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家族

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 さっきは静かになったのに、また騒がしくなってきた。

 大人しく自分の部屋で本を読みながら、今日は騒がしい日なんだなと考える。
 しかし、どうやらそのざわめきは、どんどんこちらに近づいてきている。

 泥棒…いや王宮にそれは考えられないか。

 不安な面持ちで、扉の先を見つめる。侍女はさっき出ていったきり帰ってきていない。多分、食事の時にまた呼びに来てくれると思うけど。

 大きな物音とともに扉が開いて、そこにいた人物を見てウェンディは本を落としてしまった。オルガだ。

 開いた口が塞がらないとはこういうことか。オルガはずんずんと近づいてきて、ウェンディはあまりの形相に腰が引けてしまう。

「陛下から全部聞いた」
「あ、はい」

 怒られている子どもみたいな感じになってしまっている。上から詰め寄ってくるオルガに身を小さくした。まさかまた会えるとは思っていなくて、驚きが隠せない。

 ああ、彼は全部知ってしまったんだ。何を言われるだろう。なぜ騙してたって責められるのかな。私が満足したらすぐに公爵家から出ていくつもりだったのに、思ってたよりあそこは居心地が良くて、大切な場所になっていた。結局、体がおかしくなるまでずるずる公爵家に居座り続けた、私の罪。


「なぜ俺と結婚したんだ」

 オルガはウェンディの隣に座って、力なく問いかける。見たこともない悲壮な表情だった。つらそうな彼の震える手を、唯一動かせる右手でそっと触れた。

「世界樹に体を捧げる儀式が成功した後、陛下がなんでも望みを叶えてやろうとおっしゃいました。私は…ずっとここで独りぼっちだった私は、家族が欲しいと望みました。だから、オルガ様と結婚しました」
「なら、ずっと一緒にいたらいい。一人になるな」

 その言葉を聞いて、ウェンディはぽろぽろと涙がこぼれた。甘い誘いだ。でも、これからウェンディの体はもっと動かなくなる。歩けなくなるだろうし、見えなくなるのかも。彼らには彼らの人生がある。煩わしい介護なんてさせられない。

「私は、お荷物ですよ」
 声が震える。嗚咽が出そうになるのを必死にこらえる。

「違う。家族だ」

 その言葉を聞いて、ウェンディは俯いて泣いた。声を出して泣いた。オルガは黙って、力強く彼女を抱きしめた。



 帰ろう、ウェンディ_____

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