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本編
第121話 マヨイは遭遇する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
「はぁ……あの子には学習能力がないわけ?」
「ないんじゃない?」
連日のポカを母さんも重く受け止めたらしい。暁は夏休みの間はゲームをする時間を1日6時間までに制限されることになった。つまり今日はこれ以上ログインできない。
個人的には6時間もゲームできるのだから罰になってない気がするけど、この手の制限を設けられたことのなかった暁はそれなりにショックを受けていた様子だった。
「3人で素材を集めますか?」
「……クレアは私で組んで、真宵はソロで周回しましょ。その方が効率よく魔物素材を集められると思うわ」
確かに2組に分かれた方が魔物素材を多く集められそうだ。
藍香とクレアちゃんが組むのはイベントエリアに出現する透明獅子がクレアちゃんと致命的に相性が悪いからだろう。索敵技能を持っていないクレアちゃんでは透明獅子の不意打ちを察知できず、ステータスが上回っている今でも下手をすれば殺されてしまう可能性があるのだ。
「みぃ?」
「ちょ、アイ!?」
「そうだったわね。ククルは真宵と一緒よ」
「みゃ!」
藍香が屈んで僕に顔を近づけてきたので少し焦ったけど、どうやらククルが帽子の中から顔を覗かせたようだ。
「お兄さん顔が真っ赤ですよ?」
「い、いや、なんでもないよ」
「あら、ほんとね。熱でもあるのかしら」
「なんでもないって!先行ってるからね!?」
本心から僕を心配してくれている様子のクレアちゃんとニヤニヤ顔で揶揄ってくる藍香の2人から逃げるように僕はイベントエリアに向かった。
…………………………………
……………………………
………………………
「(魔力弾×20000)」
「みぃみぃ!」
イベントエリアに入ってから僕は再び空から魔力弾を降らせるだけの作業を始めた。もはや聴き慣れた轟音が地表で鳴り響いている中、ククルは僕の頭をペシペシと叩きながら鳴いている。
「怒ってるの?うるさかった?」
「にー」
「怒ってない?」
「み!」
「…………うん、分かんないや」
試しに問いかけてみたけど、よく考えたら僕に猫の言葉なんか分かるわけがないことに気がついた。こういう時こそ技能の出番だろう。僕は習得可能リストに何か役に立ちそうな技能がないか探すことにした。
「……って、なんかめちゃくちゃ増えてるじゃん」
「み?」
空を移動しては魔力弾を降らせる作業の合間に習得可能リストを確認していく。中には面白そうな技能もあったけど、今欲しいのはククルと意思疎通が出来るようになる技能だ。
「モンスターと意思疎通が可能になる技能は言語理解初級、テレパス、テイマーマスタリーの3つか」
言語理解初級は会話だけでなく文章の理解も可能になる技能だ。ただし、初級とあるように全てが理解できるわけではない。更に言えばモンスターの言葉が理解できるようになるだけでモンスターが僕らの言葉を理解してくれるわけじゃない。ちなみにプレイヤーはデフォルトで文章を翻訳する能力──簡易鑑定のようなもの──を持っているので市販の本を読むだけなら習得する必要はない。
テレパスは意思ある存在との交信を可能にする技能らしい。プレイヤー間ならフレンドコールで足りるので基本的にプレイヤー以外と交信するために使うんだろう。しかし、この技能は相手もテレパスを習得していなければ意味がない。フレンドコールが使えない状況でなら役に立つかもしれないけれど、ククルはテレパスを習得していないので今回は却下だ。
「テイマーマスタリーかぁ……」
最後のテイマーマスタリーはテイム関係の便利な効果を複数備えた技能だ。テイムしたモンスターと会話することが可能になるだけでなく、テイムの成功率上昇、テイムしたモンスターが暴走──制御不可能になること──する確率の低下、暴走した状態から元に戻るまでの時間短縮などテイムをメインに据えてゲームをするのなら必須とも言える技能だ。ただし、テイマーマスタリーを習得すると他のマスタリーと名の付いた技能が習得できなくなってしまう。僕としてはマナマスタリーを習得して魔力弾の性能を底上げしたいのだ。
「これならいけるんじゃ……」
マスタリーと名のついた技能を複数習得する方法を求めて掲示板の情報を漁っていると習得済みの技能の名前を変更するアイテムについて書かれているのを見つけた。
アイテムの名前はスキルファンウダー。習得済みの技能の効果を僅かに強化し、技能の名前を変更する効果はオマケだ。掲示板では「名前が変わる効果はネタとしては面白いけど実用性はない」と書かれている。技能の強化に関してはランダム性が強いため可もなく不可もなくという評価だ。
僕は少し迷ったがスキルファンウダーを手に入れる前提でテイマーマスタリーを先に習得することにした。
「どしたの?」
「……ククルの言葉が分かるようになったんだよ……って言っても分からないか」
「わかる!」
習得した途端、ククルの鳴き声が活発そうな女の子の声になって聞こえてきた。てっきり字幕みたいなものが表示されるようになるのだと思っていたので驚いたが、こちらの方がコミュニケーションが取りやすいので結果オーライだ。
「あ、分かるんだ……これからもよろしくね」
「うん!」
こうして僕とククルがイベントを周回し始めてから1時間くらい経った頃、これまで遭遇してこなかったモンスターを発見した。そのモンスターはライオンの立髪を持った狼だ。モンスターの種族名は原竜、まだ幼体であるククルとは違い成体だ。ククルと姿形が似ていないけど、ククルも成長したらああなるのだろうか。
「ま、いっか。魔力弾×20000」
ここまで広範囲に満遍なく放っていた弾幕と同じ数の魔力弾を1体のモンスターの周囲に向けて放つが、着弾と同時に舞い上がった土煙が収まるとそこには僕の方を睨みつける原竜の姿があった。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
動物が喋ることに抵抗がある方もいるかもしれませんがお許しください。ククルの精神年齢は1桁年齢後半を想定しているので漢字を使わない方針です。漢字を使っていたら誤字です。
ククル→マヨイの呼び方をダイスで決めます。
個人的に呼び捨てがベター(書きやすい)
次点でお父さん(ネタ的に書きやすい)
パパとご主人様はどうせ出ない。
01~05 パパ
06~50 マヨイ
55~95 お父さん
96~00 ご主人様
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自筆です。
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