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第ニ章・お兄様をさがせ!
第三十四話
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激しい戦闘が終わり、辺りは静寂に包まれた。
アルフレッドは俯き、リリィはそんな竜騎士の手を治療している。
重苦しい空気を壊すようにクロエは口を開いた。
「いやぁ、彼女は流石の実力だったね、僕はアルフレッド君が負けるとは思わなかったよ」
アルフレッドは大きくため息を吐いてクロエに言う。
「クロエっち、頼むから今は黙っててくれないっすか? これでも混乱してるんすよ、あと負けてないっす」
強情だねぇ、とクロエは薄笑いを浮かべる。
「まあ強がりは男の子の美点だ、女の子の強がりは可愛いけど悲しい時があるからね」
一人で悶える変態を見て、リリィは引きながらアルフレッドに尋ねる。
「ねえアルフ、クロエさんはいつもこんな感じなの?」
「大体頭のおかしい事しか言ってないっすね、ただ仕事熱心っていう部分は評価できるっす」
おお、仕事熱心というのは自称ではなかったのか、とリリィは心の中でクロエに謝った。
「しかしリリィちゃんも凄い魔法使いだったんだね、あれは呪文魔法、あれは魔法と偽った魔術だろ?」
「……良く、分かりましたね」
リリィは少し悔しそうにクロエの質問に答える。
「あれは私が開発した魔法式です、式自体に魔法理論を組み込んで合って、魔力を流し込む事で発動する仕組みになってます」
でもこんなに簡単にバレるならもっと魔法式を複雑にしないとかな? と、反省する。
「凄い魔術だ、本来必要な工程を二つも飛ばして魔法が使えるなんて、無詠唱スキルの代用が出来る凄い魔法なんじゃないかな?」
「そんな大層なものじゃありませんよ、呪文魔法は使い捨ての魔法式ですから、人によって調整しないといけないですし、とても実用性があるとは思えません」
「そうかな? 十分凄いと思うけどね」
それでも褒められて嬉しいのか、リリィは小さく、ありがとうございます、と呟く。
「そして最後の魔術、あれがどういったものなのか僕には理解出来なかったよ、あれは……なんだい?」
クロエは薄笑いを消し、真面目な表情を浮かべた。
「あれは呪文破壊の応用です、根本的なスキルの意味を考えていたら偶々思いついたんです」
「スキルの意味?」
はい、とリリィは頷く。
「そもそもスキルってなんですか?」
「それは人の成し得た結果の形じゃないのかい? 僕が剣をある程度操れるようになったら、剣技という特技になる、そうなると形として現れるのが剣技というスキルだろ?」
その通りです、でも正解ではないです、とリリィはいう。
「もっと掘り下げて考えるなら魔法というスキルがいいですね、魔法スキルは一度発動した魔法を再発動する事が出来るスキル、で間違いないですね?」
「そうだね」
「では再発動させる為の魔法式は一体どこに保存されてるのでしょうか?」
「それは、体の中?」
「正解です、そしてその式とは言ってしまうと脳が記憶しているだけなんです」
「?」
「スキルとは何ですか? の正しい答えはこうです、頭の中で自分が覚えている行動や魔法発動までの工程を最適化する、これによって分かる事は、スキルとは体の中で組まれる魔法式のような物、です」
ような物? とクロエは顔を顰める。
「また曖昧な表現だね」
「魔法式とは全く別の物ですからね、同一視してしまうと、スキル=魔法、という事にもなりかねないと思いまして」
ああ、確かに、とクロエは納得する。
「その仕組みさえ分かってしまえば後は呪文破壊の応用で、どういうスキルなのか、どういう式で組み立てられているか、の解読だけでそのスキルを破壊する事ができますよね」
「まあ、理論上はね」
それがどれだけ難しい事か、ある程度の魔法の知識がある人間には分かる。
「新しい技術、というヤツかな、君のお爺さんが喜びそうな話だね」
「叔父を知っているんですか?」
「旧知の仲、かな? 友達では無かったけれど良く話はしたね」
そう言ってクロエは過去を懐かしむように目を細め遠くを見つめる。
すると、虚空からベルベットが現れた。
「リリィ!」
大慌てをしながらベルベットはリリィに抱きついた。
「どうしたの、ベル?」
「どうしたのじゃないわよ! 馬鹿の咆哮が聞こえたから来てみたらこんなにお腹を青くして!」
ペロリと服を捲り、ベルベットは青くなったリリィのお腹を摩る。
