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Code 146 DGの刺客VSハーネイト
しおりを挟む「……!」
「なっ!」
その何者かが、頃合いを見計らってから静かに襲い掛かろうとする。しかしヴァルハも何かに気づき振り向くが、男の手にしたナイフをよけるには時間があまりにも足りなかった。襲われるかと思ったその十秒ほど前、すでにハーネイトは空から急降下しつつ魔法の詠唱を始めていた。
「魔鏡の誘い 夢幻の罠 一つは受け止め一つは打ち出す 行き違えろ、災いの事象!大魔法9式・鏡通交光(きょうつうこうこう)」
「……何だと!ってぐあああああああああ!」
何者かの声がした瞬間にヴァルハは未知先の数十メートル離れた場所におり、ハーネイトが先ほどまでいたところに現れ、ナイフを持った不審な男を殴り飛ばしている光景を見ていた。ハーネイトは男に痛烈なカウンターをお見舞いした後一旦後方にジャンプし、ヴァルハの無事を確認した。
「ふう、間一髪だった。ヴァルハさん、けがはありませんか?」
「私は無事だが、今のは一体」
何が起きたのかわからずヴァルハは説明を求めた。あれがうわさに聞く大魔法かと質問するとハーネイトは微笑みながらそうだと言った。
「魔法であなたと私の現在位置を入れ替えたんですよ。そして犯人にカウンターをお見舞いしたわけです」
ヴァルハに簡潔に今使った魔法を説明したハーネイトは、たじろぐ男に対し速やかに戦技を発動する。
「逃さない。創金術(イジェネート)・天鎖門!」
「ぐああああ、このっ!」
創金術の鎖で男の手足を拘束すると、ハーネイトは堂々と近づいて尋問を始めようとした。ヴァルハは暗い中良く目を凝らし男の顔を見るとどこかで見たことを思い出した。、
「ハーネイト、その男は確か、研究者の協力者だった男だ。マーティンから話を聞いた」
「ということは、社長の命を狙ってきた可能性が十分あるな」
捕らえた男の元まで歩み寄ると、ハーネイトはじっと顔を見ながら尋問を開始する。
「さあ、何のためにあの人を襲ったのか白状してもらいましょうかね」
「断る……!ぬおおおおおおおおああああああ!」
男はわずかに動く腕でポケットから何かを取り出すと、渾身の力を振り絞って胸にカードを張り付けた。
「しまった、この男もカードを!ヴァルハさんは逃げるんだ!」
「わ、わかった」
男はデモライズカードにより変身し、猿のような魔獣へと変貌した。鎖を強引にほどきヴァルハの方へ一目散に突撃を行う。
「ぬっ!追い付かれる……!」
「そうはさせんで!菌壁!」
ハーネイトはすかさず紅蓮葬送を引き延ばし男を捕らえようとするもわずかに間に合わない。その時聞き慣れた声とともに、男の前に灰色の壁が現れ吹き飛ばされたのであった。
「伯爵!」
「なんだなんだ?またあのカード使っているやつがいるんか」
「そうだ、この街で恐ろしい事件が起きている!」
伯爵は夜の街を飛びながらハーネイトを支援するため技を使ったのであった。すっと地面に降り立つと、ハーネイトに事情を聴きすぐに何をすべきか理解した。
「いいぜ、街中で暴れるならあれだろ?こうしてやるぜええ!」
「これは、菌の結界!」
「さあ、遠慮はいらねえよ。今回は観客に徹するぜ」
伯爵はすぐさま自身の体の一部を霧状に変え、眷属を周囲に展開すると霧のドームを作り出した。
「そうだな、結界のほうは頼むぞ。爆発による被害を防ぐにはそれしかない!ったく、剥がして解除できるみたいだが」
日之国の一件でデモライズカードの対処法は理解していた。しかしもしも融合型だとしたら、そう彼は思ったもののカードが見えている状態だったためそれではないと判断し、冷静に攻撃を仕掛けた。
「戦闘の基本は行動力の奪取、そして痛烈な一撃!」
ハーネイトはすかさず突撃し、男の手足を鎖でさらに固定した後的確に水月を突くように創金術で手を守る手甲を製作し装着、男の行動力を0にする一撃を食らわせた。完全に男が気絶したのと同時に、男の腕に貼られていたデモライズカードを剥がし後方に跳んだ。
「さあ、これでおしまいだ」
これで一件落着かと思いきや、突然男の体が光りだした。
「なっ!これは一体!」
ハーネイトは初めてデモライズカードを張ったやつらと戦ったことを思い出した。爆発する!そう思い彼は紅蓮葬送で瞬時に身を包み防御した。と次の瞬間、菌壁内で爆発が起きた。完全に爆風を抑えられず、伯爵も体の一部が吹き飛び、ハーネイトは爆風によるダメージを受けていた。
「がはっ、何て……ことだ。防御はしたはずだが、爆発のダメージが……っ!」
「大丈夫か相棒!くっ、体の一部が吹き飛んだぜ畜生が!」
伯爵は元の姿に戻りハーネイトのそばに近寄る。どうにか立っているものの、フラフラになりながら構えるハーネイトを支える。
「ぐっ、迂闊に剥がすとこういうこともあるのか。あの時のは偶然ならなかっただけなのか」
「経験に裏切られたって感じだな。迂闊に剥がせねえぜこれ」
