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第一章・最弱の魔法使い
第十四話
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「で? 結局どっちがより社交的だと思うっすか?」
と、アルフレッド。
「私と君はついさっき知り合ったばかりだが常識的な判断が下せる人間だと信じているよ」
と、シーカー。
そんな二人に、弱ったなぁ、とリリィは困ったように苦笑いを浮かべる。
しかし、男二人がそれを気にしている様子は全くなかった。
ーーこういう場合、ワタシの心情を察して身を引いてくれる人が社交性があるって言えると思うんだけどなぁ。
そんなリリィの心中を察することもなく、俺を私をという人間に到底社交性があるとは言い難いだろう。
そんな状況を見兼ねたのか、ファルファーレがリリィに助け船を出す。
『リリィ、こういう時は言葉を濁さずにストレートにものをいうのがだいじなんだ、だから代わりにボクが言ってあげるね? アルフレッドもシーカーも空気を読め、リリィの表情をみて察せないなら言うまでもなく二人共社交性がないよ』
ハッとし、二人はリリィの顔を見やる、その表情は困ったように笑っていた。
落ち着きを取り戻した男二人は互いの顔を見合わせて、ため息をついた。
一方はリリィの心情に気付けなかった事に配慮が足りなかったと。
一方は我を忘れて討論してしまった自分に嫌悪して。
『ほんとうにシーカーはまだまだだね、そんなんじゃ本物の紳士にはなれないよ?
まあアルフレッドに関してはノーコメントだ、わかっているならそれでいいからね』
と、ファルファーレはいつものおちゃらけた様子もなく淡々と二人のダメ出しをした。
「でも意外だなぁ」
落ち込む二人にリリィは話しかける。
「何がっすか?」
「アルフはもっと大人っぽいと思ってたし、シーカーさんはもっとお堅い人だと思ってたから」
リリィのそんな感想を聞いてファルファーレは甲高い笑い声をあげて言った。
『ハハハハハははは、そんな訳ないよリリィ、このおばかたちはもっとくだらない事で出会った頃から何度もケンカを繰り返してるんだから』
そんな言葉を聞いたアルフレッドとシーカーは、よもやそこまで掘り下げられるとは思ってもみなかったのか、それを話させまいと青筋を立ててファルファーレを捲くし立てる。
「ファルファーレ、いい加減にしてくれ、そういう話はしなくていいんだ」
「同感っすね、少し黙るっすよ」
「というよりもう戻ったらどうだ? そろそろ私の巻いた魔力が尽きる頃合いだろう? 無理をするものじゃない」
「そうっす、無理するなっす、というか早く帰るっす、リリィに変な話をしないで欲しいっす」
そんな二人をからかうようにファルファーレは戦々恐々としたフリをしてリリィの背中に隠れる。
『あーこわいこわい、男がよってたかって精霊をいじめるなんてねぇ、リリィ?』
「うん、ワタシはその話が少し気になるけどなぁ」
リリィまでそっち側に回ると流石に部が悪いと、二人は勘弁してくれと、頼み込むように謝るのだった。
「ところでシーカーさんに質問なんですけど、いいですか?」
「ああ、昔の事じゃないなら何でも答えるよ、それと私の事はシーカーでいい、気安く接してくれ」
そんなシーカーの言葉に少しだけリリィはキョトンとした顔をする。
反応がないリリィにシーカーもまた不思議そうに尋ねる。
「どうしたのかな? 私は何か変な事を言ったかな?」
EX職業の人には驕りや気位といったものがないのだろうか? とリリィは思う。
でもそれはとてもリリィにとってはありがたく、そして嬉しい事だった。
「ううん、ありがとうシーカー、私の事もリリィって呼んでね」
「心得た、それで質問とは何かな?」
「精霊使いについてなんだけど、精霊使いは一種の魔法使いって言われてるよね?」
「ああ、根本的には召喚術と契約術の併用で成り立っているが魔力の行使でそれらを行っているから魔法使いという括りでも間違いではないな」
やっぱりそうなんだ、とリリィは思う。
以前から興味はあったが精霊使いの才能が一切ないと言われていたのでどうにも手が出しにくかったのだ、興味本意で手を出せるほど今も昔もリリィに余裕はなかったからだ。
「精霊と契約する事によって精霊を使役する、その力を借りて色々な事ができる、だよね?」
「その通り、精霊と契約内容は契約を交わす精霊によって異なるが大体は一日一回の約束事みたいなものになる、私とファルの場合は一日一回ティータイムを設ける事だな」
ふむふむ、とリリィは近場にある用紙にシーカーの言葉を書き写していく。
「さっき言ってた魔力の循環効率が上がったっていうのはどういうこと?」
「それは精霊をこちらの世界に呼ぶ為の準備の話をしないといけない、少し長いが聞くかな?」
