VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第49話 マヨイは諫める。

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⚫︎マヨイ

 僕が追いついた時には既にオリオンさんは足を止めて木々の合間から姿を伺える熊に向かって手のひらを向けていた。

「ホーリーレイ「魔力弾×3」……え、え?」

 オリオンさんが放った3発のホーリーレイを同じ数の魔力弾によって撃ち落とす。オリオンさんは自分の攻撃が撃ち落とされれたこと、その攻撃を放ったのが味方であるはずの僕だったことに驚いたようだ。
 しかし、彼女はすぐに平静を取り戻すと僕を睨みつけてきた。

「……何のつもり?」

「独断専行が過ぎるパーティメンバーを諌めようと思ってね」

「問題ない」

ハンデがなければ僕や藍香に勝てない分際で囀るなよ攻撃威力調整60%攻撃速度+50%形状変化魔力弾×40?」

「!?」

 スキル名と異なる言葉を発しながらスキルを発動させた。薄い円盤状に形状を変化させた魔力弾でオリオンのいる方向へ倒れるよう周囲の木々に切れ込みを入れる。
 あと逃げられるも面倒なので熊と覗き魔の首も刎ねてしまおう。
 当然、オリオンさんは回避か迎撃しなければ倒木の下敷きになる。このタイミング、僕がオリオンさんの立場なら一方向にホーリーレイを複数放って道を開けて回避する。
 しかし、回避できないと悟ったらしいオリオンさんは迎撃するのではなく、腕で頭を守りながら倒れてくる木の1本に近づいて自分に命中する倒木の数を減らそうとした。これはダメージコントロール、回避不可能なダメージを最小限に抑えようとする立ち回りは間違ったものじゃない。
 しかし、それは僕のしていたものとはかけ離れていた。

「はぁ……このくらいはノーダメージで凌げよ攻撃威力調整50%形状変化魔力弾×5

「きゃぁっ」

 オリオンさんに向かって倒れてくる木々に魔力弾を命中させて軌道を逸ら……そうと思ったけど破壊してしまった。結果的にオリオンさんは無傷なのでよしとしよう。

「どういうつもりで僕らの足を引っ張ってるか知りたくもないけど、今のを無傷で切り抜けられない程度の判断力で我先に突っ走るのは止めてくれないかな。僕らはシブンギさんたちから頼まれてオリオンさんの護衛をしているんだ。勝手な行動は控えて欲しい」

「…………」

「お願いだから藍香の足を引っ張らないでくれる?」

「……分かった」

 こうして調子乗って独断専行が増えてた護衛対象を諌めた僕はついでに倒した熊のドロップを確認する。

「……お、熊の手が2個ドロップしてる」

「いつの間に……」

「木を倒すついでに」

「気づかなかった」

 索敵スキルを持ってるわけではなさそうだし、攻撃速度が5割り増しになった魔力弾にロクに反応できなかったみたいなので仕方ない。

「そろそろアイの方も戦闘が終わりそうだね」

「え……あ、ほんとだ」

 今更だけど僕はソプラの訓練場から配信を観ながら行動している。このゲームで生配信する場合、他のプレイヤーと連名で登録することもできるけれど今回は藍香のほぼ独断での配信になったため僕はゲストのような扱いになっている。

