「神造生体兵器 ハーネイト」

トッキー

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第一話 始まりは突然に、星に迫る脅威

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ハーネイト遊撃隊 1
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 アクシミデロ星の北半球に、オルティネブ東大陸という大陸がある。その大陸の最東端の街、リンドブルク。地球でいうならば、地中海の沿岸部に存在するよう建物が立ち並ぶ町並みで、漁業と商業が盛んな町である。人口は2300人弱で、リアス式海岸が、周辺に多く存在し、町自体はその沿岸部にある小高い丘にある。そこにはとある魔法使いが町外れに事務所を構えていた。全長3㎞にも及ぶ砂浜がすぐ近くにある、高さ30メートルは超える絶壁の崖の上に佇む、3階建ての建物がその事務所である。事務所の窓をよく見れば、事務所の2階に誰かいるようだ。

 「今日は特に依頼はないか。ここまで何もないのも久しぶりだ。待ちに望んだ休暇、か。ブラッドルの試合でも見ながら寛ぎますか。」

 そういいリビングにある紺色のソファーに腰を掛けて独り言をいう彼はこの事務所の主にして、世界各地で活動する解決屋、ハーネイトである。本名、ハーネイト・ルシルクルフ・レ-ヴァテイン。

 かつて侵略戦争で勇敢に戦った、黒羽の魔術師「ジルバッド・ルシルクルフ・ヴェインバレル」という魔法使いの息子、そして弟子である。容姿端麗、濃緑の手入れされた艶やかで少しはねている髪、どこか冷ややかな、しかし穏やかな目付き、紺色のコートの下には鍛え抜かれた肉体、品行方正で気さくな彼は、町を歩けば黄色い声がよく上がる。一般的に好青年のイメージであり、老若男女に好かれる彼は、この街においてもかなりの有名人だ。

  彼は座った後ソファーに体を預け、ぐたっと横たわる。そしてだるそうにガラスの机の上にあるリモコンを手に取り、テレビとエアコンのスイッチを入れる。

  この辺境の街では本来通信機器もテレビやエアコンなどを動かす発電所もなく、一昔前の生活を送るのが常だった。東大陸の文明レベルが他の大陸と比較し平均的に低いというのが理由であるが、彼がこの町を訪れてから街の暮らしは一変した。街には電気が通り、家畜の糞やこの星特有の鉱石などを利用してのガスの供給が各家庭に行われるようになった。

 これはハーネイトが旅をした中で、見て学んだ技術を取り入れたものである。こうして彼がテレビを見ているのもこのような理由がある。と言ってもこのテレビは電気仕掛けであるが通信方法は魔法と言う奇妙な造りをしているのだが。

 「今日の試合は3リーグ交流戦の中盤戦、リドガルズとヴィンダーズの試合か。」

  彼はテレビの画面に目線を釘づけにしている。この世界で最も知名度の高く、競技人口が一番であるスポーツ、それがブラッドルと呼ばれる競技である。
  
 ブラッドルは各チーム11人、合計22人が、敵陣の奥にある3つのリングのどれかに小型のボールを投げ入れたり蹴り入れたりする競技であり、ルールのシンプルさと、先述の奥深さ、試合時間が1時間であること、短時間に目まぐるしいほど得点が変化することから、近年爆発的に競技人口が増加している。ハーネイトもリーグの試合をよく見ているほどには好きな競技であり、実は彼によりこの競技は世界中に広まったとされる。

 今日はCリーグ1位のリドガルズと、3位のヴィンダーズの試合が放映されている。3位のヴィンダーズが猛攻を見せ、今期12ゴールを決めたオルゴフ・アムロイ選手が6人抜きから、確実に点を入れる堅実かつ大胆なプレイを見せ、リドガルズのエース、ロムニス選手も遠距離から狙撃するように、4点や5点を決める大接戦となっており、観客席も盛大な盛り上がりを見せている。彼も正直チケットを買って見に行けばと後悔していた。

 「相変わらず、熱い戦いを繰り広げているな。今季はヴィンダーズが予想を覆して大健闘だ。あっという間に攻守が逆転するところと、各人の能力が試されるブラッドルは最高だな!うむ。」

  彼はブラッドルの良さを改めて認識する。当初、この競技は広く認知されておらず、ルールもやや複雑だったため、ハーネイトとその仲間が誰でも分かりやすく体を動かせるようにして、各地で普及活動をした結果、爆発的に競技人口が増加したのだ。彼はそれに喜んでおり、時間がまたできたら、選手として参加したいと考えていた。一時期ブラッドル界に伝説のブラッドラーが存在したというが、もしかするとそれはこの男かもしれない。

 「折角の休暇、どこか遊びに行ってみたいものだな。あの変なメイドたちも休暇中だし、しばらく寝ておくか。」

  一時間ある試合を見終わり、テレビを切ると、ソファーでうなだれたように寝たまま、ひとときの休みを得るハーネイト。数か月前から雇っているメイドと執事たちは、現在休暇を取っており、不在である。彼がメイドたちのことを変な奴らと評するのには理由がある。3人雇っているが常識人が1人しかいないというのがその理由である。元から一人で事務所を管理していた手前、特に問題はない。しかし彼には、1つの悩みがあった。

  「時間があるうちに、海で遊びたいな。わざわざ海の見えるいい場所に事務所立てたのに、遊びに行く時間がないとか少し辛いな。」

  彼は海を見ることが好きで、移動で不便な辺境の街に事務所を立てたのも、すべては海を見たいがためである。海を眺めていると、昔懐かしいような感覚を覚える。しかし海を見る時間が中々作れず、彼は残念な表情をしていた。今度こそ時間を作りたい。そう考えつつも睡魔に襲われた彼は、久しぶりに気兼ねなく熟睡できると思い、ソファーで寝ることにした。
  
 しかしそれも束の間、事務所に来客者が訪れる。その来訪者との出会いが、長い戦いの始まりになるとはこの時、彼は予想していなかった。

  事務所のドアから数回ノック音が聞こえる。それは何度も急ぐようにコンコンとリビングまで響き、眠りに入ろうとしていたハーネイトの耳内に侵入する。

 「 ん、ん…。来客かな。はあ、折角ゆっくり眠れると思ったが、来客なら仕方ない。お客様には笑顔で対応だ。うん、はい、今開けますから。」

 やれやれといいたい表情をも見せつつもソファーから勢いよく立ち上がり、彼はリビングを出る。いつだって笑顔で応対しなければと気持ちを切り替えて、ノックの主に声をかけながら階段を素早く降りて、事務所のドアをゆっくり開ける。

 そうして事務所のドアをゆっくりと開けると、傷だらけの中性的な容姿の男が膝を地面につき、呻いて苦しんでいた。そして力尽きた彼は地面に倒れる。すぐさま彼はその男をよく見る。状態は思わしくない。早目に治療しなければ死んでしまうほどに打撲や火傷がひどい状態であった。若者の身に着けていた服は不思議な一体型のスーツであり、この星では見られない格好をしていた。体のラインを見れば女性のようにも見える。

 「おい、どうした。何があったのだ?全身傷だらけではないか。とにかく家の中に入れないと。ほら、俺に掴まれ。」

 ハーネイトが声をかけ、しかし応答のない男を抱きかかえる。そのまま彼を背負うと、玄関の扉を閉めて階段を上り、リビングまで担ぎ上げる。そして先ほど寝ていたソファーに若者を寝かせてから傷の手当てを始める。

