VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第4話 マヨイはやらかした。

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 西の森で死んだ僕はアルテラの噴水近くに戻って来た。

「マジかぁ………あ、そういえばデスペナ知らないや」

 僕はメニューからヘルプを開いてデスペナルティの欄を確認した。デスペナルティとはゲーム内で死亡したプレイヤーが蘇生する代わりに支払う代償のことだ。
 MMOのデスペナルティの軽重はプレイヤーの命の重さだ。デスペナルティの軽いゲームでは"デスルーラ"と呼ばれる死亡時に街へ戻る仕様を利用した移動方法が使われたりもする。

「なるほど、今回はデスペナなしか」

 "Continued in Legend"でプレイヤーに与えられるデスペナルティは比較的軽いようだ。ヘルプにはレベル10未満のプレイヤーはデスペナルティがないと書かれている。レベルが10以上のプレイヤーも1日3回まではデスペナルティはなく4回目の死亡時に強制ログアウトと6時間のログイン禁止のデスペナルティを受ける。

「せっかく噴水まで戻って来たんだし試すか」

 果物屋のおじさんから聞いた話では、この広場にある噴水の中央、水飛沫で見えなくなっている場所には女神像があるらしい。その女神像に供物として"価値あるもの"を捧げると相応の恩恵を貰えるそうだ。

「"価値のあるもの"か……」

 初めに話を聞いた時、僕は"価値あるもの"をお金のことだと思った。しかし、それならストレートに"お金を捧げれば"と表現するはずだ。

 僕の持っているアイテムの中で最も価値のあるものはトリス雑貨店で購入した"灰真珠の首飾り"だろう。
 店主のトリスさん曰く、この"灰真珠の首飾り"は"本物"で最大で購入金額の1万倍以上の値打ちがあるそうだ。

(ただ、これがないと魔力弾が使えないしなぁ……)

 悔やまれるのはトリスの雑貨店で"灰真珠の首飾り"にばかり目が行って他の魔術媒体の値段を確認し忘れたことだ。

「まぁ……別に大丈夫か」

 しかし、僕は好奇心に負けた。
 また魔術媒体は買えばいいし、行き詰まったら果物屋で購入したナイフで戦えばいいよ。

「冷たっ!」

 中央の女神像を守る壁のように噴き出ている水を掻き分けて噴水の中央まで行くと神秘的な女神像がそこにはあった。
 僕が装備していた"灰真珠の首飾り"を外し女神像の首に掛けた瞬間──────

[素質:信徒を獲得しました]
[素質:神官を獲得しました]
[素質:大神官を獲得しました]
[素質:使徒を獲得しました]
[覚醒:灰神の使徒を獲得しました]
[神技:灰の神威を習得しました]
[称号:灰神の寵愛を獲得しました]
[神器:灰神珠の瞳を獲得しました]
[神器:灰神珠の瞳に適応しました]
[技能:灰神珠の瞳を習得しました]
[ワールドアナウンス:信徒の素質を獲得したプレイヤーが現れました]
[ワールドアナウンス:覚醒を獲得したプレイヤーが現れました。以後、プロフィール欄に覚醒の項目が追加されます]
[ワールドアナウンス:称号を獲得したプレイヤーが現れました。以後、プロフィール欄に称号の項目が追加されます]

 噴水の音をかき消すような勢いで通知が届いた。
 その中にはプレイヤー全員に同じ内容が伝えられるワールドアナウンスも含まれている。ほぼ間違いなく僕が原因のワールドアナウンスだろう。

[クエスト:彩神の試練窟を受注しました。このクエストはリタイアできません。クエスト専用フィールドに移動します]

 突然、視界が暗転した。
 どうやら専用フィールドとやらに移動するようだ。

「強制的な受注、リタイヤ不可、初見の専用フィールドって理不尽過ぎやしませんかね!?」

 思わず叫んだ僕は絶対に悪くない。
 移動させられた先、おそらく専用フィールドであるここは洞窟の中のようだ。学校の教室(7m×8m)と同じくらいのドーム状の空間で、光源は淡い光を放つヒカリゴケのようなものしかない。それにしては空間内が鮮明に見える気もするがゲームだから補正があるのかもしれないな。

「敵がいないってのは助かるな」

 この専用フィールドからの脱出を目的とするならば、クエストの攻略が必要不可欠だろう。

◼︎彩神の試練窟
 彩神の試練を突破せよ。
 成功報酬:?

「情報量なさすぎでは?」

 試練の詳しい内容すら書いていない。
 報酬が『?』ということは一般的なクエストの報酬とは違うということなんだろう。少なくとも金銭や希少性の低いアイテムではなさそうだ。大穴で報酬『なし』という可能性も捨てきれないけど、そうだったら運営に苦情を入れてやる。

「あと出来るのは手持ちのアイテムとステータスの確認くらいか」


◼︎パーソナル
名前:マヨイ
性別:男
位階:1
資質:狩人/魔術士/神使
覚醒:灰神の使徒
称号:灰神の寵愛

◼︎ステータス
体力:94
魔力:202
筋力:6
耐久:6
器用:23
敏捷:29
知力:34
精神:45

◼︎スキル
①探索
②魔力弾
③灰の神威
④灰神珠の瞳

◼︎アイテム
名工のナイフ
アルテラの旧い地図


 まずステータスが想像以上に大きく上がっていた。
 たぶん、新しい素質と覚醒の影響だろう。
 素質と覚醒、そしてスキルの性能はゲーム序盤で手に入れていいものではなかった。おそらく正式な手順をすっ飛ばしてしまったのだろう。


【神使の素質】
 神との邂逅を赦された者
 精神+7 知力+5 敏捷+3 器用+2

【灰神の使徒】
 灰神の神威を代行する者
 精神+11 知力+7 敏捷+5 器用+3

【灰神の寵愛】
 灰神からの寵愛を受けたもの。
 状態異常無効
 精神+19 知力+15 敏捷+13 器用+11


「新しい素質や覚醒、称号も十分強いけど、このスキルは強すぎてゲームバランスを心配するレベルだよね……」



名称:灰の神威
分類:補助 神聖
対象:自身
射程:なし
効果:移動速度+100%
   スキル再使用時間減少(10秒)
   ステータス減少効果反転


名称:灰神珠の瞳
分類:補助 神器
対象:自身
射程:なし
効果:両眼を魔法媒体として扱える
   スキルの思考発動解禁
   スキルの並列発動解禁


 どちらも補助効果なので使いこなすにはプレイヤースキルが必要になりそうだけど、強そうな効果の割に一切のデメリットがないのがヤバい。

 女神像に"灰真珠の首飾り"を捧げたことによって失ってしまった魔法媒体、それがスキルに内包される形で手に入ったのは嬉しい誤算だ。スキル情報を見せない限りは悟られることがないというのがいい。

 さて、そろそろ試練窟の攻略を始めよう。
 そう考えた僕は一歩を踏み出して──

「──え」

 身体のバランスを大きく崩して転んでしまった。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

文法の誤りを修正しました。
(2020/11/27)
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