VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

文字の大きさ
69 / 228
本編

第54話 マヨイは試行する。

しおりを挟む

⚫︎マヨイ

 スキルの習得で少し寄り道してしまったけれど、組合の加工施設を借りた本来の目的は錬金術を試すためだ。掲示板には錬金術に関する情報はなかったので、調薬や調合で回復薬あるいはヒール・ポーションと呼ばれているアイテムを作るための素材を組合の窓口で前もって購入しておいた。まずは調薬スキルから試していこう。

「自動作成するより雑な手作業の方が回復量が多いって自動作成の意味あるのか……?」

 あるんだろうけれど、初めて作るのだから掲示板の情報を参考に手作業で作ってみることにした。

「葉脈を取り除いた癒草の葉と泥を綺麗に洗い流した癒草の根を布に包んで鉢の中で潰す……って、あれ?」

 この葉脈や癒草の使わなかった部分は混ぜると回復量が下がるらしく、掲示板にはゴミになると書いてあるけれど僕の目から見えるそれらはゴミではなかった。


名前:癒草の茎
分類:素材 植物
効果:癒草の茎の部分。
   抗呪作用を持っている。
状態:生草
性質:回復阻害(7)
   抗呪作用(3)


名前:癒草の葉脈
分類:素材 植物
効果:癒草の葉脈
   抗毒作用を持っている。
状態:生草
性質:回復阻害(7)
   抗毒作用(5)


 まぁ……これらは一旦無視して回復薬を作ろう。

「水分を絞りだしたら魔力を注ぐ?そもそも魔力なんて知覚もできな……ってあれ?」

 アバターの内部、現実の身体なら心臓のある部分に暖かい塊を感じる。その塊から微弱だけど血脈に沿って何かがアバターの内部を流れているのも分かる。これが魔力ってことでいいのか?


[技能:魔力感知を習得しました]
[技能:魔力感知は錬金術に統合されました]
[技能:探索に魔力探知が追加されました]
[技能:魔力操作を習得しました]
[技能:魔力操作は錬金術に統合されました]
[技能:魔力弾の基本威力が強化されました]


「いや、どうやって身体から出すんだよ」

 スキルを覚えられたのは嬉しいけれど魔力(?)を身体の外に出すことが出来ない。調薬スレッドに僕と同じような事に悩んでいる人たちがいた。どうやら出来る人と出来ない人がいるらしい。

「ん?これって……」

 参考になる情報がないか掲示板を読み返して気がついたのは、魔力を外に出せる人に裁縫や料理を習得しているプレイヤーが多いことだ。逆に魔力を外に出せない人の多くは刃物や針などを使わないプレイヤーばかりだ。
 ……もしかして出血が条件なんじゃなかろうか。

「針なんて持ってないから……痛覚設定をオフにして"猪突王の短剣"でいっか」

 指先を切る。すると先ほどまで全く外に出すことのできなかった魔力(?)を傷口から外に出すことが出来た。痛覚設定を元に戻した僕は魔力を放出する場所を変更出来ないのか少し試した。結果としては一度でも外に出せれば何処からでも出せるようになるようだ。

「絞り汁に外に出した魔力を注ぐ?分け与えるイメージでいいのか?……あ、できた」


名前:ヒール・ポーション(原液)
分類:薬品 ポーション
効果:ヒール・ポーションの原液
   希釈することでハイヒール・ポーションになる。
   限界まで魔力を込められている。
状態:原液
分量:47
性質:回復阻害(7)
   体力回復(40)


 掲示板によると原液は回復効果も高いけれど吐くほど凄不味いらしい。火にかけて灰汁を取ってから希釈することで口に出来るレベルになるようだ。
 試しに原液を人舐めしてみた。想像を絶するほどの不味さだ。
 良薬口に苦し、というけれど苦いとかそういう問題じゃない。

「それにしても、これってどういうことなんだ……?」

 僕はおかしな点に気がついた。
 掲示板にあるヒール・ポーションの原液の性質には回復阻害なんて項目はない。それに体力回復の項目も掲示板に出入りしているプレイヤーの中では25~35の範囲だ。灰汁をとって42というプレイヤーはいたが原液のままで40というのはなかった。更に掲示板を確認していくと茎や葉脈にあった抗呪作用や抗毒作用というのも見当たらない。
 そう不思議に思いながら灰汁を取り続けると原液から回復阻害の項目が消えた。灰汁と一緒に原液も少し取ってしまったからか体力回復の数値が39になっている。


名前:ヒール・ポーション(原液)
分類:薬品 ポーション
効果:ヒール・ポーションの原液
   希釈することでハイヒール・ポーションになる。
   限界まで魔力を込められている。
状態:原液(加熱)
分量:39
性質:体力回復(39)


「錬金術を持ってるから細かな性質が見えるとか?あとは水を足して希釈すれ……」

 そこまで口に出して僕は気がついてしまった。
 加工施設の水瓶から取り出した水にも状態と性質の項目があったのだ。そして錬金術は対象の性質を変化させるスキルだ。水を変化させた場合にどうなるのか試したくなった。


名前:水
分類:素材 食料
効果:そこそこ綺麗な水。
状態:生水
分量:100
性質:体力回復(4)


「錬金術……おお!?」

 案の定、性質の項目には体力回復や回復阻害、抗毒作用や抗呪作用といったものがあった。どうやら自分が確認したか触れたものの性質しか項目に表示されないようだ。今後は素材を手に入れたら積極的に確認するようにしよう。
 項目から体力回復を選択すると付与魔力量を選択する項目が現れた。水の場合は1~196まで付与できるらしい。この変数の幅は素材によって変化しそうだ。ちなみに1付与するのに魔力を100消費する。


名前:魔力水
分類:素材 食料
効果:錬金術によって性質を付与された水
   限界まで魔力を込められている。
状態:生水 魔力付与(196)
分量:100
性質:体力回復(200)


「は?」

 性質の体力回復の値が原液の5倍ってどういうことなんですかね?
 まぁ……それは後で色々と試してみるとして、とりあえず原液を魔力水で希釈する。調薬の仕様なのか分からないけれど、魔力水を注いでいる部分が若草色に発光している気がする。
 均一になるようかき混ぜたらヒール・ポーションの出来上がり……のはずだった。


名前:ウーバーヒール・ポーション
分類:薬品 錬金術 ポーション
効果:錬金術によって体力回復の性質を強化されたポーション。
   体力を最大値を超えて回復する。
   服用時[免疫:ポーション]の状態異常を受ける。
状態:新品
分量:139
性質:体力回復(7800)


「ん?んんん?んんんん????」

 ツッコミどころが多すぎる代物になってしまった。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

宵はレシピ通りに料理が作れない人間です。
初見からアレンジして失敗を繰り返すタイプですね。諦めが悪く成功するまで試すので残念ながら(?)メシマズ属性はありません。
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...