 「傷が多いが、浅いのが幸いか。しかし火傷がひどい。まるで爆発に巻き込まれたようだ。速やかに手当てと消毒か。いや、大魔法を使用した方が早い。」

  彼は冷静にそう判断し、三行句の魔法を素早く唱える。
 
 これは彼が優秀である魔法使いの証とされる「大魔法(アルティメタムマジック)」の詠唱である。魔を使いし咎人の定め、されど力無きもの、魔にすべてを奪われる。この世界に住む魔法使いは幾つこの大魔法を行使できるかで位が決まる。

 ハーネイトは、大魔法の考案者ジルバッドからすべてを教えられ、そのすべてを確実に行使できる存在である。つまり総合的に魔法戦において彼を上回る者はいないということである。
  
 ハーネイトはジルバッドが残した魔法の本に載る、91号の大魔法、あらゆる傷も病気も吹き払う風「万里癒風(ヒールリペアウインド)」の詠唱を行う。

 「全てが元に戻る風、癒しは万里を越え世界を満たすだろう。あらゆる傷と病から立ち直れ、ヒールリペアウインド!」



  詠唱が終わると、突然若者の体が風に包まれて、瞬く間に風が当たった箇所から火傷や切り傷が癒えていく。


 「うう…な、にが起きて、傷が治っていく。これは一体。」
 「はあ、はあ。気がついたか?ならよかったが。いま暖かい飲み物を用意しよう。体も冷えているようだ。」


  若者は意識を取り戻し、自身が負ったはずの傷が全くなくなっていることに気付く。目を覚ましたことに彼も気づき、声を掛けながら近くにある湯沸し器からお湯をカップに注ぎ、コーヒーを作ってあげた。
 
「おっと、甘い方がいいか?」
 「は、はい。あ、あの、見ず知らずの私を助けてくださって、有難うございます。」

  青年は、今置かれている状況がまだ理解できずも、目の前にいる濃緑の髪の男が助けたのだと確信し、ソファーから飛び起きて、ハーネイトに一礼した。

 「 気にするな、それよりも、その前にお互い名乗らなければな。俺はハーネイト・ルシルクルフ・レーヴァテイン。ハーネイトでいい。君は?」
 「 私はエレクトリール・フリッド・フラッガと言います。この惑星の外側からやって来ました。」

  その男はエレクトリールと自身を名乗った。そして自身がこの星の外から来た存在であることを彼に明かす。

 「星の外から?そうなるとそれは異星、宇宙人と呼ばれる存在か。少し待て、とてもそうには見えないぞ?」

  ハーネイトは目の前に立つ、10代後半に見える幼くも見える青年がこの星の人間でないことに驚いて、言葉が一瞬止まった。それもそのはず、彼の肉体、容姿は至ってこの星に住む人間と何ら変わらないのだ。確かに、着ている服は先述したがこの星では見慣れないものではあるし、金色のような、白銀色のような独特の髪色はこの星ではお目にかかれないものであった。しかし顔つきや体のラインは中性的ではあるものの、どう見ても人間にしか見えないのである。いきなり別の星から来たといわれても、実感が湧かなったため、彼は疑問に思いそれを口に出す。

 「そうですか、しかし私はこの星から23万キロほど離れたテコリトル星の出身です。」

ハーネイトの言葉にそう返し、別の星から来たことを強調する。ハーネイトは彼の言葉に少し驚きながら、かなり甘めのコーヒーを口に含み、間をおいて味わいながら喉に流し込むと、エレクトリールに質問した。

 「テコリトル星か。伝承にも、遺跡から手に入れた情報にもあった異星の侵略者と呼ばれていた者の故郷か。まあ、外から来た宇宙人というのはいいが、エレクトリールはどうしてひどい傷を負っていたのか?答えられる範囲でいいから、教えてもらえるか?」

エレクトリールは、彼のその言葉を聞き、体を震わせながらその質問に答える。

 「ええ。実は私の故郷が謎の敵性存在に襲われて、大王様からこれを守って逃げろと、そして敵に追われながらこの星に逃げてきました。」

  そういいながら、エレクトリールは身に付けていた小さく蒼い鞄から青白く光る正八角形の結晶と、怪しく、鈍く光るグリップのようなものを7本取り出しハーネイトに見せる。
  それを見て、ハーネイトは結晶体の方に触れようとしたが、体全体で感じる嫌な感覚を身に覚え、瞬時に指を止めて腕を体の方に引き込んだ。

 「何だ、今邪悪な何かが体を駆け巡った感じだ。気分が悪くなりそうだ。」
 「大王様はこれを、邪悪なる獣の心臓と言っていました。小さいのに、測ることができないほどの質量と気を感じます。」

  エレクトリールは静かに、机の上に結晶を置く。時折覗かせる妖光は、見るものすべてを引き込みそうなほどの魅力に満ちていた。

 「とにかく、これがただの鉱石、結晶ではないことは確かだ。この背筋からぞわっとする感じ、怖くなるな。それとそのグリップみたいな部品は?」

 今度は鈍く、怪しく7色に光る、剣、もしくは銃のグリップに見える物体を彼は手に取り、冷静に角度を変えつつ観察する。

  「持ち手の部分が怪しく光るのが気になる。まるでオーロラのようだ。美しいが、引き込まれそうな色だ。」

  彼はその持ち手だけの道具を見続けていた。虹色のオーロラのような、紫を基調とした光を見ていると、以前この街に来た時、海を見た感覚と似たものをこの道具からも感じ、ひたすらじっと見続けていた。

 「 大丈夫ですか?それは、使用者の思う様に、別の空間に存在する武器を呼び出し使える、イマージュウエポンといいます。」
 「思うままにか、面白いな。この星には、私が発見及び調査した古代文明を含めても、今の調査段階では存在しない技術だ。しかし何だこの懐かしい感覚は。」
 「そうですか。私もこれを使用しています。しかしこの技術は秘匿中の秘匿。だから結晶と共に持ち出しました。私の一族はこの技術の管理を任されていますからね。しかし懐かしい?」

  エレクトリールはこの道具をイマージュ上ポンと呼び、あらゆる武器を召喚できる機能を備えていると説明する。それにハーネイトは少し驚く。そしてエレクトリールもハーネイトの発言に疑問を持つ。

 「それはすごいな。確かに、使い手によってはこの道具は非常に危険だ。突然武器を呼び出せるというのは戦いで有利だろう。それにこの光、ずっと見ていたい。」

  ハーネイトのその言葉に、エレクトリールは驚いた顔をする。そして心の中で推測をする。

 「この光を懐かしいと?もしかすると、ハーネイトさんは次元力を行使できる可能性があるかもしれない。しかしなぜ?」

  エレクトリールは、光を感じてそれが好きであると理解したハーネイトについて、自身と同じ力が使える可能性を考えていた。だがそれは、彼の出生と関係がありこの先彼の身に起こる不思議で危険な現象とつながっていくことを誰も把握していなかった。

 「大丈夫かい?これ、一本貸してほしいな。何かを思い出せそう。」
 「あ、はい。大丈夫です。別にいいですが、大事にしてくださいよ?」

  エレクトリールは返事をし、物欲しそうにしていたハーネイトにそのグリップを一本預けることにした。握った感触から、その時ハーネイトはかつてとある遺跡で発掘した剣を思い出し、イメージした。すると突然グリップを握った手が光りだし、巨大な剣が現れた。

