魔闘少女ハーツ・ラバーズ!

ハリエンジュ

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第八話『千雪のジェラシー? こずえと千雪の距離のハナシ!』

その6 愛ゆえの連携

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★魔闘少女ハーツ・ラバーズ! 
第八話『千雪のジェラシー? こずえと千雪の距離のハナシ!』
その6 愛ゆえの連携


teller:小枝さえだ こずえ


「こずえちゃん、発見!」

 愛歌ちゃんと詩織ちゃんと一緒に帰ろうとしていたら、校門を潜ろうとした所で眼前にセーラー服姿の秋風さんが立ち塞がった。

 下校中の生徒さんたちが一斉に騒ぎ出す。

「あれ、秋風千雪じゃない!?」

「うそ、本物!?」

「うわ、すっげー美人!」

 一瞬で秋風さんは皆さんの注目を集めてしまう。
 半ば呆気に取られつつも、秋風さんがどうしてここにいるのかが気になって私はおずおずと口を開く。
 
周りの視線は気になったし、ちょっと怖かったけど、でも。

「あ……秋風さん……どうしたんですか……?」

「ん。決闘、いつにしようかと思って」

 え。
 思わず固まってしまった。
 決闘の話は有耶無耶になったんじゃなかったっけ。
 本気で秋風さんは私と決闘する気なんだろうか。

「あ、あの……私……秋風さんと争う気は――」


 がしゃん、ばたん。

 突然何かひどい轟音が、辺りに鳴り響いた。
 驚いていると、道端の電柱が次々に倒れて行って、折り重なって、一つのオブジェを形作る。

 数秒前まできゃあきゃあと色めきだっていた生徒さんたちは一斉に苦しそうに呻き、顔色を悪くしてその場に倒れ伏してしまった。

「こずえ、愛歌、秋風さん、これ……!」

 詩織ちゃんの言葉で、ようやく状況を理解する。
 今、私の目の前に居る電柱型の怪物は――アニマだ。

「よう、ハーツ・ラバー。今日こそは勝たせてもらうぜ……!」

 続けて発せられた声に、私はびくりと身を竦ませた。
 いつの間にか、怪物の足下にネスさんが立っている。

「こずこず! しぃちゃん! 千雪さん!」

「う、うん!」

 愛歌ちゃんの声ではっとして、ラブセイバーを出現させる。
 私達四人は、それをそのまま自分の心臓に躊躇なく突き刺した。

 ふわふわ、きらきら。
一瞬不思議な空間に浮かんだかと思えば、本のページを捲ったように制服がいつものドレスに変わっていて。

「……っ、小さな体に満ちる勇気! 炎の戦士・ブレイブラバー!」

「はしゃいじゃえ! 楽しんじゃえ! 歌の戦士・カーニバルラバー!」

「……恋する乙女の底力! 氷の戦士・ロマンスラバー!」

「全部ぶっ飛ばす無敵の拳! 魂の戦士・シャウトラバー!」

 変身が完了した私達は、電柱型アニマと対峙する。
 沢山の電柱によって形作られているせいか威圧感が凄まじいそれに、怯みそうになる。

 けれど、ここで怯んじゃいけないことくらいもうわかってる。

 ふと、紫色に変色した髪を靡かせた、同じく鮮やかな紫色の服装を纏った秋風さんが、アニマに向かって一直線に駆け出した。
 一瞬、私に挑戦的な笑みを向けて。

「じゃあ、これで勝負だよ、ブレイブちゃん! 先にアニマを倒した方が勝ち!」

「……え? え?」

 すっかり困惑してしまう私をよそに、秋風さんは全く怯んだ様子を見せずアニマに次々と殴り掛かる。

 ……あ、今はシャウトラバーさんって言った方がいいのかな。

 パワータイプのシャウトさんの攻撃でも、幾層から成る今回のアニマを完全破壊するのは難しいのか、拳は確かに届いているのに決定打は与えられていないみたいだった。

 それでも構わずシャウトさんは拳を叩き込むのを止めないし、諦める素振りも見せない。
 その凛々しさに、ひた向きさに、戦闘中だと言うのに思わず見惚れてしまった。

 私にはない物を、持っていると思ったから。

 アニマが腕を大きく振り、シャウトさんを薙ぎ払う。
 シャウトさんは一度背中を地面に強かに打ち付けたけど、すぐに立ち上がってアニマに向かって行った。

 そんな不屈の闘志に、憧れてしまう。

 憧れてばかりじゃだめだ、と我に返るのは数秒後で。

 気付いたらカーニバルちゃんもロマンスちゃんも、シャウトさんに加勢していた。

 出遅れた私が慌てて一歩踏み出そうとした所で、またシャウトさんの身体が振り払われる。
 こちらに勢い良く飛んで来たシャウトさんの身体を、慌てて受け止めた。

「だ、大丈夫ですか……? シャウトさん……」

「あいたた……ありがと、ブレイブちゃん」

 シャウトさんが体勢を整え、私から離れる。
 それから、また迷いなくアニマに突っ込もうとする。

「あ、あの!」

 その背中に、気付けば声をぶつけていた。

 不思議そうに、シャウトさんが振り向く。
 綺麗な紫色の瞳が、小さな私の姿を映す。

「……怖く、ないんですか?」

「全然。へっちゃら」

「……どうして、そんな風に怯まずに向かっていけるんですか?」

「……え? だって、ブレイブちゃんに負けたくないんだもん」

 迷いなく、けろっとそんなことを言われて私の方が言葉に詰まる。

 この人の言葉に、きっと嘘は無い。
 そう思えた、確信できた。

 同時に私の心に灯ったのは、温かい優しい感情。

「……シャウトさんは……たっくんのこと、本当に好きなんですね……」

「うん、大好き。だから負けたくないわけだし」

「……私は、負けてもいいかな……」

「――へ?」

 シャウトさんが、虚を突かれたような声を上げる。

 私はそんなシャウトさんに、精一杯の微笑を向けて言った。
 私の、今感じた本当の想いを。

「だって……こんなにかっこよくて素敵な人が自分の弟を好いてくれるなんて、とても、幸せなことだから。……たっくんの幸せが、私の幸せだから」

 シャウトさんが、まっすぐに私を見つめている。
 もしかしたら、言葉を探しているのかもしれない。

 申し訳ないことに、カーニバルちゃんとロマンスちゃんがアニマに繰り出す打撃音は、今の私とシャウトさんにとってはBGMになりつつあった。
 それでも、そろそろ戦闘に戻らなきゃ、と思った頃、シャウトさんが小さく言葉を吐き出す。

「……そういうもん?」

「……はいっ」

 シャウトさんが、私からようやく視線を逸らす。
 少し照れたように、気まずそうに。
 頬を指で掻きながら。

「なんか、ブレイブちゃんの方が大人みたい。私、恥ずかしいな」

「そ……そんなこと、ないです……」

 シャウトさんはそう言ってくれたけど、私なんてまだまだで。
 急に恥ずかしくなって俯こうとした時、ぎゅ、と片手をシャウトさんに握られた。

 顔を上げると、シャウトさんが無邪気に笑っていて。

「ごめん。決闘の話はとりあえずナシ。……一緒にあいつ倒そ、ブレイブちゃん」

「は、はい!」

 私の返事に満足したのか、シャウトさんは笑みをより一層深くすると私の手を引いてアニマへと全速力で駆け出した。
 一歩下がって呼吸を整えていたカーニバルちゃんとロマンスちゃんの横を通り過ぎた所で、シャウトさんは私から手を放す。

「行くよ、ブレイブちゃん!」

「……はい!」

 同時にジャンプする。
 シャウトさんと呼吸を合わせる。

 そして、ここだ、と思ったタイミングで。
 私たちは、同時に拳をアニマにぶつけた。

 二人分の力で、アニマの身体が凹む。
 隙を見逃さず、私とシャウトさんは連続で拳を叩き込んで。
 黒い靄が出て来た頃、私はシャウトさんと目を合わせて、一瞬笑い合って。

「還って、エモーション! ハーツ・ラバー! バーニング・フォレスト!」

「還れ、エモーション! ハーツ・ラバー! スピリット・ウェーブ!」

 同時に、必殺技を放った。

 私の炎の柱と、シャウトさんの声の衝撃波。
 それらが一瞬でアニマを覆って、粉々に破壊する。

 アニマが爆散したかと思えば、靄はきらきらとした粒子に姿を変えた。

「……クソが……っ、厄介な女どもだぜ……っ!」

 ネスさんが舌打ちをして、私達四人を睨みつける。
 何か仕掛けてくるかと思ったけど、ネスさんはそのままふっと姿を消すだけだった。
 数の不利を察したのだろうか。

 急に緊張の糸が切れたかのように力が抜けてしまい、へなへなとその場に崩れ落ちてしまう。

 直後、変身も解ける。
 他の三人も、意識を取り戻しつつある生徒さんたちに姿を見られたらまずいと判断したのか変身を解いた。

「ねえ、こずえちゃん」

 座り込んでいる私に、秋風さんが近寄る。
 すっと、私に手を差し伸べてくれたから、慌ててその手を取って立ち上がった。

 お礼を述べようと口を開いた頃、秋風さんは言った。

「こずえちゃんは、私が拓海くんと一緒にいるのを初めて見た時、どう思った?」

「え……えっと……二人とも、凄く楽しそうで……びっくりはしたんですけど、なんかしみじみしちゃったというか……ほんわかしちゃったというかで……」

「……私がモデルだってこと、知ってた?」

「あ、えと……知りません、でした。ごめんなさい……」

「……そっか」

 秋風さんが俯く。

 どうしよう、何か失言をしてしまったんだろうか。
 何か、何か言わなきゃ――。

 頭の中がぐるぐるしてきた頃、秋風さんは私の腕を引き寄せぎゅう、と抱き締めてくれた。

 ……え?

 愛歌ちゃんの『きゃあっ』て声がどこか遠くから聞こえた気がした。
 本当ならその声は、近くで響いているはずなのに。

「あ、秋風さん……?」

「……やだ。千雪って呼んで」

「……千雪、さん?」

 おずおずと、初めて彼女を下の名前で呼ぶ。

 千雪さん、が、私から少し身体を離し、私の顔を覗き込む。

「変に敵視してごめん。これからよろしくね、こずえちゃんっ」

 そう言って笑う千雪さんは。
 ――今までで、一番可愛らしく笑っていた気がした。

 ああ、また、見惚れちゃった。
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