VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

文字の大きさ
203 / 228
本編

第190話 ショウは弾ける。

しおりを挟む

⚫︎クレア


[30秒後に決闘を開始します]


 試合のカウントダウンが始まりました。
 私とショウさんとの距離は51m11㎝あります。少し遠いですけど中てるだけなら問題のない距離です。接近戦が得意だというショウさんに不利な試合になってしまいます。しかし、ショウさんに管理棟から訓練場に来るまでの間に「アイさんとシキさんのように開始距離を縮めませんか」と聞いたら「大丈夫だよ」断られてしまいました。


[20秒後に決闘を開始します]


 なのでショウさんには遠距離攻撃に対する対抗手段があるんだと思います。その対抗手段として真っ先に思い浮かべたのはお兄さんとの試合でした。あの時、お兄さんは杖を使って私の射った矢を"ぱりぃ"したんだそうです。


[10秒後に決闘を開始します]


 あの時、お兄さんは私の視線で狙いを先読みしたと言っていました。お兄さんに攻撃を当てるにはどうしたらいいのかアカちゃんに相談すると色々な案を出して貰えました。


 名前:フュージョンボウ
 分類:武器 弓
 説明:無限の可能性を秘めた弓。
 効果:攻撃力+10
    フュージョン[分類:弓](最大18種)
 制限:位階100以上
    筋力500000以上
    器用500000以上


 これはお兄さんに渡したフュージョンケインの弓バージョンです。武器の種類以外で違うのは、融合させることのできる武器の最大数を増やすために分離機能を無くして装備するための条件を厳しくした点です。まだ半分の枠しか使ってないけれど全部で30個の効果を持った自慢の弓です。


[決闘開始]


 決闘が始まると同時に私は矢を番えました。
 ショウさんは様子見をしているのか、ジリジリと少しづつ距離を詰め始めました。なので私は前もって考えていた作戦を実行するため弓の射角を僅かに上方へ向けました。




⚫︎ショウ

 私の予想に反して開始早々から矢が放たれることはなかった。しかし、それも少し考えれば当然のことだと分かる。もし防がれてしまえば次の矢を番えるまでクレアは無防備になるからだ。その隙に距離を一気に詰められるクレアとしては無闇に攻撃することはできない。

「……っ!?」

 クレアとの距離を数歩詰めたところでクレアは矢を放った。しかし、放たれた矢は"緩慢"という表現がピッタリだった。

「…………ふっ」

 緩やかな放物線を描きながら飛んでくる矢をパリィするか回避するか少し迷ったけれど、私はパリィすることを選択して飛来してくる矢に集中した。
 いや、集中してしまった。

「っ!?」

 1本目の矢をパリィした次の瞬間、拳を出すため半歩下がった私の下半身を目掛けて1本目とは比べ物にならない速度の矢が飛来したのだ。

「ぐ……」

 2本目の矢を回避した私の体勢は完全に崩れていた。

「やぁっ!」

 だから3本目をパリィ出来たのは本当に偶然だ。
 しかし、そのおかげで体勢を立て直すことに成功した私は少しでもクレアに近づくために足を前に出す。

「うぐっ」

 1歩か2歩進んでは飛んできた矢をパリィする。近づくにつれて少しずつ余裕がなくなっていくのが分かる。もう見てから回避するなんて余裕はない。

「くっ」

 私とクレアとの距離が30mを切った。あと少し近づいたら1回の縮地で接近戦に持ち込める距離だ。
 しかし、ここにきて明らかに矢の弾速が上がった。

「ちっ」

 それだけじゃない。
 放たれる矢と矢の間隔も狭まっている気がする。

「縮地」

 このままだと私の集中力が持たない。
 そんな考えが脳裏を掠めた時、私は縮地を使ってしまっていた。縮地は1度の使用で魔力最大値の3割を消費するので連続で使用するには少しコストが重い。それに1日5回までしか使えないという制限もある。

「縮地」

 そして私は縮地を連続で使ってクレアの懐に入り込む。これで私よ残り魔力は最大値の4割。私の攻撃技能はその多くが魔力を使うので若干心許ないけれど接近戦になればこちらのものだ。そう思っていた。

「え……!?」

 クレアは弓を持っていなかった。
 手に持っていたのは1mはありそうなハンマーだ。

「えいっ」

 拳を突き出そうとしていた私にハンマーを回避する術はなかった。ハンマーの当たった腰の辺りからミシミシという嫌な音が身体から聞こえてくるけれど、私には残り体力50%以上の時に体力の50%を超えるダメージを受けたとき、残り体力1で耐えて30秒間だけ基礎ステータスを受けたダメージに比例して上昇させる"死中の活"という技能がある。一撃で死ぬことない。

「弓使いじゃなかった、の……?」

「………………」

 ハンマーの当たった衝撃で少し後退してしまったけれど、私とクレアの距離は3mくらい。クレアは私の独り言に反応せずジリジリと近づいてくる。腰を落としてハンマーを構えるクレアの姿はかなり様になっている。もしかして弓だけじゃなくてハンマーも使いこなせるの?

「……」

「……」

 ハンマーは取り回しの悪い武器だ。同じタイミングで攻撃を放てば私が有利なのは間違いない。そう思ってクレアとの距離を一気に詰めようとした瞬間、クレアはハンマーを横にスイングした……というより投げつけてきた。

「……くっ」

 私は目の前に迫るハンマーをほぼ反射で交わして再びクレアの懐に入り込む。ここから攻撃を1回当てた程度じゃクレアを倒すことは出来ないのは分かっているけれど、お互いのステータス差を考えれば大金星だ。

「え……」

 そして繰り出した拳が間違いなくクレアに当たると確信した瞬間────私は死んだ。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
クレアが使ったハンマーは第132話でクレアが作ったワレザクロ改です。
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

処理中です...