 「嘘、だろ?エクセリオンキャリバー!あの時触れて、突然消えた剣がなぜ。」

  彼は目の前で起きたことに驚愕と感動を感じていた。とある能力者しか扱いこなせない「イジェネート武器」の中でもその特性を最大に生かした大剣、エクセリオンキャリバー。体内にある膨大な金属を取り出し武器にする力を剣に注ぎ込むことで、その刀身の長さを自在に調節できる不思議な大剣である。 

  以前遺跡で拾い、しばらく使っていたもののある日突然、触れた瞬間に消えてそれ以降見つけることができなかったものであり、彼はその再開に笑顔を見せていた。 

  一方でエレクトリールの表情は険しかった。なぜこの男が次元を利用した力を行使できて、なおかつすぐに武器を召喚できたのか、彼には理解できなかった。この技術自体がテコリトル星独特のものであり、異星人である彼にその力があるとは思ってもいなかったからである。

 「お、おめでとうです。まさかあなたにそんな力があるなんてははは。」

  エレクトリールは動揺しつつも、嬉しそうに子供のような表情をするハーネイトに声をかけた。

 「さて、その結晶はどうしようか。」
 「これだけは私の能力でも保管ができなかったのです。どうしましょうか。」

  エレクトリールの言葉にハーネイトは、その結晶に触れて念じる。するとそれはすぐにその場から消えて、イメージしなおすことで再度召喚した。

 「ちょ、何で?本当にあなたこの星の人ですか?」
 「うん?実はそれすらよくわからないような感じなんだよね……。」

  エレクトリールが彼の行う動作を見て驚きつつも質問する。それに対する返答は、わからないというものであった。彼は自身の力の謎や出生が分からなかった。ジルバッドのことを父として見ているものの、心の中では漠然とした否定感が渦巻いていた。そのことについて言葉を選びつつハーネイトはエレクトリールに説明した。

 「そうなのですね。それは、はい。申し訳ございませんでした。そのイマージュウェポンで何か分かるとよいですねハーネイトさん?」
 「謝ることはないさ。そうだね。ありがとう、エレクトリール。しかし、今後の身の振り方はどうするのだ?しばらく故郷へは帰れないだろう?」
 「そうです、ね。宇宙船は大破しています。回収はしてありますし、部品があればどうにかなるのですが。私は、星を襲ったやつらの正体を暴いて、倒し、元の星に戻さなければならない。戻る手段を探して、早くどうなっているか確認したいのです。」

  エレクトリールは壊れた宇宙船を治して、故郷に戻りたいという意思を伝えた。しかし彼には個人的な理由もありこの星でしばらく身を隠したいとも考えていた。

 「 そうだな、そうするしかないよね。こっちもどうしたら帰れるか調べるよ。解決屋の名に懸けてな。パーツは、日之国に行けばどうにかなるだろうし治すだけならあいつに任せればいい。さあどうするかってのああああっ!すごい衝撃だ。何が起きた!」
 「うわわ!」 


ハーネイトの事務所に突然衝撃が走り、ハーネイトが一瞬よろめき、エレクトリールが地面に倒れこむ。

 「まさか。まだあいつら私のことを!」
 「君を追っていたやつらのことか?どちらにせよ、事務所はともかく街の被害だけは避けないとな。ハルディナの鉄拳だけは二度と喰らいたくない!」

  叫ぶようにそう言い、、ハーネイトは机の椅子に掛けていたコートを羽織り、愛用の刀を手に取ると階段を掛け降りて外に出る。そしてすぐにエレクトリールも立ち上がり、机に置いてあったイマージュトリガーを手にして追いかけ駆けつける。

  ドアを勢いよくバンと開き、外に出たハーネイトとエレクトリールは、事務所の周囲を包囲している機械兵を数体確認する。足には4つの車輪、腕には複数の銃器、そして頭部には、3つの赤い光を放つカメラアイがリボルバーのように回転しながら、二人の存在を捉えていた。そして素早く腕をこちらの方に向ける。

 「こいつらか、事務所を襲ったのか。」
 「どう見てもそうですね。でも私を襲った連中とは違いますね。私の星を襲ったのは、機械兵ではなく、別の宇宙人でしたから。」
 「こいつらではないのか。それに他にも宇宙人がいるとは驚きだ。それと、よく見たらこの機械兵、以前機士国が秘密裏に開発していた、重機械兵オリゴンだな。何故だ?あれは駆動系や電子装置に重大な欠陥があるのと、軍縮政策で開発を中止していたはずだ。おかしい。」

  事務所を襲った敵と違う存在、つまり別の宇宙人に襲われたというエレクトリールの言葉を聞きつつ目の前に存在する機械兵について疑問を抱くハーネイト。本来存在するはずのない機種であり、かつて機士国という国に仕えていた際にその存在と計画の中止を聞いたものがなぜここにいるのか、彼は不思議でたまらなかった。

 「ソコノニメイニツグ、タダチニトウコウセヨ、サモナクバコウゲキヲカイシスル!」
 「はん、何だか知らんが、その命令には従わん。さっさと引け。私が優しい表情をしているうちに逃げないと。」
 「ナラバ、ジツリョクコウシデトラエルダケダ、コウゲキカイシ!」

 片言の機械音声でそう機械兵が言い終わる前に、ハーネイトは瞬時に間合いを詰めて、鞘に納めていた刀を抜きながら機械兵一体を一刀のもとに叩き斬り、完全に真っ二つにする。

 「弧月流、満月斬り・陰!俺の休暇の邪魔をするものは、誰であろうと塵すら残さない!」

  彼の悲痛な言葉が街に、海に響く。正直エレクトリールが来た時点で諦めていたものの、さらに邪魔をされることに温厚で誰よりも優しいハーネイトは押さえつけていた感情を開放する。

 「いい加減俺を休ませろ!俺にも人並みの休みが欲しい!」

  もはややけになっているハーネイト。一体彼に何があったのだろうか。完全に八つ当たりで機械兵の集団に襲いかかる。しかし、すかさず残りの機械兵数体が両腕のマシンガンでハーネイトに向かって、集中砲火を浴びせる。凄まじい銃弾の雨が激しい土埃を巻き上げ、ハーネイトの周囲を包み込む。

 「ハーネイトさん!そ、そんな。あれだけの銃弾を浴びては、ハーネイトさん!」

エレクトリールは無数の銃弾を撃たれたハーネイトを見て思わず叫ぶ。しかし土埃が収まるとエレクトリールの顔はまるで感動したかのような表情をしていた。


ハーネイトは弾丸が当たる寸前に、首の付け根から紅蓮のマントを展開し自身を包み込み、機械兵が放った弾丸の雨から身を守っていた。マントが発射された弾すべてを受け止め、吸収されていく。

  これこそが彼が持つ能力の1、イジェネートである。エクセリオンキャリバーの件も含め、この星で英雄伝説を作り上げた要因の一つである。体内のあらゆる金属を取り出し形にし、武器や防具、道具を作り出すセルフ高速鍛冶場というものである。今もこの能力者、つまりイジェネーターはアクシミデロに少ないが存在するものの、全身を変化させられるのは彼しかいない。更にこの力には究極の使い方があるという。

