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本編
第181話 マヨイは早撃ちする。
しおりを挟む⚫︎クレア
「お姉ちゃん……私だって手加減くらいできるよ?」
お兄さんからギルドチャットで"新しいメンバーを勧誘したので織姫ちゃんの時と同じように試験をしたい"という旨の相談された後、模擬戦の相手から外されたアカちゃんがアイさんに文句を言い出しました。
「はぁ……自己回復のできる壁役であるアカトキと回復役の花奏が模擬戦をすれば間違いなく泥沼化するわ。そうなれば前もって禁止していてもアカトキは例のオリジナル技能を使うわよね?ギルドホームの訓練場が壊れるのが容易に想像できるわ」
「つ、使わないって!」
織姫ちゃんの話ではアカちゃんが作ったオリジナルの技能"ヒゲキ"は一撃でダンジョンを崩落させるほどの威力があるそうです。
私が作ったオリジナルの技能とどっちが強いのかな?
「本当に?」
「本当だって!」
「模擬戦中にヒゲキを使わなくては勝てないという結論に至っても?」
「…………」
アカちゃん、そこで黙っちゃったら認めてるようなものだよ。
「はぁ……もしカナデと模擬戦するなら街から離れてやりなさいよ」
「うぅ……分かった」
こうしてアカちゃんはアイさんに説き伏せられたのでした。
⚫︎マヨイ
「鬼、鬼畜、外道……」
「だから悪かったって……」
カナデは僕の目算通り約1時間で200本のアンチカース・ポーションを飲みきったんだけど、その途中で過食ペナルティを受けてしまったらしい。
「もう抹茶は飲みたくない」
「そう言われてポーションの味は僕が決めてるわけじゃないし……」
「いちごラテ、飲みたい」
「まだ飲むの!?」
「今度。今、ペナルティで味覚ないから」
ペナルティを受けると徐々に味覚が鈍くなっていき最後は水を飲んでいるような感覚だったらしい。それでも呪いは無事に解除され元のステータスに戻った(というか少し上がっていたらしい)ので僕と2人でアルテラからエイトまでの最短距離を移動中だ。
「いちごラテか……アイが好きだし機会があれば色々と試してみようかな」
「ほんと!?」
「ちょ、近い!機会があればだって!それに何をどうすればポーションの味を変えられるのかすら分からないんだからね!?」
「期待、してる」
そう言いながらアルテラとエイトの間を隔たる森(地図によればアルテラ大森林の一部らしい)を進んでいくと見覚えのあるパーティを2つ視界に捉えた。
片方は厄の討伐に際してPTを組んだシキたち3人.もう片方はゲーム開始2日目に僕と暁がレベリングしているところに絡んできたPTだ。
「なんなんですか!」
「だーかーらーさー、俺たちがレベリングに使うからどけっつってんの!」
「タゲとるの下手くそ過ぎて草生えるわ」
「あなたたちが邪魔するからでしょ!」
どうやらこの辺りはレベリングに適した狩場らしい。
そういえば草原狼王が出現するポイントだったかな?
彼らも変異種を倒すことでレベルを上げているようだ。
「知り合い?」
「女の子たちの方はフレンドだよ」
「意外」
「何が?」
「……なんでもない」
カナデは言外に「なんで気付かないの?」とでも言いたげな態度を取るけど僕に心当たりはない。
さて、ここは手を出すべきか無視するべきか。
「あのさー、こっちは配信中なんだけどー?マジで萎えるからどいてくんない?」
「はぁ!?」
「そもそもさー、せっかくモンスターの群れをプレゼントしてあげたのに死んでないとか。そう言う逆転劇みたいなの誰も望んでないんだよねー」
狩場を奪うためにMPKをしようとしたけど失敗したってことかな。それで更に絡んでると……これはどう見てもシキたちの方が被害者だろう。
しかも相手の女性プレイヤーは配信者らしい。
「カナデ。介入するけどいい?」
「もちろん」
カナデの了解を取った僕はシキたちのパーティに参加申請を送った。今のうちに録画も開始しておこう。何かトラブルがあった時のための証拠になるはずだ。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
「なんだテメェ?」
「彼女たちのフレンド兼助っ人だよ。君たちは?」
「わたしー、ミライって言うんですけどー、この人たちが私たちが狙ってる狼のネームドモンスターを横取りしようとしてるんですぅ。フレンドさんからも何か言ってあげてくださいよー」
「何言ってんのよっ!」
「……媚び方が気持ち悪い」
僕らに先ほどの会話を聞かれてないと思っているのか、ミライという配信者はシキたちを悪者扱いし始めた。
しかし、タイミングが良いのか悪いのか。ショウとルイがミライの言葉に反応したタイミングでミライたちの背後に草原狼王が出現した。
「タウン「魔力弾」トスタンス!」
ミライたちのパーティにいる剣士風の男が草原狼王のターゲットを奪おうとスキルを使うよりも早く、僕の魔力弾が草原狼王の眉間を撃ち抜いた。
[Grass King wolfを1匹倒した]
[素材:草原狼王の魔石を獲得した]
[素材:草原狼王の大牙を2個獲得した]
[素材:草原狼王の毛皮を獲得した]
[素材:草原狼王の尻尾を獲得した]
[装備:草原狼王なりきりセットを獲得した]
もう見慣れてしまった変異種を撃破した時のリザルトが目の前に表示された。尻尾は初めてみたかもしれない。シキたちには悪いけど、このままドロップ品は貰ってしまおう。それにシキ・ショウ・ルイ、そしていつの間にかシキのパーティに合流していたカナデの4人にもそれなりのドロップがあったはずだから何か文句を言われることはないはずだ。
「な、な、な……」
「さすが」
「はやすぎ」
「早すぎて草生えるわー」
「え、え?」
こうして驚かれるのは久しぶりのような気がする。
トラブルの原因になっていた草原狼王も倒したし、ついでにシキたちも迷い家のギルドホームに案内しようかな。そう考えていると僕の予想の遥な斜め上の言葉を発したプレイヤーが現れた。
「私のターゲットを倒してくれてありがとー、早くドロップ出してよ。ほら、ファンの皆んなも見せろってー」
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お読みいただきありがとうございます。
メスガキ姫プ系配信者ミライの再登場です。
応援ありがとうございます!
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