14 / 228
本編
第4話 マヨイはやらかした。
しおりを挟む西の森で死んだ僕はアルテラの噴水近くに戻って来た。
「マジかぁ………あ、そういえばデスペナ知らないや」
僕はメニューからヘルプを開いてデスペナルティの欄を確認した。デスペナルティとはゲーム内で死亡したプレイヤーが蘇生する代わりに支払う代償のことだ。
MMOのデスペナルティの軽重はプレイヤーの命の重さだ。デスペナルティの軽いゲームでは"デスルーラ"と呼ばれる死亡時に街へ戻る仕様を利用した移動方法が使われたりもする。
「なるほど、今回はデスペナなしか」
"Continued in Legend"でプレイヤーに与えられるデスペナルティは比較的軽いようだ。ヘルプにはレベル10未満のプレイヤーはデスペナルティがないと書かれている。レベルが10以上のプレイヤーも1日3回まではデスペナルティはなく4回目の死亡時に強制ログアウトと6時間のログイン禁止のデスペナルティを受ける。
「せっかく噴水まで戻って来たんだし試すか」
果物屋のおじさんから聞いた話では、この広場にある噴水の中央、水飛沫で見えなくなっている場所には女神像があるらしい。その女神像に供物として"価値あるもの"を捧げると相応の恩恵を貰えるそうだ。
「"価値のあるもの"か……」
初めに話を聞いた時、僕は"価値あるもの"をお金のことだと思った。しかし、それならストレートに"お金を捧げれば"と表現するはずだ。
僕の持っているアイテムの中で最も価値のあるものはトリス雑貨店で購入した"灰真珠の首飾り"だろう。
店主のトリスさん曰く、この"灰真珠の首飾り"は"本物"で最大で購入金額の1万倍以上の値打ちがあるそうだ。
(ただ、これがないと魔力弾が使えないしなぁ……)
悔やまれるのはトリスの雑貨店で"灰真珠の首飾り"にばかり目が行って他の魔術媒体の値段を確認し忘れたことだ。
「まぁ……別に大丈夫か」
しかし、僕は好奇心に負けた。
また魔術媒体は買えばいいし、行き詰まったら果物屋で購入したナイフで戦えばいいよ。
「冷たっ!」
中央の女神像を守る壁のように噴き出ている水を掻き分けて噴水の中央まで行くと神秘的な女神像がそこにはあった。
僕が装備していた"灰真珠の首飾り"を外し女神像の首に掛けた瞬間──────
[素質:信徒を獲得しました]
[素質:神官を獲得しました]
[素質:大神官を獲得しました]
[素質:使徒を獲得しました]
[覚醒:灰神の使徒を獲得しました]
[神技:灰の神威を習得しました]
[称号:灰神の寵愛を獲得しました]
[神器:灰神珠の瞳を獲得しました]
[神器:灰神珠の瞳に適応しました]
[技能:灰神珠の瞳を習得しました]
[ワールドアナウンス:信徒の素質を獲得したプレイヤーが現れました]
[ワールドアナウンス:覚醒を獲得したプレイヤーが現れました。以後、プロフィール欄に覚醒の項目が追加されます]
[ワールドアナウンス:称号を獲得したプレイヤーが現れました。以後、プロフィール欄に称号の項目が追加されます]
噴水の音をかき消すような勢いで通知が届いた。
その中にはプレイヤー全員に同じ内容が伝えられるワールドアナウンスも含まれている。ほぼ間違いなく僕が原因のワールドアナウンスだろう。
[クエスト:彩神の試練窟を受注しました。このクエストはリタイアできません。クエスト専用フィールドに移動します]
突然、視界が暗転した。
どうやら専用フィールドとやらに移動するようだ。
「強制的な受注、リタイヤ不可、初見の専用フィールドって理不尽過ぎやしませんかね!?」
思わず叫んだ僕は絶対に悪くない。
移動させられた先、おそらく専用フィールドであるここは洞窟の中のようだ。学校の教室(7m×8m)と同じくらいのドーム状の空間で、光源は淡い光を放つヒカリゴケのようなものしかない。それにしては空間内が鮮明に見える気もするがゲームだから補正があるのかもしれないな。
「敵がいないってのは助かるな」
この専用フィールドからの脱出を目的とするならば、クエストの攻略が必要不可欠だろう。
◼︎彩神の試練窟
彩神の試練を突破せよ。
成功報酬:?
「情報量なさすぎでは?」
試練の詳しい内容すら書いていない。
報酬が『?』ということは一般的なクエストの報酬とは違うということなんだろう。少なくとも金銭や希少性の低いアイテムではなさそうだ。大穴で報酬『なし』という可能性も捨てきれないけど、そうだったら運営に苦情を入れてやる。
「あと出来るのは手持ちのアイテムとステータスの確認くらいか」
◼︎パーソナル
名前:マヨイ
性別:男
位階:1
資質:狩人/魔術士/神使
覚醒:灰神の使徒
称号:灰神の寵愛
◼︎ステータス
体力:94
魔力:202
筋力:6
耐久:6
器用:23
敏捷:29
知力:34
精神:45
◼︎スキル
①探索
②魔力弾
③灰の神威
④灰神珠の瞳
◼︎アイテム
名工のナイフ
アルテラの旧い地図
まずステータスが想像以上に大きく上がっていた。
たぶん、新しい素質と覚醒の影響だろう。
素質と覚醒、そしてスキルの性能はゲーム序盤で手に入れていいものではなかった。おそらく正式な手順をすっ飛ばしてしまったのだろう。
【神使の素質】
神との邂逅を赦された者
精神+7 知力+5 敏捷+3 器用+2
【灰神の使徒】
灰神の神威を代行する者
精神+11 知力+7 敏捷+5 器用+3
【灰神の寵愛】
灰神からの寵愛を受けたもの。
状態異常無効
精神+19 知力+15 敏捷+13 器用+11
「新しい素質や覚醒、称号も十分強いけど、このスキルは強すぎてゲームバランスを心配するレベルだよね……」
名称:灰の神威
分類:補助 神聖
対象:自身
射程:なし
効果:移動速度+100%
スキル再使用時間減少(10秒)
ステータス減少効果反転
名称:灰神珠の瞳
分類:補助 神器
対象:自身
射程:なし
効果:両眼を魔法媒体として扱える
スキルの思考発動解禁
スキルの並列発動解禁
どちらも補助効果なので使いこなすにはプレイヤースキルが必要になりそうだけど、強そうな効果の割に一切のデメリットがないのがヤバい。
女神像に"灰真珠の首飾り"を捧げたことによって失ってしまった魔法媒体、それがスキルに内包される形で手に入ったのは嬉しい誤算だ。スキル情報を見せない限りは悟られることがないというのがいい。
さて、そろそろ試練窟の攻略を始めよう。
そう考えた僕は一歩を踏み出して──
「──え」
身体のバランスを大きく崩して転んでしまった。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
文法の誤りを修正しました。
(2020/11/27)
61
あなたにおすすめの小説
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる