手足を鎖で縛られる

和泉奏

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これを、…おれが、何で怪我してるのかってことを思い出したら、その思い出したことを知られてしまったら、多分…もう、…今のおれのままで一緒にいらなくなるってなんとなく、わかってるから、


…だから、それだけは、絶対に嫌だ。



「…――っ、」


だぶる。視界が、何かと重なる。

ちいさかったはずの自分の手が、大人びて、

その、自分の手が、一瞬血に染まっているように見えて、…


ぎゅ、とそれから意識を逸らすように目をキツク閉じて首を振った。
思い出さない。絶対に、これだけは思い出さないようにするんだ。


毛布を軽く掴んでいた指を、解く。そして、視界からどけた。部屋の景色が見える。

…これ以上、寝たふりなんかできるはずがなかった。


「…くーくん、おれ…っ、」と身体を起こし、床についた手で振り向いた



その瞬間、

持っていた毛布を剥ぎ取られる。


「…っ、え」


突然手から奪われた毛布に驚いて小さく声を上げた直後、手首を掴んで抱き寄せられた。
後頭部に回された手によって彼の胸に押し付けられる。

目の前にある黒い浴衣から覗く彼の胸元と、甘い香り。
予想外の事態に、目を大きく見開いた。

どくんどくんと薄い浴衣越しに速い心臓の音が聞こえて、一瞬思考が停止する。

…と、すぐ頭の傍で感じる息遣いと、抱きしめるようにされている腕に

じわじわと自分が今何をされているのかを自覚してくる。


(…ど、どうしてこんな状態に、)


「…ぁっ、あの」ぎゃ、若干裏返った。「…くーくん?」でも、顔を上げようとした途端、頭に回された手に、腕に力が籠められる。ぐるしい。


なぜ、なぜだ。と顔を上げようとするたびに、まるでそうさせないようにしているみたいに押し付けられた。

じたばたして、ジャラジャラと鎖の音を無駄に立てながら手足を動かす。く、くそう。動けない。


「…こっち見ないで」

「…え、…」


あまりにもそのままでいようとするから、くそう!と憤怒して更にじたばたしていると、ぼそりとそう呟く声が聞こえてきた。


(…み、みないでって、)


「…っ、なんで?おれ、何かくーくんに嫌われること…した?」


じわり、と涙が滲む。
見ることも許してもらえないなんて、余程のことじゃないだろうか。


ぐす、と若干泣きながら問うと、「…っ、そうじゃなくて、」と焦ったように否定する声。


「じゃあ、どうして…?」


暴れても暴れても離してくれないので、仕方なくぎゅう、と目の前にある浴衣を握ってみる。
「……」何故か言いにくそうな雰囲気に、むぅと眉を寄せた。


「…くーくん」とくいくい裾を引っ張って要求すると、…観念したようなため息を漏らす。


「だから…その、…まーくんに見られると、すぐに理性飛んで襲いたくなるから」

「……へ?」


ちょっと乱暴で、照れくさそうにぶっきらぼうに吐かれた台詞。

一瞬その言葉の意味が理解できなくて、直後、脳までやっと届いた台詞の意味を理解して、ぶわっと頬が熱くなった。


(…っ、おそい、襲いたくなる…って、言った…?)


「ぁ、あわ、あわ」と自分でもわけのわからない声が震える唇から零れた。浴衣を掴む指先が、全身がぶるぶると動揺だか興奮だかによって小刻みに揺れた。

「前も言ったと思うけど、」ともうやけくそだ、みたいな感じで言葉を続けるくーくんに、胸がどぎまぎとする。


「本当はさ、今すぐにでも息が出来なくなるくらい何度も何度もキスしてまーくんの足腰がたたなくなるまで抱き潰したい」

「…っ、」

「…でも、それをしたらだめだから、俺なんかが不用意にさわったら、また傷つけそうで、泣かせそうで…怖いから、」

「……あ、あの」


…結構今、さらっと凄いことを沢山言ってたような気がするんだけど。

どうしていつも、くーくんはそんなに直接的な表現をするんだ。…うぐ、こっちが恥ずかしくて死ぬ。恥ずか死んでしまう。


「だから…俺さえも触れられないように、汚せないように、お姫様みたいにガラスの箱に閉じ込めておきたかった」

「…………」

「…でも、流石にそこまでできないから、せめて安全に部屋の中で過ごしていてほしかったんだけど…」


ぽつりぽつりとため息まじりに零される言葉。

きょとん、と目を瞬く。
…そんなことをくーくんが考えてたなんて全く知らなかった。

想像を超えた言葉ばかりで呆気に取られる。




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