【完結】今日も推しに辿り着く前に嫉妬が激しい番に連れ戻されます

カニ蒲鉾

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【SS】慣れない王城での暮らし(7)


 
 今も頭のてっぺんからつま先まで舐めるように感じるローズ様の鋭い視線に震えそうになる体を必死に押さえ付け耐えているものの、そんな事は目敏い彼女には全てお見通しだった。 
 自分より弱い立場の者を徹底的に痛めつける、そんな習性をローズ様からは感じていた。

 
「まぁ、ラズ様いらしたのね、静かすぎて居ることに気付かなかったわごめんあそばせ。御機嫌よう」
「……御機嫌よう、ローズ様」

 
 絞り出してやっと出たのは蚊の鳴くような小さな声。女性一人に怯える情けない姿を多くの人に見られている。観衆の面前どころか、少し離れたところには両親やラルド様も居る。心底、恥ずかしい。
 早く解放して欲しい──そんな僕の願いなどお構い無しに彼女は次から次へと言いたいことを畳み掛けてきた。
 
 
「ラズ様からもクオーツ様に言ってくださいな。たかが番候補の為に今後誰とも踊らないなんて……まさか、ラズ様がそうクオーツ様に強いているの?」
「!?違っ───」
「まぁまぁまぁっ、なんて傲慢なのかしら。クオーツ様のお暇つぶしで目をかけてもらっているからって調子に乗らない方が良くてよ?吹いたら飛ぶような公爵家とわたくし達王族とはハナから住む世界が違うの、身の丈を知りなさい」
「っ、」
 
 
 口元を隠すように広げていた扇をピシャッと閉じたかと思えば、蔑むように先端を向けられる。
 
 王族の一員であるローズ様に下手な事を言えないこの状況。彼女の性格を観衆はよく知っているのか、また始まったと慣れた様子で野次馬が広がっていく。
 視界の端に映った兄様達に止められるラルド様の姿だけが今の僕の味方だった。
 
 
「ラズ様?何か仰ったらどうなの?」
「っ……」
 
 
 誰もが黙って成り行きを見守る中、唯一この場で反論を許される人物が今やっとその声を上げた。
 
 
「……はぁ、ローズ、さっきから黙って聞いていれば、耳障りにも程がある。キミは誰に向かって口をきいているんだい?」
「っ、クオーツ様……」
「初めに私が言った言葉が全てだが、聞こえなかったかな?ラズは私の大切な運命の番だよ。そんな態度を取って許されると思うな」
「ひっ」
 
 
 クオーツから放たれる容赦のないアルファフェロモンの重圧がローズ様だけでなく周りの者まで巻き込み威圧していく。
 
 
「くっ……ですが、ラズ様は王族の一員では───」
「今はね。直にお前より尊い存在になる。馬鹿な態度は今のうちに改めろ。はぁ…お前の顔を見ていると気分が悪い。当分私の前に姿を見せないでくれ。行こうラズ、耳障りな会話を聞かせてごめんね……ラズ?」
「……」
 
 
 終始何も言えず俯くだけの僕は歩き出すよう促すクオーツの言葉にすら反応出来ず、その場で佇み続けていた。
 すると次の瞬間、体全体がふわりと浮く感覚にびっくりし咄嗟に近くの肩へ掴まれば、クオーツの綺麗な顔が至近距離に現れ更にびっくりしてしまった。

 そして理解する自分のおかれた状況。

 大勢の目がある中でクオーツに抱き上げられていた。それはまるで幼子にするように。
 
 
「っ!?え、なに、下ろっ───」
「大丈夫、大人しく掴まってて」

 
 抱き上げられた背中をポンポンと摩られ優しい表情で笑みを向けられると何も言えずうぐっと言葉を呑み込み、せめてもの抵抗として大勢の視線から隠れるべくクオーツの肩口へ顔を埋める。
 そんな僕に満足したのか、クスクス揺れる僅かな振動に文句の意味を込めドンッと一つ胸を叩けば途端静かになると落とさないよう慎重に抱き上げ直し歩き出した。
 

 晩餐会の会場とは思えないほどに静まり返る周囲。
 大勢からの視線が向けられる中に、より一層強い視線が突き刺さる。

 背中を向けたクオーツには見えない、怒りに燃える視線から身を隠すことに必死だった。
 
 
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