VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第102話 アイは不意打ちする。

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⚫︎アイ

「大人を甘く見るからこうなるのですよ!」

「シブンギ!いくらなんでも汚いぞ!?」

「……馬鹿」

 舞い上がった砂埃のせいで私からは見えないけどシブンギのご高説(笑)とレオやオリオン、あと何人かのシブンギを非難する声が聞こえる。舞い上がった砂埃に隠れて奇襲を仕掛けてくると思っていたけれどそんなことはなかった。
 しかし、すでに決闘は始まっている。

「(隙だらけよ、)」

 回復役ヒーラーから潰すのは対多人数戦闘の基本だ。
 今回の決闘に参加している流星群のメンバーの内、味方の回復を得意としているプレイヤーはオリオンを含めて3人。私は人槍一体を発動させてオリオンの懐に入り込み貫手で彼女の胸を貫いた。驚き染まった顔をしているオリオンの胸からすぐに腕を引き抜いた私は間髪入れずに左脚でローキックを放つ。これで万が一、オリオンの体力が残ったとしても機動力を奪うことはできる……と思っていたのだけど、ローキックを入れる前に体力は尽きていたらしく死体蹴りになってしまった。

「なっ」

「ちっ、とりあえず囲んで動きを止めろ!」

 残った回復役の2人(と軽戦士風の男)を仕留めたところでシブンギはようやく指揮を取り始めた。どうやら舞い上がった砂埃のせいで私を見失っていたらしい。策士策に溺れるとはこのことよね。

「盾で防ぐな!回避するんだ」

 覚醒していない相手なら適当に接近して腕を振るだけで倒せてしまうのはバランス的にどうなのかとも思う。これならオリオン以外の回復役は優先して倒す必要はなかったかな。でも残ったメンバーで持久戦は不可能だろうから流星群は拙攻に賭けざるを得ないはずよね。あと1分もあれば全滅させられるかしら。


…………………………………


……………………………


………………………


 決闘開始から1分30秒が経過した。すでに決闘に参加していた流星群のメンバーはシブンギしか残っていない。想定していたよりも時間が掛かってしまったのは私に魔術攻撃が通用しないことを察したシブンギが魔術士系のプレイヤーに近接系のプレイヤーへの支援を、近接系のプレイヤーには回避行動を徹底させたことが大きい。
 あとは覚醒を手に入れていたらしいレオを倒すに少し手間取ったのも理由の1つだ。

「いったい何のつもりなんで────」

 それでもステータスの差はどうしようもない。
 まるで弱い者いじめしているような気分だった。


 YOU WIN


 何やら言いたそうにしていたシブンギを始末したことで決闘は終わった。彼を残していたのは偶然だ。回復役を倒した後、脅威になりそうな順番で倒していったからにすぎない。
 決して目の前で味方が1人ずつ倒されていくのを見せつけてやりたいなんて理由ではないのよ?

「で、もちろん約束は守ってくれるのよね?」

 決闘が終わって訓練場に横たわって目を瞑っているシブンギに声を掛ける。その横でオリオンは私を見ながら「あれは、ない」と短い恨言を言っているけど、あれはから目を逸らしたオリオンが悪い。

「……あの妄言を聞き入れたつもりはありませんよ」

「そう。なら構わないわ」

「録画を公開しようとしても無駄ですよ。私は決して許諾なんてしませんからね」

「貴方、何か勘違いしていないかしら」

「勘違いですか?」

「そう。私がしているのは録画じゃなくてよ?」

「は?」

「っと……リスナーもコメントに反応出来なくてごめんなさいね。実はコメント表示をオフにしていたのよ」

 視線の動きなどで配信しているのがバレるのを避けるためオフにしていたコメント表示をオンにする。


【名無し:見応えバッチリだったから問題なし】
【名無し:事情さっぱりだけど面白かった】
【名無し:コメント表示オフはなんで?】


「コメントに反応すれば流星群の人にバレちゃうでしょ?配信されているのが分かっていれば不意打ちを仕掛けてくることもなかったでしょうけど、それじゃ彼らの全力を叩き潰したことにならないじゃない」


【名無し:不意打ちするのも実力の内か】
【名無し:叩き潰す(社会的に)】
【名無し:俺ならキレてる】


 私と彼らとの間にあるステータスやプレイヤースキルの差を考えれば不意打ちくらいは許容範囲内だ。むしろ天衣無縫の効果を試すことができたことに感謝しても良いくらいよね。

「い、いつからだ!?」

「ほぼ最初からよ。不意打ちまで仕掛けて負けたのが世間に知られたらどうなるのかくらいは分かるわよね?」


【名無し:プロゲーマーとしての信用は失うよな】
【名無し:不意打ちまでして負けたらな……】
【名無し:スポンサーは切られるだろ】
【名無し:こんなチーム支援してたらイメージ悪化するもんな】


 コメント欄にも書かれているけれど、第三者から見れば決闘での不意打ちは流星群の信用を再び地にと落とすには十分過ぎるだ。しばらくすれば彼らのSNSなどは炎上するだろうし、シブンギが未成年の一般プレイヤーを利用して私を脅迫しようとしたこともいずれは露見してしまうだろう。

「ふざけるな!」

「私は真剣よ?でも現実リアルでお昼を食べてきたいからそろそろログアウトする落ちるわね。ゲリラ配信に来てくれたリスナーもありがとう!」


【名無し:いいもん見せてもらった】
【名無し:アーカイブには残す?】
【名無し:おつかれさま】


「今回の配信はアーカイブには残しておくわ。もちろん流星群から"不意打ちを仕掛けたのが記録に残ると都合が悪いから消してくれ"みたいな事を言われたら消すわよ」

 ちなみに言われなくても半日くらいしたら消すつもりだ。そうすれば事実はどうあれ第三者は流星群が削除を要請したように見えるし、今回の件での私たちの立場を被害者として印象付けることができる。


【名無し:当人の目の前で言ってやるなよww】
【名無し:素直に消すのか】
【名無し:さすがに言わないだろ】


「それじゃ配信を止めるわね。また会いましょう」

 こうして配信を終わらせた私は文句にもなっていない雑音を撒き散らすシブンギを無視して組合から出た。とりあえず一目の少ない例の酒場まで移動してからログアウトしよう……としたのだけど、酒場に着く前に予期せぬ事態が発生した。


[ワールドアナウンス:転生を実行したプレイヤーが現れました。以後、プロフィール欄に転生の項目が追加されます]


『藍香お姉ちゃんどうしよう!?進化できなくなっちゃった!』


 ワールドアナウンスが流れた直後に暁からフレンドコールがきた。それによるとワールドアナウンスを流したのは暁のようだ。ただ進化せず先に転生してしまったことが原因で予定していた進化が出来なくなったらしい。
 そして暁は「このままだと足手まといになっちゃう!」とパニックを起こしかけていた。

「まったく。手間の掛かる義妹ね……」

 その後、暁と合流した私は真宵がログインするまでにどうにかパニックになった暁を落ち着かせることが出来た。しかし、そのせいで真宵の迂闊な行動を掣肘せいちゅうすることが出来ず後悔することになる。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
何人かの読者様にはバレていたようですが、アイが「録画している」ではなく「撮っている」と表現していたのはこのためでした。

しかし、ここから流星群(というかシブンギ)が再起を図ることは不可能ではありません。ただ社会的な信用を失った彼にとっては茨の道であることは間違いないでしょう。マヨイからの制裁が残っているのでシブンギには是非とも頑張って欲しいところですね。

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