通りすがりの竜騎士っすけど、何か?

ペケペケ

文字の大きさ
36 / 48
第ニ章・お兄様をさがせ!

第三十五話

しおりを挟む
「もう!」

 と、頬を染めてリリィは怒る。


「ちゃんと謝ってるじゃない、許して欲しいわ」
「ワタシを心配してくれるのは嬉しいけどちゃんと分別は付けてね、人前でお腹を晒すとかそんな趣味ないんだから!」

 ーー別に見られて減る物でもないのに。

 と、ベルベットは不満気な表情を浮かべると、リリィは珍しくガミガミとベルベットを叱りつけ始めた。


 そんな二人を横目に変態と竜騎士は言葉を交わす。


「いやぁ眼福眼福、ベルベットちゃんは流石だね、そう思うだろ? アルフレッドくん」
「ここで俺に振るんすか? 勘弁してほしいっす」

 苦笑いを浮かべアルフレッドは答える。

「それよりクロエっち、体は大丈夫なんすか? さっきから普通に吐血してるっすけど」

 平然と会話をしているが、実はクロエは口から血を吐きながら喋っていた、自己診断だと内臓に骨が刺さっているかもしれない、という程度だったのであまり気にしていないが、側からみれば血を吐きながら元気に喋っているというシュールな姿だ。

 変態はヘラヘラとしながら、問題ないよ、と答える。

「僕はこの程度じゃ死ねないから、不死の残り火といったところかな?」
「クロエっちは不老不死だったんすか? 初耳なんすけど」
「いやいや、不老不死だったのはもう四百年も前の事さ、今は只の不老者だよ、殺されれば死ぬし死のうと思えばいつでも死ねるのさ」

 ヘェ、とアルフレッドは興味無さげに返す。

「それよりアルフレッドくん、どうするつもりなんだい?」

 曖昧な問いかけではあったが、クロエの問いの意味をアルフレッドは理解していた。

「どうしたら、いいんすかね? 正直分からないっす」

 弱気な言葉とは裏腹にアルフレッドの表情は笑顔だった、自分の弱さを隠すような取り繕った笑み。
 そんな悩める少年に向かいクロエは一つアドバイスをする。

「迷っているなら仲間に打ち明けてみると良いんじゃないかな?」
「えっ?」
「君は出会った頃からそうだった、抱え込み、黙殺する、消化も解決もしないままに不満や不安を溜め込む、それは悪い事じゃない、でもね? それは君がもっと大人になった時にするものだよ」

 アルフレッドは俯き、ただ下を向いている。

「君はまだ生まれて間もない、何かに遠慮したり躊躇ったりするくらいなら君が大事だと思っている仲間に打ち明けてみたらどうだい? きっとみんな君の為に考えたり悩んだりしてくれるはずだよ」


 アルフレッドは力なく答える。

「俺、怖いんすよ」
「怖い?」
「シーカーもベルベットもリリィも、本当の俺を知ったら離れて行くんじゃないかって、前の俺を知ったら、こんな俺なんかよりあの子のいう剣聖だった俺を選ぶんじゃないかって」


 笑みが消し、アルフレッドは悲しげな顔をする。

 クロエは薄く笑い、アルフレッドに伝える。

「なら直接聞いてみればいいんじゃないかな?」

 ほら、とクロエは前を指し示す。
 アルフレッドが顔を上げると、そこには口喧嘩を止めたベルベットとリリィの姿があった。

 唖然と口を開き、アルフレッドは声を絞り出す。

「……聞いてたんすか?」
「うん」
「予想はしてたけど……アンタ、記憶がないの?」

 押し黙り、アルフレッドは目を逸らす。

「おかしいと思ってたのよね、アンタが竜騎士になった経緯を誰にも話さないところとか、強いクセに誰かに拒絶される事を怖がっているところとかね」

 核心を突かれたのか、アルフレッドはキツく口を結んだ。

「あーし、アンタの事を子供みたいなヤツって思ってたのよ、でも間違ってた、アンタは子供なのね、アルフレッド」

 竜騎士は精一杯力なく笑った。


「ははは、は」


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...