手足を鎖で縛られる

和泉奏

文字の大きさ
540 / 842
過去【少年と彼】

2

しおりを挟む






「あーあ、その大事なお姫サンもお前があの部屋にいる奴らに何をしたか知ったら、どんな顔するだろうなぁ?」

「……」

「ばらされたくなかったら、俺と……な、分かるだろ?」

「…ッ、」


言葉にはされなくても言外に示された声によってフラッシュバックのように昔のあの行為が鮮明に脳裏に蘇って、視界が歪む。
汗が額に滲んだ。
一瞬でも思い出したくない。

考慮するまでもない。
敢えて答えないことで拒否を示すと、途端にその眉間に皺が寄る。

腕を掴まれて顔を近づけられた。
着物の上からでも爪が食い込むほど力強く握ってくる指に、顔が歪む。

その近づく笑みを浮かべた顔に、更に全身から冷や汗が噴き出てきた。

でもそれを悟られないためにも「離せ」と語尾を強めにして身を捩る。
そうやって、俺が死にたくなるほど嫌がることをわかっていて言ってくるところが余計にタチが悪い。

「お前が他の人間とナニしようがしまいが、あのガキは気にも留めねえよ。お前のことなんか、これっぽっちも好きじゃねえんだからな」

「…っ、」

「あー、お前の苦しむ顔もっと見てぇな」


コイツの事情なんか知らない。
でも、ここまで恨まれることを自分がした記憶がなかった。
もし何かあったんだとしても俺は無関係だし、興味もないけど。

「だからさっき言った通り、お前が言いなりになってさえいれば、あのガキに俺は手を出さない」とさっきまでの軽い口調が不意に悪意の滲んだ、含みのある声色に変わる。


「でも、ちょっと声をかけてやれば勝手に飛んでっちまう蝿までは知ったことじゃねーけどなぁ?」

「…蝿?」


違和感のある言い方に一瞬固まって、そのニヤニヤとした笑みに、瞬時に意味を把握する。
血の気が引いた。


(…ッ、…まさか、)


「はは、今の状態であのガキのとこに行けんの?それができないようにわざわざさっきの茶に色々混ぜといたんだぜ。それに」

「っ、」


言葉の続きは聞かない。
動揺を露わにして身を翻す。


そして部屋に行った時にはまーくんが他の男に
…犯されてかけていて、


「まーくん、なんでアレがこの屋敷に入ってこれたのか…心当たりある?」

「…ッ、」


俺の問う、不機嫌を隠しもしない低く冷たく吐き出した言葉に抱き上げた身体がビクリと小さく跳ねた。
落ちないように首に回された腕が、震えている。
返される言葉はなかった。言い訳も、弁解もない。

耳元で息を呑む気配だけが伝わってくる。
…その反応が答えを言っているようなものだった。


行為に限界を迎えた身体を別の部屋で寝かせた後、もう一度さっきの部屋に戻る。
既に盛られた薬は効果が切れたのか、ただ込み上げる感情でそんなことが気にならなくなってるだけなのか…今は体温が酷く下がっているような感覚だけで、痛みはない。

温度を失くした瞳で、ふいと視線を動かす。
窓には無理にこじ開けられた形跡はなかった。
確実に、内側から外された鍵。


「……、そうだよな…」


額を手でおさえて、くしゃりと前髪を掻き上げる。


幾ら俺に優しく接して油断させようとしても、無駄だよ。
はは、と酷く乾いた笑みが零れる。


「…絶対に、逃がしてあげない」


それに、まーくんの家族も友達も全部俺が引き離した。
…あの俊介ってやつも、もう逃げ場にはならない。



――――――――――――――――


昨日その熱を感じたばかりなのに、まだまだ足りない。
あんなのでは、収まらない。


「……、」


見つめるだけで、その瞳に怯えの色が濃くなる。
あまりにも震えて青ざめた顔をするからなんとなく、俺が怖い?って聞いてみたくなった。
…でも、問いかけたところでもし肯定されてしまえば殴られて抵抗されるよりずっと傷つくだろうことが目に見えている。


手首を掴んでベッドに押し倒す。
その両腕の手首を片手で一纏めにして、その頭上に移動させた。

今から俺にされることを予期しているのか、唇を噛んでふいと逸らされる顔。
…それとも、鍵を開けたことに対する罪悪感に似たものを多少は感じているのかもしれない。

まーくんが顔を背けたことで、うなじが晒される。
そこにあるものを目に映して心臓辺りがズキッと痛んだ。
白く透き通るような肌に、誰かに強く絞められたように部分的に少し赤くなっている。
…湧き上がるドス黒い感情がうねりを上げて全身を包み込んでいく。



「…怪我してるな」

「…っ、…ッ、」

「ほら、ここも血…出てる」


転んだ時に擦りむいたのか、頬に軽く擦り傷がある。
他にも、耳にも噛まれた跡がくっきりと残っていた。



しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

血液製の檻

サンバ
BL
囲い込み執着美形×勘違い平凡受け 受けのことが好きすぎて囲っている攻めと攻めのために離れようとする受け 両片思い 軽い流血表現

処理中です...