はい、とリリィは頷いた。
「まず精霊をこちらの世界に現界させるには精霊が現界できるような環境を整えてあげる必要がある、精霊が魔法生物というジャンルに分類されているのは知っているかな?」
「たしか、生物ではなくて霊体に近い存在を生物と呼んでいいのかって議論があったよね」
「結局のところ精霊たちから言わせたらどうでもいい事だったらしくてね、人類側が尋ねたら何でもいいとアッサリと言われたらしい」
そこのところどうなんですか? とリリィがファルファーレに振ると少し面倒臭いという顔をする。
『いまシーカーが言ったとおりだよ、ボクたち精霊は人間の決めた枠組みにどうあってもハマらないからね、呼ばれ方なんてどうでもいいんだよ』
そもそも価値観も常識も違うからね、と付け加える。
「まあそういう事らしい、話を戻すが、魔法生物というジャンルに分類された理由が精霊を現界させる上で重要なんだ」
シーカーはフワフワと浮いているファルファーレを捕まえて自分の前に持ってくる。
「精霊、魔法生物は実体のない意思を持つ魔力の塊、というのが一般的な判別の方法になるんだが、見ての通り精霊使いが召喚した精霊は触れられる、これは私がファルファーレを現界させる為に作った環境による為だ」
「環境、ですか?」
リリィは教室を見渡しいつもと違う事がないか探ってみるがその差異が分からなかった。
「環境と言ってもそう単純な物でもないんだよ、これは精霊使いの才能を持つ者の体質、魔力の質の話だからリリィが分からなくても無理はない事だ」
そっか、才能かぁ、と少しだけ落胆するリリィの頭にファルファーレが乗っかる。
『きにするひつようはないと思うよ、魔法使いとか戦士と違って精霊使いの才能はレアだからね』
「ファルファーレのいう通り精霊使いの才能はとても珍しいらしい、精霊使いの才能とは魔力を物質化させる事が出来る性質をの事だからね」
へぇ、とすぐさまリリィは考察を始め、数秒ほどで答えに行き着く。
「確かに特異な性質だね、魔法は魔力で引き起こす事象だけど精霊使いはある意味、魔力を物質化させる事象を引き起こせる訳だね」
「その通り」
シーカーは涼しげな顔をしていたが内心ではリリィの理解の早さに驚いていた。
アルフレッドから頭の良い子だと聞いてはいたがこれほど頭の回転が速いとは思っていなかったのだ。
「精霊を呼び出す時、私たち精霊使いは自分の魔力を周囲に散布する、そうする事でやっと精霊はこちらの世界に現界出来るんだ」
「で、シーカーの散布させた魔力の循環効率が上がったからファルファーレは好き勝手に現界出来ていると、そういう事?」
と、頭の上のファルファーレを見ながら問うと、ファルファーレは上機嫌に喋りだす。
『そのとーり、シーカーがふんぱつだいさーびすしてくれたお陰で今日はとても楽しいよ、普段はシーカーの持っている精霊石の、中で外を眺める事しか出来ないからね』
「だからと言って私の言う事を聞かないのは頂けないな、ファル?」
『たまにはいいじゃないか、ボクも今日はまんぞくしたし、次からはちゃーんということ聞くよ』
精霊石? とリリィは首を傾げる。
その様子を見たシーカーが首元から綺麗な宝石を取り出した。
「これが精霊石だ、魔鋼という鉱物で作られた物だ、ファルファーレは普段はこの中で過ごしてもらっている」
「ファルって普段は元の世界に戻ってるんじゃないの?」
と、リリィが聞くと、シーカーより先にファルファーレが答える。
『まっさかぁー、リリィが考えているより異なる世界からの召喚ってらくなものじゃないんだよ、一回一回に莫大な魔力が必要になるし、それにね? ボクの世界よりこっちの世界のほうがたのしいのさ』
ファルファーレは本当に楽しそうにそう言った。
「やっぱり、その魔力の循環効率が上がったのってEX職業になったから?」
おもむろにリリィがそう尋ねるとシーカーは頷き、そうだ、と肯定をする。
「EX職業はやっぱり凄いんだね、ファルもそう思うよね?」
そう言ってリリィはファルファーレの頭を撫でる。
『そうだね、ボクもシーカーが精霊使いだった頃より力を使う事ができるようになったし、シーカーの魔力があればかなり離れても現界できるようになったからね』
ファルファーレの言葉を聞いたリリィはとても不思議そうに尋ねる。
「今までファルはシーカーから離れられなかったの?」
『そりゃあねぇ、ボクはシーカーの魔力がないとただの霊体みたいなものだし、精霊石の中じゃなくて外にいるだけで魔力を消費するからね』
と、いうファルファーレの言葉にリリィは何か引っかかりを感じる。
「ファルは精霊石の中では魔力を使わないの?」
現界するにはシーカーの魔力が必要になり、現界をしなくともその場にいるだけで魔力を消費する、では、精霊石の中では?
