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鳥籠の雛
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しおりを挟むひゅうって喉の奥からおかしな空気が漏れる。
頭を、後ろから鈍器で殴られたような錯覚。
「…っ、う、…そ、」
必死に絞り出して否定した言葉に、嘘じゃないよって返される。
「くーくんと、いっぱいセックスしてた」
「――っ、ぅ゛、ぁ…」
心臓を、
…潰される、音がした。
するりとはだけた首筋にある痕。
(…キスマーク、…)
口をおさえ、吐きそうになるのを堪える。
と、手を掴まれ、耳元で呟いた声が意識を歪ませた。
「だから、気になってたの。ここのとこ毎日だから、部屋に戻ってきた時、…相手にしてもらえてるかなって」
その声が、粘つく。
その顔が、女味を帯びる。
…足が、震えた。
呼吸が震える。
眩暈がする。
身を引き裂かれる。
指先から血の気がなくなる。
世界が崩れる。
心が、…めちゃくちゃに なる
「…ね、真冬もわかると思うけど…何度もするのって、結構体力いるじゃない?」
「……ッ、も、…いい、からやめ」
「彼ほど美しい男の人にそれだけ夢中になって求められるって女として最上級の喜びだし、何よりエッチも凄い上手だからとても幸せよ?」
自らの豊かな胸の前に手を置き、思い出しているようにうっとりと頬を染めた。
この世の幸福をかき集めたような笑みを向けられる。
「でも、…あんまりにも何度も求められるものだから私の身体がもたなくて、それなのに、そんな私にとーっても優しいの」
聞きたくない、
「ずっと憧れてた好きな人に愛されるのってこんなに嬉しいんだって、抱かれる度に涙が出ちゃった。…だからね、彼も疲れてるだろうから、真冬の相手ができてないんじゃないかって心配してたんだけど…」
「――っ、」
聞きたくない
聞きたいわけない、
のに、その声はとまってくれない。
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