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2【子育て日記】

2-10 お喋り(2)

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 扉をそっと開き中を覗けば、薄暗い室内にカーテンの隙間から漏れる朝日が布団の中から後頭部だけ出ている楓真くんの髪の毛に反射し、キラキラ輝いていた。
 
 寝室には僕と楓真くんが一緒に使っても十分余裕な大きさの巨大なベッドが1つ置かれている。その右側半分に姿勢よく眠る楓真くんの山が存在した。
 起きて出た時と全く同じ光景にくすりと笑いながら、扉入ってすぐ、楓真くんの足元側にそっと二人を下ろす。
 ふかふかのベッドに下ろされ、きょとんと僕を見上げながらそのまま重心を失い後ろからこてんと足の山に頭をもたれさせている二人をよしよしと撫で、にやりと笑みを送る。
 
 
「よし、二人とも思いっきり起こしちゃって」
「うっ!」
 
 
 べしべしのジェスチャーをしながら小声でゴーの合図を送れば、リミットを外された怪獣二人はキャーっと大声を上げ勢いよく山登りのように楓真くんを登っていく。
 ズシッズシッと容赦なく身体中を登られていく二人分の衝撃にビクッと揺れた楓真くんはガバッと布団から顔を出してきた。
 
 
「っ!?」
 
 
 必死に状況把握をしようと目を丸くする楓真くんをニマニマ見下ろし、先程の衝撃でゴロンと山から転がり落ちていた双子を改めて楓真くんの胸の上に置く。
 
 
「ふぅくんつぅくん、ぱぱおはよ~って」
「んぁ~」
「あっあ~」
「びっ…くりしたぁ…おはよぉふぅくんつぅくん」
「「んぁ~~ぅ!」」
 
 
 胸の上から手を伸ばし小さなもみじで楓真くんの顔にべしべしタッチする二人はとても楽しそう。
 されるがまま下手に動けないでいる楓真くんに笑いながら助けず、録画ボタンを押したスマホを掲げて見守っていると不意に「つかささん」と呼ばれ、手を引かれる。
 
 
「わっ!?」
 
 
 握っていたスマホが落ち、床に転がるのを目の端に捉えながら僕まで楓真くんの胸に乗り上げる形になってしまう。さすがに重いだろうと慌てて上半身を起こし退こうとするが、すかさず回ってきた両腕が僕と双子をまとめて閉じ込めてしまった。
 
 
「ちょ、楓真くん!?」
「みんなつ~かまえた~」
「「きゃぁっ」」

 
 寝起きとは思えないキラキラ眩しい笑顔が至近距離で炸裂しながら「おはようございますつかささん」と挨拶が送られる。
 そんな楓真くんにこちらまでつられて笑顔になりながら身体から力を抜き、全体重を楓真くんの胸に預けその鼓動に耳を澄ます。
 
 
「おはよう楓真くん」
 
 
 頭を撫でられながら今日もその鼓動に安心し横を向けば、ほっぺがぺたんと潰れた双子がうりうりとさらに楓真くんの胸にもちもちほっぺを押し付けていた。
 
 
「んわぁ~ふぅくんつぅくんの熱烈求愛にぱぱドキドキしちゃう~」
「わぁいいな、ままにもして~」
 
 
 手を伸ばせばうりうりとほっぺを押し付けてくる愛らしい我が子に朝から口角は上がりっぱなしだった。このまま4人でゴロゴロしていてもいいかもしれない…なんて、食卓に置いてきた朝食を頭の片隅に追いやっていた、そんな時。
 
 
「ぱぁぱ」
「まぁま」
 
 
 きゃっきゃしていた二人から発せられた突然の意味のある単語の音。
 あまりにも突然のことに、僕も楓真くんも咄嗟に反応することが出来なかった。
 
 
 
 
 
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