 「 悪いけど、銃弾とか全弾防ぐから。物理無効の恐怖、味わってね?さて、次はこっちから行こうか。」

ハーネイトは高い声で茶目っ気のある言葉を言うと、マントを収納し、抜刀した刀に電気を纏わせ、素早く鞘に納める。そして力強く、一歩前に踏み込むと、居合いと共に眩いほどの光を放ち電撃を放つ。その居合いの衝撃と高電圧の雷撃が機械兵を数体巻き込み、ショートさせ機能を完全停止させる。

 「魔法剣術のお味はいかがかな?と言ってももう壊れて返事もできないが。エレクトリール、大丈夫か?」

  普段は少しダウナー気味でめんどくさがりやな彼も、スイッチが入ればこの通りである。戦うのは面倒で嫌いと言っているものの、それは本当ですかと言わんばかりにノリにノッているハーネイト。

  ハーネイトは魔法使いでもあり、剣士でもあった。幼少期に剣の修業をし、その天性のセンスで幾つかの流派の戦技をすべて習得している。更にこれを工夫し、魔法効果も合わせた一撃を放つこともできる。

 「は、はい。どうにか。」

エレクトリールが返事を返したとき、背後から機械兵がエレクトリールに襲いかかろうとする。それは勢いよくエレクトリールの背後から襲い掛かり、腕に装備してあるパイルパンカーで突き殺そうとしていた。

 「後ろだエレクトリール!っ、シュペルティン!」

  声をかけつつ、素早く服の中からペンを取り出す。それをエレクトリールに襲い掛かる機械兵に対し投擲する。これもハーネイト専用の特殊武器、ペン型投げナイフである。彼のスポンサーが作っている道具であり、仕込む機能の違いで20種類以上の投げナイフが存在する。XZIR-01シュペルティンは単純な構造に、先端に貫通力の高い合金を使用したナイフを取り付けている。ハーネイトはダーツの名人でもあるため、下手な飛び道具よりもこれを使用するのを好む。ただし彼はその投擲法に癖がある。直打法という方法で投げるのだが、問題はその飛翔距離が通常では6mが有効射程に対し、ハーネイトは300m離れたところでも正確に当てられるのである。

シュペルティンが機械兵の胴体部に直撃し、一瞬動きを止める。とっさにハーネイトが駆け出し、手に持った刀を投擲しようとし、エレクトリールの元に近寄ろうとする。一瞬反応の遅れるエレクトリール。しかし、彼は目をつぶり、笑顔でハーネイトを見る。

 「フッ、私を狙っていることはすべてお見通しですよ!雷撃・サンダーレイン!」

 機械兵のパイルパンカーがエレクトリールの体に触れようとしたとき、エレクトリールの体に空から巨大な雷が落ちる。

 「エレクトリール!だ、大丈夫なのか?雷が体に…?」

 機械兵と共に雷をその身に受けたエレクトリール。普通の人間が受ければ即死レベルの高電圧。彼の足元を見れば、地面が赤く溶けかかっている。それでも彼は平然と立ち、右腕を天に挙げていた。一方の機械兵はと言えば、金属の体が溶け、すぐに光となって虚空に消えていった。

 「私は、雷電を統べし者。如何なる雷も私の前には糧でしかない。ハーネイトさん、これが私の力です!」

そう叫ぶと、雷を纏った槍をイマージュウエポンで召喚し、槍の切っ先を天に仰ぐ。する。そうすると、空から幾つもの雷光が周囲に降り注ぎ残りの機械兵をすべて粉砕する。

  これで終わりかと思うと、今度は空から巨大な幻獣、オフニロウスが降り立ち、目の前に出現する。羽の生えた大きなリザードが騒ぎを聞きつけてきたのだ。

 「なあ、エレクトリール。久しぶりに怒りと言うものを感じたよ。やる気みたいだけど、素材だけ頂いて後は還れ!」

  更なるアクシデントにハーネイトはエレクトリールの顔を見ながら、青筋を立ててそういう。このオフニロウスは羽と爪が魔法使いに高く売れるため、それだけを頂こうと彼は考えていた。

 「創金の理はあらゆる運命を切り開く。イメージは「羽ばたく鳥」解き放て!イジェネート剣術「剣翔」」

  ハーネイトがそう叫び、右腕を天に掲げるとその上空には銀色の金属の塊が現れ、それは分裂し12本の剣に形を変える。そして指先を勢いよくオフニロウスに指すと、12本の剣は自律的に飛翔しながら的確に4枚の羽と12本の爪を切り取り弾き飛ばす。

 「ああ、あとはとどめだ。ジルバッドの弟子と対峙したこと、後悔しろや!」

  そう叫ぶとハーネイトの体を魔力が身を守るように覆い尽くす。

 「黒鬼の羽、幻の蝶。遍く幻想一つに束ね、哭死の羽矢で全てを穿つ!「黒蝶矢」」

  ハーネイトは71号の大魔法「黒蝶矢(こくちょうや)」を両手を合わせてから打ち出す。相手によっては即死させることもできる、黒く大きな一つの大矢が無数の黒い蝶の中から風を切り裂くように飛び、オフニロウスの体を裂くように分かつと、幻蝶の呪いで肉体を消滅させた。

 ハーネイトのそのド派手かつ激しくも的確に敵の命を奪う一連の流れに、エレクトリールは一つのドラマを垣間見た。そして感動していた。

 「はあ、はあ。運が悪いとしか、言えない。さてと、エレクトリール。おまえの力は一体なんだ、なぜ雷が直撃しても生きているんだ?あんな雷撃を喰らって、普通の人間が生きているはずがない。
 「それはそっくりそのままお返しします!あなたこそ何ですかあれは。」

 ハーネイトが刀をゆっくりと鞘に納めながらそう言い、エレクトリールの顔を見るが同じような言葉を彼の口から返される。

 「ははは、まあお互い、普通じゃないってことだな。しっかし派手にやりすぎた。感情に任せて行使するなんて、ジルバッドが見たら結束万布でお仕置きでされるね。」
 「みたいですね。私の力は、雷撃を発生させ操る力です。テコリトル星の住民は皆、体から大量の電気を産み出せます。そして自在に操り生き物のように動かしたり、機械に流し込み操作することもできます。どうでしたか?びっくりしましたか?」
 「ああ、普通に驚くわ。雷特化の魔導師みたいだね。しかし魔力をほとんど感じなかった。エレクトリール。実は相当強いだろ?」

 ハーネイトが、倒した機械兵の残骸とオフニロウスの羽や爪を集めながら尋ねる。それを見てエレクトリールも手伝う。

 「え、あ、まあそうですかね?私からしたらハーネイトさんの方が恐ろしいですよ。面白い能力ですし。あの詠唱とかマントいいですね。とにかく、私の力は分かっていただけたでしょうか?」

  エレクトリールは機械の部品を拾いつつ、笑顔でそう言葉を返す。

 「あ、ああ。雷を操る者か。驚きだがその力、俺に貸してくれないか?後で話をしたい。」
 「はい、ハーネイトさん。」

そういうとエレクトリールも機械兵の残骸を手に取る。もっともエレクトリールが撃破した機械兵は原型をほとんど留めておらず、まだ形を残していた一機を抱えてハーネイトの元に駆け寄る。