「……っ、ヴァルハさん、は大丈夫ですか?」
「私はいいが、今のは一体何が起きた」
彼らのやり取りを遠目で見ていたヴァルハは、腰を抜かしていた。
「男がデモライズカードを使いましてね、カードをはがした瞬間爆発が起きたのです」
「本当に大丈夫なのか?」
「ええ。とりあえずヴァルハさんはすぐに家にお戻りください。私の仲間が護衛に当たります」
ハーネイトは創金術の力で体を整え、引き続きヴァルハの護衛を務め、家まで護送することができた。何かあればすぐに連絡するようにといいその場を去ったハーネイトは、待っていた伯爵と合流した。
「デモライズカード、安全に解除できるはずのアクションがだめになったか」
「やはり、俺様の出番かな。カード自体を醸して消滅させればええんじゃねえの?」
「それだ……!」
ハーネイトは伯爵の提案にそれなら問題ないと言うが、伯爵は少し困っていた。今のところ眷属のストックも支配率も問題ないが、伯爵の立場としてある問題が付きまとっていた。
「まあ、保証はねえけどな。カードの浸食度合いとか、時間とかで違いそうだぜ。体本体が爆弾となっていたら防ぐのはちと面倒だ。なによりも……俺を連れ戻そうとする部下たちに気づかれたくねえ!!! 」
「ど、どういうことなんだよ」
いきなり伯爵が叫んだためハーネイトは驚いた。それについて何があったのか問いただすと、伯爵は非常に困った顔をし目を背けながら事情を説明し始めた。
実は長い間、部下から逃げてリリーと行動を共にしてきたためあまり目立つと探している部下たちに捕まってしまうとのことであった。実はこれについては理解者である部下の一人と連絡を取っているためどうとでもなる話であったが、もう一つ重大な理由としてボツリナウス元帥たちとハーネイト達が出くわすと何が起きるか分からない、それは防がなければと思い伯爵は立ち回っていたのであった。
「はあ、今更それをどうこうしろとこちらも言えないけれど、事情説明は改めてした方がいいんじゃないのか?」
「そうしてえ、してえけどさ。全員俺を見つけたら速攻で捕らえて故郷送りだぜ。俺はリリーと相棒と、これからも旅がしてえ。そんですべてが蹴り着いたらそん時に、改めて王として動く」
伯爵もハーネイトに対しああいっておきながら、自身も菌の王としての責務をほっぽりだしていた。ハーネイトは呆れながらも、自身の件についても合わせ互いにそれどころではないなと思っていた。
「王か……」
「まあそういうことでよ。全人類を醸し食べるとかそういうのはできねえしする予定はないから安心しな。それと、大技は目立つから当分はコンスタントにいかせてもらう」
「そうしておいてくれ。自分がいかに危険な存在か分かってくれよ?」
「ふん、そりゃおめえも同じだろ。お互い様さハハハハ」
「そうだな……ありがとう伯爵。一旦BKの事務所に戻る。……早く寝たい」
ハーネイトは伯爵と別れ、BKの施設まで帰還しようと施設の近くまで訪れた時、見慣れた一台の車が止まっていた。それはシャムロックの運転するベイリックスであった。
「ハーネイト様、ようやく到着いたしました。機材の調整に時間がかかり申し訳ありません」
「シャムロック、ああ、それは構わない。それでリンドブルグのほうは何か問題でも?」
「いえ、特段問題はありませぬな。しかし……ハルディナや婆羅賀さんたちが寂しがっておりますぞ」
「そうだな……この件を終わらせたら戻らないとねシャムロック。早く解決しよう。デモライズカードは危険すぎる」
「うむ、私も全力でお力添えいたしますぞ」
すさまじく鍛え上げられた上腕二頭筋をフンっと見せながら任せてくれと言わんばかりのジェスチャーを見せるシャムロック。ハーネイトは相変わらずだと笑いながら、工場についての話を切り出した。
「頼もしいな。実はねシャムロック。この街にDカードを秘かに作っている施設があるのだ」
「なんと……もうそこまで。仕事が早いですなハハハ」
「それで、明日の夜に強襲をかけて情報を回収し、研究者も捕らえる算段だ。協力者に手伝ってもらっていてね」
一通り事情を話したのち、シャムロックは自身の出番は今回なさそうだなと思いながら一応確認を取った。
「ならば問題ないですな。私の出番があればいつでもお呼び下さい」
「その時は頼んだよ。といってもシャムロックのあれは過剰な一撃(オーバーキル)になるからな……今日は疲れたし、早めに寝るよ。シャムロックはこれからどうする?」
「見回りに行って参ります」
「わかった、無理をしないで慎重にね」
ハーネイトは偵察に出かけたシャムロックを見送ってからBKの施設に入った。シャムロックは相変わらず仕事熱心。、初めて出会ったその時から、実直な性格なところはぶれない。それについて頼もしいと思う反面、いつ休んでいるのか気になっていた。けれど自分も人のことを言えないのでハーネイトは口に出さず、しばらく彼の言った方角を見つめていた。
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