絶えず魔力をシーカーが供給しているのであればそれはファルファーレを現界させているのと変わらないのではないか? リリィの脳は高速で思考を始める。
ーーそれならファルをこの世界に繋ぎ止めている魔力は一体どこから来ているのか?
それはリリィが空を舞う直前の思考した事と酷似していた。
『自前の魔力は使わないし、別にシーカーの魔力を使ってる訳じゃないから、たぶん精霊石の魔力なんじゃないのかな?』
と、曖昧な部分を確かめる為か、ファルファーレはシーカーに目を向けた、それを肯定するようにシーカーは頷いた。
「正解だ、普段は精霊石の魔力がファルの存在をこちらの世界に繋ぎ止めている、これは精霊使いの契約術の話になるな、契約した精霊が消えない為の契約、といったところだな」
シーカーの肯定を聞いた瞬間に、リリィは、そうか、その手が合った! と目を見開いた。
「シーカー! 精霊石、いや精霊石じゃなくても良いんだけどそれの原材料とかそれに近しい物ってないかな!?」
突然の剣幕にシーカーはたじろぎながら返答をする。
「近しい物というと、それは精霊石のように魔力を勝手に集めてくれるような性質を持つ鉱物ということかな?」
「そう、そんな感じのやつ!」
「あるか、と聞かれればあるが、その鉱石を取りに行くとなると往復だけで4日は掛かるな」
そうなるともう間に合わない、とリリィは歯噛みする。
リリィは思いついたのだ、中級魔法を使うことが出来ないようなちっぽけな魔力で中級魔法を使う方法を。思いついてみればそれは実に簡単な話だった。
己の魔力が足りないなら外部の魔力を使えば良かったのだ。
つまり、アイテムを使用して足りない魔力を補えば良かったという事に気がついたのだ。
ーー簡単なことだった、魔力を回復させるアイテムがある事は知ってたけど、精霊石みたいな魔力の肩代わりをしてくれるようなアイテムがあるならそれを使えば良かったんだ。
だが、間に合わない。だけどまだ手はあるとリリィはファルファーレとシーカーにお願いをする。
「シーカー、ファル、お願いがあるの」
真剣な眼差しのリリィを見た一人と一体は顔を見合わせて頷いた。
「事情はアルフから聞いているからね、私にできる事があるなら手伝おう」
『ボクも久しぶりにできたともだちのたのみだ、聞いてあげるよ』
ありがとう二人とも、そう言ってリリィは二人に飛びついた。
*
慌ただしく教室から出て行く二人と一体。
残されたアルフレッドはというと、
「ムニャムニャ、ZZZ」
一切喋らなかったアルフレッドは、精霊使いって、という会話の場面ですでに眠っていた。
後に聞いた話だと、リリィもシーカーもファルファーレも誰も彼を起こさなかったのは、いつの間にか頭からすっぽりと抜け落ちていたからからだったとか。
本当にただそれだけだったのかは、教室の影に潜んでいた者だけが知っている。
その影は、まだ喋らない、
「ーーーーーー」
と、アルフレッド。
「私と君はついさっき知り合ったばかりだが常識的な判断が下せる人間だと信じているよ」
と、シーカー。
そんな二人に、弱ったなぁ、とリリィは困ったように苦笑いを浮かべる。
しかし、男二人がそれを気にしている様子は全くなかった。
ーーこういう場合、ワタシの心情を察して身を引いてくれる人が社交性があるって言えると思うんだけどなぁ。
そんなリリィの心中を察することもなく、俺を私をという人間に到底社交性があるとは言い難いだろう。
そんな状況を見兼ねたのか、ファルファーレがリリィに助け船を出す。
『リリィ、こういう時は言葉を濁さずにストレートにものをいうのがだいじなんだ、だから代わりにボクが言ってあげるね? アルフレッドもシーカーも空気を読め、リリィの表情をみて察せないなら言うまでもなく二人共社交性がないよ』
ハッとし、二人はリリィの顔を見やる、その表情は困ったように笑っていた。
落ち着きを取り戻した男二人は互いの顔を見合わせて、ため息をついた。
一方はリリィの心情に気付けなかった事に配慮が足りなかったと。
一方は我を忘れて討論してしまった自分に嫌悪して。
