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Code 141 始まりは一通の手紙
しおりを挟む死霊魔女セファスとの激闘から少し後、いまだ侵略者たちによる被害の爪痕が残ったまま、ハーネイトたちは新規事業の立ち上げのために会議や調査、交渉などを行っていた。その中で起きた、DG絡みの事件。彼らはどう解決し、未来をつなげていくのか。
魔女との死闘からもうすぐ半月、ミスティルトシティのホテル内事務所で資料に目を通しているハーネイトはゆったりとした椅子に座り、落ち着いた様子で仕事をしていた。各地にいる仲間たちから送られるさまざまな情報を整理している中、リリエットが分厚い木製のドアをノックして入ってきた。
「ハーネイト、手紙が来ているわよ。わざわざ紙で送ってくるなんて」
「……ありがとうリリエット。それで差出人は……キースさんか」
リリエットから手紙を受け取り、その封を確認し宛名を見たハーネイトは、わずかに笑い文の内容を読み始めた。
「キースって、あの戦いのときに異様な雰囲気を放っていた、不思議なお姉系の人ですよね」
それを少し離れた場所で見ていたエレクトリールが、お菓子をほおばりながら質問する。
「ああ、そうだエレクトリール。私の古い友人というか、ある意味では年上の相談相手というか、深い仲だよ」
「そうなのですか、確かブラッドラーと聞いていましたが、何の職業でしょうか」
彼女は前に戦場で出会った大柄で独特の雰囲気を醸し出していた男、キースのことを覚えていた。今まで見たことのないタイプの人間で何者なのだろうかと気にせずにいられなかった。その中である単語についてハーネイトに質問した。
「ああ、エレクトリールは知らないだろうけど、このアクシミデロで最も有名で、観客数も選手数も多いスポーツがある。それがブラッドルだ」
ブラッドラーというのがあるスポーツの選手についての総称であることを知ったエレクトリールは、その競技の詳細について尋ねる。
その発祥は現在のところ、大消滅から30年ほどして起きたある事件に由来する。まだ災害の癒えぬ土地、復興をどうにか遂げようとしていたある国で起きた領主とレジスタンスの戦いのさなか、その競技の元となるきっかけが起きた。
その1つの偶然が、ここまで影響を与えた。黒いボールを人チーム11人で取り合い、敵陣にある3つのゴールのどれかに入れれば点が入る。至極シンプルが故に、奥深いそのゲーム性にいまやこの星で暮らす人たちの7割が虜になっている。
「へええ、そんな競技があるのですね」
「ほう、それは気になりますね」
その話を奥の部屋で静かに聞いていたボガーノードらが執務室のドアを開け入ってきた。
「んだな、俺たちの故郷は雪ばかりでな、雪で遊ぶことしかなかったからな。ずっと地下にいるのも息苦しかったけどよ」
「スポーツ、俺、好き。どういう競技か教えて欲しい、マスター」
ホテル内でも自在に動けるように魔法で縮小化したユミロが、好奇心旺盛なまなざしをハーネイトに向ける。また、ボガーたちもその競技の話を聞こうとハーネイトの話に耳を向ける。こうも多人数に、お世辞にも広いといえない部屋の中で迫られると、ハーネイトは初めて教師として教壇に立った時を思い出しふっと笑う。仕方ないといった表情で、彼は競技についての説明を始めた。
「まず11人でチームを作って、ゴールを守る人を11人の中から一人か二人選ぶ。そのほかの選手でボールを取り合い、3つのわっかのどれかに投げ込むのがブラッドルだ」
そうして一通りルールを聞いた彼らは、今度それをやってみたいと彼に申し出た。確かにルール自体は簡単で、ボールの運搬方法は投げても蹴ってもいいものである。だからこそ難しいところがあると話を続けるハーネイトは、近くにある本棚から一冊の本を取り出した。それをシャックスに投げて読むように指示をする。
「思ったより簡単そうですね」
「これがそうはいかなくてね、ゴールが風でくるくる回転するから意外と入らなかったり、高得点狙いで遠くから飛ばす変人がいたり、簡単が故に奥深い要素が多い。だからこそ競技人口も桁違いに多い伝統の競技なのだ」
なぜここまで普及したか、それはハーネイトとその仲間が、誰でも遊べるようにルールを制定したこと、そのルールが先述した通りシンプルであるため、もともとほかのスポーツをしていた人が流れてきたというのも理由に挙げられる。
「そして、ブラッドルを遊びやすく普及させた中心人物の一人なのよね、ハーネイト?そしてキースさんもそれに賛同し、今のだれでも手軽に運動ができるようにルールや競技時間などを考えたお方なのよ。まあ、風のうわさで聞いた話だけどね」
リリエットが補足説明をし、彼女のほうに視線が集まる。この若い魔剣士はいったい何者なのだろう。ある時は戦争を終結させ、ある時は研究者として活躍し、はたまたこの前は異星人や邪神とも刃を交えた。このあどけない表情を時折見せる男の底知れぬ能力を全員が感じていた。
「ハーネイトさんってどれだけ手広く功績残しているのでしょうか。なんでも成功して富を得ているイメージですね」
「ヨハン君か、ハーネイト殿はそういったいい運気を引き寄せる力があると」
「それだけは、私たちがどうこうしようと会得できない、まさに王として必要な力です」
シノブレードとヨハンがそう話をし、シャックスも彼の素質について話をした。初めて出会ったその時から、彼の力をどこかで感じていた。それは本物であり、シャックスはある伝承を思い出し彼ならば、その境地にきっとたどり着けるとなぜか確信していた。
「とにかく、キースがこうして手紙を出すこと自体珍しい、最も彼は機械の扱いはそこまで得意ではないが。急いでいこう」
「私たちはどうしますか?ハーネイトさん」
「そうだな、エレクトリールはついてきてくれ。残りは街の警備や依頼の消化などを頼む。魔獣絡みの事件がまだ収まる気配がない」
戦いが終わっても、すぐに元通りの生活を送れるわけではない。影響の余波は、多くの爪跡を残していた。現につい昨日もDGが生み出した合成獣が小さな町を襲おうとし、ハーネイトらが撃退したのである。今までの魔獣と違い、対処に慣れていないハンター、解決屋が多く次から次に起きる事件に対応が追い付いていないのが現状であった。
そしてキースからの手紙、どこか嫌な予感がする。彼は急いで身支度をする。本来はリリエットたちにも手伝ってもらおうと思ったハーネイトだったが、彼女らは機士国で裁判が近く行われるためそれはあきらめた。
「了解しました、ハーネイトさん」
「では俺はあの町の依頼を片付けてきます。師匠も気を付けて」
「ああ、各自行動に移すように」
30分ほどで準備を済ませ、彼はミスティルトシティの中央広場にある巨大な石の前に立っていた。あれから魔磁気嵐はほとんど発生していない。辺境の地でたまに観測されるほどに減った今なら、安定して各地に移動できる。もっとも、その嵐の影響を受けないような移動手段が欲しいところだと彼は思っていたものの、距離のあるゴッテスシティまで行くにはいまだこれが一番だと思い、彼は黒い石碑のような石に手をかざす。すると彼の姿は忽然と消え、あっという間に古代都市の一つ、ゴッテスシティに到着した。
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