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第ニ章・お兄様をさがせ!
第三十七話
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「ははははは………………だから、どうしたって話っすよ」
アルフレッドは過ぎった過去を飲み込み、立ち上がる。
「少し疲れたっす、もう部屋に戻るっすね」
踵を返し、その場を離れようとするアルフレッドの手をリリィは掴んだ。
「ちょっと待ってアルフ、まだ治療がーー」
「放っておいてくれっす!」
しかし、アルフレッドはリリィの手を乱暴に振り払った。
そんなアルフレッドをリリィは心配そうに見つめる。
「リリィ、ゴメンっす、今はちょっと余裕がない」
それだけ言うと、アルフレッドはそそくさと寮の中に入ってしまった。
「はぁ、あれはしばらくダメね」
「まあ彼も年頃だ、少し放っておけば立ち直るんじゃないかな?」
「簡単に言うわね、アルフがあんなに荒れるなんて滅多にない、クロエ、アンタ何か知ってるんじゃないの?」
眠るエルフィアのスカートの端をつまみ上げながらクロエは答える。
「知ってるかと聞かれるとまあ知ってはいるね、でも教えてと言われると話しは別だよ、さっきリリィちゃんにも言ったけどね、簡単に理由と結論を求めちゃダメだよ、これは彼の問題でもあるけど君達の問題でもあるんだ、精々悩むと良いよ若人たち」
そう口にするクロエは時折みせる真面目なものだった。
「はぁ、またおばあちゃんが一枚噛んでるのね?」
「さてさて、それはどうかな?」
白々しい、とベルベットは憎たらしげにクロエに悪態を吐いた。
「ベル、エルフィアを工房に入れてもいい?」
「はあ? ダメに決まってるでしょ」
「でもーー」
「あーしの工房に見知らぬ、それもリリィを傷物にしたヤツを入れるなんて絶対に嫌よ!」
「ベル、お願い」
「だから、嫌ってーー」
リリィは今にも泣きそうな顔をしていた。
グッと出かかった言葉を飲み込んで、ベルはそっぽを向く。
「目が覚めるまでよ、分かった?」
「……うん、ありがとう」
「アンタが泣くことないじゃない」
「だって、だってぇ」
ベルベットの小さな体に抱きついて、リリィは静かに涙を流す。
「アンタが悪い訳じゃないでしょ?」
子供をあやすようにベルベットはそう口にする。
ーーまあ、アルフが悪いのかって聞かれるとまたそれも違うんだけどね。
まったく面倒臭いとベルベットはため息を吐いた。
*
「はぁ、頭が痛いっす」
ベットに横になるとアルフレッドは白い天井を見つめる。
別に自分が悪い訳ではない、そしてエルフィアが悪い訳ではない事は分かっている。
しかし、アルフレッドはエルフィアの願いを聞き届ける事は出来ないし、願いを聞き入れないという事は妹と名乗るあの少女が苦しむ事になる。
この場合、誰が悪くて、誰を責めればいいのか、アルフレッドには分からなかった。
「俺は……アルフレッド・ドラグニカ、ただの竜騎士」
ーーそれ以下でも、それ以上でもない。
そもそも、自分がエルフィアの願いを聞き入れる義務などないだろう、あの少女が本当に妹かどうかなど分からないのだから。
仮に本当に血の繋がった妹だとしても、そこにアルフレッドという存在が介入する必要などどこにもないのだ。
そう、なんて事はない、エルフィアという少女はただ血の繋がりがあるだけの他人だ。
知りもしない人間に心など痛むものか、とアルフレッドは唇を噛む。
「なら、なんでこんなに!」
胸が締め付けられるのか。
その答えは一向に出る気配は無かった。
アルフレッドは過ぎった過去を飲み込み、立ち上がる。
「少し疲れたっす、もう部屋に戻るっすね」
踵を返し、その場を離れようとするアルフレッドの手をリリィは掴んだ。
「ちょっと待ってアルフ、まだ治療がーー」
「放っておいてくれっす!」
しかし、アルフレッドはリリィの手を乱暴に振り払った。
そんなアルフレッドをリリィは心配そうに見つめる。
「リリィ、ゴメンっす、今はちょっと余裕がない」
それだけ言うと、アルフレッドはそそくさと寮の中に入ってしまった。
「はぁ、あれはしばらくダメね」
「まあ彼も年頃だ、少し放っておけば立ち直るんじゃないかな?」
「簡単に言うわね、アルフがあんなに荒れるなんて滅多にない、クロエ、アンタ何か知ってるんじゃないの?」
眠るエルフィアのスカートの端をつまみ上げながらクロエは答える。
「知ってるかと聞かれるとまあ知ってはいるね、でも教えてと言われると話しは別だよ、さっきリリィちゃんにも言ったけどね、簡単に理由と結論を求めちゃダメだよ、これは彼の問題でもあるけど君達の問題でもあるんだ、精々悩むと良いよ若人たち」
そう口にするクロエは時折みせる真面目なものだった。
「はぁ、またおばあちゃんが一枚噛んでるのね?」
「さてさて、それはどうかな?」
白々しい、とベルベットは憎たらしげにクロエに悪態を吐いた。
「ベル、エルフィアを工房に入れてもいい?」
「はあ? ダメに決まってるでしょ」
「でもーー」
「あーしの工房に見知らぬ、それもリリィを傷物にしたヤツを入れるなんて絶対に嫌よ!」
「ベル、お願い」
「だから、嫌ってーー」
リリィは今にも泣きそうな顔をしていた。
グッと出かかった言葉を飲み込んで、ベルはそっぽを向く。
「目が覚めるまでよ、分かった?」
「……うん、ありがとう」
「アンタが泣くことないじゃない」
「だって、だってぇ」
ベルベットの小さな体に抱きついて、リリィは静かに涙を流す。
「アンタが悪い訳じゃないでしょ?」
子供をあやすようにベルベットはそう口にする。
ーーまあ、アルフが悪いのかって聞かれるとまたそれも違うんだけどね。
まったく面倒臭いとベルベットはため息を吐いた。
*
「はぁ、頭が痛いっす」
ベットに横になるとアルフレッドは白い天井を見つめる。
別に自分が悪い訳ではない、そしてエルフィアが悪い訳ではない事は分かっている。
しかし、アルフレッドはエルフィアの願いを聞き届ける事は出来ないし、願いを聞き入れないという事は妹と名乗るあの少女が苦しむ事になる。
この場合、誰が悪くて、誰を責めればいいのか、アルフレッドには分からなかった。
「俺は……アルフレッド・ドラグニカ、ただの竜騎士」
ーーそれ以下でも、それ以上でもない。
そもそも、自分がエルフィアの願いを聞き入れる義務などないだろう、あの少女が本当に妹かどうかなど分からないのだから。
仮に本当に血の繋がった妹だとしても、そこにアルフレッドという存在が介入する必要などどこにもないのだ。
そう、なんて事はない、エルフィアという少女はただ血の繋がりがあるだけの他人だ。
知りもしない人間に心など痛むものか、とアルフレッドは唇を噛む。
「なら、なんでこんなに!」
胸が締め付けられるのか。
その答えは一向に出る気配は無かった。
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