君の愛に狂って死ぬ

和泉奏

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喪失

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彼のすらりとした形の良い指先が撫でる。
頬を包むように、低い体温の手が肌に触れる。



「覚えてない?」

「…っ、なに、を…」


息が触れるほど近づく端整な顔に、ごく、と喉を上下に鳴らす。
人に近づかれることを嫌いそうな性格をしているのに、無意識なのか癖なのか、時々距離が近すぎる。


「”琉夏”って漢字ではこう書くんだって、教えてくれた時のこと」


目の前にいるオレではない、オレを通して別の誰かを想起している眼差し。


「こうやって、俺があんたに何度も触れたこと」

「……」


”覚えてない”と言葉にするのは簡単だ。

実際に、…まだ何も思い出せていないのだから。


けど、「……真白は酷いな」と呟く彼の顔は、平静に保とうとしているけれど僅かに苦痛が滲んでいる。


それを見たら、何も言葉にできなかった。
その代わりに、ぎこちない唇で……ごめん、と小さく零す。

一方的にすべてを忘れられてしまうのは、どういう気持ちだろうと思う。
彼のその表情を見るたび、オレが傷つけてしまっていることを実感させられて、胸が苦しくなる。


「ルカ、が本当の名前だったんだ…」


こみ上げる罪悪感。
じっと見つめれば、僅かに視線が逸らされる。


「じゃあ、オレと琉夏さんは、」

「琉夏でいい」


すぐに居心地が悪そうに訂正が入った。
呼び捨ては慣れないけど、…もし不快でないのならと、頷く。



「オレと琉夏は…どういう関係だったの?」

「………」

「オレがつけたって…どういう意味…?」



つけたという言葉の解釈が名付けたということか、それともまた別の意味なのか。

肌に彫ってあることもそうだ。
余程の深い関係じゃないと、ありえないだろう。
そもそも、太腿の内側に男の名前が刻まれてるなんて、知ってるどの関係にも当てはめることはできそうになかった。

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