登場していて日本刀もチョイスできるようになっている。

「学校でしかしてないでしょーがよ」

 前回のテストがあまりに散々な結果で、ミチルの将来を案じた父親にゲーム機を没収されていた。怒鳴られた上での没収ではなく、不景気と進学・就職率、女性の社会進出などを1時間近く語られたのだが、それはただ怒鳴られるよりよっぽど苦痛だった。
 次にゲームをしているのを見つかろうものなら2時間の覚悟が必要だろう。そこで昼休みや放課後の空いた時間に集にハードを借受け、少しづつゲームを進めていたのだった。

「じゃ、あまりにやりたくて夢にまで見たんだ。オタクだな、おまえ」

 ポータブルゲームとはいえ、かなり映像にも力の入っているゲームなので、集にそう言われるとその言葉の前半部に限ってはそんな感じもしてくる。

「や、ホントにッ! すっごいリアルだったんだって。もう一人の、金髪の人と握手までしたし。自己紹介されて───」

 そこまで言ってから自己紹介された名前を思い出せないことに気づいた。背の高い残酷そうな奴の名前も聞いた気はするけれど、牛乳事件のせいですっかり記憶の奥底に埋没してしまったらしい。

「気持ち悪かったこととムカついたことしか覚えてないわ」
「人の夢話ほど聴いて面白くないものもないから別にいいよ、忘れてくれて。まあ、とりあえず意識回復して何より。こんなしょうもないことで殺人者になるのは嫌だからな。んじゃー、もう教室行くわ。どうせもう皆勤賞パアなんだから、おとなしく寝てろよな」

 集は椅子から飛び上がるように立ち上がると、カーテンの向こうへ消えていった。

「タオル持っていっとくよ」

 濡れている為どこにでも置くわけにいかず手に持っていたタオルを神楽が視線で示す。

「何から何までごめんね。ありがと」
「じゃ、お大事に」

 タオルを受け取り軽く手を挙げてから、きちんと最後までカーテンを閉めて立ち去る神楽。先に出て行ったチビの幼馴染みと比べて、毎度のことながら人間の不平等さをシミジミと感じた。

 身長の高低や顔の造作は言うに及ばず、根本的な人間としての出来がもう全然違う。あんな両極端な二人がよくもまあつるんでいるものだと何度思ったかしれない。

 実のところ年齢でいえば神楽は十七歳なのでミチルや集よりも一学年上になる。ミチルはよく事情を知らないが、何らかの理由で一年遅れて入学したらしい。まあそういう意味では集よりも大人といえば大人には違いないが、とは言え来年になったからといって集がこんな落ち着きをみせるとも思わないので、やはり年齢ではなく人間の本質の問題なのだろう。

 ああ、あんなのと比べられるのは反則だわ。

 ある意味、幼馴染みがみそっかすの方で良かったと一人頷くミチルであった。
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