 「ふう、どうにか集められる分は集めました。私が仕留めたのはもはや原型がないですが。あの、ハーネイトさん?」

ハーネイトは機械兵の部品を手にとってはまじまじと見つめる。どうやら、何かを探しているようだ

「ああ、この機械兵らが何処で作られたかを調べていてな。部品を見ると、製造したのは機士国、そして別に誰かが携わっているみたいだな。ほら、このもう一つのエンブレムを見てくれ。」

ハーネイトはエレクトリールに、手に持っていた部品を見せる。

 「こ、これは私の故郷を襲ったやつら、服についていたエンブレム!この星にも奴らが来ているの?」

エンブレムを見て驚くエレクトリール。同時にハーネイトもエンブレムを見て、それから推測されることに関して、怪訝な顔をしていた。

 「今から3か月ほど前に、ここから2000㎞は離れたところにある機士国で、軍事ク―デターが発生、国王が現在も行方不明となっている。配下に置く近衛兵であり、最も王から信頼されているルズイークとアンジェルもだ。私もそれに関係した事件や情勢に関して情報を収集しているのだが、まさかエレクトリールを襲った連中と、機士国に異変をもたらした可能性のある誰かさんに何らかの共通点が存在するとはな。証拠もあるし、そう考えてもいいだろう。」
 「すでに、奴らの手がこの星に来ているということですね。」

  2人はそれぞれ推測を口に出し、今起きていることを整理する。

 「そういうことになるな。かつて機士国とは何度か仕事で関わったことがあるし、国王やその部下たちとも親交があった。どこかに潜伏でもしているのだろうか。」
 「かなり大変なことになっているのですね。その国王とは、連絡をかけることはできるのですか?」
 「それができているなら、とっくの前に迎えに行っている。」
 「そうですか、その国王や部下から話を聞ければ、何か手掛かりが分かりそうですよね。」
 「ああ、そうだな。はあ、やれやれだ。やっと大きな仕事が片付いて。休暇でヴァール海岸に行こうと思ったのに。シーグラスとか、貝殻とか集めたかった。しかし、各地を回って情報収集をしているのに、音沙汰無しとは、心配だ。」
「そんなときに休暇が欲しいとか大したものですねえ。」
「アンジェルの魔法運用力は非常に高い。ルズイークも強い。二人のことを高く評価しているし、とろうとした休暇も1日だけだ。」
「そうですか。それなら仕方ないですね。」

  2人は話を続ける。連絡の取れない国王を心配しつつもアンジェルと言う人物の能力を信じて少しだけ休暇に行きたいというハーネイト。エレクトリールは少し呆れながらもその国王の心配もする。

  そうして、軽くため息をつきながらも、1つ残さず部品を集めきったハーネイトは、事務所の軒先に座り込む。その隣に、エレクトリールもゆっくりと腰掛ける。

 「目撃証言とかはないのですか?」
 「それは数件あったが、すぐに行方が分からなくなる。アンジェルが私の教えた魔法を駆使しているのであれば、捜索が困難になるのは分かるのだが。」

  そのアンジェルと言う人はハーネイトの弟子であり、とっておきの隠蔽魔法を教え込んでいるため感知できない状況かもしれないと分析していた。

 「そうなんですね。今はそのアンジェルさん、と言う人を信用して、祈るしかないでしょうね。」
 「そう、だな。」

  2人はそろそろ一息つこうとしたそのとき、遠くから、数名の聞き慣れた声がしてくる。ふとハーネイトが声のした方向を確認した。

 「ハーネイト!ご無事ですか?お怪我はありませんか?」
 「ははは、遠くから見ていたが、やりすぎではないのかね?」
 「えらくでかい音が聞こえたから思わず裸足のまま駆け出してしまったわハハハ。何があったのか?それとその隣の若い兄ちゃんは誰だい?」
 「ハーネイトの兄貴!ご無事ですか?かっこよかったすよ!剣術にあの伝説の大魔法、痺れますね、惚れ惚れしますね」

  街の方から事務所の方に走ってきた4人が、ハーネイトに声をかける。最初に話かけたこの町の現市長であるハルディナ、薬品を販売しているモーナス、レストランと肉屋を営むリラム、ハーネイトのファンで追っかけをしているダグニスの4人が、先ほどの騒動を聞いて、駆けつけてきたのだ。
 「ああ、それは大丈夫だがそれよりも町の被害はありませんか?ハルディナ街長。」

  ハーネイトはハルディナの顔を見て、少し目を逸らしながら答える。もし何かあれば、この後恐ろしいことが起きると理解し彼の顔が少しひきつる。

 「今のところ特にはないですが、何があったのですか。魔獣の襲撃ですか」

ハルディナがハーネイトの前に来て、顔をそっと覗きながら質問する。彼女の、三つ編みに結んだ髪がハーネイトの肩にかかる。ハルディナはこのリンドブルグの街長で、図書館の館長も務めている。彼女のおかげで、事務所をこの街に建てられたといっても過言ではない。東大陸における唯一の銀行「ヨーロポリス銀行」の創業者ローランド・ニコ・アンダーソンの養子でもある。

 「ああ。事務所が何者かに襲われて、外に出て応戦し、撃退したのです。しかし厄介なことになってきたかもしれないですね。ハルディナ街長、町に迷惑を掛けた。それとすまなかった。」

  もしかすると彼女の拳が顎に炸裂するのではないかと思い、彼は先に深々と謝る。

 「そんなこと言わないで、ハーネイト。いつもありがとうね。貴方の戦いはいつも派手で見てて面白いからね?」

  予想に反し、ハルディナは満面の笑みでハーネイトにそう言う。

 「まあ気にするなやハーネイトよ。お主には町の住民はいつも助けられておるからのう。」
 「 はい、そう言っていただけると助かる限りです。」

  モーナスのその言葉に、ハーネイトは軽く礼をする。モーナスは天然の薬草から様々な薬を生み出す魔術師であり、他の地域にも薬品を販売している。頑固で厳つい高齢の男性だが、筋はきっちり通す仁義に厚い男である。

  「疲れただろう、そこの兄ちゃんも、後でうちのレストランに来いよ。ご馳走振る舞うぜ。」
  「そうですね、あとで昼飯食べに行きますよ。エレクトリールもな。」

  リラムの誘いに、ハーネイトはお腹をさすりながら答えた。リラムというこの男は、町で肉屋とレストランを開いており、他の街からも食べに多くの人がやってくる人気店の店長兼、町の近くにある高原で牧畜を行っている人物であり、ハーネイトとたまに新料理の開発を行う親しき友人である。

 「それにしても、ひどい匂いだわ。油と焦げた臭い、しかも残骸を見るからに獣ではないし、ハーネイト?私に何が起きたのか説明してほしいのですが。あとオフニロウス、だっけ?あの爪わけて?」
 「いいですよ。貴女の笑顔見たら断れない。」

  ハーネイトは、事の経緯を4人に伝え、機士国で製造された機械兵の集団に襲撃されたこと、オフニロウスが突然襲い掛かってきたこと、3か月前に起きたクーデターと関係があるのではないかと言う考察を話した。

 「もしかして、そこの金髪の美形さん、宇宙人すか?わあー初めて見ましたけど、私たちと体つき案外変わらないんですね?不思議不思議。」
 「そうです、私はテコリトル星からやって来たエレクトリールと言います。いきなりのことで、皆さん困惑しているでしょう。よろしければ、皆さんに仲良くして頂けるとありがたいです。」

