通りすがりの竜騎士っすけど、何か?

ペケペケ

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第一章・最弱の魔法使い

第十三話

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「リリィ、リリィ、起きるっすよ」

 ペチペチ、と何かが頬を叩いているような気がする、とリリィはゆっくりと目を開ける。

「お、気がついたっすか?」
「アル、フ?」

 ここは? と体を起こすとそこは自分の教室の中だった。

「あれ? ワタシ」

 森で散歩してなかったっけ? とリリィは首を傾げる。
 無事に目を覚ましたリリィの安否を確認したアルフレッドは良かったと頷き、少し離れた位置にいる人物に声をかけた。

「いやぁ、間一髪だったっすねえ? シーカー」

 そんなアルフレッドの視線の先に立っている人物はリリィには見覚えのない人だった。

 シーカーもまたリリィの安否を確認できた事に安堵するが、同時に言いようのない怒りがアルフレッドに対して湧き上がる。

「元を正せば全てお前の責任があるのだがな」

 言葉に怒りの感情を感じるもののその顔は実に涼しげなものだった。

「アルフ、その人は?」

 そうリリィが尋ねるとアルフレッドが答えるより先にシーカーが答える。

「申し訳ない、挨拶が遅れたな、私はシーカー・マクシミリアン、アルフレッドの友人だ」
「貴方がEX職業のシーカーさん!?」
「なぜ君がその情報を? いや愚問だったな、この馬鹿が言ったに違いない」

 シーカーは言い付けを破ったな? と鋭い目付きでアルフレッドを睨みつけるが、本人は対して気にする様子もなく飄々とした態度で返す。

「別に言いふらしてないっすよ、リリィには魔法を教えて貰うのに地竜討伐の話をしなくちゃいけなかったんすからしょうがなかったんす」
「そもそも地竜の件も他言無用と言っただろうに」

 どうしてこうお前は、とシーカーは頭痛を抑えるような仕草をする。

「お固い事は言いっこなしっすよ、それにリリィなら信用できるっす」
「お前がそう言うなら信用するがな」

 と、シーカーはリリィに向き直る。

「リリィさん? でいいのかな?」

 リリィは自分だけ名乗っていない事に気がつき、すぐに自己紹介をする。

「すいません、ワタシはリリィ・マクスウェルです、よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げて、右手を差し出しと、シーカーもそれに応じてリリィの手を握った。

「ああ、こちらこそよろしく。偶に……いや、結構な頻度でこの馬鹿が迷惑を掛けると思うがその時はいつでも私に言ってくれ、すぐに対応する」

 本当に親切心から出た言葉だったのだが、リリィは、迷惑だなんてとんでもない、と口にする。

「ワタシの方こそいつもアルフに助けてもらってばかりで申し訳ないくらいです」

 という実に疑わしいリリィの言葉にシーカーは燻し噛むような表情をしてアルフレッドの方を睨むように見た。

 ーーお前、この子に何をした?
 ーー普通に接しただけっすよ。

 そんな視線でやり取りをする二人をみてリリィ疑問符を浮かべている。

「?」

 その様子に気づいたシーカーはそんなやりとりを誤魔化すようにリリィとの会話に戻る。

「ああ、いや、気にしないでくれ。それより地竜討伐の件とEX職業の件の事なのだが、他言無用でお願いできないだろうか? 私はまだEX職業になって間もない、無用ないざこざは避けたいと思っているんだ」
「そういうことならワタシは誰にも言ったりしませんよ、だって言う人……いないし」

 リリィの言葉で空気が凍りつく、数秒の間、誰も口を開こうとはしなかった。


 気を取り直してシーカーはリリィに謝罪の意を述べる。

「それよりさっきはすまなかった、とても怖い経験をさせたと思う」

 偶然とはいえ、気絶をさせてしまう程のショックを与えてしまった事はシーカーに罪悪感を抱かせるには十分過ぎる出来事だった。

「さっき? 怖い経験?」

 しかし、当のリリィは何か合ったかな? と首を傾げる。
 そんなリリィを様子をみたシーカーは心配になり、先の出来事を軽く説明をした。すると、見る見るうちにリリィの顔色が青くなり、震えた声で言う。