「さっさと合流してテコに向かおうか」

「分かった」

 視界の片隅に映る配信動画では、藍香が徒手空拳で狼たちとじゃれあっている藍香は凄く楽しそうだ。


…………………………………


……………………………


………………………


 僕らが藍香と合流する頃には藍香の戦闘は終わっていた。ただ戦闘中からずっと藍香を何かが包んでいるのが見える。聞いておきたいけど配信中だしなぁ……

「おつかれ……ってほどでもないか」

「そうね、そこまで強くなかったし」

「こっちは熊の手が2個ドロップしたよ」

「私は草原狼王なりきりセットが出たわ」

 当たり障りのない会話。
 欲しいものが出たのは運がいいのか、この後で欲しいドロップが手に入らなくなるフラグなのか、前者であって欲しいね。

「それじゃテコまで行こうか」

「そうね。あ、そういえばリスナーさんが大きな音を耳にしたみたいなんだけど何が原因か分かる?」

「…………わかる」

「さっきホーリーレイを見せてもらったからね。お返しに僕のとっておきを小ネタを披露したんだ」

 会話しながらスキルを使うというのは小ネタに含んでいいはずだ。そもそも有効な使い道が少ない。

「アイ、決めた。私、今よりもっと強くなる」

「なら私が"狂狼化"して暴れたら止めてね」

「「え」」

 唐突に藍香がとんでもない事を言い出した。
 まさかここで、というわけじゃないよね?


【名無し:はい?】
【名無し:狼の耳と尻尾が生えるのかー】
【名無し:無双ゲーしてたアイを止めろと?】
【名無し:それなんて無理ゲー】


「や、やるならアルテラかテコの訓練場でやろうよ。あ、テコにも組合はあるんだよね?」

「あるけど訓練場あるかは知らない」


【名無し:テコにも訓練場あるよ】
【名無し:少し狭いけどあるよ】
【名無し:テコの組合は加工系の施設多め】


「オリオンはテコで"流星群"と合流するのよね?」

「周回付き合わされるの嫌だけど仕方ない」

 覚醒しているプレイヤーが1人いるだけでアルテラ近辺のボスは倒せそうだからね。僕らへの報酬を確保するためにボス討伐を何回もするだろうことは簡単に予想できる。

「オリオンさんいないとボスに勝てないの?」

「試した。安定して勝てない」

「覚醒持ち不在の6人パーティで勝てるんだから凄いわよね。昨日、レイド規模の集団が返り討ちにあったの見たわよ」


【名無し:やっぱりプロはプロなんだなって】
【名無し:レイド規模って大森林の猪ボスかな?】
【名無し:ソロ狩りされたやつか】


「そういえばレイド規模の集団が全滅した後、ロクに連携取れてないパーティが漁夫の利狙いで特攻してたわね」

「連携が取れてないってどういうこと?」

「前衛でアタッカーしてた女性プレイヤーをヒーラーが庇ったのよ。あれには思わず笑いそうになったわ」

「それは酷い……」

「姫とか処されればいい」

 オリオンさんの言う"姫"とは、姫プレイとも言われるプレイスタイルのプレイヤーのことだ。姫プレイとは、女性アバターを使用したプレイヤーが男性プレイヤーから優遇されようと媚を売るプレイスタイルだ。中には姫にレアアイテムなどを無償で貢ぐ人もいるのだとか。
 女性プレイヤーに対する偏見や蔑視の温床にもなっているプレイスタイルであるため、姫プレイを嫌悪するプレイヤーは少なくない。

「オリオン、殺したらそこで終わっちゃうじゃない。それこそ真宵に解体してもらうべきよ」

「あれは事故みたいものだからね?」


【名無し:あれだけ煽って事故はないわ】
【名無し:姫は俺も嫌い】
【名無し:まず中身が男の可能性あるからな】
【名無し:うるさいって言って首を裂いて事故?】
【名無し:CiLは基本的に性別詐称できないぞ】


「話を逸らしちゃったわね。あとテコに着いたら私は組合の訓練場で"狂狼化"を使うけど付き合ってくれないかしら?」

「任せて」

「暴走する藍香とか嫌な予感しかないんだよなぁ……付き合うけど」

 次の予定も決まった僕らは、テコへと早く向かうため残りの道程は敵を可能な限り回避していたけれど、仕方なく何回か戦闘することになってしまった。どうやらモンスターの生息分布はテコに近いほど密度が増すようだ。
 それでもオリオンさんが独断専行することがなくなったおかげで、僕らは危なげなくテコへと到着することができた。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

この展開は強引過ぎますかね……
もしかしたら書き直すかもしれません。

今日から1月3日まで11日連続で更新予定です。
年末年始の投稿スケジュールは私の近況ノートを参照してください。
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