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猫と少年のお遊戯
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しおりを挟むなんだその明らかに疑ってるといわんばかりの態度は。
さすがにオレだって、殴る蹴るとか、暴力をされたら黙って受け入れたりしないぞ。
「危ない人か、そうじゃないかの判断ぐらいできる。さっくんは優しくて、オレが本気で嫌がったり痛くなることはしないってわかってるから、」
「夏空様が、俺の何を知っているのですか?」
彼は少し首を傾け、艶やかな黒髪を微かに揺らす。
その問いに不意を突かれ、…思わず口を噤んだ。
さっくんの言葉が、耳には入ってきても理解ができない。
まるで目の前にいるのは知らない人なのだと錯覚してしまいそうになる。
今まで過ごした時間を全否定するような台詞に、頭が機能を停止する。
「そういう不用心な言動は、どういう経緯で貴方とお会いすることになったのか知らないからできるんですよ」
「………たしかに、それはしらない、けど、」
一瞬怯んだけど、「不用心なんかじゃない。昔の話を聞いても変わらない」とむきになって反論した。
オレへの信用の無さも、
さっくんの何を知ってるのか、ってそういわれたらその前のことはなにもしらないけど、…でも、他でもないさっくんの口からは聞きたくなかった言葉に、悲しくなったりくやしくなったりで、うまく整理ができない。
「本当に、…俺だから、こういうことをしても受け入れてくださるのですか?」
「うん。他の奴はゆるさない。さっくんだけは特別だ。だから、さっくんの過去がどんなでも、オレの行動も気持ちも今といっしょだ」
言葉にしてると、段々そんな気がしてくる。
そうだ。
さっくんとこれだけ長い時間過ごしてきたんだし、人間性も考え方も知り尽くしている。
知らないことっていっても、大体予想できることだろう。
たかが知れているはずだ。
そんな決死の覚悟を飄々と躱すように、彼は口を開いた。
「今まで御傍にいた理由が、雇われたからではないと知っても…ですか?」
「………」
数秒、…いや、数分飲み込めなかった。
その問いかけは、頭の中に浮かんでいたどの選択肢にもなかった。
(さっくんが傍にいる理由……?)
血の縁という意味では、他人のさっくんが家にいてずーっと面倒を見てくれる。
それは、可能性があったとしても当然雇用されたからで。
それでも、もうすでに家族になったから、大好きな家族だから一緒にいることになってて、
給料の支払い方もわからないけど一緒にいてくれるのは、お金が高いとか低いとか最初はそうだったかもしれないけど今はそれ以上の関係で、だから支払いはそういうのじゃなくて、
何よりも欠かせない、家族みたいに…いや、家族以上に大事な人だと、
オレだけじゃない、
さっくんもそう思ってくれてたらいいなってずっと、思っていた。
……でも、
その前提すら覆す彼の言葉が、…聞き慣れているはずの大好きな声が耳に入らないほど、頭が……全然働かな くて、
「俺は、夏空様のご両親に『買われた』のです」
「……ぇ、…?」
彼を目に映した女だけでなく、男までも虜にするほど完璧に整った顔が、物憂げな表情で薄い笑みを唇に添える。
……何も知らない、
お気楽な人間に冷や水を浴びせるように、
「だから俺も、その猫も貴方の”物”です」と、『先程』の彼の行動を裏付ける。
絶句し、何も言えず、違うと否定できないオレを彼は非難しない。
けれど、台詞の内容とは相反するひどく甘やかな…優しい声音で、
「これでご理解いただけましたか?」
「……っ、な、」
「その猫だけでなく、…俺も、人間ではありません。ただの道具なんですよ」
所詮、一方的な所有物でしかないと、
2人の関係性の歪さと
悲惨な現実を、突き付けてきた。
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