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2【子育て日記】
2-9 お喋り(1)
しおりを挟む愛する子の成長はいつなんどきも見逃すまいと常にアンテナを張り巡らせ、僕はもちろん楓真くんも率先して映像に残してきた。
だけど、唯一撮れなかった瞬間がある。
初めて「まま」「ぱぱ」と呼ばれた感動の瞬間。
それは、本当に突然だった。
赤ちゃんの発育のスピードは個人差により、どの時期が正解というものは無いと定期検診で何度も言われてきた。
実際、「あーあー」などの喃語を発し出すのは楓莉くんの方が早く、すぐに声の発し方をマスターした楓莉くんの元気な声がしばらくソロリサイタルのように響いていた御門家。そんな楽しそうなお兄ちゃんをじーっとそばで見つめ続けたつくしくん。程なくしてつくしくんも楓莉くんの真似をして「あー」とのんびり発するようになり、今では双子のかわいい「んー」「あー」の合唱が家事をしながらのBGMとなっていた。
「ふぅくん、つぅくん今日も元気だねぇ」
休日でも子供たちが起きだす時間は変わらない。
自分も目覚ましがなるより前には目を覚まし、そろそろかなと双子を眺めているとやはり必ず二人していつもと同じ時間にゴソゴソ動き出す。
そんな二人にくすりと笑い、小さく「おはよう」と声をかけると、貴重な休みの楓真くんを起こしてしまわないようそっと抱いてリビングに移動する。
カーテンを開け朝日をたっぷり部屋に取り込みながらテレビをつけて二人で遊ばせてる間にささっと洗濯も朝ご飯の支度も終わらせる。
一時間もしないうちにテーブルの上は四人分の朝食が準備万端に整った。
「そろそろぱぱを起こしに行こうか」
お母さん方に囲まれての0歳児赤ちゃん教室に何度か参加していく内に、いつの間にか自分の事を「まま」、楓真くんの事を「ぱぱ」と呼ぶ癖がついていた。
今日もいつも通り、なんの意識もせずぱぱと楓真くんを呼び、双子に語りかける。
いつも朝から晩まで働き、次期後継者として頑張っている楓真くんを休みの日くらいゆっくり寝かせてあげたかったのだが、休みの日こそ子供たちといっぱい過ごせる貴重な時間だからと絶対7時には起こしてと主張する楓真くん。
その言葉通り、朝の家事が一通り終わり、一緒に朝ご飯を食べるタイミングでぱぱを起こしに行くのが休日の御門家の日課だった。
テレビに夢中だった二人だが、僕の呼び掛けにすぐに反応してくれるとゴロンと転がり、我先にと最近習得したずりばいで必死に近付いてくる。そんな可愛い二人をある程度の距離で膝をつき、両手を広げて待ち構えた。
しばらくして、僕の腕の中にゴールした二人をよくたどり着きましたと褒め、両手に抱き立ち上がる。
「ぱぱ起きてるかな~」
「「ん~」」
寝室に向かう間も二人のきゃっきゃ楽しそうな声が廊下に響いていた。
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