VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第142話 マヨイは考えるのを止めた。

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⚫︎マヨイ

 織姫にギルドホームを案内する役目を暁に任せた僕はエイト近郊に存在するダンジョンの情報を手に入れるため組合に向かった。

「うわ、ちっさ」

「あれ女?男?」

「ばっか、あれランキング1位のギルドの奴だよ」

「嘘つくなよ」

 組合に到着すると結構な数のプレイヤーが僕を見て何かヒソヒソと話し始めた。配信者として復帰、それもランキング上位ともなれば多少は僕の顔を知っているプレイヤーもいるらしい。しかし、自己承認欲求が満たされるよりも不快感の方が強い。何度も言うようだが僕のパーソナルを確認すれば性別の欄に男だとはっきり書いてあるのだ。

「ご用件をお伺いいたします」

「エイト近郊にあるダンジョンの情報をください」

「……許可証の階級によって開示できる情報が異なります。許可証はお持ちですか?」

「はい」

 アイテム欄から取り出した第3種許可証を受付係の女性に渡そうとしたのだけど何処にでも馬鹿はいるらしい。許可証を持った僕の腕を横から掴もうとした馬鹿が現れたのだ。寸前で腕を引っ込めて馬鹿を睨みつける。

「なに?」

「おい、なんでお前みたいな奴が許可証を持ってんだよ」

 その大柄な男馬鹿の名前はマックス。素質は傭兵、覚醒に大剣士とある。位階は42と比較的高めだ。素質が1つしか表示されてないのは少し前の僕みたいに公開する情報を制限しているからかな。

「……許可証を発行して貰える条件は知ってる?」

「は?んなのクエストやってりゃいいだけだろ」

「はぁ……変異種っていう普通のモンスターより強いモンスターを複数倒さないといけないんだ。受付で聞けば教えてくれるよ。そうですよね?」

 そう言いながら改めて許可証を受付係の女性に渡す。

「はい。ダンジョンでは変異種や変異種と同等以上のモンスターが出現します。なので変異種を討伐した実績がない方には許可証は発行いたしておりません。もちろん人柄なども評価に入ります」

「ちっ……悪かったな」

 そう言ってマックスは去って行った。去り際のマックスの顔は真っ赤だったので恥ずかしかったんだろう。自分の勘違いで絡んだ上、受付係から「お前は実力があっても人柄で落第だ」みたいな視線を浴びたのだから無理もないだろう。

「お待たせしました。こちらがエイト近郊に存在するマヨイ様が挑戦できるダンジョンの情報になります」

「ありがとうございます」

 資料を受け取った僕はギルドホームに戻ることにした。
 正直、居心地が悪いから早く戻りたい。


…………………………………


……………………………


………………………


 ギルドホームに戻ってきた僕は地下の加工施設で作業中のクレアを訪ねた。実は組合に行く前に織姫の武器と防具を作って欲しいとお願いしておいたのだ。

「お兄さん、おかえりなさい!」

「ただいま。何か足りない素材とかある?」

「そうですね……お揃いの武器を作るのにワイバーンの頭蓋骨が欲しいです」

「武器の方は前にも言ってたね。明日以降になるけど皆んなを誘ってワイバーンを探しに行こうか」

「はい!」

 ワイバーンが出現するのはソプラの北にある山の中腹辺りらしい。ワイバーンの素材は高値で売買できる優れた素材ということもあって結構な数のプレイヤーが狩りに行っている。ただソプラを襲撃したワイバーンよりも強い個体ばかりな上、飛んでいる相手に対する有効打が足りず安定して倒せる状況にはないようだ。

「防具の方は素材足りてるの?」

「はい、防具はイベントで手に入れた素材だけで間に合いそうです。お兄さんは組合にダンジョンの情報を貰いに行ってたんですよね?」

「そうだよ。見る?」

「はい!」

 僕やクレアが行くことのできるダンジョンはエイト近郊に3箇所もあった。どれも難易度の低そうなダンジョンだけど、出現するモンスターや手に入るアイテムはバラバラなので目当てのダンジョンがあれば周回したいところだ。


