魔闘少女ハーツ・ラバーズ!

ハリエンジュ

文字の大きさ
79 / 110
第八話『千雪のジェラシー? こずえと千雪の距離のハナシ!』

その4 あの子と気分転換

しおりを挟む
★魔闘少女ハーツ・ラバーズ! 
第八話『千雪のジェラシー? こずえと千雪の距離のハナシ!』
その4 あの子と気分転換


teller:小枝さえだ こずえ


 たっくんに彼女さんが、できた。

 そして、その秋風さんのあのモヤモヤした感情。

 つまりは、私はそろそろ弟離れしなきゃいけないんだろうなあと思う。
 今までたっくんに頼りきり、甘えっぱなしだったもんね。

 もっとしっかりしないと。
 たっくんには、幸せになってほしいから。

 そんな私は、気持ちを切り替える為に、またあの丘の上に来ていた。
 ここからの景色を眺めたら、すっとした気持ちになれる気がしたから。

「あ……」

 目を凝らすと、あの日出会った小学生の女の子――穂村ミクちゃんが、原っぱに座ってデジカメで写真を撮っているのが見えた。
 ゆっくりと歩み寄り、脅かさないように声をかける。

「み、ミクちゃん……こんにちは……」

 ミクちゃんが、振り返る。
 今日も彼女の瞳には、何の感情も宿っていない。

「何で、また来たの?」

 どこまでも、私を拒絶し突き放す言葉。
 それにちくりと胸が痛んだのは事実だったけれど。

「……ちょっと、落ち着きたいなって思って」

「だったら他の場所にして。邪魔」

「……ごめんね」

「謝るくらいなら最初からしないで」

 数々の辛辣な言葉に、心が折れそうになる。
 ううん、ちょっと前の私だったら確実に折れてた。

 でも、こうして立っていられるのは、泣かずに済んでいるのは。
 きっと、みんなのおかげだ。

 ミクちゃんと少し距離を取って、景色を眺める。

 世界はやっぱり、今日も美しかった。
 私の心を満たしてくれる。

 ふと、ミクちゃんが口を開いた。

「きみにはさ、世界はどう映ってる?」

 世界。
 突然の質問だったけど、私は今感じたばかりの想いをミクちゃんに伝えた。

「……凄く綺麗だと思う。きらきらして、生きてるって感じがするな」

「そう。ぼくにはそうは見えないけど」

 ばっさりと、自分の感想を否定されてしまった。
 しゅんと、少しだけ落ち込む。

「……ミクちゃんは、この景色が嫌い?」

「……あまり好きじゃないかな」

「じゃあ、どうして写真を撮ってるの?」

「会いたいから」

 会いたい?
 何に?

 気にはなったけど、ミクちゃんとの間の空気がそれを許してはくれなかった。
 沈黙が重くて、息苦しい。

 ミクちゃんは、今どんな想いでここに居るんだろう。
 ……どうして、そんなに心を閉ざしているんだろう。

 ミクちゃんに、なんて声をかけていいのか、わからない。
 私がもたついていると、ミクちゃんが先に言葉を発した。

「……きみの考え方は嫌いだけど、世界を綺麗だと思う気持ちは一般的には立派なんじゃないの」

「立派?」

「うん。ぼくにはもうできないことだから。きみはきっと、正しい人なんだと思う」

 ミクちゃんが私の方を見る。
 くすんだガラス玉のように生気を失った瞳が、私を捉える。
 ミクちゃんの前髪を留める緑色のヘアピンが、夕陽に反射して煌めいていた。

「だから、きみはきみのそのままを伝えたい人に伝えればいいと思うよ」

 私の、そのまま。
 私の考えは、生き方は、立派だって言えるのかな。
 誇っても、いいのかな。

 私が今一番望んでいること。
 たっくんと、秋風さんが幸せになることだ。
 たっくんが秋風さんみたいな素敵な人に好かれて、嬉しいっていう気持ちが、私の中にはあるんだから。

「……ありがとう、ミクちゃん」

「別に、お礼を言われるようなことはしてない」

 自分が良く知らない女の子とここまで話せるようになったなんて、前の私に聞かせたらどんな顔をするんだろう。
 少しは成長できたと思っていいのかな。
 だったら、嬉しいな。

 今度は、ミクちゃんと距離は置いたままでもその場に座ってみる。

 ミクちゃんは、何も言わずシャッターを切り続けている。

 それでも今、この場は息苦しくなんかなくて。
 どこか、私に安らぎを与えてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...