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Code 145 DGに魂を売った研究者
しおりを挟むその頃ヴァルハは社長室でコーヒーを飲んでから会社の地下にある研究室に足を運んだ。例の研究者、ウディスと話すためにであった。部屋の扉を開け、ノートに何かを書き込んでいたウディスに声をかける。
「ウディスか、私の部下に何を吹き込んだ、答えろ」
「これはこれは、ヴァルハ様、一体何をおっしゃっているのですか?」
「どうもこうも、私の社員をたぶらかし、危険な目に合わせただろうが」
ヴァルハは怒りを抑えながらウディスに詰め寄る。カードについて簡潔に説明を聞いていたものの、真の効果について全く聞かされていなかったことが彼の怒りを買っていた。
「おやおや、あなた方こそ、私の研究について把握されていないのでは?」
「なんだと?」
「私の行う研究は、人の限界を超える研究。あのカードもまた、その研究に必要なものなのですよ」
ウディスはデモライズカードの本来の用途とされた、人の限界を超え転移生物に対抗するため生み出されたことを話す。それについては偽ることなく、ありのままをヴァルハに話す。
ウディス・マスティン・ヴァイオ、彼もまた機士国の研究機関に在籍していた時は崇高な志を持った一人の研究者であった。そんな彼を豹変させたのがDGであった。DGが持ち掛けた提案のどれもが、さらなる高みを目指す好奇心旺盛な研究者たちの心を揺さぶり、魔女セファスの仕掛けた罠も相まって、多くの研究者がDGのもとで恐ろしい研究に励み幾つもの禁断の研究成果を生み出していたのであった。
「だからと言って、社員を利用していいということにはなるわけないだろう」
「そういわれましても、あのマーティンという男が力を望んでいた。私は力添えをしたまでですぞ日ヒヒ」
「力を、望んでいた?」
ウディスのその言葉に、ヴァルハは怪訝な顔をしていた。どういうことなのだ、あのマーティンがなぜそのようなことを?疑問が矢継ぎ早に脳内に出てくる。
「おやおや、ヴァルハ様はこの街、いや、この星で大人気のゲームのことについてご存じないのですね?異世界から来た人間には、まあ仕方のないことですが」
ウディスの話を、ヴァルハは黙って聞いていた。ブラッドルについては知っていたものの、まだ知らないことが多いものだと勉強不足を痛感しつつ、ハーネイトから聞いたDGとの戦争についてここまで人を歪めたのかとおそれを抱いていた。
「ともかく、会社をさらに発展させるためには私の力が必要になりますぞ?いいですね?生体工学の分野でシェア1位を取るためには、手段を選んでいる暇はありませぬぞ」
ウディスは不気味な笑いを浮かべヴァルハに対しそういう。
「……ああ、ただしこれ以上妙な真似は許さないぞ。腕は認めているが、あまり目立つような真似をしてはならん」
「ヒヒヒ、わかっておりますぞ。では私は研究の続きを……」
ヴァルハは牽制する一言を述べてから部屋を後にした。エレベーターで一階に上がる中で彼は考え込んでいた。
「……怪しいとは前から思っていたは、あれはまずいな。しかしハーネイトの言うとおり、目を話していては何をしでかすかわからん。……何を企んでいるのか調べないとならんな」
その後一旦社長室に戻り部屋を出たヴァルハは、改めてハーネイトと協力し、この研究者ザイオの企みを暴かなければならないと決意した。いやな予感がする。そう彼は思い、会社を出て次にマーティンの入院している病院に足を運んだ。
「すみません、マーティンという男がここに入院していると聞いたのですが、面会は可能ですかい?」
「ええ、一応できますがあなたは誰ですか?」
「ああ、私はルゴスコーポレートのヴァルハと申します。ハーネイトという男に私の社員を助けていただいたのでね」
「ほう、そなたがあのルゴスコーポレートの社長ですか。面会については30分だけですぞ。まだ彼の体は傷ついておりますからな」
「ええ、構いませぬとも」
ホミルドは常に警戒を怠らないようにしつつも、ヴァルハに対し患者の面会を許可した。
「ヴァルハだ、大丈夫かマーティン」
「社長……!なぜこんなところに!」
「いや、お前さんを助けた男が会社にきてな、事情を説明してくれた。そのおかげで分かったのだ」
なぜ社長であるヴァルハが直々に見舞いに来たのか驚いたマーティンは、うつむいたまま謝る。
