つらくて痛くて泣きじゃくる。そんな君だから、好きなんだ

はるとside

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俺の恋人は、わけがわからなくなって自傷行為をした俺を優しく抱き締めてくれる。


「春翔は頑張り屋さんだね」


そう言って傷の手当てをしてくれる。

慈しむように、愛情を注ぐように優しく触れてくれる。

……けど、これは彼が俺を好きだからではない。

今だって、泣きながら腕から血を流した俺を大事そうに抱き締めてくれる彼の表情は、恍惚としている。


――――普段では見られない。
セックスした時でさえ、それはなくて。

ああ、でも薬をいつもより多めに飲んでODした後、吐いて吐いて吐いて。
ぐったりとした後に抱いてくれた時は凄く優しかったし、いつもより激しかった気がする。


だから、


………この時だけ。

彼が俺を好きになってくれるのは、

好きでいてくれると実感できるのは

俺が　　自傷行為をした後、抱き締めて優しく声をかけてくれている間だけだ。



――以前、精神的に安定し、自傷行為をせずに済むようになった時があった。


湊も喜んでくれると思った。

良かったって安堵した笑顔を見せてくれると思った。

けど、その日

「やめちゃうの？春翔の一生懸命な生き方、僕は好きだけどな」って少しがっかりしたように言われた時、悟った。


……なぜ、湊が俺を恋人に選んだのかを。

その理由を察してしまった。


だから、

「ほら、止血しよう。手当しないと」


ああ、やっぱり。

…また、だ。

今、彼は俺の求めた表情をしている。


もっとそれが欲しくて

「まだ、足りない」と泣いて剃刀を突き立てた俺に、湊は柔らかく目を細めた。