『ほんとうにシーカーはまだまだだね、そんなんじゃ本物の紳士にはなれないよ?
まあアルフレッドに関してはノーコメントだ、わかっているならそれでいいからね』
と、ファルファーレはいつものおちゃらけた様子もなく淡々と二人のダメ出しをした。
「でも意外だなぁ」
落ち込む二人にリリィは話しかける。
「何がっすか?」
「アルフはもっと大人っぽいと思ってたし、シーカーさんはもっとお堅い人だと思ってたから」
リリィのそんな感想を聞いてファルファーレは甲高い笑い声をあげて言った。
『ハハハハハははは、そんな訳ないよリリィ、このおばかたちはもっとくだらない事で出会った頃から何度もケンカを繰り返してるんだから』
そんな言葉を聞いたアルフレッドとシーカーは、よもやそこまで掘り下げられるとは思ってもみなかったのか、それを話させまいと青筋を立ててファルファーレを捲くし立てる。
「ファルファーレ、いい加減にしてくれ、そういう話はしなくていいんだ」
「同感っすね、少し黙るっすよ」
「というよりもう戻ったらどうだ? そろそろ私の巻いた魔力が尽きる頃合いだろう? 無理をするものじゃない」
「そうっす、無理するなっす、というか早く帰るっす、リリィに変な話をしないで欲しいっす」
そんな二人をからかうようにファルファーレは戦々恐々としたフリをしてリリィの背中に隠れる。
『あーこわいこわい、男がよってたかって精霊をいじめるなんてねぇ、リリィ?』
「うん、ワタシはその話が少し気になるけどなぁ」
リリィまでそっち側に回ると流石に部が悪いと、二人は勘弁してくれと、頼み込むように謝るのだった。
「ところでシーカーさんに質問なんですけど、いいですか?」
「ああ、昔の事じゃないなら何でも答えるよ、それと私の事はシーカーでいい、気安く接してくれ」
そんなシーカーの言葉に少しだけリリィはキョトンとした顔をする。
反応がないリリィにシーカーもまた不思議そうに尋ねる。
「どうしたのかな? 私は何か変な事を言ったかな?」
EX職業の人には驕りや気位といったものがないのだろうか? とリリィは思う。
でもそれはとてもリリィにとってはありがたく、そして嬉しい事だった。
「ううん、ありがとうシーカー、私の事もリリィって呼んでね」
「心得た、それで質問とは何かな?」
「精霊使いについてなんだけど、精霊使いは一種の魔法使いって言われてるよね?」
「ああ、根本的には召喚術と契約術の併用で成り立っているが魔力の行使でそれらを行っているから魔法使いという括りでも間違いではないな」
やっぱりそうなんだ、とリリィは思う。
以前から興味はあったが精霊使いの才能が一切ないと言われていたのでどうにも手が出しにくかったのだ、興味本意で手を出せるほど今も昔もリリィに余裕はなかったからだ。
「精霊と契約する事によって精霊を使役する、その力を借りて色々な事ができる、だよね?」
「その通り、精霊と契約内容は契約を交わす精霊によって異なるが大体は一日一回の約束事みたいなものになる、私とファルの場合は一日一回ティータイムを設ける事だな」
ふむふむ、とリリィは近場にある用紙にシーカーの言葉を書き写していく。
「さっき言ってた魔力の循環効率が上がったっていうのはどういうこと?」
「それは精霊をこちらの世界に呼ぶ為の準備の話をしないといけない、少し長いが聞くかな?」
はい、とリリィは頷いた。
「まず精霊をこちらの世界に現界させるには精霊が現界できるような環境を整えてあげる必要がある、精霊が魔法生物というジャンルに分類されているのは知っているかな?」
「たしか、生物ではなくて霊体に近い存在を生物と呼んでいいのかって議論があったよね」
「結局のところ精霊たちから言わせたらどうでもいい事だったらしくてね、人類側が尋ねたら何でもいいとアッサリと言われたらしい」
そこのところどうなんですか? とリリィがファルファーレに振ると少し面倒臭いという顔をする。
『いまシーカーが言ったとおりだよ、ボクたち精霊は人間の決めた枠組みにどうあってもハマらないからね、呼ばれ方なんてどうでもいいんだよ』
