12 / 17
普通の病院
2
しおりを挟む……
……………
「そっか。全部忘れちゃったんだねぇ」
病衣を着た少女……堀口 寧音(ほりぐち ねね)の言葉に、「…うん」と頷いて曖昧に笑う。
簡潔な言葉にされると、自分の現在の状況を嫌でも実感する。
「記憶ゼロになるぐらい酷い事故に遭って、それなのに家族が1回も面会に来ないって相当仲悪かったんだ」
「う、…そう、かも…」
結構気にしていたことが彼女の隣から飛んできて、グサ、と胸に刺さった。
「はは、ごめんごめん」と悪気なく、屈託なく笑う少年…佐川 湊人(さがわ みなと)のその台詞とは関係ない理由で、ついと視線を下げる。
……左目を隠すように、顔の左斜め上を覆っている真っ白な包帯は何度見ても慣れない。
あまり見てはいけないと思いながらも、目を向ける場所に困ってしまう。
こういう態度自体失礼かもしれない、どうしようと優柔不断な仕草になってしまっているだろう自分に反省して、自然に振る舞おうと意識する。
今日初めてこうして話す相手に対して、二人とも人懐っこいらしく躊躇なくベッドに座り、会話をしていた。
初対面なのだから敬語を使った方が良いんじゃないかと思っていたけど、断固として首を横に振られた。あと、呼び捨て絶対!と押し切られてしまった。
寧音と湊人は昔からの付き合いとかそういう関係ではなく、入院してから知り合ったらしい。
色々オレの知らないことも教えてくれた。
ここの食事のおすすめメニューとか、毎週同じような食事が出るとか、よくある当たり障りのない話もしていた。
…それで入院の経緯についての話になり、記憶がないことに触れないわけにもいかず、全てを話した。
緊張しているのか、何故か喉が渇いてしまう。
無駄にお茶を入れたコップを手に取り、意味もなく飲んでいた。
「君、俺の弟に雰囲気似てるから、つい揶揄っちゃうんだよね」
「おとうと?」
「そーそー、双子の弟がいるんだって」
「双子ってすごくない?しかも二卵性!」と興奮した寧音に腕を痛くない程度に掴まれる。
軽くゆさゆさと揺らされ、「う、うん、凄い」と同意しつつも、ちょっとその振動で酔った。
「どこが似てるの?」
「んー、そうだなぁ」
好奇心からかわくわくと疑問を投げかける寧音に、探るように湊人がじぃっとオレを見据える。
28
あなたにおすすめの小説
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる