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本編

第63話 マヨイは情報料を払う。

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⚫︎マヨイ

 暁やクレアちゃんと別れた僕はテコの北側の門を通った先に広がる岩石地帯へとやってきた。プレイヤーらしき人影も散見出来るが、戦闘というより何かを採取しているようだ。ハンマーで岩を砕いている。
 何をしているのか気になった僕は岩に腰掛けて休憩しているプレイヤーに話し掛けることにした。

「こんにちは」

「ん、あぁ……こんにちは。あんた、プレイヤーか?」

「プレイヤーですよ」

「で、どうした?」

「岩を砕いている人たちは何をしてるのか気になって」

「あぁ……ここら辺の黒い岩は何故かモンスター扱いなんだ。破壊すっと小指の第一関節くらいの大きさの水晶や翡翠が低確率でドロップしてな。この手の鉱物は組合で高く買い取って貰えるから金策になるのさ」

「なるほど……ありがとうございます」

「気にすんなって。困ったらお互い様だろ?」

「えっと……お金に困ってるんですか?」

 名前を呼ぼうとしたが彼のパーソナルには名前が表示されていない。僕と同じで名前を非公開にしているようだ。

「すまん、俺はガンテツってんだ。実は息子とゲームを始めたんだが、武器を買うために全財産使っちまってな。息子から防具を揃えるまではパーティ組まないって言われちまったんだよ」

「なるほど……ちょっと待って下さいね」

 さすがに理由なく無差別PKする気はないので対人設定をオフにする。どうやら対人設定がオフをオフにすると24時間はオンに出来なくなるらしいが問題ないだろう。

「ん?それはいいが」

「(攻撃威力調整10%)魔力弾(×149000)」

 どうせ魔力はすぐに回復するので全力でぶっ放すことにした。


──ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


 魔力弾が豪雨のように降り注ぐ。着弾すれば雨粒とは比べ物にならない轟音が辺り一帯に響き渡り、視界はが真っ黒な砂煙で覆われる。
 ちょっとやり過ぎたかもしれないが水晶が1272個、翡翠は977個、他にも黒晶石こくしょうせきや精霊石[火]などのアイテムが数十から数百単位で手に入った。

「な、な、な……」

「ガンテツさん、これ情報料ってことで差し上げます」

 そう言って僕はメニュー欄から水晶を選択してガンテツさん宛てに譲渡申請を出す。僕もお金が欲しいので譲渡するのは全部ではなくキリのいい100個だ。

「え、な、は?」

「ほら、早く了承してください」

「お、おう」

 混乱しているガンテツさんを急かして少し強引に水晶を譲渡すると、少し離れたところから複数人の怒号が聞こえてきた。この現象を僕が起こしたとバレれば色々と面倒な事になりそうな気がするので早々に立ち去ってしまおう。

「ありがとうございました」

「あぁ」

 僕は狂狼化を使ってステータスを底上げして黒い砂煙の中を北に突っ切ることにした。まだ完全に晴れていない砂煙の中では視界も2m先が見えるかどうかといったところだけれど、探索スキルを併用すれば誰かとぶつかることはない。デコボコした足元にだけ気をつけて僕ら北へと駆けた。


⚫︎ガンテツ

「なんだったんだ、いったい……」

 俺は夢でも見ていたのかもしれない。俺は昨日の夕方、テコの南門近くで露店を開いていたプレイヤーからボスの素材で作られたという武器を購入した。
 しかし、それを知った息子から「壁役が防具揃えずに武器を買ってどうするんだよ。先に防具を揃えた方がいいって話をしただろ!」と怒られ装備が整うまではパーティを組まないと言われてしまった。

 組合で会った親切なプレイヤーからテコ北側の岩石地帯での金策を教えて貰った俺は一心不乱に岩を砕き続けていたのだ。水晶は組合で1個100R前後で買い取って貰えるらしいが、4時間で水晶は6個しか手に入らなかった。

 そんな俺が少年から声を掛けられたのは単純な作業に疲れて休息を取っている時だった。彼は俺や周囲のプレイヤーが岩を砕いていることに疑問を感じただけらしい。おそらくゴーレムが出現する更に北のエリアに向かう途中なんだろう。

 俺が岩を砕いて水晶を集めていることを教えると、彼は少し遠慮した様子で金に困っているか聞いてきた。俺が素直に自分の境遇を語ったのは気まぐれだ。たぶん人寂しさってのがあったんだろう。
 その直後、まるで工事現場でコンクリートの破砕作業をしている時のような低重音が響き渡ったのにはマジでビビったが。

 その後、混乱していた俺は少年から言われるがまま大量の水晶を受け取ってしまった。情報料と言っていたので俺が貰っても問題はないはずだが、さすがに貰いすぎだと事情を話した息子から再び怒られちまった。
 今度会ったら何かお礼をしなきゃなんねぇな。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

マヨイもたまには良いことしますね!
やってることは環境破壊なんですけど(゚∀゚)

木の伐採は素材の採取なので頑張って拾い集めていましたが、今話の岩はモンスター扱いであるため破壊した時点でドロップとして水晶などを入手しています。
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