  エレクトリールは、さわやかな口調と笑顔で、丁寧に自己紹介をした。ほんわかした、優しい雰囲気のおかげか、異星人でありながら、周りにいる人間は警戒心を深く抱かずに、目の前にいる宇宙人と話せていた。
 「エレクトリールちゃんね?よろしくね。私はハルディナ・ニコ・アンダーソンよ。この町で街長をしてるのよ。困ったことがあったら言ってね。」

エレクトリールのけなげな感じに魅了され、ハルディナは思わずエレクトリールと握手する。エレクトリールも応えて握手する。

 「遠路遥々お疲れさまじゃの、宇宙の人よ。わしはモーナス。モーナス・アモルド・ラジスじゃ。薬屋をやっている。よろしくしてくれ、エレクトリールよ。」
 「 はい。こちらこそよろしくです。モーナスさん。」

  モーナスとも、固い握手を交わす。その手は皺こそ多いものの、長年鍛えられてきた物であり、どこか落ち着く感じがした。

 「わいはリラム。リラム・テルメロイ・アシムだ。肉屋とレストランをやっとるけに、食べに来てくれよガハハ!」
 「はい。よろしくお願いしますねリラムさん。」

  エレクトリールはリラムの厳つくて大きな手に驚きながらも、細い手を差し出し握手をする。

 「最後に俺だな?俺はダグニス・ルーウェン・アリス。そこのハーネイト兄貴のファンっす。実は二人の戦っている所を物陰から見ていました。兄貴もエレクトリールも、ナイスファイトだったです。兄貴の伝説についてならいくらでも話せるぜ。これからよろしくな、エレクトリール。」
 「よろしくお願いします。ダグニスさん。」

  軽い口調で自己紹介をするダグニスに、エレクトリールも元気よく返事をし、握手をした。このダグニスは、ハーネイトが事務所を建てる際に協力した、狂信的なまでの彼のファンである。

そうして、エレクトリールは丁寧に対応しながら、事務所まで来た街の人とお話をしていた。宇宙人の噂を聞いてぞろぞろと町民が集まる。

 「おうおう、新入りかい?しかも宇宙人だと?まあええや、よろしゅうな。ワイも別のところから来たから、似とるかもな?」

  いかにも浮世絵から出てきたかのようないでたちの男は婆羅賀という。5年前に地球からこの世界に来た歌舞伎役者で、仕込み傘を得意武器とするバサラ者である。

 「へえ、こんなこともあるんだな。せっかく来たんだしよ、いろいろ見ていくといいぜ。」

  ペレ-帽をかぶった緑のジャージの男は香月といい各地を回る商人である。

 「わーい!宇宙人だって、すごいねすごいね?」
 「宇宙人の兄ちゃん、かっこいい!イメージしてたのと全然違うよ。」
 「す、すごいですね。こんなに人がいるのですか。みなさん、よろしくお願いしますね。」

 街の子供たちも集まり、街の人全員が、ハーネイトが初めて街に来た時のように歓迎する。それにエレクトリールが丁寧に対応し、街のみんなに一人ずつ挨拶をして、人の波も一段落した。

 「ふう、人気者だな、エレクトリール。この町はいい人が多いからな。昔は排他的だったが、今ではいろんな人を快く受け入れてくれる素敵な街になったぜ。」
 「はい、こうして話すと、よくわかりますね。この星に落ちてきたときは、どうしようかと思っていましたが、少しホッとしました。」

  リラムがエレクトリールにそう話す。ハーネイトはその言葉に少し皮肉を言うようにそういう。

 「そうか。私が最初に来たときは仲良くなるのに時間がかかったのだがな。」
 「そうなのですか?」

  エレクトリールが驚いた表情で、ハーネイトの顔を見る。

 「いつの時代、世界でも先駆者と言うのは、苦労が絶えないものでね。今では、みんな親切に接してくれるけど。う、お腹が減ってきた。」

  彼の長い旅は、世界を大きく動かした。しかし彼にとってその旅は辛いものであり、だれもがしないことを先駆けてやる苦労について話をする。

 「そんじゃ、みんな飯にするか!」

  リラムの言葉に従い、ハーネイトたちは、事務所の近くにあるリラムのレストランに向かうことにした。木造の、味のある雰囲気の店内に入り、店の中央にある大きなテーブルをみんなで囲んで座る。リラムが厨房に入り、少ししてリラムがステーキやパン、サラダを運んできた。

 「みんな、遠慮せずに食べていってくれ。エレクトリールの歓迎会だ ハハハ!しっかり食べて筋肉つけろよな?お二人とも。」
 「わああ、すごく美味しそうです。頂きますねリラムさん!」
 「おう!みんなも遠慮すんなよ?食べてけ食べてけ。」

テーブルに並べられた、豪快な料理の数々。牛の近縁種とされるモーバイのもも肉のロースト、数種の野菜をじっくり煮込み、ハロハラスと呼ばれる鳥のエキスがよく効いた野菜スープ、町の外にある自家農園からとれた、新鮮な葉物野菜でできたサラダ、自家製のパンが幾つもの皿に並び、さながらパーティーのようであった。

 「相変わらず、リラムの作る料理はおいしいな。これを食べずして、仕事を終えた気分にはなれない。」
 「そう言ってくれると作り甲斐があるぜ。」
 「急遽エレクトリールちゃんの歓迎会みたいになったけど、遠慮しないで食べてね。お代はハーネイトが払うからね。」

  ハーネイトとリラムがそう話す中、ハルディナは少し意地悪して食事代はすべてハーネイトが払うことにするからと言う。

 「ちょ、ハルディナさんは強引だな。まあいいけど。」
 「さんはいらないでしょ?それにこういう時は気前よくドーンとしちゃう方がエレクトリールちゃんも不安がらないでしょ?」
 「はーい。やれやれ、仕方ないな。」

ハーネイトは少しやる気のない返事しつつモーバイのもも肉にかぶりつき、エレクトリールはスープを堪能している。

 「今回事務所に攻め込んできたやつら、前に兄貴が話してくれた機士国でできた兵隊だったよね。あんなもの扱えるところはあそこしかないよ。なんでわざわざこんな辺境の町まできて襲ってきたのか気になる。」

ダグニスは、自身が思っていた疑問をハーネイトにぶつけた。

 「そうだな、推測ではあるが、エレクトリールを追ってきた敵が、この星にいる仲間と連絡し、彼の持つアイテムを奪いに来た、という可能性もあるな。というか、そうでないと不可解な点が多い。あまりに手際よすぎるしな。」

  ハーネイトの返答に納得し考え込むダグニス。

 「ふむむ、事務所だけが襲われた点、エレクトリールがここにきてすぐに起きたこと、エレクトリール自体がいくつもの、貴重なアイテムの所持者で、敵がそれを狙って追っ手を仕向けたことから見ても、ハーネイトの考察は本当かもしれんのう。」

  モーナスが、ハーネイトの推測に付け足しをし、証拠の裏付けをする。

 「しっかしよう、そのエレクトリールを付け狙ったやつらは、何を企んでいるんだろうね。」
 「少なくとも、私の故郷の星はそいつらに襲撃され、占拠状態になっています。今まで見たこともない兵器を多く使われ、対応することができませんでした。私も戦い、敵の一人を捕まえて尋問したところ、他の星も同様に襲っているらしく、何十と言う星が壊滅したそうです。」
 「そいつは、笑えねえ話だな。」

