336 / 842
蒼と真冬
2
しおりを挟む…そんな日々が何ケ月も続いたある日のことだった。
…蒼に無理矢理抱かれた。
それまでは閉じ込められてからずっと、蒼に抱かれたことなんてなかった。
風呂だってトイレだって「絶対に逃げない。自分でやる」っていえば、自分一人で入らせてくれた。
蒼も優しくしてくれるし、このままずっと、俺は蒼と一緒にいられる、蒼の傍にいてもいいって思った。
……それなのに、その日は唐突に訪れた。
もう、完全に俺たちの関係は、友達とは違うものになった。
やっぱり俺は素直に受け入れられるわけもなくて。
嫌だ嫌だと抵抗する俺を欲情した瞳で見て無理矢理抱く蒼が、いつもと雰囲気の違う蒼が怖くて、痛くて苦しくて、泣いて、泣いて、泣いて。
泣いてるのは俺のほうのはずなのに、蒼がそんな表情するなんておかしいはずなのに。
俺を自分の意思で無理矢理抱いてるはずの蒼が、助けを求める子どもみたいに酷く泣きそうな顔で苦しそうな顔をしていたのを覚えている。
蒼はいつもそうだ。
無理矢理こういう行為をしているのは蒼のはずなのに、なんでそんな顔をするんだ卑怯だ、と何度思ったことだろう。
それからは毎日のように抱かれるようになった自分が惨めで悔しくて、蒼を嫌いになりそうになった。
一度は逃げて、でも捕まって、結局は鎖までされる羽目になって、何やってるんだろう俺のばかって思った。
…でも。
でも俺はそんなことをされても、それでも、………嬉しかったんだと思う。
誰かに自分を必要としてもらえるということが。
どうしようもなく、嬉しかった。
鎖をされるのだって、俺は蒼に必要とされていたから。
俺の傍にいて欲しいって蒼が思ってくれてたから。
それが伝わってくるから、本当は鎖をされたってどうだってよかった。
本気で嫌だなんて思わなかった。
そうだ。
蒼にとって、俺の存在が必要とされていると感じてたから。
俺はどれだけ嫌だと思っても、どれほど嫌なことをされても。
…蒼を、本当に嫌いになることなんてできなかったんだ。
「…ばいばい」
そう呟いた蒼の声が、耳に残ってる。
忘れることなんてできない。
忘れられるわけがない。
ばいばいなんて嫌だ。嫌だよ。
蒼のばか。ばか。ばか。
どれだけ泣き叫んでも…もう、彼にこの言葉が届くことはないんだろう。
――――――――
嗚呼、目を覚ましたくない。
彼が傍にいないとわかっているのに、どうして目を開く必要があるだろう。
それを知ってしまう前に、自覚してしまう前に。
今、死んでしまえたらいいのに。
31
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる