VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第140話 マヨイは迎え入れる。

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⚫︎マヨイ

[決闘に勝利しました]

 最後、まさか織姫がダメージを受けることを厭わずに踏み込んできたのは想定外だった。あの時点で僕は負けていたと言っていい。しかし、残念ながら彼女の攻撃が命中したのは僕の攻撃で体力が尽きた後だった。模擬戦の結果だけみれば彼女の負けということになる。

「う、嘘……」

 掴んだはずの勝利が目の前で消えた彼女には同情を禁じ得ない。
 たぶん僕の攻撃を2回受けたことで3回までなら耐えられると思ったのかな。もし皮算用なしだとしてもVRゲームで相手の攻撃を前にして踏み出せる度胸は相当な慣れが必要になる行為だ。これが現実で格闘技の経験があるとかなら別なんだけど、織姫の試合慣れしてない様子からしてそれはないだろう。

「織姫」

「……はい」

「これからよろしくね」

 そう言って僕は織姫をギルドに勧誘した。気がつけば男1人に女4人と随分と男女比が偏ってしまっているけど、性別でゲームするわけじゃないし気にしても仕方ないだろう。

「え」

「ん?」

「私、負け、ましたよね?」

「そうだね」

「負けたらギルドに入れないんじゃ……」

「ダメージを与えたら合格とは言ったけど、与えられなかったら不合格とは言ってないよ」

 詭弁だけどね。彼女の模擬戦での立ち回りは、途中で集中力が疎かになっていたことを差し引いてもギルドに迎え入れるに足りるものだった。

「なら!」

「うん、よろしくね」

「はい!」

 こうして5人目のメンバーがギルドに加入した。
 男が僕1人だけなので人によっては「ハーレム野郎」とか言ってきそうなギルドだ。でも性別でゲームしてるわけじゃないから気にするだけ時間と労力の無駄だろう。言いたいやつには言わせとけ的なスタイルでいこうと思う。


…………………………………


……………………………


………………………


「で、この後は何するの?」

「何するのって……何しようか?」

 訓練場を後にしたのはいいが正直言ってやることがない。
 周囲の声を聞けばイベント最終日ということでランキングを上げたいプレイヤーはせわしなく動いているようだ。しかし、今の僕らにとってイベントエリアに行くメリットはほぼない。

「織姫ちゃんの歓迎会しませんか?」

「え、でも藍香お姉ちゃんいないよ?」

「そんな、いいって!」

 クレアの言う通り織姫の歓迎会はやりたいけど、暁の言う通り藍香がいない状況でやるのはなしだ。仲間外れにした云々で機嫌を損ねるのが目に見えている。見えてる地雷をわざわざ踏む必要はない。

「織姫の歓迎会は藍香がいる時にしようか」

「ならどうするの?イベント?」

「イベント後に各街の組合からギルドホームまで移動できるようになる機能が追加されるみたいだし、織姫をギルドホームに案内しようか」

 ソースは運営の公式SNSだ。確認したのは今朝だけど情報自体は2日くらい前から出ていたらしい。もっともギルドホームを持っていないギルドが大多数らしい。僕らのような例外もいるけれど、ギルドホームを持っているギルドの多くは100人単位のプレイヤーが参加しているようなところばかりだ。

「え、ギルドホームあるんですか?」

「あるよ」

「あ、スクショ見る?」

「見る!……え、すごい、豪邸じゃん!」

ごーてーみにゅ?」

 暁はギルドホームを迷子になっていた間に探索中に内部を撮影していたらしい。抜け目のないことに外観もしっかりと撮ってあった。

「地下には加工施設や書庫があるんだよ!」

「へぇ……これって買ったんですか?」

「いや、クエストの報酬みたいなものだよ。行く?」

「行ってみたいです!」

みたいーみぃ!」

 織姫の希望もあり僕らはギルドホームのあるエイトに向かうことになった。僕らがイベントに参加している間、イベントに興味を持たなかったプレイヤーたちの一部がエイト近隣で活動するようになったらしい。対人トラブルに巻き込まれないよう気をつけたいところだ。



