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本編
第47話 マヨイは見つかった。
しおりを挟む⚫︎アイ
私たちがアルテラ大森林とソプラ平原(というらしい)との境界まで来ると、真宵が伐採した木々は無数の切り株になったままだった。破壊されたフィールドは復元されないのかしら……?
「あ、そのままなんだ」
「0時になると戻る」
「戻るって、破壊されたフィールドが?」
「そう」
【名無し:え、何これ】
【名無し:わー、きりかぶがいっぱい】
【名無し:そのままって、まさか……】
「マヨイがやってくれた」
「まぁ……今は緊急ってわけでもないからやらないけど、あの時は急いでたからね。奥の手を使って木樵の真似事をしました」
おかげで木材を買い占めていた"流星群"が木材をそのまま転売しても、このままでは損をするくらい大量の木材を確保することができた。
シブンギのことだから「腹案があります」とか言って解決策を用意してるんでしょうけど、当初の予定より資金は集められないはずだ。
それにゲームに関する情報の拡散速度はメジャーなSNS以上だ。イメージアップしたいとか言っていたのに買い占めなんて叩かれそうな行為を平気でする辺り、オリオン以外の"流星群"のメンバーはMMOのプレイヤーを舐めてる。
【名無し:ショウの奥の手?】
【名無し:狼化は奥の手じゃないのか】
【名無し:おかしい。同じゲームしてる気がしない】
【名無し:安心しろ、俺もだ】
「もしかして熊にも"なりきりセット"あるんじゃない?」
「ありそう。狙う?」
真宵がとんでもない事を言い出した。
私もあると思うけど、熊の"なりきりセット"はいらないのよね。私は真宵とお揃いの耳と尻尾が欲しいのよ。
「いいわよ、ただお願いがあるの」
「「なに?」」
まぁ……反対する理由としては薄弱だし、私は別の意味で熊に興味があるから熊を倒すことそのものには賛成だ。
「もし熊の手がドロップしたら私に譲ってくれないかしら」
「熊の手?」
「あー、あの孟子に出てくる珍味か」
そう。熊の手は食べられるらしいのよ。
私が生まれる前、パパとママが中国に行った時に食べたらしい。たぶんドロップアイテムとしてあると思うんだけど、昨日はいくら倒してもドロップしなかったのよね。
【名無し:食べるの!?】
【名無し:珍味って熊の手って食えるのか】
【名無し:もーしis何?】
【名無し:え】
「孟子っていうのは儒教家、ようするに哲学者の孟子って人の逸話や問答がまとめられた本のことだよ。その中で孟子は"自分は魚料理が好きだけど、魚料理と熊の手のどちらかしか食べられないなら、私は熊の手を選ぶ"って逸話が残されてるんだ」
「あと名前は忘れたけど昔の中国の王様が息子にクーデターを起こされて捕らえられた時"最後に熊の手を食べて死にたい"って願った逸話もあったはずよ」
「それ楚の成王だよ。食べられず処刑されちゃったんだったかな」
「「へぇ……」」
楚は中国の春秋戦国時代にあった国だったかしら。世界史は苦手なのよね。
「あ、でも料理するのに時間が掛かるんじゃなかった?」
「でも、無いことには食べられないわよ?」
「ん、もしもの時はデルタに無茶振りする」
【名無し:そんな旨いのか】
【名無し:デルタ?】
【名無し:10日くらい掛かるらしいぞ】
【名無し:流星群のメンバー巻き込み始めたぞ】
【名無し:本人視聴してないでしょww】
「よし、もうボスとか関係なく熊を乱獲するか」
「賛成」
【名無し:食材アイテムは加工の素質ないとドロップしないぞ】
【名無し:そうなのか】
【名無し:料理ってスキルがある】
【名無し:へぇ……知らんかった】
「え、そうなの!?ど、どうしよう……」
⚫︎マヨイ
熊の手か……興味はあるけど、手に入らないなら仕方ないかな。でもリスナーさんによると、加工の素質を持っていると通常のドロップとは別枠で食材アイテムがドロップすることがあるらしい。
「狩人のスキル、調理、同じ効果ある」
「「え」」
僕も藍香も狩人の素質を持っているのに気がついてなかったようだ。僕は攻撃威力調整スキルを獲得してからは他のスキルに対する興味を失っていたし、藍香も聖術くらいしかリストから取ってないらしいので似たようなものだろう。
名前:調理
分類:加工 狩人
効果:[分類:食材]を消費して[分類:料理]を作成する。[分類:動物]や[分類:植物]などを倒した際に[分類:食材]がドロップするようになる。
条件:加工または狩人の素質
位階15以上
「オリオンさん、狩人じゃないのによく覚えてるね」
「記憶力、自信ある、それに共有してる」
「"流星群"のメンバーで共有したリストの情報はだいたい覚えてる、で合ってる?」
「間違ってる。だいたい、じゃなくて全部」
自信満々で全部と言い切れるのは凄い。
オリオンもテスト勉強とか必要ない人なのかな。
「ちなみにオリオンの記憶力はゲーム関係限定よ」
「そ、そうなんだ……」
「うん」
【名無し:興味ないことは覚えられないよな】
【名無し:やっぱプロって何処かおかしいよな】
【名無し:プロじゃなくてもおかしいのいるだろ】
【名無し:I found it.】
【名無し:それでも全部記憶はやべぇ】
『アイ、この“I found it."ってまさか……』
唐突に現れた『見つけた』というコメントを見つけた僕は藍香にフレンドコールする。
『間違いなく紅茶女ね。無視よ、無視』
『いいのかなぁ……』
藍香も僕と同じ人物を想像したらしい。アイ&ショウの活動中に何度か接触した女性プロゲーマーだ。ちなみに"紅茶女"と藍香が呼んでいるのは彼女がイギリス人というのもあるけれど、生配信で紅茶に関する知識のマシンガントークをしたからだ。
やたら察しのいいリスナーに気づかれる前に話題を逸らさないと面倒なことになりそうだ。
「お金には今のところ困ってないけど入手素材の幅が広がるなら習得しようかな」
「いいの?」
「まぁ……割と色々と出来るゲームなのに戦闘だけするっていうのもね。僕らは基本的にエンジョイ勢だし」
「ありえない」
【名無し:嘘だッッ!!】
【名無し:エンジョイ(迷惑プレイヤーの解体ショー)】
【名無し:プロゲーマーに指導していただきながらゲームをより楽しく遊ぶ動画だからな】
【名無し:もう跡形もない本来の動画主旨よw】
ちなみに"たまにプロゲーマーに指導していただきながらゲームをより楽しく遊ぶだけの動画"が僕らアイ&ショウの本来の動画主旨です。忘れてたけどね!
さて、忘れないうちに調理スキルを習得してしまおう。
それにしても料理じゃなくて調理なんだ。この2つの違いは分からないけれど、似たような名前のスキルは他にもあった。どっちにしろ加工関係には手を出すつもりでいたし忘れない内に全部取ってしまおう。
[技能:調理を獲得しました]
[技能:調薬を獲得しました]
[技能:調合を獲得しました]
[技能:加工の心得を獲得しました]
[技能:錬金術を獲得しました]
[技能:調理は錬金術に統合されました]
[技能:調薬は錬金術に統合されました]
[技能:調合は錬金術に統合されました]
[素質:魔術士は錬金術士に変化しました]
[称号:錬金術士見習いを獲得しました]
[称号:虹神の興味を獲得しました]
「え?」
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
紅茶女が本編に絡むのは相当先になりますね。
ただ25日に予定している番外編に登場予定です。
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