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第四話『コイゴコロはむずかしい』
その2 おべんとうタイム
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★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第四話『コイゴコロはむずかしい』その2 おべんとうタイム
「鶫くん、椋と一緒にお弁当、食べませんか?」
昼休み、鞄から弁当箱を取り出して机の上に乗せたタイミングで、隣の席の椋にそんなことを言われた。
対して俺はと言うと、『……へ?』だなんて、何の面白みもないとぼけた声しか出せない。
数秒の沈黙が、俺たち二人の間を支配する。
代わりに、俺のとんでもない心臓の鼓動だけが、この静寂を破っている気がした。
「……俺と?」
恐る恐る訊ねると、椋はこくりと、何の躊躇いもなく頷いてくれた。
椋はいつも、美夏と一緒に弁当を食べている。
時には食堂、時には屋上、様々な場所を転々としているらしく、それなりの青春を謳歌しているようだった。
俺は、ぼっち飯がすっかり定番になっている。
最初の頃こそ恥ずかしかったものの、周りの生徒がそれぞれの談笑に夢中になっていて俺なんて眼中にないことがわかってからは、大して気にもならなくなっていた。
でも。
でも、心のどこかでは、寂しかったんだと思う。
「……美夏はどうした?」
いつも椋と一緒に居る筈の美夏。
きょろ、と軽く教室を見回してみれば、あの元気なジャージ女の姿は見当たらない。
俺が混乱しつつあると、椋が俺の疑問に簡単に答えてくれた。
「美夏ちゃんは、部活の部長会議に行ってしまったのです」
ああ、なるほど、そういうことか。
俺だってぼっち飯はそこそこ寂しいのだ。
椋だって、そりゃあ寂しいよな。
例え美夏の代わりだとしても、椋が俺を選んでくれた、という事実が嬉しくてまた胸が高鳴る。
でも、椋はもっと俺にとどめを刺してきた。
「……でも、美夏ちゃんが忙しくない時でも……椋は、鶫くんとお弁当、一緒に食べたいのです」
淡々と言われたようで、寂しさと俺への信頼で構成された言葉。
正直、きゅんってなった。
ガラじゃないのはわかってるけど、俺は椋の一挙手一投足に毎日きゅんきゅんしっぱなしだ。
だってこいつ、可愛いんだよ。
なんて、椋にめろめろになっていた頃だった。
めろめろって何だ、と俺の煩悩を殴り飛ばしそうになった瞬間、首筋に冷たい感触が触れた。
背後に、人の気配を感じる。
同時に感じるのは、おぞましいレベルの殺気。
「……あまり調子に乗って、姉様を呼び捨てにし続けると、本当に埋めるからな」
「どこにですか……」
つい、敬語になってしまった。
振り返らずともわかる。
俺の後ろに立っているのは美冬だ。
首筋に当てられている物体、恐らく武器の詳細については、深く考えるのはやめておいた。
「こらこら、美冬。おまえはこっちでメシ食おうな」
俺が生命の危機に怯え切っていた時、救世主が現われた。
次郎が、美冬を俺から引き剥がし、ずるずると連行していく。
身長差、体格差、体力の差。
その他諸々で、美冬が次郎に敵う筈がない。
ただ、美冬は次郎を相手にすると毒盛りスキルや暗殺スキルを兼ね備えているようなので――やっぱり、美冬も、それに耐えている次郎も凄いやつなんだと思う。
「おい、志久。触るな。この手でバラバラにして破棄してやろうか。僕はおまえなんか大嫌いなんだからな」
「はいはい、物騒なこと言うんじゃねえよ。やれやれ……」
じたばたと暴れる美冬を引きずっていた次郎だったが、ふと足を止めた。
次郎の視線の先には、美冬にそれはもう熱い眼差しを向けまくっている愛理。
さすがに察したのか、次郎がふっと微笑んで。
「神戸も一緒に、飯食うか?」
「ひぇっ、い、いいの……?」
「ま、華があった方がいいしな」
美冬は何も言わない。
ただただ、心底疎ましそうな表情で愛理を睨んでいる。
それでもその視線を受けて、愛理は恍惚とした表情を浮かべていた。
……頼むから、愛理は美冬の前で、『普通の女の子』になってほしい。
まあ、でも、次郎がフォロー入れてくれんなら、美冬と愛理も上手くいくか……?
どうも、最近少し関わるようになったクラスメイト、時には友達のことを考えると、お節介なことばかり考えてしまう。
このお節介のせいで、俺は何度もえらい目に遭っていると言うのに。
……俺って学習能力、ほんとにないんだな。
軽く息をついて、椋と一緒に弁当を食べる為、椋と机をくっつける。
その瞬間、椋と目が合って、椋がとても幸せそうに笑ってくれて。
……ぎゅんっと心臓が鷲掴みにされた俺は、周りの色恋がどうこう言っている連中のことを、とやかく言えないかもしれない。
「鶫くん、椋と一緒にお弁当、食べませんか?」
昼休み、鞄から弁当箱を取り出して机の上に乗せたタイミングで、隣の席の椋にそんなことを言われた。
対して俺はと言うと、『……へ?』だなんて、何の面白みもないとぼけた声しか出せない。
数秒の沈黙が、俺たち二人の間を支配する。
代わりに、俺のとんでもない心臓の鼓動だけが、この静寂を破っている気がした。
「……俺と?」
恐る恐る訊ねると、椋はこくりと、何の躊躇いもなく頷いてくれた。
椋はいつも、美夏と一緒に弁当を食べている。
時には食堂、時には屋上、様々な場所を転々としているらしく、それなりの青春を謳歌しているようだった。
俺は、ぼっち飯がすっかり定番になっている。
最初の頃こそ恥ずかしかったものの、周りの生徒がそれぞれの談笑に夢中になっていて俺なんて眼中にないことがわかってからは、大して気にもならなくなっていた。
でも。
でも、心のどこかでは、寂しかったんだと思う。
「……美夏はどうした?」
いつも椋と一緒に居る筈の美夏。
きょろ、と軽く教室を見回してみれば、あの元気なジャージ女の姿は見当たらない。
俺が混乱しつつあると、椋が俺の疑問に簡単に答えてくれた。
「美夏ちゃんは、部活の部長会議に行ってしまったのです」
ああ、なるほど、そういうことか。
俺だってぼっち飯はそこそこ寂しいのだ。
椋だって、そりゃあ寂しいよな。
例え美夏の代わりだとしても、椋が俺を選んでくれた、という事実が嬉しくてまた胸が高鳴る。
でも、椋はもっと俺にとどめを刺してきた。
「……でも、美夏ちゃんが忙しくない時でも……椋は、鶫くんとお弁当、一緒に食べたいのです」
淡々と言われたようで、寂しさと俺への信頼で構成された言葉。
正直、きゅんってなった。
ガラじゃないのはわかってるけど、俺は椋の一挙手一投足に毎日きゅんきゅんしっぱなしだ。
だってこいつ、可愛いんだよ。
なんて、椋にめろめろになっていた頃だった。
めろめろって何だ、と俺の煩悩を殴り飛ばしそうになった瞬間、首筋に冷たい感触が触れた。
背後に、人の気配を感じる。
同時に感じるのは、おぞましいレベルの殺気。
「……あまり調子に乗って、姉様を呼び捨てにし続けると、本当に埋めるからな」
「どこにですか……」
つい、敬語になってしまった。
振り返らずともわかる。
俺の後ろに立っているのは美冬だ。
首筋に当てられている物体、恐らく武器の詳細については、深く考えるのはやめておいた。
「こらこら、美冬。おまえはこっちでメシ食おうな」
俺が生命の危機に怯え切っていた時、救世主が現われた。
次郎が、美冬を俺から引き剥がし、ずるずると連行していく。
身長差、体格差、体力の差。
その他諸々で、美冬が次郎に敵う筈がない。
ただ、美冬は次郎を相手にすると毒盛りスキルや暗殺スキルを兼ね備えているようなので――やっぱり、美冬も、それに耐えている次郎も凄いやつなんだと思う。
「おい、志久。触るな。この手でバラバラにして破棄してやろうか。僕はおまえなんか大嫌いなんだからな」
「はいはい、物騒なこと言うんじゃねえよ。やれやれ……」
じたばたと暴れる美冬を引きずっていた次郎だったが、ふと足を止めた。
次郎の視線の先には、美冬にそれはもう熱い眼差しを向けまくっている愛理。
さすがに察したのか、次郎がふっと微笑んで。
「神戸も一緒に、飯食うか?」
「ひぇっ、い、いいの……?」
「ま、華があった方がいいしな」
美冬は何も言わない。
ただただ、心底疎ましそうな表情で愛理を睨んでいる。
それでもその視線を受けて、愛理は恍惚とした表情を浮かべていた。
……頼むから、愛理は美冬の前で、『普通の女の子』になってほしい。
まあ、でも、次郎がフォロー入れてくれんなら、美冬と愛理も上手くいくか……?
どうも、最近少し関わるようになったクラスメイト、時には友達のことを考えると、お節介なことばかり考えてしまう。
このお節介のせいで、俺は何度もえらい目に遭っていると言うのに。
……俺って学習能力、ほんとにないんだな。
軽く息をついて、椋と一緒に弁当を食べる為、椋と机をくっつける。
その瞬間、椋と目が合って、椋がとても幸せそうに笑ってくれて。
……ぎゅんっと心臓が鷲掴みにされた俺は、周りの色恋がどうこう言っている連中のことを、とやかく言えないかもしれない。
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