⚫︎アカトキ

 お兄ちゃんが余計なフラグを立てた気がしたけど、そこは気にしても仕方ないよね。今、私たちにとって1番の問題はクラスメイトたちの暴走をどう止めるかだ。お兄ちゃんのことだならお姉ちゃんに丸投げしておけばいいとか思ってそうだけど、当事者としてはそうもいかない。

「あいつらのギルドって何人いるの?」

 エイトまでの道中、お兄ちゃんからこんな質問をされた。
 あいつらっていうのは私のクラスメイトのことだろう。ただ私は鳥野がギルドを作ったことは知っているけど、そのメンバーまでは詳しく聞いてない。

「他のクラスの人も一緒みたいなので30人くらいだと思います」

「そこそこ規模は大きいんだね」

 一部のギルドがおかしいだけで大半のギルドは10人前後だ。
 このゲームのギルドは人数制限がない。数は力っていうのは間違いないないけど、メンバーがトラブルを起こした場合は連帯責任や監督責任などの理由で人数や総資産に応じたペナルティが発生するらしい。

「ギルマスがログイン出来なくなってるけどね」

「そんな時のサブマスだろ?」

「先輩、あのギルドのサブマスターはタクヤですよ」

「あー、あいつか……」

「お兄さんを変態さん扱いしたの絶対に許しません!」

ゆるしませんふしゃー!」

 クレアって現実だと大人しいけど、その反動なのかゲームだと理性とか倫理とか色々と捨てちゃいけないものを捨ててる気がする。ユウジとかのせいでストレスが溜まってたのかな。
 あとククルは暴れると割と洒落にならないからやめてね。

「もう1人のサブマスターはカオルのクラスの男子だったはず」

「そっちの子がしっかりしてれば立て直せるかもね」

「あとユウジがいれば少しはマシかもね」

「クレアのストーカー?」

「そいつです。嫌な奴ですけど意外とのでタクヤやトリスより遥にマシですよ」

「それは織姫だけじゃないかな……」

 ユウジはお兄ちゃんに振られて落ち込んでいた織姫に近づいて無遠慮にお兄ちゃんの悪口を言ったせいでぶちのめされている。それ以降、ユウジは織姫に苦手意識が芽生えたらしい。ユウジの彼女面している面子はそれが気に入らないみたいだけど織姫が怖くて特に何かしてきたりとかはないらしい。

「ユウジさん、確か捕まっちゃったんですよね?」

「現実で?」

「ゲームでだよ。何日か前、ソプラの衛兵に捕まったって話が掲示板に書かれてた気がする」

「衛兵に捕まるとどうなるんですか?」

「確かヘルプに書いてあったな……えっと、罪の重さに準じた罰金と払えなかった分は強制クエストが課されるみたいだね」

「牢屋に閉じ込められる的なやつじゃないんだ」

 衛兵に捕まったら牢屋に入れられるイメージがあったから意外だ。

「あと規定日までに強制クエストをクリアできなかった場合はキャラクターロストされて14日間の新規キャラクター作成禁止処分になるってさ。さすがに2週間も出遅れたらゲームやめるんじゃないか?」

「あー、ユウジの彼女面してる奴らは分からないけどユウジはクエスト頑張りそうなイメージあるよ」

「課題を出されれば意地でもやり遂げるタイプだよね。振られた相手の彼氏面する犯罪者予備軍だけど」

「上げてから落としてやるなよ……」

 いや、振られた相手の彼氏面して迷惑かけるとか本当に好きだったのかも怪しいよね。藍香お姉ちゃん、タクヤのついでにユウジもなんとかしてくれないかなぁ……

「あ、見えてきました!」

 こうして話している間にエイトに到着した。
 門の前に並んでいる人混みは前よりも増えているように見える。まだ遠目だから確信は持てないけど、並んでいる人混みの半数近くがプレイヤーのようだ。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

今更ですけどTTTの所属人数600人を60人に修正しようかと思ってます。現在修正作業中です。もし600人と表記されている箇所を見つけたら生暖かい目で見てください……
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