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 ひんやりとした何かに頬を包まれている気がする。ぬるま湯に浸かったような意識の中、身体全体を柔らかくかき混ぜられているような不思議な感覚に身を委ねていると、不意に甘い香りが鼻を掠めた。

「……ぁ、う……?」
「目が覚めましたか?」

 重い瞼を持ち上げて最初に目に飛び込んできたのは、吸い込まれそうなほど深い赤だった。それが男の目であると気がつくまでには数秒の時間を要した。いやに頭がふわふわとして思考が定まらず、状況が上手く呑み込めない。

「すみません。君があまりにも可愛くて、加減を間違えてしまいました」

 穏やかな声音に釣られるようにぼんやりと男の方を見やると、彼もそれに応えるようにして上体を屈めて視線を合わせてくる。距離が近くなると、先程よりも強く甘ったるい香りが漂ってきて頭がくらくらする。手足を縛っていた影は跡形もなく消え去っていたが、身体は鉛のように重たく指一本動かす気になれない。

「小さくて温かくて、どこもかしこも柔らかくて愛らしい。私以外の誰かの物になるなんて耐えられないくらいだ」
「ん……ぅ、ふ……♡ぁ……っ♡」

 男の手が髪を梳き、首筋から鎖骨にかけてゆっくりと指先でなぞる。その動きの一つ一つにぴりぴりと微弱な電流が走るような心地がして落ち着かない。

「ですから、私の物にしてしまいますね」
「ぁ……?……っ、ん……」

 靄がかかったような視界の中で、目の前の男だけがはっきりとした輪郭を保っている。男の掌は身体の線を辿るように下腹部へと滑り落ち、愛おしむようにそこを撫でた。臍の下辺りには見覚えの無い刻印のようなものが施されていた。何か複雑な記号が組み合わさったような奇妙な紋様が黒い線で描かれている。

「……?なに、して……」
「ほんのちょっとしたお呪いをかけただけです」

 そう言って男が手を翳すと、印が鈍く光りを放った。言葉の意味が飲み込めず混乱している間にも、印は少しずつその輝きを強めていく。身体が作り替えられているような気味の悪さに身を捩ると、宥めるように頬に口づけられた。労るような手つきとは裏腹に、目の前の男からは有無を言わせぬ威圧感のようなものを感じる。

「印が早く馴染むように、たくさん注いであげないといけませんね」
「……ぁ、え……?」

 ずし、と腹の上に手のひらよりもさらに大きく、熱を持った塊がのしかかる。血管が浮き上がり、どくどくと脈打つ様を見てしまえばその正体に気づかないはずがなかった。後孔の縁に先端が触れた瞬間、ひゅ、と喉から引き攣ったような息が漏れた。このままでは取り返しのつかないことになる、とぼんやりした頭の片隅で警鐘が鳴っているが、思うように手足に力が入らない。

「っ、むり……そんな、おおきいの」
「問題ありませんよ。気を失っている間はあんなにも素直に受け入れてくれていたのですから」
「う、ぁ……っ!?♡♡や♡はい、って……ッ!♡♡ぁ♡……~~~~!?♡♡」

 男の言葉に意識を向ける間もなく、一息に奥まで屹立を突き入れられる。中を押し広げる質量の大きさに一瞬呼吸が止まるが、予想していたはずの衝撃や痛みは一向に襲ってこない。代わりに感じるのは、脳が蕩けてしまいそうな甘い快楽だけだった。

「ひぅ……ッ♡♡ぁ、う゛♡ん、ぉ……ッ!?♡♡」
「ちゃんと私の形を覚えてくれていますね、良い子だ」
「なんれ、っ♡♡ぁ♡こん、にゃ……ッ♡ちが……ッ♡」

 否定の言葉を遮るようにゆっくりと腰を引かれ、先端が内壁を引っ掻きながら抜け出ていく。ごり、と前立腺を押し潰しながら亀頭が縁に引っかかる感覚に意識が持っていかれそうになる。奥の壁を突き破ろうとするかのように何度も執拗に突かれるとどうしようもなかった。

「っお゛♡んぅ゛……ッ♡♡ぁ……い、く……ッ!♡♡」

 どちゅん、と一際強く奥を穿たれた瞬間、目の前が真っ白に染まる。頭の中が幸福感に埋め尽くされ、触れられていないはずの性器は壊れた蛇口のように透明の液体を垂れ流し続けていた。

「すっかり迎え腰が上手になって、本当に可愛らしい」
「っひ♡ぁ♡や、……ッ♡ぅ゛♡ん、ん゛……ッ♡♡~~~~ッ♡♡」

 絶頂の余韻に浸る間もなく、今度は浅い所から最奥までをゆっくりと屹立が行き来する。腹の奥が熱く疼き、男の動きに合わせて自分からも媚びるように腰を押し付けてしまうのを止められない。だらしなく舌を突き出して身悶えることしかできないのが悔しくて仕方ないのに、身体の奥から湧き上がる快感に逆らえない。

「……っ、もうすぐ出しますから……全て受け止めてくださいね」
「え♡ぁ……?♡あ゛♡だめ、だめ……ッ!♡♡ひッ♡ぅ゛♡♡……~~~~ッ!!♡♡」

 最奥に嵌まり込んだ先端から勢いよく熱い飛沫が叩きつけられ、声にならない悲鳴が漏れる。どろりとした液体を一滴残らず胎内へ注ぎ込もうとするように抽挿が繰り返され、その度にびくびくと身体が震える。腰を引いて逃げることさえ出来ず、与えられる刺激の全てが電流のような快楽となって身体を駆け巡る。

「は、ぁ♡は……ッ♡……?♡♡ぁ♡や、……ッ♡」

 身体の奥深くに出されたものに反応するように、下腹部に付けられた刻印がさらに光を増した。内側に渦巻いていた熱が段々と温度を上げ、胎の奥底が疼くようなもどかしい感覚が次第に強くなっていく。

「ふふ、一度出しただけですっかり馴染んだようですね」
「ひ♡ぁ♡あつ……ッ♡ぅ゛♡♡な、に……ッ♡」

 再び硬度を取り戻した男のものがゆっくりと内壁を擦り上げる感覚に腰が揺れる。頭の中までじわじわと甘い毒が浸蝕していくような快楽に、ただ身を委ねることしかできない。
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