13 / 17
普通の病院
3
しおりを挟むそれから、こっそりと耳打ちするように顔を寄せてきた。
「簡単に嵌められてくれそーなとこ」
「……っ、」
舌なめずりでもしそうなほど楽しげな声音が、囁くように笑う。
昨日染めたらしいダークミルクティー(本人がそういう色って言ってた)色の髪が遠ざかり、僅かに薬剤の匂いが余韻を残す。
「なっ、!!??!??」
小さめの声だったのに聞こえていたらしい。
病室内に響くレベルのとんでもない大きな声に振り向けば、寧音がおっかなびっくり、最大限目を見開いて真っ赤な顔をしていた。
「最低やば!???!!詐欺師!変態!ちょっとそれどういう意味?!どっちの意味で言った!?」
「ったく、叩くなよ。俺は普通に騙されてくれそうって意味で言ったんですけど?寧音の方がそっちのおべんきょーも進んでらっしゃるようで」
「きぃぃぃ!!だまりなさい!!!!」
ぽかぽか湊人の肩を手で叩き、もっともっと赤味を増して非難に声を上げる寧音に、「声でけーよ」と言い返しながら耳を塞いで無言の抗議をしていた。
「いて、いてぇって。仕方ねーな、わかったわかった。言い換えるって。………あーっと、…人が良さそうなとこ?」
「悩んだ挙句出たのそれか!もう遅いっての!あほんだらー!真白に謝れ!」
「謝れっていわれてもなー、…怒ってる?」
「え、ぁ、」
やれやれという態度で発された彼の問いに二人の視線がこっちに集中する。
めぐるましい会話の流れに同じ勢いでついていけず、ぼーっと見ていたせいで慌ててしまう。
考える前に頭を横にふるふる振った。
「う、ううん、別に、」
「だってよ。本人が怒ってないんだからいーじゃん」
「ただ真白が優しいから許してくれただけでしょ!」
本当に何とも思ってなかったけど、代わりにか謝ってくれる寧音になんだか申し訳ない気持ちになってきた。
まさか狙ってるんじゃないの云々と再び二人の言い合いが始まったのを見ていると、視線を感じたのか「ご、ごめんね?部屋に来て勝手に喧嘩ばっかりしてて。うるさいよね」と話を打ち切ってベッドにすとん、と腰を戻す。
「うるさくないよ。…オレの方が色々…よくわかってなくてごめん」
オレも、琉夏と二人みたいなやりとりができればいいのになぁとか、もしかしたら記憶がなくなる前はしてたのかもしれないとか…考えて、あんまり話を聞いてなかった気がする。
こっちの方が失礼なことをしていると思う。
「でも、…寂しかったから、来てくれて良かった」
ありがとうと目を見て感謝を伝えれば、「……っ、」ぴし、と硬直し、固まってしまった寧音に、まずい、何か気に障ったかもしれないと恐々とする。
「……ぁの…、オレ、…変なこと言った、…?」
「…まー、気にすんな。なんかやばいとこに喰らったんだろ」
助けを求めて湊人に聞けば、物知り顔に薄ら笑いを浮かべ、適当な感じで手をひらひらさせた。
38
あなたにおすすめの小説
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる