つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~

ハリエンジュ

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第二話『最愛の人よ』

その6 いかれた女に恋をした

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★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第二話『最愛のひとよ』その6 いかれた女に恋をした

teller:志久次郎

 俺――志久次郎が、牟田美夏と初めて出会ったのは、中学時代まで遡る。
 ある日、廊下を歩いていたら背後からあいつに呼び止められたのがきっかけだ。

「少年!」

 力強いアルトで、そう呼ばれた。
 あいつだって『少女』だろうに、妙に上から目線な態度だった。
 何だ、と訝しんで俺が振り向けば、あいつは堂々と仁王立ちをしていた。
 あいつはいつも、最初から、自分への自信に満ち溢れたやつだった。
 美夏は、やや切れ長の目を爛々と輝かせながら言った。

「きみ、オカルト研究部に興味はないかね?」

 オカルト研究部。
 そう言えばそんなマイナーな部活もあったな、と当時の俺は思案した。
 何だ、部活の勧誘か。
 だとしたら、答えはとうに決まっている。

「いや、俺バスケ部入ってるから」

 答えはノー。
 それ一択だ。
 バスケットボールは当時から好きだったし、集中したいという気持ちもあった。
 でも、美夏は。

「兼部が駄目というわけではないだろう。その長身は、色々使えそうだ!」

「待て待て、俺をどうするつもりだ?」

「降霊術の依り代的な?」

「やめてくれよ」

 怪しげな響きに俺が思いっ切り顔を顰めると、あいつは妙に楽しそうに笑った。
 そんなノリで、クラスは違うが度々美夏と会話するようになった。
 美夏には良く絡まれた。
 俺を『しくじろー』と初めて呼んだのは、他でもない美夏だ。
 やめてほしいと何度も言ったが、あいつは『愛称の方が親しみを感じるから』と俺をフルネームで呼ぶのを決してやめてはくれなかった。
 変な奴だったけど、おかしな奴だったけど、誰よりも楽しそうに日々を過ごしているやつだった。
 そんなあいつを微笑ましいな、と思う自分が居ることに気付いたある日のこと。
 その日は体育祭だった。
 文化部のくせに運動神経は良いのか活躍し、周囲の女子に嬉しそうに抱きつくあいつの心底楽しそうな表情を見た瞬間、胸に妙なプラスの感情が宿った。
 後から考えれば、あの無邪気な笑顔は女子相手に変態的に迫るあいつの特異体質から来る不純なものなのだが、それでも。

 ――あれ、俺ひょっとしてあいつのこと好きじゃね?

 俺は、美夏の笑顔を見て、そう感じてしまったのである。
 自分がとんでもないやつに惚れたと気付いた頃には、もう手遅れだった。
 自分は普通の人間だと思っていたが、どうやら俺の『女の好み』だけは、全く普通ではなかったようである。
 しばらくして、意を決して俺は美夏に伝えた。

「……好き、なんだが。良ければ、俺と、付き合ってくれないか」

 正直、玉砕覚悟だった。
 あいつが女子を溺愛しているのは知っていたので、趣味的に振り向いてくれる筈もないと思ってたのだが。

「私も好きだ!」

 美夏は、爽やかな笑顔で俺にそう言ってのけた。
 幸いなことに、あいつは両刀だったらしい。
 俺たちの関係には、はじまりにも、過程にも、現在にも、恐らく未来にも、甘さの欠片もない。
 でも、それでも。
 俺は――俺だけは、幸せなんだ、これで。
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