つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~

ハリエンジュ

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第三話『ギャクシン!!(逆身長差の意)』

その7 はっぴー・うぇでぃんぐ

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★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第三話『ギャクシン!!(逆身長差の意)』その7 はっぴー・うぇでぃんぐ

teller:村瀬静流


 俺――村瀬静流と八ツ橋麻耶は、物心つくかつかないか、といった時期からの幼馴染だ。
 麻耶は昔から俺にべったりで、どこに行くにもとことこと俺の後を嬉しそうについてきた。
 俺はと言うと――そんな麻耶に懐かれることが、慕われることが、まあ、その、正直なことを言うとまんざらでもなかったんやと思う。
 麻耶と一緒にいる時間が好きやった、麻耶が俺に無邪気で無垢な笑顔を向けてくれるのが好きやった。
 いつも手を繋いでいた、いつも俺が、麻耶の手を引いていた。
 繋いだ手の温かさを、柔らかさを感じる度に、こいつだけは俺が守らんとあかん、と何度も思った。
 その日も、いつものように麻耶と手を繋ぎ、二人で街を歩いていた。
 小学生の頃の話や。
 俺も麻耶もまだただのガキのくせに、デートの真似事、なんてものをしていた辺り、俺も麻耶も、頭がおめでたかった。

「……あ」

 ふと、麻耶が足を止めた。
 何や、と思って俺も麻耶の視線の先を見やると、そこは教会やった。
 麻耶の大きな瞳には、純白のウェディングドレスを纏った花嫁が、ひどく幸せそうに笑っている姿が映っていて。
 その時、柄にもなく、思った。
 ああ、俺も。
 こいつを、麻耶を――あんな風に、いつかは幸せにできたらいい。

「……麻耶」

 名前を呼ぶと、きょとんと、本当に無垢な表情で麻耶は俺を見下ろしてきた。
 あの頃から麻耶は俺よりずっと背が高く、そのことが腹立たしく、同時にもどかしかった。
 それでも。
 それでも、俺は、麻耶を。

「ちょっと来い」

 麻耶の手をぎゅっと引いて、俺は自分の家に麻耶を連れ込んだ。
 麻耶を俺の部屋に座らせ、母親の趣味のレースのカーテンを外していって。
 それで――そのカーテンを、ベールのように麻耶の頭の上に被せた。
 そのあと、ひどく驚いている麻耶の左手薬指を手にとって、ちゅ、とそこに口付けて。
 ガキのくせに随分とませたことをしていた自覚はあった、けど。
 幸せにしたいと思ったんや、その時の俺は。

「……絶対、幸せにしたる。俺がちゃんと、おまえを守ったる。せやから、ずっと俺の傍におって」

 幼い愛の言葉、幼い求婚。
 俺のぎこちない想いを受けて、麻耶はぽろぽろと涙を零した。
 その涙の意味が、嬉しさから来るものだということくらい、俺はわかっていた。
 麻耶のことなら、何でもわかっているつもりだったから。
 俺たちはあの頃、きっと幸せだった。
 麻耶は俺が好きで――俺も、麻耶が、好きで、子どものくせに、麻耶を愛していて。
 俺たちは、ずっと二人で笑い合っていた。
 ――俺の父親が蒸発する、あの日までは。
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