そもそも価値観も常識も違うからね、と付け加える。
「まあそういう事らしい、話を戻すが、魔法生物というジャンルに分類された理由が精霊を現界させる上で重要なんだ」
シーカーはフワフワと浮いているファルファーレを捕まえて自分の前に持ってくる。
「精霊、魔法生物は実体のない意思を持つ魔力の塊、というのが一般的な判別の方法になるんだが、見ての通り精霊使いが召喚した精霊は触れられる、これは私がファルファーレを現界させる為に作った環境による為だ」
「環境、ですか?」
リリィは教室を見渡しいつもと違う事がないか探ってみるがその差異が分からなかった。
「環境と言ってもそう単純な物でもないんだよ、これは精霊使いの才能を持つ者の体質、魔力の質の話だからリリィが分からなくても無理はない事だ」
そっか、才能かぁ、と少しだけ落胆するリリィの頭にファルファーレが乗っかる。
『きにするひつようはないと思うよ、魔法使いとか戦士と違って精霊使いの才能はレアだからね』
「ファルファーレのいう通り精霊使いの才能はとても珍しいらしい、精霊使いの才能とは魔力を物質化させる事が出来る性質をの事だからね」
へぇ、とすぐさまリリィは考察を始め、数秒ほどで答えに行き着く。
「確かに特異な性質だね、魔法は魔力で引き起こす事象だけど精霊使いはある意味、魔力を物質化させる事象を引き起こせる訳だね」
「その通り」
シーカーは涼しげな顔をしていたが内心ではリリィの理解の早さに驚いていた。
アルフレッドから頭の良い子だと聞いてはいたがこれほど頭の回転が速いとは思っていなかったのだ。
「精霊を呼び出す時、私たち精霊使いは自分の魔力を周囲に散布する、そうする事でやっと精霊はこちらの世界に現界出来るんだ」
「で、シーカーの散布させた魔力の循環効率が上がったからファルファーレは好き勝手に現界出来ていると、そういう事?」
と、頭の上のファルファーレを見ながら問うと、ファルファーレは上機嫌に喋りだす。
『そのとーり、シーカーがふんぱつだいさーびすしてくれたお陰で今日はとても楽しいよ、普段はシーカーの持っている精霊石の、中で外を眺める事しか出来ないからね』
「だからと言って私の言う事を聞かないのは頂けないな、ファル?」
『たまにはいいじゃないか、ボクも今日はまんぞくしたし、次からはちゃーんということ聞くよ』
精霊石? とリリィは首を傾げる。
その様子を見たシーカーが首元から綺麗な宝石を取り出した。
「これが精霊石だ、魔鋼という鉱物で作られた物だ、ファルファーレは普段はこの中で過ごしてもらっている」
「ファルって普段は元の世界に戻ってるんじゃないの?」
と、リリィが聞くと、シーカーより先にファルファーレが答える。
『まっさかぁー、リリィが考えているより異なる世界からの召喚ってらくなものじゃないんだよ、一回一回に莫大な魔力が必要になるし、それにね? ボクの世界よりこっちの世界のほうがたのしいのさ』
ファルファーレは本当に楽しそうにそう言った。
「やっぱり、その魔力の循環効率が上がったのってEX職業になったから?」
おもむろにリリィがそう尋ねるとシーカーは頷き、そうだ、と肯定をする。
「EX職業はやっぱり凄いんだね、ファルもそう思うよね?」
そう言ってリリィはファルファーレの頭を撫でる。
『そうだね、ボクもシーカーが精霊使いだった頃より力を使う事ができるようになったし、シーカーの魔力があればかなり離れても現界できるようになったからね』
ファルファーレの言葉を聞いたリリィはとても不思議そうに尋ねる。
「今までファルはシーカーから離れられなかったの?」
『そりゃあねぇ、ボクはシーカーの魔力がないとただの霊体みたいなものだし、精霊石の中じゃなくて外にいるだけで魔力を消費するからね』
と、いうファルファーレの言葉にリリィは何か引っかかりを感じる。
「ファルは精霊石の中では魔力を使わないの?」
現界するにはシーカーの魔力が必要になり、現界をしなくともその場にいるだけで魔力を消費する、では、精霊石の中では?
絶えず魔力をシーカーが供給しているのであればそれはファルファーレを現界させているのと変わらないのではないか? リリィの脳は高速で思考を始める。
ーーそれならファルをこの世界に繋ぎ止めている魔力は一体どこから来ているのか?
それはリリィが空を舞う直前の思考した事と酷似していた。
『自前の魔力は使わないし、別にシーカーの魔力を使ってる訳じゃないから、たぶん精霊石の魔力なんじゃないのかな?』
と、曖昧な部分を確かめる為か、ファルファーレはシーカーに目を向けた、それを肯定するようにシーカーは頷いた。
「正解だ、普段は精霊石の魔力がファルの存在をこちらの世界に繋ぎ止めている、これは精霊使いの契約術の話になるな、契約した精霊が消えない為の契約、といったところだな」
シーカーの肯定を聞いた瞬間に、リリィは、そうか、その手が合った! と目を見開いた。
「シーカー! 精霊石、いや精霊石じゃなくても良いんだけどそれの原材料とかそれに近しい物ってないかな!?」
突然の剣幕にシーカーはたじろぎながら返答をする。
「近しい物というと、それは精霊石のように魔力を勝手に集めてくれるような性質を持つ鉱物ということかな?」
「そう、そんな感じのやつ!」
「あるか、と聞かれればあるが、その鉱石を取りに行くとなると往復だけで4日は掛かるな」
そうなるともう間に合わない、とリリィは歯噛みする。
リリィは思いついたのだ、中級魔法を使うことが出来ないようなちっぽけな魔力で中級魔法を使う方法を。思いついてみればそれは実に簡単な話だった。
己の魔力が足りないなら外部の魔力を使えば良かったのだ。
つまり、アイテムを使用して足りない魔力を補えば良かったという事に気がついたのだ。
ーー簡単なことだった、魔力を回復させるアイテムがある事は知ってたけど、精霊石みたいな魔力の肩代わりをしてくれるようなアイテムがあるならそれを使えば良かったんだ。
だが、間に合わない。だけどまだ手はあるとリリィはファルファーレとシーカーにお願いをする。
「シーカー、ファル、お願いがあるの」
真剣な眼差しのリリィを見た一人と一体は顔を見合わせて頷いた。
「事情はアルフから聞いているからね、私にできる事があるなら手伝おう」
『ボクも久しぶりにできたともだちのたのみだ、聞いてあげるよ』
ありがとう二人とも、そう言ってリリィは二人に飛びついた。
*
慌ただしく教室から出て行く二人と一体。
残されたアルフレッドはというと、
「ムニャムニャ、ZZZ」
一切喋らなかったアルフレッドは、精霊使いって、という会話の場面ですでに眠っていた。
後に聞いた話だと、リリィもシーカーもファルファーレも誰も彼を起こさなかったのは、いつの間にか頭からすっぽりと抜け落ちていたからからだったとか。
本当にただそれだけだったのかは、教室の影に潜んでいた者だけが知っている。
その影は、まだ喋らない、
「ーーーーーー」
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