名称:小鬼骨堂
説明:エイト南部に存在するダンジョン。ゴブリンまたはゴブリンの派生個体が大量に発生しているダンジョン。全3層と浅いダンジョンとゴブリンの発生率の高さが影響して集団暴走が発生しやすい。ボスは位階40~60のゴブリンの派生個体とされている。


名称:井守の岩
説明:エイト南西部の森の中に入り口が存在するダンジョン。スライム系のモンスターが多く生息している。近年、太古の魔術士がスライム系の魔物の進化に関する実験を行っていた施設だと判明した。ボスは位階30~40のスライムの派生個体とされているが稀に位階不明の玉虫色に光るスライムが出現することがあるため注意されたし。名前の由来は入り口近くの井守をかたどった岩から。


名称:不忍の杜
説明:エイト北東部に存在する森。森そのものがダンジョンとなった珍しいケース。位階10~20前後の植物系と動物系のモンスターが確認されている。ボスは位階30のキマイラ系の変異種の群。名前の由来は位階の低さとは裏腹に索敵能力の高いモンスターが多く出現するため。不忍はシノベズと読む。


「井守の岩だけはなしだね。クレア、他の2つならどっち先に行きたい?」

「え、なんで井守の岩はなしなんですか?」

「この位階不明の玉虫色に光るスライムっていうモンスターなんだけど僕の予想が当たったらコズミックホラー的なものなんだよね。しばらくすれば他のプレイヤーがダンジョンに入れるようになると思うから情報が出揃うまではノータッチでいこう」

 それに井守の岩の"岩"を"がん"と読んだ場合、創作の世界では比較的有名な神話に登場する森の名前になる。玉虫色に光るスライムが同じ神話に登場する種族だと考えると……
 やめよう。これ以上は気づいちゃいけないやつだ。

「こずみっくほらー?」

「グロテスクで見ただけで気持ち悪くなるようなもの、って覚えておけばいいよ」

「分かりました。なら……不忍の森に行きたいです。位階は低いですけど群れならきっと素材はいっぱい手に入ると思うんです。いっぱい作っていっぱい売りたいです!」

 クレアの目に$マークが見える。ちなみにクレアがギルドの装備に関しては金銭のやり取りはしたくないというのでクレアがギルドメンバーに作った装備の代金は設備投資に充てることになっている。

「なら今から行く?」

「ふ、ふたりで、ですか?」

「約束したからね。アカトキを誘うかはクレアに任せるよ」

「な、ならアカちゃんたちも一緒がいいです!」

「なら2人を探さないとね」

 ギルドチャットで2人にダンジョンに行かないかと誘いをかけると数秒をしない内に快諾の返事が来た。はやいよ。

「あ、……でも織姫ちゃんってダンジョンに入れるんでしょうか?」

「変異種は何体か倒してるみたいだし大丈夫だとは思うけど……」

 そんなわけで僕は暁たちを連れ立って再び組合に行くことになった。さっきは僕だけだっから我慢したけど、また不躾な視線を向けてくるようなら……プレイヤー名を覚えてあげよう。

───────────────
お読みいただきありがとうございます。

クトゥルフ神話ネタが分からない方は「そんなものがあるんだ」程度で大丈夫です。既に何回か登場してたりしますが本編にそこまで絡ませるつもりは今のところありません。

次回は掲示板回です。


感想欄ならのご指摘で先日登場したジャスティの容姿を決めていなかったことに気が付きました。プロット上でのコンセプトは《独善的な男装の麗人》《くっ殺さん》《ボクっ娘》《青の巫女》です。

どんな容姿がいいかダイスで決める選択肢を感想欄で募集しようと思います。〆切は2021/6/13/23:59です。
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