「社長……!すみません、俺なんかのために」
「そういうなマーティン。しかし、あの夜何があったのか話せる範囲で聞かせてほしい。同じようなことはこれ以上起きてほしくないからな」
マーティンは正直に、あのとき何があったかを話し、ヴァルハも時々うなづきながら話をすべて聞いていた。
「それで、俺はそのアイテムの実験に協力する形で、報酬に財宝のありかを教えてもらうということであれを使ったのです。妹の病を治すために、どうしてもお金が……」
「妹さんがいたのかい、それに病だと?会社の製品では治せないのか?」
「妹の病は……おそらく治せません。半年ほど前にあったある女に襲われたその後遺症だからです」
マーティンがなぜデモライズカードを使ったのか、それは単に力を求めていたわけではない。真の理由は実験と引き換えに大量の金が彼の手元に入るからであった。医者が首を横に振るほどに、マーティンの妹ルミナの罹った病はひどかった。そんな彼女を救うために、大金を積んでどうにかしようとしていたのであった。
「それならば、あのハーネイトという男ならば妹さんを助けられるはずだ。確か魔法の名手だったはずだ。彼もそれについて自信ありげな表情だったぞ」
「あ、あの男がハーネイト?昔見た時と別人のようだったから気づかなかった……確かにそうですな。それでハーネイトが事件解決のために動き回っていると」
マーティンの話を聞いたうえで、ヴァルハはハーネイトならばたとえ呪術的なものによる病であっても治せると説明し、マーティンは驚いていた。あの男がハーネイトだったのかと。以前顔を見た時とは全くの別人に見えていたため気づくのに遅れたのであった。
「それで、ふむ。あの研究者は偽名を使っていたのか。ウディスという名は違う。本名はザイオ・グリューンペル・アグタキスで、昔機士国で研究者をしていたと」
マーティンは研究者ザイオのことについて詳しかった。他に協力者が数名いることも話したうえで、彼の本名と出身についても話した。
「なんだと?いつの間にそのような事件が起きていたのだ。しかし、その事件と関係があるというのならば協力しない選択肢はない。マーティンが使ったアイテムは、ハーネイト曰く人を爆弾に変えたり悪魔や魔獣に仕立て上げ街を壊す代物らしい」
「おいおい、あの男はそんなやべえもの作っていたのかよ!」
マーティンは話を聞いて震えが収まらなかった。自分はカードが途中で離れて何もなかったから今生きているが、場合によっては死んでいた。しかもそうなる可能性を全く告げられていなかったことに彼は憤りを隠せなかった。そのうえでそう考えると奇跡が起きたのだなと思っていた。
「正確には、その研究者の元同僚らしいがな。侵略してきた宇宙人をペテンにかけてそのカードで自滅させる予定だったとハーネイトから話は聞いた」
「……そうなのか、命拾いしたよ本当に。社長、あの研究者、ほかに仲間がいるらしいです。それと、こんなものを手に入れてきたんす」
マーティンはある資料をヴァルハに渡した。それはある建物の見取り図と場所を示す地図であった。
「これは、何かの建物の見取り図だな。しかも工場みたいだ」
「なんでも、そのカードを作ってるらしいんですよ。そこで。しかも会社の金を無断で使っているそうで……」
「そうか、わかった。これをハーネイトに届けよう。そうすればそれ以上危険なカードの製造は防げるはずだ」
「頼みます、社長」
ヴァルハは見舞いの品を机に置いてから病室を後にした。マーティンも薄々カードについていやな予感は感じていた。だからこそどうにかして地図を手に入れ誰かに破壊してもらおうと考えたのではないか。そう思いつつホミルドのいる部屋まで向かった。
「すまなかったな、ホミルド院長さん」
「いえいえ、部下がご無事で何よりです」
ホミルドに一礼してからヴァルハは自分の心境を彼に話した。
「しかし、とんだ厄介な出来事に私も巻き込まれたものだ。私もブラッドルという競技が気になってここまで来て、彼らに近づくためああいった商品を作っていたのだが、もし今回のことが明るみになれば会社は間違いなく倒れる」
今回の事件が明るみになれば、会社の信用はなくなるだろう。そうなれば会社をたたむしかない。そうはさせないと決意を固めながら病院を後にして夜道を歩くヴァルハの背後に、何者かが近づいていた。
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