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本編
第93話 マヨイは謁見する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
ブラックアウトした視界が回復すると周囲の光景は一変していた。先ほどまで居たギルドホームの応接間ではなく、乳白色の壁と床に囲まれたドーム状の空洞にいた。唯一の出入り口は背後の既視感のある扉だけのようだ。
状況の把握の最後は先ほどから僕を観察している僕よりも年上だけど成人はしてないくらいの外見をした男性だ。目が痛くなりそうな極彩色の趣味の悪いトレンチコートを着ているせいで整った容姿が台無しだ。彼が僕をここへ呼び寄せた神様なのだろうか。
「…………状況の把握は済んだかな?」
「えぇ、まぁ……貴方は?」
「パラレルだ。彩神と言えば分かるな。本来なら使徒に任じた灰神に謁見させるのが筋だが、その前に蒼神の使徒になったせいで機会が失われてな。お前にはすまないことをした」
予想通り神様だったらしい。そして僕が今まで神様と合わなかった理由もわかった。そういえば藍香は召喚は2回されたと言っていたせど紅神と槍神、そして裁神の3柱と会っているようなことを言っていた。もしかしたら藍香は紅神の使徒になった時に神様に会っているのかもされない。だとすれば僕が神様と合わなかったのは強制ログアウトしたかな。
「いえ、こちらこそ今まで会おうともせずすいませんでした」
「それこそ気にする必要はないぞ。今の使徒や巫女というのは単に私たちのお気に入りというだけで何か使命があったりするわけではないからな」
「そうなのですか?」
てっきり「力をくれてやったんだから◯◯しろ」的なことを言われると思っていたので意外ではある。というか少しホッとした。
「そもそも彩神大戦は私たちが単なる気晴らしで使徒に使命を与えたせいで起きたのが原因だからな。あれ以降、使徒に使命を与える場合は色々と面倒な手続きが必要になったのさ」
「彩神大戦、ですか?」
言い方からして神様同士の戦争だろうか。
「遥か昔にあった喧嘩の名前さ。その結果に得たのが無闇矢鱈に使命を与えるな、という教訓だけだというのだから巻き込まれた者たちからすれば堪ったもんじゃない」
「彩神さまは喧嘩に巻き込まれた側ですか?」
「まぁな。あれは虹神が黒神に近しいのか、それとも白神に近しいのかという論争から発展したものだった。私たちは3つの陣営に分かれ────」
彩神の話を彩神大戦とは虹色が暖色なのか寒色なのかという論争が原因で起こった喧嘩のことらしい。黒神が率いる派閥、白神が率いる派閥、そして彼らに巻き込まれた灰神ら中立派の3つの派閥の喧嘩は500年ほど続いたのだとか。
で、発端となった虹神と彩神は同一神であり色神──色を関する神様の総称──全ての生みの親なのだとか。
「それって規模が大きいだけで、親に"どっちの味方なの!?"って我儘言って喧嘩してるだけですよね?」
「はははっ…………そうなんだよ。全く困った子たちだ」
「いや、500年も続いたのは100年くらい悩んだらしい貴方が"どちらの味方でもない"なんて言ったせいでは?」
「………………そう言う説もあるな」
何も言わなければ灰神たちが巻き込まれ……いや、おかしい。
灰神の味方だと明言していないのに何で灰神が巻き込まれるんだ?先ほどからの彩神の口振りからして特に贔屓しているような様子ではなかった。ダメ元で少し突いてみるか。
「……もしかして今言った話、自分の都合のいいように改変してます?」
「…………………………その、だな」
どうやら痛い所を突けたらしい。
「したんですね?」
「…………………………はい、しました」
その後、ポロポロと本当のころを彩神は話してくれた。それによると彩神大戦と呼ばれているのは黒神派と白神派の喧嘩が原因で他の神々から怒られてしまった彩神がキレて暴れたのが原因のようだ。
黒神派vs白神派vs彩神とかパワーバランスおかしくない?
「で、中立派の灰神たちが他の神々の力を借りて仲裁したと……」
「……そうです」
「なんで改変したんですか?」
「いや、その……久しぶりの使徒に悪い印象を持って欲しくなくてね」
「嫌われたくないから嘘を言ったのだとしても、それがバレたら意味ないと思いません?」
神様と聞いてもっと厳かなイメージがあったのだけど妙に人間くさいのは運営の趣味なのだろうか。
「…………そ、そうだ、せっかく召喚したというのに何もしてやらないというのは味気ないな。何でもいい、望むものがあれば言ってみるがいい」
「……話を逸らしましたね?」
「そ、そんなことはないぞ?ほら、何かないのか?人間といえば金か?名誉か?それとも見目麗しい異性か?」
例えが俗すぎて笑えないのには目を瞑るとして、僕が望むものは決まっている。
「正しい知識が欲しいですね」
「理由を聞かせてもらえるかな?」
「……それがあれば不逞の輩に騙される危険性は減るし、それを逆に利用することも出来るから、かな」
ゲーマーの性です。なんて言う訳にもいかないので反射的に建前になりそうな理由を騙ると彩神の表情が歪んだ。
「……それは嫌味か」
「そんなつもりはないです」
全く、これっぽっちもその気はなかったけど、確かに今のは嫌味に聞こえなくもない。もう少し考えるべきだったか。いや、よく考えたら嘘をついた彩神が悪いだろ。僕は悪くない。
「ふむ、ならこれをやろう。あの大戦の後、ちょっとした頼まれごとの対価として貰ったものだが私には必要のないものだ。お前なら上手く使うだろう」
僕は彩神から薄ら輪郭が見える透明な装丁の本(?)を渡された。僕が手に取った直後、透明だった装丁は薄らと蒼色がかった乳白色に染まった。どうやら持ち主によって色が変わるらしい。
名前:儀典破戒書
分類:神器 装備 本
説明:魔神が作った神器。
作った直後に彩神に取られたため性能確認はされてない。
装丁は持ったものの魔力の色によって変化する。
効果:[分類:魔法/攻撃]技能の基本威力増加
不明
不明
不明
不明
不明
不明
制限:不明
高位鑑定スキルでも不明ばっかりなんだな。
でも最近は魔力弾の基本威力が心許なくなっていたので助かる。
「ありがとうございます」
「気にする必要はないぞ。土産も渡さないケチな神だと言われるのは真っ平ごめんだからな」
「は、はい」
いや、神器を土産にするなよ。
しかも元々は魔神のものじゃん、これ。
「少し長話が過ぎたか。では達者でな」
こうして僕の視界は再び暗転した。
最後にニヤニヤと含み笑いを浮かべていた彩神の様子に嫌な予感を感じながら僕は別れの挨拶が出来なかったことを少し残念に思っていた。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
前回に続いて難産回でした。
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