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蒼のいない朝
回想
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あれは、いつの日のことだっただろうか。
(…確か、)
まだ蒼が転入してきて、数ヶ月経ったか経っていないかってくらいの頃。
ある冬の日の、今までにないほど強く、冷たい雨の降る夜のことだった。
寝ていた俺が気づかなかったかもしれないのに、蒼はいつからかずっと家の前で雨に打たれていた。
感情のない人形のように、ただそこにいた。
……もし、あの時気づいていなかったらと思うと、凄く怖い。
俺が傍にいることを何度も確認してきて、泣きそうな顔をしていた。
いつも違ってなんだか不安そうな雰囲気を漂わせていて、その様子に違和感を覚えた。
でも、あの時は何かあったとしても、親と喧嘩したのかなってそのくらいにしか考えていなくて。
その後お風呂に入った後に、さりげなくどうして俺の家の前にいたのか聞いてみたら、「なんでかわからないけど、気づいたらまーくんの家の前にいた」と言う。
あれは蒼自身さえも気づかないくらい、俺に無意識に助けを求めてた…ってことなのかもしれない。
…今思えば、他にも色々と蒼がつらそうな顔をしている時はあった。
けど、何を聞いても蒼は答えてくれないし、俺もそこまで他の人の家庭のことを聞いていいのかもわからなかったから。
とりあえず蒼に元気を出してもらいたくて、できるだけ明るく話しかけたりしてた。あんなに傍にいたのに。
近くにいたのに。
俺は、何も気づけなかった。
(…後悔してる…)
きっとあの時こうしてればって、今、後悔しているように。
もしも、今も、どこかで蒼が苦しんでいるなら、辛い目にあってるなら。
自分で少しでも何か行動を起こさないと、同じように今よりもっと、もう取り返しのつかない後悔することになるかもしれない。
…そんなの、嫌だ。
ぎゅっと拳を握る。
今度こそ、状況に流されるだけの自分にはなりたくない。
それに、一番の願いは…
蒼に会いたい。
ただ、その欲求に動かされる。
「…行きます。ここにいたら、何もできないままだから」
泣きたくなるのをぐっと我慢しながら、それでも笑顔を浮かべる俺を見て、彼方さんはもう何も引き留める術は無いと悟ったように、力なく微笑んだ。
きっと、次会えたなら。
もう前のように悲しい、歪な日々を送らないですむはずだと信じて。
――――――――――――――――
自分でも、どうしてこんなに蒼に惹かれるのか、傍にいたいのかわからない。
…それでも、じっと籠の中にいるだけでは今までと変わらない。
蒼のためにじゃない。
自分が、何かしないではいられないんだ。
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