「あの、ワタシって生きてますよね」
「あ、ああ。しっかりと生きている、安心して欲しい」

 トラウマ級の出来事を思い出したリリィは死んだ魚のような目をしながら抱いた感情を口にする。

「いきなり空高く飛ばされたと思ったら地面が迫ってくるの、何もできなくて絶対に死んだと思ったよ」

 本当にすまなかったとシーカーが謝ろうとすると、アルフレッドがポツリと呟いた。

「シーカーが本気を出すからっすよ」

 まるで、シーカーだけが悪いような発言をするアルフレッドを睨みつけて、シーカーは凄い勢いで詰め寄った。

「お前が、シーカーが本気を出さないなら少しだけ大声出しちゃうっすよ、なんて言うからだろうが! お前に分かるのか!? 音で脳ミソをシェイクされる気持ちが!」

 シーカーは考えるだけでも恐ろしいと戦慄し身震いするが、それでもアルフレッドは自分は悪くないといった態度を崩そうとしない。

「だってそうまで言わないとシーカーは本気で戦ってくれないじゃないっすか、だから全部シーカーが悪いっすよ」

 と、罪を擦りつけようとするアルフレッドの言葉にシーカーはキレ気味に反論をする。

「組手で本気を出すなどあり得ないだろう。私は真剣を友にかざす真似などしたくないと言った筈だ、今は積極的に向けてやりたい気分だがな」

 シーカーがギラギラした目でアルフレッドを睨むと、流石に少し悪かったと思ったのかアルフレッドが折れる形で謝った。

「分かったっす、俺が悪かったっすよ。だからそんなに怒らないで欲しいっす」
「お前はもう少し考えて物を言う事を覚えるのだな!」
「はいはい、善処するっすよ」

 と、シーカーの忠告を軽く聞き流すアルフレッドだった。
 そんな二人のやり取りを微笑ましく見ていたリリィはフッと疑問に思う。

「ねえ? 二人は何で組手なんかしてたの?」

 その質問にアルフレッドは少しバツが悪そうに顔を背けた。その様子を見たシーカーは、またか、と呆れるようにため息を吐いてアルフレッドの代わりに質問に答える。

「先日私がEX職業になった事は知っているのだったね」
「はい、地竜を討伐した日の話ですよね?」
「その通り、アルフとの組手は私の試運転と言った所だよ、さっきも言った通りEX職業になって間もないのでね、慣れる為に組手をしていたんだ」
「なるほど、それであんな突風が突然起こった訳ですか、でもそれって危なくないですか?」
 
 と聞くリリィの言葉に図星をつかれたようにシーカーは涼しげな表情を崩す。

「面目ない、私の精霊は少し聞かん坊でね、EX職業になって魔力の循環効率が上がってから言うことを聞かないのだ」

 と、シーカーが顔をしかめて言うと、窓から微風が入り込んだと思うと、突然リリィの目の前に精霊が現れた。

『キャハハははは、いやぁさっきはごめんね? 相手があのアルフレッドだったからねついつい力が入り過ぎちゃったんだ、でも楽しいたのしいそらの旅だっただろう? 君みたいなちっぽけな魔力しかない人間には生涯味わえないような体験かもしれないんだ、胸に刻み込んでおくといい、まあご主人様の命令とあらばどこまでも遠くに飛ばしてあげるげどね、キャハハははは』

 と、ウィットに富んだ精霊ジョークをかますファルファーレにシーカーはまた勝手に出てきたと頭を悩ませる。

「なんというか、破天荒な精霊さんだね」

 リリィがファルファーレを見た第一印象はうるさいとかではなく、賑やかという印象だった。
 何故か出会い頭に罵倒されたような気もしたが特に嫌悪感を感じる事もなく、それが精霊なりの冗談なのだとリリィは思った。
 こうしてちゃんとした精霊と関わる機会も滅多にないから、とリリィは挨拶をしてみた。

「始めまして精霊さん、ワタシはリリィ・マクスウェルだよ」
『これはこれはていねいにありがとう、ボクはファルファーレ、風の精霊だよ』

 ファルファーレが差し出す小さな手に応じてリリィも人差し指を差し出すと、ファルファーレはご機嫌になり口を開いた、

『れいぎもなってるね、こころも真っ直ぐでとても綺麗だ、うんうんこのこはとてもいい子だ、良かったね、シーカー、アルフレッド、君たち社交性が低い男どもが仲良くなれる数少ない女性だよ』

 と、言うファルファーレに男二人は同時に異議を唱える。

「待てファル!」
「待って欲しいっすファル!」

『どーしたんだい?』

「シーカーはともかく俺は社交性抜群っすよ、誰とも話せるし友達にもなれるっすよ」
「いや待てアルフ、お前は言うに事欠いて何を馬鹿な事を言っているんだ、お前はともかく私は社交性を持ち合わせているだろ」

 あーでもない、こーでもない、と二人は延々と言い争いを始める。
 そんな二人の様子をいつの間にかファルファーレとリリィは傍観するハメになっていた。

 ケンカをする二人を横目にリリィはファルファーレに小さなお願いをする。

「ねえファルファーレ、ワタシもシーカーさんみたいにファルって呼んでもいい?」
『ああ、もちろんいいよ、シーカーはボクの事をうるさいと言ってあまり話してくれないんだよ、暇があるならボクの話あいてになってくれないかな?』
「もちろん、でね? ファル?」
『なんだい?』
「あの二人って止めなくていいの?」

 二人とも必死に自分は如何に社交性が高い人間であるかを言い争っているが、側からみれば子供の言い合いに他ならない。
 リリィはアルフのそんな喧嘩腰の態度を観るのは初めてだったので少し意外だと思ったのと、止めてあげた方が良いのだろうか? と疑問に思ったのだ。

 ファルファーレは敢えて二人を引き合いに出したがその実、この中で一番社交性が低いのはリリィだという事を見抜いていた。
 この場合、社交性というよりは人との距離感と言った方が正しいが。

 そんな距離感が分からないリリィにファルファーレはそれとなく止めなくて良いと教える。

『あれはいつもの事だからね放っておけばいいのさ、人の事をたなにあげてる内は二人とまだまだ子供だよね』

 口論の原因を作ったファルがそれを言うの? とリリィは少し苦笑いをして二人が落ち着くのを待つのだった。

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