「ちょっ! ベル!」
アルフレッドは視線を逸らし、クロエはご馳走様ですと拝んだ。
アルフレッドは俯き、リリィはそんな竜騎士の手を治療している。
重苦しい空気を壊すようにクロエは口を開いた。
「いやぁ、彼女は流石の実力だったね、僕はアルフレッド君が負けるとは思わなかったよ」
アルフレッドは大きくため息を吐いてクロエに言う。
「クロエっち、頼むから今は黙っててくれないっすか? これでも混乱してるんすよ、あと負けてないっす」
強情だねぇ、とクロエは薄笑いを浮かべる。
「まあ強がりは男の子の美点だ、女の子の強がりは可愛いけど悲しい時があるからね」
一人で悶える変態を見て、リリィは引きながらアルフレッドに尋ねる。
「ねえアルフ、クロエさんはいつもこんな感じなの?」
「大体頭のおかしい事しか言ってないっすね、ただ仕事熱心っていう部分は評価できるっす」
おお、仕事熱心というのは自称ではなかったのか、とリリィは心の中でクロエに謝った。
「しかしリリィちゃんも凄い魔法使いだったんだね、あれは呪文魔法、あれは魔法と偽った魔術だろ?」
「……良く、分かりましたね」
リリィは少し悔しそうにクロエの質問に答える。
「あれは私が開発した魔法式です、式自体に魔法理論を組み込んで合って、魔力を流し込む事で発動する仕組みになってます」
でもこんなに簡単にバレるならもっと魔法式を複雑にしないとかな? と、反省する。
「凄い魔術だ、本来必要な工程を二つも飛ばして魔法が使えるなんて、無詠唱スキルの代用が出来る凄い魔法なんじゃないかな?」
「そんな大層なものじゃありませんよ、呪文魔法は使い捨ての魔法式ですから、人によって調整しないといけないですし、とても実用性があるとは思えません」
「そうかな? 十分凄いと思うけどね」
それでも褒められて嬉しいのか、リリィは小さく、ありがとうございます、と呟く。
「そして最後の魔術、あれがどういったものなのか僕には理解出来なかったよ、あれは……なんだい?」
クロエは薄笑いを消し、真面目な表情を浮かべた。
「あれは呪文破壊の応用です、根本的なスキルの意味を考えていたら偶々思いついたんです」
「スキルの意味?」
はい、とリリィは頷く。
「そもそもスキルってなんですか?」
「それは人の成し得た結果の形じゃないのかい? 僕が剣をある程度操れるようになったら、剣技という特技になる、そうなると形として現れるのが剣技というスキルだろ?」
その通りです、でも正解ではないです、とリリィはいう。
「もっと掘り下げて考えるなら魔法というスキルがいいですね、魔法スキルは一度発動した魔法を再発動する事が出来るスキル、で間違いないですね?」
「そうだね」
「では再発動させる為の魔法式は一体どこに保存されてるのでしょうか?」
「それは、体の中?」
「正解です、そしてその式とは言ってしまうと脳が記憶しているだけなんです」
「?」
「スキルとは何ですか? の正しい答えはこうです、頭の中で自分が覚えている行動や魔法発動までの工程を最適化する、これによって分かる事は、スキルとは体の中で組まれる魔法式のような物、です」
ような物? とクロエは顔を顰める。
「また曖昧な表現だね」
「魔法式とは全く別の物ですからね、同一視してしまうと、スキル=魔法、という事にもなりかねないと思いまして」
ああ、確かに、とクロエは納得する。
「その仕組みさえ分かってしまえば後は呪文破壊の応用で、どういうスキルなのか、どういう式で組み立てられているか、の解読だけでそのスキルを破壊する事ができますよね」
「まあ、理論上はね」
それがどれだけ難しい事か、ある程度の魔法の知識がある人間には分かる。
「新しい技術、というヤツかな、君のお爺さんが喜びそうな話だね」
「叔父を知っているんですか?」
「旧知の仲、かな? 友達では無かったけれど良く話はしたね」
そう言ってクロエは過去を懐かしむように目を細め遠くを見つめる。
すると、虚空からベルベットが現れた。
「リリィ!」
大慌てをしながらベルベットはリリィに抱きついた。
「どうしたの、ベル?」
「どうしたのじゃないわよ! 馬鹿の咆哮が聞こえたから来てみたらこんなにお腹を青くして!」
ペロリと服を捲り、ベルベットは青くなったリリィのお腹を摩る。
「ちょっ! ベル!」
アルフレッドは視線を逸らし、クロエはご馳走様ですと拝んだ。
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