172 / 356
甘くて、痛くて、泣きたい
25
しおりを挟む故意につけられた沢山の傷を存在していないかのように、いつも通りに笑う。
その表情に、ゾクリとする。
…何が、そこまで彼を歪ませたのか。異常なことを、当然のように感じてしまうようにさせたのか。
得体の知れない感覚に、震える。
…こんなの、まるで呪いみたいじゃないか。
「……貴方に、そんな顔をさせるはずじゃなかった」
「…っ、ぅ、うう…っ、」
オレの問いには答えず。
困ったように笑って、頬に触れている指が目尻を優しくなぞってきた。
だめだ。
だめだって、わかってるのに、…溢れる涙がとまらない。
オレのせいでさっくんがここまでするなんて思わなかった。
わかっていたら、桃井の提案を受け入れたりしなかった。
「……、ぅ、ぇ…っ、…ごめん、」
謝ったって意味のないことだけど、言わずにはいられなかった。
…傷跡にそっと触れて、ああどうしたらいいんだよ、と目の前の現実にまた泣きそうになる。
思わず息を呑んでしまうほど完璧な身体つき。
程よく筋肉のついた腰回り、美しく透明感のある肌は、…きっと、女だけじゃなく男も見惚れるか、もしくは嫉妬するレベルのものだ。
けど、そこに今回つけられただろう真新しい傷達に加えて…幾つもの古い傷。
それが、刻まれた傷とともにその”誰か”の存在を残すように白く歪な跡になっていた。
昨日の傷だけではなく、
ずっと昔の…誰かに、何かで傷つけられたような跡が幾つもあって、前に少しだけ聞いた話では…それはさっくんにとっては普通の日常で、だからこそオレに会えたんだって、…嬉しそうに笑ってて。
でも、オレはさっくんと同じようになんて笑えなくて、…怖くて、…本当はちゃんと昔の話も聞かないといけなかったのに、ずっと知らないふりをしてた。
けど、オレだけは痛い思いをさせないようにしようって思ってた。
なのに…今回はオレのせいで、その傷を増やしてしまった。
さっくんにこれまでそうした誰かと同じように、嫌な思いをさせてしまった。
「…本当に、ご心配なさらないでください。貴方と違って、俺はどのような行為に対しても、”それ自体”に特別な感情を抱いていません」
「っ、」
「それに、傷ができたからと言って…もし、夏空様の執事として生きる許可を頂ければ…の話ですが、今後の執事としての役割には何も影響はございませ」
「…っ、そんな風に、言うなよ…っ、!」
ばか、と涙を下にいるさっくんの頬に散らして、叫ぶ。
彼を押し倒したまま、驚いたように軽く目を見開くさっくんに、もう一度ばか、と詰った。
行為自体に特別な感情を抱いてないとか、桃井との…ことも普通のよくあることだとか、そういう言い方をしてほしくない。
「自分のことも、オレとのことも、全部どうでもいいことみたいに言うな」
どんなこともさらっと、まるで風景みたいに流していくさっくんに、不安になる。
もしかしたら、オレがぐちゃぐちゃ悩んでることは、さっくんにとっては些細なことでしかなくて、
21
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる