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修学旅行
3
しおりを挟む背中越しに伝わってくる速い心臓の鼓動に、こっちも何故かドキドキしてくる。
「え、えっと、」
何か言わないと、と思考をフル回転させた。
(何も思いつかない。…というより、頭の中真っ白になった…)
とりあえず、身体に回されている腕をじっと見つめる。
長袖のワイシャツを着ているのに、雨に濡れたせいで最早透明になって下の肌が透けて見えている。
男のおれから見ても羨ましいほど、綺麗で程よく引き締まった腕。
(…女子に陰で「理想のイケメン」と呼ばれているだけある…)
「……」
不意にある光景が脳裏によみがえった。
玄関。
雨に濡れた男。
抱きしめられる女。
一瞬、この前友達から借りた少女漫画みたいな展開になってる…なんて馬鹿なことを考えてしまった。
1つ違うのは、抱きしめられてる人間の性別が男だってことと、パジャマ姿だってことだ。
おれが女子だったら、泣いて喜んでたかもしれない。
…勿論男だから意味ないんだけどと、ひたすら続く沈黙を耐え切れずに思考はぐるぐる巡る。
「……」
「…(ぐ、)」
ついに、ずっと無言の蒼に耐えきれずに、いつものように明るく笑ってみせた。
「濡れたままだと風邪ひくから、……あの…」
『お風呂に入りませんか』
そう言いかけた言葉が、声が尻すぼみに消えていく。
離れようとするたびに、回された腕に込められる力が強くなってぎゅううっと抱きしめられる。
まるでおれと離れることを怖がっているみたいだった。
……無理に離れるのも突き放すみたいでいやだなと悩んで、結局身体から力を抜く。
「………どれくらい外にいたの…?」
背中越しに伝わる身体からはすごい震えが伝わってきていて、それが寒さによるものなのか、それとも別のものによるものなのか、おれにはわからない。
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