  エレクトリールの話に、いつも陽気なリラムも表情を変えてまじめな表情になる。

 「はい。そうですね。」

  更に彼は話を進める。捕虜の話を整理すると、その侵略集団はその星の、戦争に利用できる技術を集めては戦争を水面下で引き起こし、利益を上げながらすべてを奪い尽くす、極悪非道にして許されること非ずの集団であるという。そして、その侵略集団の魔の手は、この星にもう伸びているということも、先ほどの襲撃で発見した証拠を全員に見せながら説明した。

エレクトリールの話を聞いたその場にいる人すべてが沈黙していた。他の星が危険な状態にあり、住んでいるこの星にも魔の手が忍び寄っていることを理解して、複雑な表情を浮かべている。実は今から数十年前にもその集団が来ていたのだが、まだその時生まれていない人が大半であり思い出せる人が少なかったのだ。

 「それに加え、ハーネイトを襲った機械兵は機士国で作られたものだと、ハーネイトが言っていたが、機士国は既に敵の手に落ちたと見てもいいのかもしれん。両方のエンブレムがある以上、否定は難しい。」
 「星の中でも工業化が最も進んでいて、文明も発達し、機械を大量に生産できる国力をを持つ国が、敵の手に堕ちた。それならば、やつらの蛮行を止めるのは難しいかもしれん。人口も国力も段違いだからな。」

モーナスとリラムの2人は、機士国が敵の手に落ちている可能性に改めて触れ、それが事実ならば大変な事態だと述べた。

 「確かにそうなるな。しかし敵の手に機士国が落ちたかどうか、それと行方不明の王を探して経緯を聞く必要がある。早い内に支度をせねばな。」
 「兄貴、その王様の話ですが、別の村のダチからそれっぽい人を見かけたとの話が先ほど連絡で上がっています。写真があるので見てください。」

ダグニスはそう言うと鞄から数枚の写真をとりだしハーネイトに渡す。ハーネイトはそれを一枚づつ確認する。

 「アレクサンドレアル王とルズイーク、アンジェルだな。確かにそうだ。ダグニス、何日前に何処で撮影したかわかるか?」
 「確か、3日前で、リンドブルクから西に40キロほど離れた町、フラフムです。街道を通った証言もあるそうで、そうなると、リノス辺りに今はいそうですね。」
 「何だと?それは本当かダグニス。」

  ダグニスの話を聞き、思わず立ち上がるハーネイト。自身も機士国王を捜索していたが、一向に見つからず焦りを募らせていたところに、手掛かりとなる情報が現れたのだ。驚くのも無理はない。このダグニスが会長であるファンクラブは公式に支援をしているバイザーカーニアと言う秘密結社とは違った意味で強力である。情報面で支援や襲撃の報告を支援し、1人で基本動くハーネイトにとって重要な感覚器官のようなものであった。

 「間違いないでしょう、その友達は国王の顔を見ている上に、国王が大好きで良くポスターで顔を見ていて、間違いはないといっていました。」
 「そうか、しかし。国王たちに刺客を放ったのか、あいつらは。」
 「そのように追っ手から逃げてきて、ハーネイトを探しにわざわざやって来たのかもしれないわね。ハーネイト、早く見つけてあげないと危ないわ。」

  ハルディナの言葉を聞き、ハーネイトは急いで席を立ち、椅子に掛けていた紺色のロングコートを羽織る。エレクトリールも次いで立ち上がる。


 「ああ、事態は一刻を争う。支度をせねば。エレクトリール、ついてくるか?」
 「勿論ですよ。行きましょう。」

 「ちょっと待て、儂らから餞別がある。準備が出来たらもう一度ここへこい。」
 「私もよ。あの話を聞いたら何もせずにはいられないわ。いいもの渡してあげるからここに寄ってね。」
 「美味しいもの持たせるからよ、速く支度してきな。」

  モーナス、ハルディナ、リラムの3人がそれぞれそういう。それを聞きハーネイトは礼をする。

 「助かります。では一旦席を外す。ダグニス、君のお陰で助かった。礼をせねばならんな。」

  ハーネイトは、機士国王の手がかりを教えてもらったダグニスに軽く礼をする。

 「いえいえ、兄貴の役に立つなら本望です。二人の活躍を写真にさらに納めたいんで、ついていってもいいですか?俺も各地のハーネイトファンのみんなに協力を要請して、情報と補給面で援護します。」
 「それはとてもありがたいが、無茶をするなよ。見つからないよう、ひっそりとやる分には構わない。では行くぞ。」
 「はい、ハーネイトさん!」

 二人は先にお店を出て、事務所まで足早に向かい事務所のドアを開けると、階段を昇りリビングに入る。
  ハーネイトは刀やペン型投げナイフなどの在庫や状態をすばやく確認し、身に着ける。彼自身、他に必要な道具はいつでも直したり、取り出せる特殊な力があるため、最小限の荷物で用意が済む。服もイジェネートで作り出せる。また長旅の経験からか、手際がとても良い。

  「さて、旅に必要な荷物は用意できた。エレクトリールは?」
 「あと少し時間を下さい。」
 「分かった。あ、あいつらに書置きしとかないとな。どうせバカンス中だしなあ、電話で連絡付かないかもしれないし。ああ、こんな時こそ。ワニム!この手紙をあの変態メイドたちに渡してきてくれ。」

  すると開けた部屋の窓から一匹のカラスが入り込む。このカラスはワニム・フニムといい、人語を話せる使い魔の鳥である。

 「ひどいいいようだねえ、確かにシャムロックは変態としか評価できないが。任せとけ主よ。ただミレイシアには要注意だ。」 

ワニムはそういうとハーネイトの持っていた手紙をくちばしで咥え飛んで行った。一応連絡はしたものの、後でメイドたちからきつい一言が待っているのは、彼自身想定はしているのだが。

 「準備できました。いつでもどうぞです。荷物ほとんどないですし。」

  エレクトリールも、装備の確認を再度行う。
  そして二人は旅の準備を終えて、事務所の中を確認してから、事務所を後にする。

 「また休みが遠のいたか。平穏な毎日が如何にありがたいかよくわかる。」

  仕事に追われるサラリーマンのようなことを口に出すハーネイト。しかし解決屋は自由業扱いであるため休みなど自身で定めることもできるが、彼自身の性格が災いし、頼みを断り切れない性格がゆえに妙な事態を招いていた。

 「そうですね。でも私たちにはやるべきことがあります。それでは、さっきのレストランに向かいましょう。」
 「そうだな、やるべきこと終わらせるとしようか。」

  そうして二人は先ほどいたレストランに着いた。店の中に入るとハルディナたちは何かを手にしている。他にも婆羅賀たちも見える。

 「みんなハーネイトとエレクトリールを見送りたいって。それとハーネイト、はいこれ。」

ハルディナは、ハーネイトに布で出来た小袋を渡す。

 「ねえ、開けてみて?」
  「これはネックレス?御守りか?」

ハーネイトは袋の中から宝石が幾つも付いたネックレスを取りだし、身につける。

 「これは魔除けの宝石レジアナダか。貴重な宝石だがいいのか?」
 「いいのよ。これから長い旅になりそうな予感がしてね、少しでも災いが避けられるようにねって。私たちはここから応援することしかできないわ、でも一緒に戦いたいから私と思って欲しい、の。」

  ハルディナは3年前にハーネイトと出会ってから彼のことを心から愛していた。しばらく会えないと思い彼女の瞳から涙がにじみ出る。

 「ああ、ハルディナの気持ち確かに受け取ったよ。大切にするからな。ありがとうハルディナ。」

  そういい、普段は異性との直接接触を避ける彼もハルディナを抱きしめる。そして彼女からもらったレジアナダが、きらりと胸元で光る。

 「嬉しいわ。ちゃんと王様と近衛兵さんたちを見つけてきてね。エレクトリールちゃんにもはい。これを持っていきなさいな。」

ハルディナはエレクトリールに荷物の詰まったリュックサックを渡す。

 「ありがとうございます。この荷物は一体?」
 「命からがらこの星に来て、装備がもしかして十分じゃないかなと、一通り旅に必要な物を用意してきたわ。大事に使ってね。」
 「は、はい!ありがとうございます。ハルディナさん。」

  ハルディナは機転を利かしてエレクトリールのために旅に必要なアイテム一式をプレゼントした。

 「次はわしじゃ。ほれ、アコラの実と薬品・手当てキットじゃ。うまく使うんじゃぞ。異常に頑丈で、手当のし甲斐がないハーネイトはともかく、エレクトリールには必要じゃろ。」

モーナスはやや皮肉ったことを言いつつ、医療品の入った箱をハーネイトに渡す。

 「モーナスさんありがとうございます。流石の品揃えですね。これなら安心です。」 
 「儂らも街長とおなじじゃ。儂らの代わりに国王さんと、この星を守ってくれ。そして帰って来い、話し相手がいないのはつまらんからな。まあいざというときは、町の皆全員お主のもとに駆けつけるがな。」
 「それはすごそうですね。なんか恐ろしい感じもしますが。出来るだけそうならないようやって来ます。」 
 「そうだな。皆の気持ちはとてもありがたい。暫くは帰ってこられないが、その間、街の方はよろしく頼む。」
 「ああ。事務所のことは任せとけ。あの怖いメイドたちにも知らせてるんだろ?それと選別だ。」

リラムが、何かが入った包みをエレクトリールに渡す。

 「これは一体?」
 「そいつは当店人気のシャリアピンステーキのサンドイッチと干し肉だ。道中食べていきな。しっかりいい仕事してこいよ、二人とも。あと、もしテッサムがいたら料理作ってもらいな。」
 「ああ。リラム、ありがとう。助かるよ。そういやダクニスは?」

  リラムの料理が大好きなハーネイトはすごくうれしそうな顔をして感謝する。しかしダグニスの姿が見当たらない。

 「ダグニスなら、先にリノスに向かったわ。足だけは早いのよね。斥候として先に向かうって。」
 「やれやれ。熱心なファンもいるんだな。」

  ハルディナの説明にハーネイトは頭をかいた。

 「このリンドブルグの人間すべてがハーネイト、お主のファンでもあるぞ。皆ハーネイトのことを見ておるぞ。お主の人柄ゆえ、結果もついてくるのじゃ。伝説の魔法使いにしてガムランの丘の英雄よ。」
 「確かに、そうですね。みんな、いつもありがとう。私こそ、あなた方がいてくれたからこそ助かっている。これからもよろしく頼む。」

  ハーネイトはリラムヤモーナスと固い握手を交わす。

 「ええ。吉報、待ってるわ。たまには手紙でも送ってね。帰れるときは、帰ってきてね。あなたがいないとやはり寂しいわ。」

  ハルディナは寂しそうな表情を浮かべる。そんな彼女に、ハーネイトはもう一度彼女の体を抱き寄せる。

 「ああ、約束する。だから笑顔で見送ってくれ。」

  ハーネイトの真面目な表情と声。ハルディナはそれをしっかり聞いた。

 「そうよね、うん。ハーネイト、行ってらっしゃい。あなたの帰りを待っているわ。」

  ハルディナは泣きそうなのを堪え、笑顔を振り絞ってそう言った。彼と初めて出会ったこと、それからのことを思い出しながら優しく手を振る。

 「それでは、行ってきます皆さん。」
 「ここに来てすぐに、歓迎してもらって、ありがとうございます。一段落したら、戻ってきますね。では、行ってきます。」

  二人とも、皆の前で一礼すると荷物をもち、店の外に出る。そして振り返り町のみんなをもう一度見て軽く礼をしてから、二人は町の外へ歩き出す。その姿を店の外に出た皆は見送る。

 「 気を付けてね!ハーネイト、エレクトリール!」
 「活躍を期待しているぞ。王様と部下によろしく伝えといてくれ。」
 「パシッと決めてこいよ!二人とも!」

  他にも多くの住民がハーネイトらに声援を送る。二人の姿が見えなくなるまで、声は止まなかった。ここから、彼らの長い長い旅、そして戦いが始まるのであった。今まで多くの戦いを終わらせた、血も流させずに。そして7回もこの星の存亡にかかわる魔物を倒してきた大英雄。一国の領主よりも影響力を持つハーネイトと、異星からきた電気の魔術師エレクトリールの長い旅が始まるのであった。

  その頃、リンドブルグから少し離れた、小高い丘の上に男女がいた。この星では見慣れない服装、男は紺色の短髪、女は紫色のロング、タイトなスーツと、関節部を守る独特な装甲を身に着けた二人は、通信機器を片手に、誰かと連絡をしていた。

 「作戦は失敗だボガーノード。辺境の街だからと手を抜いたのが間違いだったな。」
 「機士国の機械兵が全滅、あの男は何者?あと巨大な魔物も一撃で倒すなんて。」
 「何だと?テコリトル星の不時着した、宇宙船の船員を捕まえられなかったのか?」

  二人は、ハーネイトらが追っているDGの幹部であり、連絡している男、ボガーノードもDGの上級幹部である。異世界にあるDG本部からの通信で、不時着した宇宙船の船員を確保せよとの通達があり、機械兵で捕まえようとしたが、ものの見事に失敗したのだ。

 「その男は、どんな男だ?」

  ボガーノード・ライナスはここから11光年離れたオムロイ星の人間であり、彼自身も戦闘技術に覚えがあるものの、フューゲルの話す男について興味を持つ。強い敵をみると興奮するのがこの男の性格である。

 「恐らくイジェネート能力を持っています。赤いマントで攻撃を捌き、電撃の波で機械兵を破壊しました。並の戦士ではないようです。」
 「何て奴だ。化け物か?詳細を調べてきて欲しいが、今さっき北大陸の方で問題が発生したらしい。至急戻ってきてくれ。奴らの追跡は、機士国からの人員でどうにかする。」
 「承知いたしました。」
 「はい。では急いで戻ります。」

  二人は通信を切った。そして、北へ続く細い道を、バイクに乗り失踪し、DGの拠点に戻っていく。

 「あの男、不思議な気を感じる。俺と同じ匂いがする。」
  フューゲルはバイクに乗りながら、ハーネイトを見た感想を頭の中で言う。

アクシミデロ星に、既に奴らの手が伸びている。そして、彼らの不穏な動きはこれ以降、顕著に活発化することになる。全容がほとんど掴めていない中、ハーネイトとエレクトリールは、クーデターにより国を追われ逃亡中の機士国王を探し、保護するため、街道を抜けた先の森林都市リノスに向かうのであった。

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